山田祥平のRe:config.sys

ケーブル一本さらしにまいて月が出ずとも抜き差し自在

 性差別がなく種別の差別もない世の中が理想だ。でも、そんな世の中がようやく実現しそうだ。いやケーブルの話である。

ノートPCの使い分けのネック

 大中小のノートPCを用意しておいて、その日の用事によって使い分ける。もう10年以上そんなことをしてきた。日常的な取材に10型前後、宿泊を伴ったり長時間にわたる会議には13型前後、長期出張には15型前後といったイメージだが、最近の長期出張には24型のモバイルディスプレイ(※)を携行するようになったので、いまは中小2種類のノートPCを使い分ける感じになっている。

※編集部注: 重量が軽めなだけの、一般的な液晶ディスプレイのことです。

 いま、幸せを感じるのは、PCを2台携行しても重量2kgを下回ること。また、電源アダプタを持ち出さなくてもほとんどの場合は用が足りるくらいにバッテリが長持ちするようになったことだ。

 そうは言っても、万が一に備えなければならないこともある。そういうときは、でかける前に電源アダプタをカバンに忍ばせるのだが、日によって持ち出すPCが違うものだから、そのたびに正しいアダプタなのかどうかをチェックする必要がある。

 待機させている現役のノートPCは、稼働状態で蓋を閉じたまま部屋の床に放置してある。つまり、スリープさせて持ち出すときには、メールやオンラインストレージなどは常に最新の状態になっている。当然、ACアダプタがつながっているのだから、そのまま持ち出せばいいのはわかっている。でも、入れ替わり立ち替わりPCを使ううちに、ケーブルはこんがらがってスパゲティ状態。それをほどいて持ち出すのに四苦八苦だ。

 すべてのPCに使えるユニバーサルなACアダプタがあればどんなにいいかと思う。

ACアダプタのユニバーサル化

 いちばんいいのは1社のノートPCに統一することだ。ほとんどの場合は共通のACアダプタを使っているから、予備に1個を用意しておくことで、それを持ち出せば、どのPCを携行する場合にも大丈夫だ。だが、メーカーが異なる場合はそうもいかない。

 今、手元で使っている主なノートPCとそのDC電圧は、

  1. Panasonic レッツノート(16V)
  2. Microsoft Surface(15V)
  3. HP ELITEBOOK x360(19.5V)
  4. NECP LAVIE Hybrid ZERO(20V)
  5. 富士通 LIFEBOOK(19V)

となっている。改めて書いてみるとすべて異なる電圧に驚くとともに、全部DC-INのプラグ形状が異なる。

 富士通とPanasonicは微妙に径が異なるが刺さることは刺さる。ただ、電圧が違いすぎて、LIFEBOOKのアダプタでレッツノートを充電できても、レッツノートのアダプタでLIFEBOOKは充電できない。たぶん、メーカー各社の方は、自社PCしか使わないだろうから、そういう不便はほぼ感じないのだろうなとも想像できる。

 なにかいい方法がないものかと思っていたときに新発売のニュースが飛び込んできた。Cooler MasterのノートPC用次世代電源アダプタ「MasterWatt 65/90 NB」だ。各メーカーのPCに対応する9種類のコネクタが同梱されているユニバーサルアダプタとなっている。電力効率が高く、アダプタが高温にならないともいう。

 電圧は19Vで、65Wと90Wの2種類がある。モバイルPCで使うなら65Wのもので十分だろう。付属のコネクタは9種類あり、Panasonicと富士通は緑、NECPは黄色で大丈夫そうだ。残念ながらSurfaceとELITEBOOKに合致するプラグはなかった。

 微妙に異なるプラグ口径で挿入できているように見えても、ちょっとしたスキマがあるような場合はスパークの危険性がある。最悪の場合はそれでPCを壊してしまうこともあるので、本当に緊急用と考えた方がいいだろう。もちろん電圧のことも気にする必要がある。それでも、このアダプタが出張一式の中に1つ入っているといろんな点で安心できる。

すべてをUSB Type-Cが解決する

 おそらくノートPCの電源アダプタは、今後数年の間に、すべてがUSB Type-C PDに置き換わるだろう。手元の上記5機種のなかでも、ELITEBOOKとLIFEBOOKはすでにPD対応だ。ただ、両者ともに、20Vの電圧に対応していないと充電ができないようだ。また、ELITEBOOKは45W、LIFEBOOKは60Wが必要になる。したがって、スマートフォンの充電に使うような30W未満のコンパクトなアダプタでは充電ができない。

 PDの規格では、ACアダプタの提示するパワールール、つまり自分が出力できる電圧と電流の範囲内で、欲しいものを充電される側が指定できる。パワールールの中に自分が欲しいものがない場合は、予期せぬトラブルを回避するために充電しないという選択肢もある。

 これからPD対応を考えているメーカーの方に、ぜひお願いしたいことなのだが、低い電圧、低い電流のパワールールでも、たとえ、稼働時にはバッテリが減るようなことがあったとしても、どんなに時間がかかってもいいからできる限り充電ができるようにしてほしい。

 そうなっていれば、シャットダウンして夜中のうちに時間をかけて充電するといったことで、翌日の利用に備えることができる。出先で電源が確保できるような場合にも、バッテリの消費を最低限に抑えることもできる。カバンの中にコンパクトなPDアダプタを忍ばせておくだけで、あらゆるスマートフォン、あらゆるPCを充電できるという安心感は何にも代えがたい。

 PDだから、当然ケーブルはType-Cだ。必要に応じて長いもの、短いものを使い分けることができる。そしてそのケーブルでモニタに接続することができたり、フラッシュメモリカードリーダや外付けSSDを使うこともできる。

 こういうことが明日からでもできるくらいにテクノロジは成熟している。あとは、iPhoneのLightningコネクタがなくなるのを待つだけだ。表も裏もない、送り側受け側の種別区別もない。性差別がなく種別の差別もない世の中がやってくる。

 おっと、Lightningのことをとやかくいう前に、各種ガジェットのMicro USB、Mini USB、標準Type B、USB 3.0対応Micro Bについても絶滅させなくてはなるまい。