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モバイルバッテリの正解はどれだ?ノートPC向けに便利そうな5モデルを使い比べてみた

 昨今のノートPCはバッテリ駆動時間が長くなっているし、喫茶店や交通機関といった外出先でコンセントを利用できる場所が多くなった。しかし動画の書き出しや3Dゲームなどで高い負荷がかかればバッテリ駆動時間はカタログスペックよりも大幅に短くなる。コンセントの数も限られているので争奪戦に敗れることもある。どんな時でもノートPCを使いたいのであれば、モバイルバッテリを1つは携帯しておきたいところだ。

 そこで今回はノートPC用の売れ筋モバイルバッテリを5製品揃えて、実機レビューをお届けする。

 ノートPCで使用することが必須条件なので、USB PD 65W以上に対応する製品を選択(内1台は充電器として65W対応)。USB PD対応モバイルバッテリの中には、20~40Wぐらいで軽くて携帯性に優れるものも存在するが、高負荷動作中のノートPCを充電できない可能性があるので除外している。

 スペック、携帯性、使い勝手を把握し、最適な1台をぜひ選んでほしい。

【ノートPC用モバイルバッテリ5製品を動画でも比較!】
本記事で紹介しているモバイルバッテリ5製品を動画でも解説しています。実際のサイズ感や挙動などをぜひチェックしてみてください

Anker 733 Power Bank

Anker 733 Power Bank
価格:1万4,990円●容量:10,000mAh●最大出力:65W(充電器時)/30W(バッテリ時)●インターフェイス:Type-C×2、Type-A×1●サイズ:約111×63×31mm●重量:約320g

 USB PD対応の10,000mAhモバイルバッテリで、電源プラグを装備しており、コンセントに挿してすぐに充電可能。容量は10,000mAhと今回紹介している中では少なめだが、そのぶん携帯性に優れている。

 4段階のバッテリインジケーターでは、25%、50%、75%、100%刻みでバッテリ残量を確認できる。

 なお、充電器としては65Wに対応するが、モバイルバッテリとしては30Wまでとなるので、PC向けで使うにはやや運用難なところも。とは言え、充電器としての機能も備え、外出時の荷物を減らせるのは大きなメリットだ。

前面(左)と背面(右)
右側面(左)と左側面(右)。接続端子はUSB Type-C×2(充電器としては最大65W、モバイルバッテリとしては最大30W)、USB Type-A×1(最大22.5W)を装備
上面(上)と下面(下)
バッテリインジケーターは4段階(25%/50%/75%/100%)
パッケージには本体、USB-Cケーブル(実測60cm)、専用ポーチ、説明書が同梱
サイズは約111×63×31mm
実測重量は322.5g

Anker 737 Power Bank

Anker 733 Power Bank
価格:1万9,990円●容量:24,000mAh●最大出力:140W●インターフェイス:Type-C×2、Type-A×1●サイズ:約156×55×49mm●重量:約632g

 大容量24,000mAhを内蔵したUSB PD対応モバイルバッテリ。MacBook Proなら約1回、iPhone 14なら5回以上充電可能と謳われている。最大で140Wの高出力に対応しており、急速充電が可能だ。付属するUSB-Cケーブルはもちろん140Wに対応している。

 また、前面にはカラーディスプレイが装備されており、バッテリ残量、バッテリ残量(時間単位)、リアルタイムの出力が表示される。

 サイズは眼鏡ケースを少し厚くしたぐらい。バッグのドリンクホルダーなど、スムーズに出し入れ可能だ。

前面(左)と背面(右)
右側面(左)と左側面(右)
上面(左)と下面(下)。接続端子はUSB Type-C×2(最大140W)、USB Type-A×1(最大18W)を装備
前面にはディスプレイが搭載されており、バッテリ残量、バッテリ残量(時間単位)、リアルタイムの出力が表示される
パッケージには本体、USB-Cケーブル(実測60cm)、専用ポーチ、説明書が同梱
サイズは約156×55×49mm
実測重量は624g

Anker 537 Power Bank

Anker 537 Power Bank
価格:1万1,490円●容量:24,000mAh●最大出力:65W●インターフェイス:Type-C×2、Type-A×1●サイズ:約160×85×27mm●重量:約500g

 24,000mAh搭載の大容量USB PD対応モバイルバッテリ。iPhone 14なら5回以上、MacBook Proなら約1回充電できる。発売は2022年12月と少し前だが、大容量モデルとしては1万1,490円という手頃な価格が魅力だ。

 バッテリインジケーターは4段階(25%/50%/75%/100%)で、ボタンは1つのみ。機能は限定されているが、そのぶんシンプルなので使い方は分かりやすい。接続端子はUSB Type-C×2、USB Type-A×1が装備されており、モバイルバッテリ本来の使い勝手は上位モデルと遜色ない。

前面(左)と背面(右)
右側面(左)と左側面(右)。接続端子はUSB Type-C×2(最大65W)、USB Type-A×1(最大22.5W)を装備
上面(上)と下面(下)
バッテリインジケーターは4段階(25%/50%/75%/100%)
パッケージには本体、USB-Cケーブル(実測60cm)、専用ポーチ、説明書が同梱
サイズは約160×85×27mm
実測重量は498g

CIO SMARTCOBY TRIO 20000mAh 65W

CIO SMARTCOBY TRIO 20000mAh 65W
価格:8,980円●容量:20,000mAh●最大出力:67W●インターフェイス:Type-C×2、Type-A×1●サイズ:約95×69×29.5mm●重量:約333g

 20,000mAhの大容量と、カードサイズより一回り大きなコンパクトボディを実現したUSB PD対応モバイルバッテリ。サイズは約95×69×29.5mm、重量は約333g。重みはそれなりにあるが、スマホと重ね持ちも可能なサイズ感が魅力だ。

 小さくても接続端子はUSB Type-C×2、USB Type-A×1が装備され、バッテリ残量をパーセント表示可能なLEDも用意されている。カラーはブラックとホワイトが用意され、好みのモデルを選択できる。8,980円という手頃な価格もうれしいところだ。

前面(左)と背面(右)。カラーはブラックとホワイトの2色を用意
右側面(左)と左側面(右)。接続端子はUSB Type-C×2(最大67W)、USB Type-A×1(最大12W)を装備
上面(上)と下面(下)
右側面のLEDにはバッテリ残量がパーセントで表示される。また急速充電、急速蓄電時には稲妻マークが点灯する
パッケージには本体、USB-Cケーブル(実測50cm)、説明書が同梱
サイズは約95×69×29.5mm
実測重量は337g

サンワサプライ BTL-RDC31

サンワサプライ BTL-RDC31
実売価格:1万6,200円●容量:25,000mAh●最大出力:100W●インターフェイス:Type-C×2、Type-A×1●サイズ:約72×72×105mm●重量:約530g

 今回の5製品の中で最大容量の25,000mAhを内蔵するUSB PD対応モバイルバッテリ。最大出力は100WとAnker 737 Power Bankに次ぐスペックだ。

 円筒形のデザインは独特だが、直径は600mlのペットボトルとほぼ同じなのでバッグの中での収まりはいい。ドリンクホルダーにも収納、装着できる。

 モバイルバッテリとしては珍しくベルトが装備されており、ほかの荷物を持ちながらでも小指などに引っかけて運びやすい。接続端子、バッテリ残量表示、ボタンが上面に集中しており使い勝手は良好だ。

前面(左)と背面(右)
右側面(左)と左側面(右)
上面(上)と下面(下)。接続端子はUSB Type-C×2(最大100W)、USB Type-A×1(最大18W)を装備
右側面のLEDにはバッテリ残量がパーセントで表示される
パッケージには本体、USB-Cケーブル(実測100cm)、ケーブルバンド、説明書が同梱
サイズは約72×72×105mm
実測重量は536.5g
Anker 733 Power BankAnker 737 Power BankAnker 537 Power BankCIO SMARTCOBY TRIO 20000mAh 65Wサンワサプライ BTL-RDC31
バッテリ容量10,000mAh24,000mAh24,000mAh20,000mAh25,000mAh
USBポート数33333
複数同時充電3台3台3台3台3台
充電時間非公表実測1時間22分3.5時間1時間40分3時間
接続端子USB Type-C×2(充電器としては最大65W、モバイルバッテリとしては最大30W)、USB Type-A×1(最大22.5W)USB Type-C×2(最大140W)、USB Type-A×1(最大18W)USB Type-C×2(最大65W)、USB Type-A×1(最大22.5W)USB Type-C×2(最大67W)、USB Type-A×1(最大12W)USB Type-C×2(最大100W)、USB Type-A×1(最大18W)
USB PDUSB PDUSB PDUSB PDUSB PDUSB PD
サイズ約111×63×31mm約156×55×49mm約160×85×27mm約95×69×29.5mm約72×72×105mm
重量約320g約632g約500g約333g約530g
充電回数iPhone 14は約2回、iPad miniは約1回iPhone 14は5回以上、MacBook Proは約1回iPhone 14は5回以上、MacBook Proは約1回iPhone 15は約3.5回、Galaxy S23は約3回、11インチiPad Proは約1.5回、MacBook Airは約0.8回非公表
カラーブラック、ホワイト、ゴールドブラックブラックブラック、ホワイトブラック
価格1万4,990円1万9,990円1万1,490円8,980円1万6,200円

各モバイルバッテリがスペック通りに充電できるかチェック

 まずはスペック通りのUSB PD充電が可能かどうか試してみよう。充電先は「ASUS Zenbook DUO UX8406MA (UX8406MA-U9321WS)」。75Whのリチウムポリマーバッテリを内蔵する。このマシンをいったんバッテリ残量約5%まで減らしてから、240W対応USB-Cケーブル「U2C-CCPE10NBK」と電源テスター「アイネックス KM-08」経由で、今回のモバイルバッテリ5製品を接続してみた。結果は下記の通りだ。

Zenbook DUO UX8406MAに接続
V(ボルト)A(アンペア)W(ワット)
Anker 733 Power Bank19.821.3927.56
Anker 737 Power Bank19.743.0459.97
Anker 537 Power Bank19.713.0460
CIO SMARTCOBY TRIO 20000mAh 65W19.643.0559.88
サンワサプライ BTL-RDC3119.683.0559.98

 出力はAnker 733 Power Bankのみ27.56Wで、ほかの4機種は60W前後と誤差程度の差しかない。30W ACアダプタが付属するノートPCであればAnker 733 Power Bank、65W ACアダプタが同梱されるノートPCであればほかの4機種がおすすめだ。

Anker 733 Power Bank
Anker 737 Power Bank
Anker 537 Power Bank
CIO SMARTCOBY TRIO 20000mAh 65W
サンワサプライ BTL-RDC31

 次は「Apple M2 Max」を搭載する「MacBook Pro (16インチ, 2023)」で同じテストを実施したところ、下記のような結果となった。Anker 733 Power Bank、Anker 537 Power Bank、CIO SMARTCOBY TRIO 20000mAh 65WはZenbook DUO接続時とほぼ同じ。

 一方、Anker 737 Power Bankとサンワサプライ BTL-RDC31は88W前後の出力を確認できた。今回はテスト環境の都合でここまでとなるが、140W出力対応のAnker 737 Power Bankは対応ノートPCであればさらに高出力を発揮できるはずだ。

MacBook Pro (16インチ, 2023)に接続
V(ボルト)A(アンペア)W(ワット)
Anker 733 Power Bank19.821.3727.09
Anker 737 Power Bank19.544.587.93
Anker 537 Power Bank19.693.1161.18
CIO SMARTCOBY TRIO 20000mAh 65W19.623.2363.29
サンワサプライ BTL-RDC3119.624.5288.75
Anker 733 Power Bank
Anker 737 Power Bank
Anker 537 Power Bank
CIO SMARTCOBY TRIO 20000mAh 65W
サンワサプライ BTL-RDC31

Anker 737 Power BankはZenbook DUOをフル充電できるか?

 今度はもっともスペックの高いAnker 737 Power Bankで、Zenbook DUOをどのぐらいの時間で、どこまで充電できるかテストしてみた。

 結果は下記の通り。1時間11分39秒で充電容量73%まで充電できたが、その時点でAnker 737 Power Bank(24,000mAh)のバッテリ残量は0%になってしまった。充電終了直前の出力は59.56Wで、充電容量73%までは充電速度は変わらないことになる。また、Zenbook DUOのバッテリ容量は75Wh。50Whのバッテリを内蔵するノートPCであれば、Anker 737 Power Bank 1本でフル充電できるはずだ。

Zenbook DUOを73%まで充電した時点でAnker 737 Power Bankのバッテリ残量は0%になってしまった
充電終了直前の出力は59.56W。「BBench」のグラフを見てみると、充電速度が一定であることが分かる。つまり出力も変わらなかったわけだ

充電時の発熱は最高で56.1℃

 高性能モバイルバッテリで不安なのは発熱。今回は室温27℃前後の部屋で、各モバイルバッテリで10分間充電した後に、もっとも表面温度が高い箇所で比較してみた(端子は除く)。

 結果は下記の通り。もっとも表面温度が低かったのがAnker 737 Power Bankで35.7℃。もっとも高かったのがCIO SMARTCOBY TRIO 20000mAh 65Wで56.1℃だ。ボディが小さければ、やはりそのぶんだけ放熱において不利になるわけだ。

Anker 733 Power Bank
Anker 737 Power Bank
Anker 537 Power Bank
CIO SMARTCOBY TRIO 20000mAh 65W
サンワサプライ BTL-RDC31

バッテリ容量、USB PD出力、サイズ/重量が重視すべきスペック

 今回5製品の実機テストをしてみたが、出力という点ではスペック通りの性能を確認できた。端子構成もUSB Type-C×2、USB Type-A×1と同じ。安全機能や保護機能は今回比較できなかったので、購入する製品を選ぶ際にはバッテリ容量とUSB PD出力、そしてサイズ/重量が判断材料ということになる。

 たとえば筆者自身は、100~140W以上の出力は必要ない。となると容量と価格を考えれば、Anker 537 Power Bankが最適な1台となる。一方、使い勝手を重視するならスマートディスプレイを搭載するAnker 737 Power Bank、携帯性が絶対条件ならCIO SMARTCOBY TRIO 20000mAh 65Wがおすすめだ。

 高出力、大容量なモバイルバッテリはスマホ用と比べると高価だ。重要視するスペックを吟味して、最適な1台を選んでほしい。