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約32万円でVAIO SX14を自腹購入。PC Watch記者はなぜ2台続けてVAIOノートを買ったのか

筆者が購入した「VAIO SX14|ALL BLACK EDITION

 購入価格は約32万円。大きな出費となったが筆者は最新のVAIO SX14を買った。経費としてではなく、正真正銘の自腹である。この記事は、2世代前のVAIO SX14(第2世代)から、この最新の第4世代VAIO SX14に買い換えた筆者の購入記だ。なぜ筆者が2台続けてVAIO SX14を買ったのか、ほかにも選択肢がある中でなぜあえて選んだのか、その理由をつまびらかにしていきたい。

ちょっと高いVAIO。でも安心の国内製造&サポート

 VAIOは今年の10月13日に14.0型ワイドモバイルノート「VAIO SX14」と12.5型ワイドの「VAIO SX12」を同時に発表した。既存シリーズの新モデルとなり、筐体を刷新するとともに、リリースされたばかりのWindows 11を引っさげての登場だった。

 VAIO SX14は直販のVAIOストアでカスタマイズして、Celeronを搭載したりといった最小構成にすれば、15万円くらいで購入できる。とは言え筆者が選んだのは最上位のCore i7-1195G7、メモリ32GB、NVMe SSD 512GB、LTE、Windows 11 Proなどといった上のスペックだ。

 さらに、筆者は5千円~1万円くらい割り増しになるALL BLACK EDITIONというモデルを選んだので、そうなると価格は跳ね上がり、合計金額は31万8,800円になった(現在は「VAIOストア ハッピーホリデーキャンペーン」が実施されているのでもう少し安く買える)。

VAIOストアで注文した際の明細。Core i7-1195G7とメモリ32GB、LTE搭載といったハイスペック構成のため、合計金額は31万8,800円だった

 正直なところ、他社で同じような構成にした場合と比べて、VAIOのモバイルノートはちょっと割高で、数万円程度の差が出る。ただ、詳細は後述するが、品質面において優秀であり、かなり酷使した第2世代VAIO SX14は現状何の問題も起きていない。

 さらにVAIOストアで購入した場合、追加費用なしで3年の保証を受けることができるのは大きい。VAIOは長野県安曇野市に工場を持っているので修理対応が早い。また、カスタマイズモデルを選んでも納期が早いのは、このおかげもあるだろう。以前他社のノートを注文したら中国からの出荷となり、1カ月近く待たされたことがある。

購入したVAIOに添付されている「安曇野FINISH」の証明書。長野県のVAIO安曇野工場で検品された証だ

 なので、他社との価格差は“国内メーカーによる安心”という面に色濃く出ているわけだが、こういった部分は実際に購入したユーザーでなければ分からないだろう。本稿を通してその理由をお伝えしていきたい。

はじめましてVAIO

手前が第4世代のVAIO SX14、奥は第2世代のVAIO SX14。ともに筆者の私物だ

 筆者はPC Watchで編集者をしている。社員なので経費でPCを購入できるのだが、当然天井なしというわけにはいかない。会社の所有物ということもあって自分のものにもできないので、これまでも仕事用のPCは自腹で買ってきた。個人のPCを会社で使うことが許容されているからだ。

 冒頭で述べた通り、筆者は2世代前となる第2世代のVAIO SX14を持っている。なので2台続けての購入だ。しかし、熱烈なVAIOファンではない。なぜならソニー時代からの長いVAIOの歴史の中で、初めて買ったVAIOはその第2世代のVAIO SX14だし、今回の第4世代VAIO SX14でようやく2台目というくらいだからだ。

 昔は自作PC系の編集部所属だったということもあり、そもそもPCメーカーにこだわりがなかった。そのため、周りで使っている人が多かったキーボードに赤いぽっちが付いたメーカーのノートPCを使っていた。

 そこでなぜVAIOに移行することになったのかと言うと、きっかけはその赤ぽっちメーカーから英語キーボードのモデルを購入しにくくなったからだ。筆者は英語キーボード愛用者なのである。

VAIO SX14の英語キーボード

 以前なら、そのメーカーで注文する時に、カスタマイズで英語キーボードが選択できるようになっていたが、いつの間にか選択肢が減っていた。今でも一部のモデルでは選べるようだが、確かその時は買いたいモデルでそれができず、ひどくガッカリしたのを覚えている。

 その後、あきらめて日本語キーボードのノートPCを購入した。しかし2年近く運用したものの、外付けの英語キーボードを使ったりすると「やっぱりこっちの方が打ちやすい」などと未練たらたらだった。

 英語配列のキーボードは、「:(コロン)」と「;(セミコロン)」や、「-(ハイフン)」と「_(アンダーバー)」といった似たキーが同じ位置にあるなど、記号の配置が整っていて分かりやすい。それにキー数が少ないので、日本語キーボードのモバイルノートにありがちな、無理矢理ダイエットさせられたような変則的なキーがない。

 そういった理由でレイアウトが素直なので打ちやすく、別のノートPCに変えたら若干レイアウトが変わってしまって、慣れるまで押し間違いが頻発した、というようなこともまずない。なので、次に買うノートPCは、やはりストレスがない英語配列に戻そうと考えていた。

 日本国内で英語配列のキーボードを用意しているメーカーは非常に限られる。それにその販売モデルすべてに英語配列が用意されているとは限らない。その都度メーカーやモデルを変えて渡り歩くことも可能だが、仕事でハードに使うPCなのだ。モバイル向けとして実績があり、信頼できるものを選びたい。

 そうなると、同じモデルで継続して英語キーボードを提供しているメーカーでないとならない。VAIOはビジネス向けノートが主体ということもあり、VAIO Zのようなフラグシップ機から、VAIO SX12/SX14のようなメインストリーム機まできっちりと英語配列モデルを用意している。それでVAIOに行き着いたわけだ。それが2020年に購入した第2世代のVAIO SX14だった。

 国内のノートPCでは、絶滅危惧種指定に近い英語配列キーボードだが、この使いやすさを知らずに日々を過ごすのは非常にもったいない。もし日本語配列に窮屈さや無駄を感じている方は、ぜひ試しに外付けキーボードでいいから英語配列を使ってみてもらいたいものだ。かな入力が不要なら、きっと入力操作が捗ることだろう。

VAIOを買いたくなる理由

 こうした理由で初めて買ったVAIO――第2世代VAIO SX14はよく働いてくれた。家から会社まで毎日持ち歩き、LTEを備えていることもあり、取材先でもモバイルノートとしての本領を発揮した。変な挙動を見せることなく、サポートにもお世話にならずに頼もしく動いてくれていたので愛着も湧いた。結局この満足感が第4世代のVAIO SX14の購入へと繋がった理由の1つとなった。

 また、筆者が以下の記事を書くためにVAIOを取材した際には、如何に良いノートPCを作るか、常日頃から探求を続ける開発者の真摯な姿勢を垣間見ることができた。この経験も大きい。

 さらに、製品発表会で開発者の方にどんな細かい質問をぶつけても、素直に回答してくれるし、開発者同士で非常に仲が良さそうなところも印象深い。良い環境でなければ、良い仕事はできない。そういった様々なことを含めて、個人的にVAIOに高い信頼を置いており、今回の第4世代VAIO SX14への購入へと至ったのである。

 もちろん、第2世代VAIO SX14の方は2020年に買ったばかりなので、今も現役で動作しており、Windows 10を搭載するサブ機として活躍している。編集者の仕事は基本的にテキスト処理だし、画像処理もあるが、PC Watchに関して言えば、フルHD程度の解像度で十分なので、正直買い換えなくても性能的な支障はなかった。

 ただ、SSDの容量が256GBだったため、肥大するOSのデータやアプリやらでもう残量が80GBを切っていて、余裕がなくなっていた。コロナ禍になってオンラインでの打ち合わせや発表会が増え、その模様を録画していたりすると結構容量が減っていく。外付けドライブに逃がしてもいいが、必要な時にいちいち繋がなければならないのは使い勝手が悪い。

 なお、データはすべてクラウドのOneDriveに同期してあり、オンデマンドで使えば容量は節約できる。しかし1年以内のデータは割と再利用することが多く、サイズの大きなファイルだと、出先でのLTE接続でのダウンロードに時間を取られたりする。

 そんな事情の中、2021年10月に第4世代VAIO SX14が発表されたわけだ。今回は初代が登場してから2年半以上経っての完全刷新となった。筐体の刷新となれば、旧モデルのユーザーは俄然興味が湧いてくる。

 それにちょうどWindows 11が出た時期であり、その動作検証や記事のための画面キャプチャを撮ったりと、Windows 10環境を残しつつ、Windows 11が動くPCが手元に欲しかった。

 新しいものが出たら欲しくなる性分ではあるが、筐体が古いままだったら、間違いなく購入は見送っていただろう。次の筐体刷新は早くとも2年後だろうから今が買い時なのだ、などと自分を説得しつつ、筆者は発表当日に直販サイトのVAIOストアで予約したのだった。

VAIOストアで柔軟にカスタマイズ

筆者が購入したVAIO SX14はこんな箱に入って送られてきた

 VAIOのPCは、直販のVAIOストアやソニーストア、量販店などで販売されており、VAIOストアやソニーストアでは、製品のカスタマイズが柔軟に行なえる。PCは買う時が一番楽しい。あれこれスペックを考えたり、選んだりするのはいつでもワクワクするものだ。海外メーカーだと、すでに構成が決められた各モデルを選ぶという方式が多く、なんだか味気ない。

 モデルにもよるが、VAIOストアではCPUは上から下まで用意されているし、ストレージやディスプレイ、キーボードの日本語/英語配列、Windows Hello対応カメラなど、結構自由に選択できる。

 メモリに関してはCPUとセットになっていて、最大容量は最上位のCPUでなければならないが、VAIO SX14に関して言えば、Celeronといった最下位のCPUでも最小8GBで用意されているので、もはや地雷とも言えるWindowsでのメモリ4GB環境にならずに安心だ。

VAIOストアではパーツ構成をカスタマイズできる

 筆者が購入したVAIO SX14 | ALL BLACK EDITIONのカスタマイズモデルの主な構成は以下のようになっている。

【表】VAIO SX14 | ALL BLACK EDITIONのカスタマイズ内容
カラーALL BLACK
OSWindows 11 Pro
CPUCore i7-1195G7
(4コア/8スレッド、2.9~5GHz)
メモリ32GB
ストレージ第四世代ハイスピードSSD 512GB
ディスプレイ14型フルHD非光沢
キーボード英語配列バックライトあり 隠し刻印
TPMセキュリティチップ
LTE

 Core i7-1195G7とメモリ32GBのセットで+4万9,000円、英語キーボードは+5,500円、TPMセキュリティチップは+2,200円、LTEは+1万6,500円という感じだ。SSDは1TBにしようかとも思ったが、さすがにそこまでは必要ないのでやめておいた。

 筐体は、ファインブラック/ファインホワイト/ブライトシルバー/アーバンブロンズの4色が用意されているが、前述した通り、筆者は「ALL BLACK EDITION」という特別モデルを注文した。第2世代VAIO SX14の時もこれを選んだのだが、ALL BLACK EDITIONは基本カラーが黒であるだけでなく、天板のロゴやヒンジ周辺のオーナメントまで真っ黒になっているのが特徴だ。

ALL BLACK EDITIONの筐体
通常は背面のロゴや写真でテーブルに接している天板のオーナメント部分がシルバーで明るく光を反射するが、ALL BLACK EDITIONはその名の通り真っ黒だ

 通常のブラックではロゴとオーナメントがシルバーになっていて、これもカッコイイと思う。一方でALL BLACK EDITIONではこれがほぼ目立たなくなる。しかし、ガンメタリックの黒く鋭く光るVAIOのロゴは、慎ましやかにさり気なく自己主張するという塩梅で、筆者はとても気に入っている。ALL BLACK EDITIONは通常のカラーよりも5,000円~1万円ほど高くなるようだが、まあせっかく高いものを買うんだし、ちょっとくらいいいかなと思える金額だ。

VAIO SX14のALL BLACK EDITION(左)と通常モデルで同じ構成にした場合の価格。執筆時点での価格差は5千円ほどになった

 VAIO SX14のディスプレイは4K、フルHDタッチ&ペン対応、フルHDの3種類が用意されている。昨今はデジタル文書に署名する機会が多いので、タッチ&ペン対応にしようか少し迷ったものの、ペンはiPadで代用できるし、バッテリ駆動時間の減少や、画面が光沢仕様でテカテカなってしまうのが嫌だったので、ただのフルHDを選択した。

 キーボードは日本語/英語配列があるだけでなく、バリエーションも用意され、日本語であれば「かな文字」の有無を選択できる。なお、筆者が選んだALL BLACK EDITIONでは、これに加え「隠し刻印」というキートップの印字が目立たないものまで選べる。ここまでノートPCのキーボードのデザインを選べるメーカーはVAIOをおいてほかにないだろう。

ALL BLACK EDITIONの隠し刻印キーボード。見る角度によってはキートップの文字が非常に薄くなる。ファンクションキーが目視しづらいので、頻繁に同キーを使う場合は通常刻印の方が良いかも

絶対に入れておきたいLTE。手間なし即ネット接続は最高

 もしこれからVAIOを買うなら、上位構成だろうが下位構成だろうが、カスタマイズで絶対に入れたいのは「LTE」だ。外でのスマホを使ったテザリングでよしとする人もいるだろうが、ノートPCを開いたら即インターネットに繋がるのは便利というほかなく、一度体験するとテザリングがあまりにも面倒に感じて戻れなくなる。

 データ通信用SIMを用意したりとコストはかかるが、スマホのバッテリ消耗を気にしなくて済む。少しでも外で使うことがあるのなら作業効率が段違いに上がるので、+1万6,500円と多少価格は上がるものの、ケチらず組み込むことをおすすめする。また、VAIOストアでPCと同時にVAIOオリジナルLTE通信データSIMを申し込めば、1年間無料で利用できるのでお得だ。

 筆者がLTEをよく使う場面は電車だ。会社に行く時は、基本的にオフピーク通勤にしているので大抵座ることができる。横浜駅から東京駅までなのでせいぜい30分程度だが、そのときにLTEが活躍しており、よく溜まったメールの処理をしている。

 この約30分の間に休みなくWebサイトの閲覧やメール処理をした場合のバッテリの減り具合は、輝度の高さにもよるが大体8%くらいだ。つまり、バッテリが100%あった場合、同じ状況で約6時間強は使える計算になる。

 新幹線で東京から大阪に行くのに2時間半くらいであることを考えると、出張での片道は十分だし、常時データをダウンロードしているような状態でなければ、1日8時間の業務はこなせるはずだ。Web会議を挟むと厳しいが、モバイルバッテリを携帯しておけば乗り越えられるだろう。

小容量でも良いのでUSB PDのモバイルバッテリは念のために携帯しておきたい
VAIO SX14に標準で付属するUSB PD充電器。コンパクトなのでこちらも携行したいところ

 自宅のWi-Fi 6環境で30分間同じようなことをした場合のバッテリの減り具合も調べてみると6%減となり、LTE接続時よりも2%少なかった。LTE接続時はWi-Fiよりもバッテリの消耗が速く、電車内だと接続されるアンテナが代わる代わる切り替わったりするだろうからもう少し差が出るかと思ったが、Webサイトの閲覧やメールの処理程度であれば案外そうでもないようだ。

 なお、VAIO SX14には5Gが用意されていないが、フラグシップのVAIO Zであれば、5Gに対応できる。以下の記事にあるように、VAIO Zで5Gのテストをした時はダウンロード速度が約970Mbps出ており、今回のVAIO SX14のLTEでは40Mbps程度だったので20倍以上だ。

LTEが繋がらないトラブルに遭遇。APN設定の見落としに注意

VAIO SX14のLTE対応モデルでは、底面にnanoSIMスロットを備えている

 第4世代のVAIO SX14は、nanoSIMをサポートしており、OCNモバイルONEやmineoのドコモ回線で使用できるのを確認した。また、今回接続テストで使用するために、「VAIOオリジナルLTE通信データSIM」も利用してみた。VAIOオリジナルLTE通信データSIMとは、VAIOが直販で提供しているSIMで、ドコモ回線が使われている。

 年間プラン制になっており、1年32GBで1万5,620円、2年64GBで2万5,520円、3年128GBで3万6,520円の3種類がある。年間32GBが多いか少ないかは、その人の使い方によるだろうが、筆者が以前に第2世代VAIO SX14で1年プランを使った時は、確か8GBくらい余っていたと思う。

 ネットに繋ぐ主な目的はほぼWebサイトとメールの閲覧だし、出先でYouTubeを見たりということはまずないので、こういったビジネス的な使い方なら足りなくなるということもないだろう。また、VAIOオリジナルLTE通信データSIMの場合は、PCにインストールされている専用ユーティリティから「高速通信モード」をオフにして、容量の消費を防ぐことができる。

VAIOオリジナルLTE通信データSIMのユーティリティ。「高速通信モード」をオフにすると、容量を消費しない

 OCNモバイルONEにも同様の機能はあるが、こちらはスマホの専用アプリからオン/オフする必要があり、PCで完結するVAIOオリジナルLTE通信データSIMの方が楽である。

 ただし、高速通信モードをオフにすると容赦なく通信速度が下がる。以下のSpeedtestの結果で明らかなように、下りで40Mbps出ていたものが、140kbpsまで下がっている(公称で最大200kbps)。その差約280倍だ。

「高速通信モード」オン時の通信速度。下りは43.73Mbps、上りは1.07Mbpsだ
「高速通信モード」オフの場合。下りは140kbps、上りは200kbpsにまで下がった

 通信速度が100kbps台だとWebサイトを見るのも結構もたもたしてしまい、画像の多いページだと相当シンドイ。ただ、メールの処理はできるので、本当に必要最低限の状況で利用するという感じだ。

 なお、今回SIMの設定で困ったことがあったので紹介しておきたい。SIMを使う場合APNの初期設定が必要だが、この設定項目の1つの「APNの種類」において「インターネットおよびアタッチ」を選択しておかないと、LTEの接続が切れてしまうというものだ。

APNの種類を「インターネットおよびアタッチ」にしないとLTE接続がうまくいかない

 VAIOオリジナルLTE通信データSIMのAPNの設定の説明を見ると、「インターネットおよびアタッチ」を選ぶように明記されているのだが、OCNモバイルONEのAPNの設定にはこのことが書かれていない。そのため、Windows 10が入っている第2世代VAIO SX14では一番上にあるので標準と思われる「インターネット」という設定を適用していた。

 ただ、Windows 11の第4世代VAIO SX14では、これが「インターネット」のままだとネットに繋がらなくなる。設定当初は繋がっていても、再起動したりすると途端にアンテナが拾えなくなる。タチが悪いのがこの「APNの種類」の設定は初期設定時にしか出てこず、以降は内容を編集しようとしても表示されない。

 この現象に遭遇して困ったため、VAIOオリジナルLTE通信データSIMを導入してみたわけだが、筆者が「インターネットおよびアタッチ」にするという部分の説明をしっかり見ていなかったため、結果は変わらずで、サポートに問い合わせるなど解決するまでかなり時間がかかってしまった。

 Windows 10では問題なく動いていたので、Windows 11の問題なのかもしれないが、ほかのメーカーのPCで試したわけでもないので原因はよく分からない。いずれにしても、LTE接続で同じような症状が発生している場合はその設定を確認してみると良い。いったんプロファイルを削除して、再度初期設定を行なえば解決するはずだ。

家・外・会社でも満足できるモバイルノート

 コロナ禍になり、在宅勤務が必然的に増えたが、週に何度か出社することもある。また、休日の外出時もほぼノートPCを持ち歩くようにしている。別に四六時中仕事をしているという社畜アピールではなく、こんな職業に就いているくらいなので、PCとともにいるのが日常なのだ。持ち歩いていてもまったく使わない時だってある。そんなだからモバイルノートは“邪魔にならない”のが重要と考えている。

自宅で外でとVAIO SX14はあらゆるシーンで万能だ

 VAIO SX14は昨今のモバイルノートとして特段軽いわけではないが、重量が1kg前後で十分軽量な部類に入る。公称の最小重量は約999gだが、LTEモデムを装備したりすると重量が上がる。そのため、筆者が購入したカスタマイズモデルだと実測で1,078gとなるが、ハイスペックかつLTE付きで1.1kg切りなら文句はない。

 もちろん、12.5型ワイドのVAIO SX12があるように、14型未満のさらに軽いモバイルノートを選ぶこともできる。しかし、14型という画面の大きさは視認性を考えると捨てがたいものだ。

 筆者の視力は良い方なので、12型クラスの画面でも裸眼で見づらいということはない。しかし、それでも長時間原稿を書いたり、文字を読んでいたりすると、画面が小さいほど目が疲れて文字が霞んでくる。

 14型の画面でテキストエディタに文字を表示させた場合、筆者の環境では1文字あたり縦横2×2mm程度のサイズで表示されており、エディタ上の文字の大きさや文字量を考えると、目とディスプレイの距離が40cmくらいまでなら支障がない。

 VAIO SX14は、14型サイズのディスプレイではあるが、フットプリントは以前販売していた13.3型ワイドのVAIO S13と同等サイズだ。幅は約32cmなので、喫茶店の小さなテーブルでも問題なく使える。また、電車に着席状態で両隣に人がいたとしても、中肉中背の自分の太股からはみ出ることはない。肘は意識して閉じる必要があるが、キーボードの入力ができなくなるということもない。家・外・会社の使用でちょうど良い塩梅を実現してくれるのが、14型で1kgちょうどくらいのモバイルノートというわけだ。

筐体は変わったが重量は変わらずの妙

 14型のライバル機を見ても大体1kg前後という重量が多いので、剛性という面でこのあたりがトレードオフの限界なのかもしれない。ただし、第4世代VAIO SX14は筐体が刷新されている。

 第4世代のVAIO SX14からは、フラグシップのVAIO Zで採用された曲げ技術を活用したカーボン天板が使われており、これまでのマグネシウムリチウム合金から軽量化しつつ、剛性を高めるという課題を達成している。それなのに重量は旧VAIO SX14の公称値と同じだ。なぜなのだろうか。

カーボンが使われている天板。うっすらと繊維が見えており、デザイン上のアクセントにもなっている

 実は第4世代VAIO SX14では、以下の写真にあるように、内部のクーラーといった冷却機構が大型化しており、その分重くなっているのだ。クーラーが大型化することで放熱性が高まり、Turbo Boost時の高クロック維持時間が延びるほか、あまりファンを回さずとも冷却でき、静音性を高めるとともに、バッテリの消費を抑えられるというメリットがある。

第4世代VAIO SX14の内部写真。左上にヒートパイプが3本のクーラーがあり、下の第3世代VAIO SX14よりも大きい
第3世代SX14の内部写真。クーラーのヒートパイプは1本のみだ

 しかしクーラーは金属の塊である。天板をカーボンにするだけでは相殺し切れない。そうなると第4世代VAIO SX14は、旧モデルよりも重くなってしまうのだ。モバイルノートが新モデルになって重くなりましたでは、ユーザーからの賛同は得られまい。

 そこでどうしたかというと、これまでと同じ強度を保てる範囲で内部の部品を軽量化するなどして、旧モデルと同重量を実現したのだ。

 クーラーの冷却能力を下げれば軽量化は簡単だが、VAIO SX14ではそうはしなかった。開発者の方に聞いたところ、やはりファンの回転数はかなりバッテリ駆動時間に影響を与えるという。新筐体が旧モデルと同じ重量なのは、強化しつつ実質減量を行なうという難しい調整を行なった結果なのである。

 第2世代のVAIO SX14はコロナ以前の平日出社が当たり前だった頃から家と会社の往復で毎日持ち歩いていたし、取材でも使っていた。バッグに入れているとは言え、強い衝撃や圧力がかかったことも当然ある。しかしフレームがゆがんだり、キーボードの動作がおかしくなったりということはまったく起きなかった。今回のVAIO SX14も同様の強度を実現しているのだから、タフさは折り紙付きと言えるだろう。

第4世代VAIO SX14を買って良かった点

 今回の第4世代VAIO SX14の詳細な性能などついては、発表当日に掲載した筆者のレビューがあるので、そちらをご覧いただきたい。

 ここでは本稿の締めとして、第4世代VAIO SX14を買って良かった点を挙げていきたい。多少上記のレビューと重複する箇所があるが、ご了承いただきたい。

Thunderbolt 4ポートを2基搭載

 VAIO SX14は筐体が刷新されたことで、インターフェイスは今時のものになった。第3世代までのVAIO SX14では古いプロジェクタくらいしか使い道がないミニD-Sub15ピン(アナログRGB)が付いていたし、USB PDには対応していたものの、独自の電源コネクタも依然として残されていた。正直これらは時代遅れ感が強く、デザイン的にも美しくなかったので、なくなったことは素直にうれしい。

第4世代VAIO SX14の右側面。Thunderbolt 4ポートが2基ある
左側面はUSB Type-Aとイヤフォンジャックのみ

 大きな注目点は、Thunderbolt 4(USB Type-C)ポートが2基搭載されていることだろう。いずれもUSB PDとDisplayPort機能に対応しており、USB PD対応のディスプレイを用意すれば、本体への充電と画面出力を同時に行なえる。USB Type-Aは3基から2基へと減ったが、たまにUSBメモリを挿すときくらいしか使っていなかったので問題ない。

 旧VAIO SX14では規格がThunderbolt 4ではなく、USB 3.1でなおかつポートも1基しかなかったので、ポートが増え、さらに転送速度の速いThunderbolt 4になったのは良いことだ。ただ、Thunderbolt 4は、本体の右側面にのみ実装されていて、ケーブルの取り回しの面では融通は利かない。

Type-C接続のモバイルディスプレイを繋いでみた例。Type-Cのケーブルはすべて右側から取る必要がある

 ただ、旧VAIO SX14で右側面のど真ん中にあったType-Cが、第4世代VAIO SX14では1基が奥(ディスプレイ側)に移動したので、使い勝手は断然良くなった。マウス操作の邪魔にならないからだ。

 右側面には2基のThunderbolt 4のほかに、HDMI、有線LAN、USB Type-Aポートがあり、かなり密集している。なぜこうなっているかというと、左側面に排気口があるからだ。このおかげでマウス操作時に右手にぬるい風があたるということがないのだが、個人的には次の筐体で左右にThunderbolt 4が置かれることに期待したい。

より操作性が増したキーボード周り

第4世代VAIO SX14のキーボード

 第2世代から第4世代のVAIO SX14に移行して、最初に違いを実感するところはどこかと言うとキーボードだ。旧VAIO SX14はキーを押し込んでもほとんど反発力を感じないが、新VAIO SX14だと反発力が強くなっていて、例えば「っ」を出す場合とか続けて同じキーを押すときなどに打ちやすい。また、スペースキーを押した時が顕著だが、押下時の音が少し静かになっている。

 さらにキーボード周りで言うと、これまで8×4.5cm(幅×奥行き、実測)しかなかったタッチパッドが11×6.2cm(同)になっており、カーソルを断然操作しやすくなった。喫茶店やファミレスでVAIO SX14を使う時は、ほぼ小型のマウスを出していたが、第4世代VAIO SX14に関して言えば、タッチパッドだけ使うことが増えたほどだ。

第4世代VAIO SX14のタッチパッド
こちらは第2世代のタッチパッド。明らかに小さい

 なお、VAIO SX14ではFn+F8~F12キーのいずれかのキーに任意のショートカットを割り当てることが可能だ。第4世代のVAIO SX14では、ディスプレイ部分が180度開くようになったのにともない、画面の上下反転機能も付いたので、対面の相手に画面を見せる時に役立ち、実際に筆者は打ち合わせの時に何度も利用している。画面を反転した際にはカーソルの操作もきちんと反転されるので、画面を見せながらアプリを操作するといったことが難なくできる。

ディスプレイは180度倒れるようになった。ショートカットで画面を反転させ、そのまま対面の相手に見せることもできる

2世代を経て性能は大幅向上。スリープ復帰は一瞬

 筆者の第2世代のVAIO SX14はComet LakeのCore i7-10710Uを、第4世代のVAIO SX14はTiger LakeのCore i7-1195G7を搭載しており、当然性能は上がっている。

 ただ、体感的にもっとも速くなったと分かるのは、スリープからの復帰速度だった。第4世代VAIO SX14はIntelが快適なPCと認定した製品にのみ与えられるEvoプラットフォーム認証を取得している。

Intel Evoプラットフォーム対応のVAIO SX14

 Evoプラットフォームの要諦の1つとして「スリープ状態からの1秒未満の復帰」が挙げられており、実際にVAIO SX14の天板を閉じた状態から開いた時に一瞬で画面が立ち上がる。ログイン画面が出るものの顔認証でこれまた一瞬に確認が終わるため、待ち時間はほとんどない。第2世代のVAIO SX14の場合はデスクトップ画面が出るまで、遅い時は5秒くらいかかっており、段違いの差を感じる。

 5秒くらい待つのはどうってことはないのだが、1秒以内での復帰というのは本当にスリープしていたのかと思うほどなので、インパクトが大きい。一端作業が終わって天板を閉じた後で、「あれをやるのを忘れてた」といった具合に再度開き直すということがたまにあるが、こういう時も一瞬なので作業の継続が非常にスムーズに感じる。

 第4世代と第2世代VAIO SX14のCPUやGPU、ストレージの性能の違いも以下のベンチマーク結果の通りで、OSはWindows 11と10で異なってはいるが、世代の有意差は明らかだろう。

 CPU性能を測るCinebench R23ではマルチコア性能で約1.7倍、シングルコアで約1.9倍。GPU性能を測るファイナルファンタジーXIVでは約3.4倍で、第4世代VAIO SX14の方は「やや快適」という結果だったのに対し、第2世代VAIO SX14は「設定変更を推奨」で十分にプレイができないという結果が出た。ストレージについてもシーケンシャルのリード/ライトで約1.9倍の差が出ている。

Cinebench R23
ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク
CrystalDiskMark。左が第4世代VAIO SX14。右は第2世代VAIO SX14

 はっきり言って記事を書くのにこの性能差を感じることはない。大きなファイルの解凍などすれば体感できるはずだが、いずれにしても長く使うことを考えれば、性能的な余力があることはメリットでしかない。

 速度といった快適度を測るものとしては、どちらかと言えば無線LANがWi-Fi 5からWi-Fi 6になったことの方が大きいかもしれない。メールはGoogle WorkspaceのGmailを使っているが、大量の不要なメールを削除していく時に、明らかに第4世代VAIO SX14の方が表示が速いのだ。

 200通メールが溜まっている時など、流れ作業で仕分けしていくわけだが、第2世代VAIO SX14の方は今となってはメール表示がつっかかるように感じてしまうので、処理時の効率が上がったことは明らかだ。

 また、バッテリ容量が34Whから53Whへと約1.5倍増えているのも大きい。第2世代VAIO SX14の方は1年以上使っているので、バッテリの劣化はしているだろうが、コンセントがない場所で1日作業する時に、モバイルバッテリを用意しないと持たないような状況が、第4世代VAIO SX14ではそうなりにくくなっている。


 このほかにも、第4世代VAIO SX14ではAIノイズキャンセリング機能が追加されるといった使い勝手に関わる改良が行なわれている。AIノイズキャンセリング機能を使えば、Web会議の際に室内の家族の声や雑音を大きく抑制できるので、効果は大きい。

 スピーカー出力に対しても、AIノイズキャンセリング機能を適用できるが、ボーカル以外の音をノイズと判断して音量を下げ、本来の音楽・音声として再生できない場合があるので、頻繁に切り替えたい場合は「VAIOの設定」のユーティリティからショートカットキーを設定しておくと良い。

カメラの左右にノイズキャンセリング対応マイクが付いている

 第4世代VAIO SX14はまだ使用してから3カ月も経っていないが、引き続きのVAIO SX14ということで、違和感なく移行できた。これまで欲しかったという機能が実装され、改善も進み、疑いなく完成度は高まっている。

 冒頭で述べた通り、VAIOの製品は少し割高感がある。しかし、国内に工場があることも踏まえ、その分サポート体制は充実しており対応も速い。サポートページにて各種アップデートファイルが提供されており、Webカメラの明るさを調整するファームウェアなど、日々細かい部分の改善も行なわれていることが分かる。

 もちろん、価格を優先するか、後の安心のためにコストをかけるかは人それぞれだ。ただ、少なくとも2台続けてVAIOのノートPCを購入した筆者としては、VAIOは誰にでもすすめられるメーカーと言える。ビジネスノートを真剣に作る日本のVAIOが、一体どれほどの出来のノートPCを提供しているのか、興味を持った方は是非その目で確かめてみてもらいたい。