山田祥平のRe:config.sys

15型モバイルディスプレイがあれば15型ノートPCからモバイルノートに移行できるかも

 日本エイサーから発売された「PM161Qbu」。15.6型で2万円以下をかなえたモバイルディスプレイだ。モバイルディスプレイとはいえ、大きいに越したことはない。モバイルノートPCも長い間13.3型の天下が続いていたが、少し大きな画面サイズにシフトしはじめている。24型が最高と言いたいところだが、そこまでいかないにせよ、少しでも広い作業スペースを確保して作業の効率を高めたい向きにはおすすめの製品だ(日本エイサー、重量970gのUSB Type-C対応15.6型モバイル液晶参照)。

単位時間にできる作業を増やそう

 オフィスで使われるPCがデスクトップ機と外付けディスプレイの組み合わせから、ノートPCにシフトし、日本は15.6型ディスプレイのノートPCがもっとも売れている世界でもめずらしい地域だそうだ。ただ、このままモバイルノートPCへのシフトが進んでいくと、オフィスワークの生産性が下がってしまう可能性もある。当然、モバイルノートPCの主流は小型軽量化のため13.3型だ。

 多くの場合、会社などから貸与されたPC 1台ですべてをまかなわなければならない。20~24型の外付けディスプレイから15.6型のノートPCに移行しただけでも能率は下がりかねないのに、それが13.3型のみになってしまうのは本当にまずいと思ったほうがいい。

 日本エイサーのPM161Qbuは、15.6型のフルHD IPSパネルを持つモバイルディスプレイだ。価格も2万円前後とかなり安く設定されているのがうれしい。ただ、重量は約970gでちょっと重い。もっとも同じ金額を払うなら、モバイルではない24型程度のディスプレイは買えてしまう。多少サイズは小さくなっても薄型軽量でなければならない言いわけが必要だ。

 PCとはUSB Type-Cケーブル1本で接続するだけで、Alternate ModeのDisplayPortと電源の両方が供給される。本体には電源容量が足りないときのためにMicro USBポートが用意され、そこで補助電源を入力することもできる。本体にはそのためのACアダプタとケーブルも同梱されている。

 また、本体裏側には収納収納式スタンドが搭載されていて、15度または35度の角度で自立させることができるのは便利だ。カバーを兼ねたスタンドもよくみかけるが、カバーそのものの重量がかさんでしまうので、自立スタンドのほうが有利なのはいうまでもない。

 なお、本体にバッテリなどは内蔵されていない。HDMIなどの入力端子もなく、本当にPC専用、しかもType-C Alternate Mode依存のシンプルな製品だ。まさに、ワークスペースの拡張のためだけのものと考えてほしい。

購入の前にPC側のType-C仕様をチェック

 PCにこの製品を接続し、2台目のディスプレイとして使うためには、

  • PCにType-C端子があって、Type-C Alternate ModeでのDisplayPort出力ができること
  • そのType-C端子が約10Wの電力を供給できること、または別途Micro USBで電力を用意すること

という両方の要件を満たす必要がある。

 つまり、この製品を購入するときには、接続して使おうとしているPCのType-C端子の数と機能について考慮する必要がある。

 たとえばType-C端子が1つだけしかない場合、本機を接続して機能させることはできる。だが、その端子がUSB Power Delivery(PD)による電源入力のための端子を兼ねている場合、PCに電源を供給できなくなってしまう。両立させるためには、PDパススルーの機能を持ったHubなどを別途用意しなければならないかもしれない。

 また、PC側のType-C端子が2個あったとしても、双方ともにPDと映像出力ができるのは片方だけで、もう片方はデータ入出力のみというPCも数多く見かける。

 つまり、PCを充電しながら、ディスプレイに電力と映像を出力することができるかどうかを入念にチェックしないとフル活用ができないということになる。

軽くはないが重くもない

 約970gというのは15.6型のモバイルディスプレイとしては決して軽いほうではない。既存製品には、もっと軽量な製品が見つかるはずだ。バッテリを内蔵しているわけではないのにこの重量になってしまっているのは本体のコストダウンによるものだと想像できる。筐体は決して豪華な造りではないが、安っぽいわけでもない。

 バッテリ非搭載というのは、製品の重量を少しでも軽く抑えることができることのほかに、本体の陳腐化を抑制できるメリットもある。バッテリは使っているうちにへたってしまう消耗品だ。

 さらにはエンドユーザーが交換不可能なパーツでもあり、ディスプレイのように、比較的長く使える機器に内蔵してしまっていると、ディスプレイとしてはまだまだ使えそうなのに、バッテリがへたってしまっているという事態に陥りかねない。

モバイルの枠組みを超えて環境を考えよう

 今回、ちょうど4泊の出張があったので、いつもの24型モバイルディスプレイ(※編注 次の記事を参照『もうモバイルじゃないとは言わせない』)のほかに、2台のモバイルディスプレイを持参して使ってみることにした。

 出張先の4画面体制というのは心が躍る……。そのために、2つのType-CポートとHDMIポートを持つPCを用意し、3台のディスプレイを接続してみたところ、そのPCでの外部出力ができるのは2台までだということがわかった。せっかく期間に似つかわしくない重装備で出張にでかけてみたのに見事な企画倒れだ。

 失敗の話はさておき、15.6型のディスプレイ環境は想像以上に便利だ。3kgを超える24型ディスプレイを持ち運ぶのはなかなかたいへんだが、1kg未満の15.6型ならなんとかなる。携行のためにスーツケースもいらない。機内持ち込みのバッグで十分だ。にもかかわらず、作業環境はずいぶんよくなる。1kgで2万円という代償で得られる効果としてはかなりのものだ。

 来年(2020年)はオリンピックの年で、それにともなって在宅勤務やテレワークの機会も増える傾向にあるそうだ。ノートPCの持ち出し禁止を撤廃する企業も増えてきている。

 モバイルという枠組みでこうしたディスプレイ製品を考えるだけではなく、在宅勤務やオフィスでの省スペースディスプレイとして考えれば、ケーブルを入れても約1kg弱という重量は十分に軽い。いちいち片付けるにしても負担は最小限で済む。

 移動時にはモバイルノートPCだけを携行し、オフィスに戻ったときのフリースペースデスクや、自宅に帰ったときの作業用に使うのであればおおいに役立つだろう。もちろん、出先でのプレゼンテーションなどでも、より視認性の高い画像を相手に提供することができるはずだ。