Hothotレビュー
レインボーに光る天板が美しい。Ryzen 9 8945HSを搭載する高性能ミニPC「NucBox K11」
2025年1月21日 06:13
最近、矢継ぎ早に新製品を投入しているGMKtek。Amazon.co.jpや楽天などの通販サイトで金額の大きな値引きクーポンを配布していることが多く、他社のミニPCと比べるとかなり安く購入できることも多い。
今回紹介するのは、「Ryzen 9 8945HS」を搭載する高性能なミニPC「NucBox K11」だ。ミニPCとしてはめずらしくLED装備のファンを装備しており、天板がレインボーに光る。内蔵GPUの性能が高いCPUを搭載して総合性能に優れるにもかかわらず、他社の同グレードCPUを搭載するミニPCと比べるとかなり安く購入できることに注目したい。
Ryzen 9シリーズを搭載しながら10万円を切ることもある
NucBox K11が搭載するRyzen 9 8945HSは、最新の「Ryzen AI 300」シリーズと比べると一つ世代が古い「Ryzen 8000」シリーズに属する。とはいえブランドネームはもっとも高性能なRyzen 9シリーズ、CPUコア部分は8コア16スレッドのZen 4、GPUコア部分はAMD Radeon 780Mと、ミニPCのカテゴリで性能を比較する場合は現状でも上位に位置する存在だ。こうした高性能なミニPCなのに、前述の通販サイトでは10万円を切る価格で購入できることも多い。
まずは外観上の特徴であるLEDファンを見ていこう。NucBox K11では底面側にCPU用冷却のファンとヒートシンク、そして天板側にメモリやSSDを冷却するためのファンを装備する。LEDが組み込まれているのは天板側のファンで、スモークのかかったアクリル製の天板越しにファンの動作状況とイルミネーションを楽しめる。一般的なPCだとこうしたギミックはよく見かけるが、ミニPCだとまだめずらしい。
LEDがキレイということもあるが、冷却用のファンがきちんと動作しているかどうかが目で見て分かるというのもメリットの一つだ。ただ検証機だからということはあるのかもしれないが、UEFIやユーティリティからLEDファンの光を変更したり、切ったりすることはできないようだった。CPU温度を参照してファンの回転数を制御する機能はサポートしている。
ファンの回転が止まった状態だと、7色の光が半透明な羽根に照射されているだけの状態であり、あまりキレイには見えない。そういった見た目の問題を考えると、個人的にはファンが回転している状態のほうが好みではある。
サイズ感や全体的なデザインは、今まで本サイトで紹介してきたGMKtekのミニPCをほぼ踏襲している作りだ。アクリルの天板は、45度左に回転させることでロックが解除され、簡単に外せる。また前面には自作PC用のビデオカードを接続できるOCuLinkを備えており、グラフィックス描画性能を強化しやすい。このへんのギミックも最近のGMKtek製ミニPCでは共通だ。
ただ背面に装備する2基のUSBポートはどちらもUSB 2.0対応であり、高速なUSBハブを利用したい場合はちょっと使いにくく感じる場面もある。さすがにこのクラスのCPUを搭載するのだから、すべてUSB 3.2 Gen 2対応ポートで固めるくらいでよいとは思うのだが。
フレーム生成機能を有効活用して最新PCゲームをプレイ
実際にいくつかのベンチマークテストを実行した結果を、下記のグラフにまとめた。比較対象は、CPUにIntelの「Core Ultra 9 185H」を搭載したMINISFORUMの「AtomMan X7 Ti」。ミニPCに搭載されるIntel製のノートPC向けCPUとしては性能が高いモデルの一つであり、性能を判断する場合の目安になるだろう。
メーカー | GMKtek |
---|---|
製品名 | NucBox K11 |
OS | Windows 11 Pro |
CPU(最大動作クロック) | Ryzen 9 8945HS(8コア16スレッド) |
搭載メモリ(空きスロット、最大容量) | DDR5 SODIMM PC5-44800 16GB 2基(なし、96GB) |
ストレージ(インターフェイス) | 1TB(PCI Express 4.0) |
拡張ベイ | PCI Express 4.0対応M.2スロット 1基 |
通信機能 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2 |
主なインターフェイス | 2.5GbE 2基、DisplayPort 1基、HDMI 1基、USB 4 2基、USB 3.2 Gen 2 2基、USB 2.0 2基、Oculink 1基 |
本体サイズ(実測値) | 125×132×63mm |
重量(実測値) | 625g |
実売価格 | 98,000円前後(値引きクーポン適用) |
主に軽作業中心の基本性能をScoreで比較できる「PCMark 10」は、大きなスコア差はないものの全体的にNucBox K11が優れているという結果になった。3Dグラフィックス性能を比較できる「3DMark」の結果を見ると、DirectX 12ベースのTime SpyではAtomMan X7 Ti、DirectX 11ベースのFire Strikeと、より軽量なNight RaidではNucBox K11が勝つ。ただこちらもスコアの差は小さく、互角と言ってよいだろう。
PCゲームの適性を検証するため、いくつか実際のPCゲームを利用するベンチマークテストも試した。さすがにWQHD(2,560×1,440ドット)や3,840×2,160ドットは厳しいと思われたので、解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)に設定し、CPU内蔵GPUでプレイする状況を想定したグラフィックス設定で、ゲーム内ベンチマークテストを実行した結果が下記のグラフだ。
「ファイナルファンタジーXIV:黄金のレガシー ベンチマーク」では[高品質(デスクトップPC)]の評価が[普通]で、[標準品質(デスクトップPC)]の評価は[やや快適]だった。標準品質時でも平均フレームレートは約48fpsと60fpsには届かないのだが、このくらいの設定であれば描画がコマ落ちで違和感を感じるほどではなかった。
「サイバーパンク2077」ではグラフィックス設定として[低]と[レイトレーシング:低]で試したところ、低ならそれなりにプレイできそうだ。レイトレーシング:低はさすがにまだ厳しいのだが、フレーム生成機能を有効にすることで一気にプレイ感覚は改善する。
レーシングゲームの「F1 24」も、比較的グラフィックスの負荷が高く、フレーム補完機能にも対応するタイトルの一つである。グラフィックス設定の[詳細プリセット]を[高]と[低]にしてベンチマークモードを実行したところ、低なら平均FPSが100を超えるほか、高でもフレーム生成機能を有効にすれば平均FPSは76まであがり、描画の違和感は低下する。
サイバーパンク2077やF1 24は比較的新しく、そしてグラフィックス描画の負荷も高めのタイトルだ。しかしRyzen 9 8945HSを搭載する本機のようなミニPCであれば、設定しだいではあるがきちんと遊べてしまうことに驚く。前面に装備するOCuLinkを利用してビデオカードを接続すれば、さらに可能性は広がる。
またこのCPUではAI処理向けに最大16TOPSの独立したNPU(Neuron Processor Unit)を搭載するほか、CPUとGPUのAI処理性能を合わせれば最大39TOPSにも達すると言う。現状でははっきりとしたメリットは少ないものの、今後Windows 11側での対応が進めば、PCをさらに快適に利用する要件として重要になることは間違いない。
内部へのアクセスは容易、省エネでCPU温度も低い
天板のアクリルパネルと冷却ファンを装備する内部プレートを外すと、内部にアクセスできる。ツメでロックされていたり、細いケーブルを外したりする必要はないので、作業は簡単だ。冷却ファンと基板は細いケーブルで接続されているが、内部プレートを外す際に無理に力を入れる必要はないので、断線させたり外れてしまうようなことはまずない。
接続するケーブルを基板上には2基のDDR5 SO-DIMMメモリスロット(組み込み済み)と、同じく2基のM.2 SSD用のM.2スロット(1基はシステム用SSDが組み込み済み)を装備する。OCuLinkを装備する一部のミニPCでは、M.2 SSDスロットをこのOCuLinkが利用するため、ビデオカードと追加のM.2 SSDで排他利用ということもあるのだが、本機では普通にM.2 SSDを追加できる。
最後に消費電力とCPU温度の状況を紹介しよう。アイドル時は起動後10分間、そして動画再生時は動画配信サイトで1時間の動画を再生しているときの平均的な数値だ。3DMark時は「3DMark」の「Stress Test(Time Spy)」、Cinebench時はCinebench R23実行時の最高値である。
CPU温度は高負荷時でも80℃前後であり、安心して利用できるだろう。また消費電力も80W前後と、今まで検証してきた高性能なミニPCと比べても低めな数値であることを考えると、高性能ながら省エネなミニPCと言ってよいだろう。
このように総じて扱いやすくてメンテナンスがしやすく、基本性能や拡張性にも優れていることもあり、総合的な満足度はかなり高い。また冒頭でも紹介したとおり、キャンペーンや値引きクーポンを利用すれば10万円を切る価格で購入できることもめずらしくない。他社のRyzen 9 8945HS搭載ミニPCと比べてもかなり安く、その意味でもオススメの1台と言ってよいだろう。