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知っておきたいUSB PDの基礎。モバイルバッテリと充電器、ノートPCを充電するなら出力何Wものを用意すべきか?

結局何を選ぶべきなのか?

 得られた結果を総括して分かることは、USB PD対応のACアダプタはPC用には60W、スマホ用には30Wあるとひとまずは安心だということだ。

 大は小を兼ねるので、60W用のものがあれば、PC/スマホ両用アダプタとしてまず安心していられる。充電用に使うケーブルを気にする必要もない。両端Type-Cプラグのケーブルは必ず60W伝送ができるからだ。

 もっともゲーミングPCや高性能MacBook Proなどの高性能PCは消費電力も大きいので、さらに大きな電力に対応したアダプタが必要かもしれない。電力の供給ができても、処理によっては充電量より消費量のほうが大きくなって、結果的にバッテリが減っていくことになりかねないからだ。もちろん大電力の伝送には対応ケーブルも必要だ。

 大容量のアダプタは大きく重い。自宅やオフィス、出張先などで落ち着いた場所で使うなら大容量のアダプタを使えばいいが、毎日携行し、バッテリがピンチのときに急場をしのぐ非常用として、コンパクトなアダプタを併用するのも悪くない。

 その場合は、30W程度の能力があればPCにもそれなりの充電ができる。PCの使い方にもよるが、アイドル時間を考慮すればバッテリの消費を抑えるのには十分だし、宿泊を伴う出張などでも、スリープ状態のPCを就寝時に充電し、翌朝には満充電という使い方ができる。

 30Wというのは2024年時点のモバイルノートとスマホの双方にうまく対応できるスイートスポットだ。以前は20W前後対応のACアダプタが多かったが、今は最新のiPhoneを含め、多くのスマホ、タブレットなどが30W対応するようになって、急速充電のことを考えると能力的に少し物足りない。スマホは出先でこそ短時間でできるだけ多くの容量を充電したいからだ。

 45W、60W超のアダプタは、あれば重宝するかもしれないがモビリティが損なわれることを覚悟しなければならない。というよりも、どこまで我慢できるかだ。こういう悩み方ができることに汎用化の幸せを感じる。

 なお、30Wアダプタは今、極端にコンパクトになってきていて、かつての20W製品とさほど変わらないモビリティを確保できている。そこが魅力の1つだ。

 モバイルバッテリについても同様で、USB PD 30W超に対応するものがあればPCにもスマホにも使えて便利だ。壁などのコンセントに直結して無制限に電力が得られるACアダプタとは異なり、モバイルバッテリはその容量が尽きてしまえば電力供給が止まる。容量は大きいほうがいいのは分かっているが、大きな容量のバッテリはサイズも大きくかさばるし、加えて重い。

 各社の回答を見ると、PCに内蔵されているバッテリの容量は50~60Wh程度のものが多い。それを考えると、空の状態からフル充電まで回復させるには、充電時に熱として逃げてしまう損失まで考慮すれば70Wh程度のモバイルバッテリが必要だ。でも、半分程度の復活でよしとするなら30Whでも役に立つ。そこをどう判断するかだ。

 出力電力量を表わすWと容量を表わすWhを混同しないようにしてほしい。WhのhはHourのhで時間を示す。USB PD 30W出力ができる容量30Whのバッテリは、30Wの電力を1時間継続的に出力する能力があることを意味する。

 ここで言っているのは能力としてUSB PD 30W出力ができる30Wh程度の容量のバッテリがあれば軽くてコンパクトで重宝するだろうということだ。

 倍の容量を確保しようとすると、重量やサイズも倍程度になってしまうから可搬性が損なわれる。そうは言っても30Wh製品が200g前後で、倍容量でも400gに満たないなら安心料としては十分なモビリティが確保できているという判断もありだろう。

 また、大きな容量のモバイルバッテリはUSB PD 60Wなどといった大きな出力ができることも多く、充電時間の短縮に貢献する。もちろん充電が速いということは空になるのが速いということでもある。

 大きな電力を出力できても、シンクになって電力を受け取るときには30W程度しか受け入れないことも多い。熱でバッテリが劣化することを回避するためだと思われる。

 いずれにしても、自分自身の各種デバイスの使い方、そして日常的な移動の方法や携行する荷物、各種デバイスを使った仕事、暮らしのスタイルなどの状況を整理し、場合によってはオフィスと自宅といった拠点に常備して持ち運ばないとか、あるいは装備を絞り、抑制するような判断も含めて製品を選ぼう。

 特定の機器専用ではなく、スマホもPCも、ガジェットもすべてに使える汎用規格だからこその運用だ。それこそが、USB PD準拠の製品が果たそうとしているユニバーサルな製品群の魅力だと言える。