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【定番動画編集ソフト入門】これだけ読めば基礎が身につくAdobe Premiere Pro

 動画編集ソフトと聞くと小難しそうと感じる方がいるかもしれない。あるいは、動画編集ソフトを使ってみたが、想定していた仕上がりを実現できなくて悩んでいる方もいることだろう。しかし、ちょっとした基本テクニックさえ覚えれば、動画の仕上がりは向上させられる。今回から、定番動画編集アプリでの動画編集の基本操作を解説していく。これだけ読めば、動画の基本である、カット編集、BGM挿入、テロップ入れの操作が分かるようになる。皆さんもぜひ動画作りに挑戦してみてほしい。

 第1回目の今回は定番中の定番である「Adobe Premiere Pro 2022」。プロも使っている本格ビデオ編集アプリだが、その分、機能は充実。また利用するときだけサブスクリプションを契約すれば、1カ月で2,728円とランニングコストを抑えられる。決してプロだけのツールではないのだ。それではPremiereでの動画編集をステップごとに解説していこう。

アプリに撮影動画を読み込み、タイムラインに配置する

 まずはスマホやカメラで撮影した動画ファイルを、パソコン上の任意のフォルダーにコピーする。動画ファイルはどこに保存してもいいが、今回はビデオフォルダ内に「20220911霧降の滝」というフォルダーを作成し、そのなかにすべてコピーした。すべての素材と、Premiereで作成した「プロジェクトファイル」は同じフォルダーに保存しておいたほうが管理しやすい。後に別のストレージにコピーしても、プロジェクトファイルとその他ファイルの位置関係が変わらないからだ。

ビデオフォルダ内に「20220911霧降の滝」というフォルダーを作成。筆者はフォルダー名の頭に日付を入れているが、ご自身で管理しやすい名前を付けてもオーケーだ

 つぎに「新規プロジェクト」または「プロジェクトを新規作成」のどちらかのボタンをクリックする。押すのはどちらでも構わない。

このスタート画面からはチュートリアルを起動可能。チュートリアルをチェックしたい時は「最初のチュートリアルを開始」ボタンをクリックしよう

 つぎにやることは3つ。「プロジェクト名」を付けて、「プロジェクトの保存先」を指定して、タイムラインに読み込む動画を選択する。後からでもタイムラインに読み込む動画を指定できるが、基本的な流れとして覚えておいてほしい。

プロジェクト名はデフォルトで「名称未設定」となっている。判別しやすいプロジェクト名を付けておこう。今回は「霧降の滝」に変更した
プロジェクトの保存先はデフォルトで「C:Users●●●●●DocumentsAdobePremiere Pro22.0」となっている。先ほど作成した「C:Users●●●●●Videos20220911霧降の滝」に変更しよう
「ムービー」→「20220911霧降の滝」とクリックすると、そのなかの動画のサムネイルが一覧表示されるので、全ての動画を範囲選択する。最後に右下の「作成」をクリックしよう

 ここまでの手順どおりにプロジェクトを作成したら、下記の画面のように選択した動画がすべてタイムラインに配置されているはずだ。早速、動画編集の本番に入りたいところだが、左端の「学習」パネルが邪魔だ。メニューから「ウィンドウ」→「ワークスペース」→「学習」と進んで、いったん消しておこう。

先の手順でプロジェクトを作成したら、タイムラインに全ての動画が配置されている
「学習」パネルが邪魔なので、「学習」の横のメニューから「パネルを閉じる」を選択する
「学習」パネルを閉じることでほかのスペースが広くなり、動画編集時の前後の見通しがよくなる

@@mark|02|撮影した動画から不要なところをカットする

 動画編集の最初の工程で、かつ最も重要な作業が、撮影した動画から不要なシーンをカットすること。この作業は右下の「タイムラインパネル」で行なう。やり方はいろいろあるが、今回は「レーザーツール」と「リップル削除」を使う方法を解説していこう。

 「レーザーツール」はトラック上に配置されたクリップ(動画)をカットする機能。「リップル削除」はトラック上のクリップを削除した際に、その後のクリップを前に詰める機能だ。手動で後のクリップを前にずらす必要がなくなるので、効率的に動画編集できる。

右上の「プログラムパネル」で「再生」ボタンを押して、クリップを再生する
クリップを再生して不要な箇所を見極めたら、その両端をレーザーツールでカットする
カットする箇所を選択しにくいときは、タイムラインパネル下部の「スクロールバー」の端(●印)をつかみ、左右にスライドさせよう。そうするとトラックを横方向に拡大・縮小できる
不要なクリップの上で右クリックすると表示されるメニューから、「リップル削除」を実行する
すると該当クリップが削除され、そのうしろのクリップがすべて前に詰められる
以上の作業を繰り返し、トラック上の全てのクリップから不要な箇所を削除していこう。不要な箇所を排除するほど、テンポのいい動画となる

動画と動画を馴染ませるためにトランジション効果を入れる

 クリップの不要な箇所をカットしただけだと、クリップ同士の切り替わりが唐突になることもある。そこで一手間加えて、トランジション効果を入れてみよう。トランジションはクリップとクリップをつなげる際の手法で、さまざまなものが用意されている。自然なつながりを優先させるなら「クロスディゾルブ」がお勧めだ。

メニューから「ウィンドウ」→「エフェクト」と選択し、「エフェクト」パネルを表示する
左下に「エフェクト」パネルが表示されたら、「ビデオトランジション」→「ディゾルブ」と進み「クロスディゾルブ」を選択する
「クロスディゾルブ」の項目をドラッグして、クリップとクリップの間にドロップする
クリップ間にマウスカーソルを重ねれば、なんのトランジションが適用されているのか確認可能。これで設定完了だ。今回は全てのクリップとクリップの間に「クロスディゾルブ」を設定していくが、気にならない箇所には無理に入れる必要はない

注目させたい場所、説明が必要な場所にテロップを入れる

 さらに完成度を高めるために、注目させたい場所、説明が必要な場所にテロップを入れていこう。Premiereではタイムラインパネルの左にある「横書き文字ツール」からテロップを入れることが可能だ。フォント、サイズ、塗り、境界線などを指定する必要があるが、一度作成すればそのテロップをコピー&ペーストして、テキストのみを変更できる。最近のYouTubeなどではすべてのセリフにテロップを入れる方も多いが、今回は必要最低限の数ヵ所に設定していこう。

タイムラインパネルの左にある「T」というアイコンが「横書き文字ツール」。まずはこれをクリックする
テロップを入れたい箇所に、再生箇所を示す「再生ヘッド」を移動させて、プログラムパネル上でクリックする
カーソルが現われたら、テロップのテキストを入力
入力したテロップの上で右クリックすると開かれるメニューから、「プロパティを編集」を選択
「エッセンシャルグラフィックス」パネルが開かれるので、テキストの「MS明朝」を「UD デジタル 教科書体 NK-B」に変更
フォントのサイズを「100」から「288」に変更
「塗り」を赤色に変更
「境界線」を有効にして、太さを「20.0」に設定
テロップを画面下側に移動してから、「整列と変形」で「水平方向中央」ボタンをクリックして位置を正確に整える
トラック上のテロップの終端をつかみ、テロップを表示する長さを調節する

 これ以降のテロップについては、今回作成したテロップをコピー&ペーストしたうえで、テキストのみ書き換えればいい。1つずつフォント、サイズ、塗り、境界線、位置などを調整する必要はない。テロップが長くなったときのみ、適宜変更を加えればオーケーだ。

トラックのテロップの上で右クリックすると表示されるメニューから「コピー」を選択
テロップを入れたい場所に「再生ヘッド」を移動させてから、「Ctrl+V」で貼り付ける
「再生ヘッド」をテロップの上にスライドさせると、プログラムパネルのプレビューにテロップが表示される。テロップをマウスカーソルでクリックしてから、テキストを書き換えよう。あとはこれを繰り返すことで、ほかの箇所にもテロップを追加できるわけだ

動画の雰囲気に合ったBGMを入れる

 最後の仕上げとして、BGMを加えよう。「YouTube Studio」には「オーディオライブラリー」が存在しており、YouTubeで収益化する場合でも利用できる音楽、効果音が数多くアップロードされている。これらの中から動画の雰囲気に合ったBGMを選択して、トラックに追加しよう。

 ただ、あまりBGMの音量が大きいと、せっかくの声や環境音が聞こえにくくなってしまう。必ず「オーディオクリップミキサー」でトラックごとの音量を調節しよう。

「YouTube Studio」の「オーディオライブラリー」には多くのBGMがアップロードされている。気に入った曲をダウンロードしよう。「ライセンス」の条件を確認するのを忘れずに
BGMをダウンロードしたら、ほかの動画素材が入っている「ビデオ20220911霧降の滝」フォルダーに移動させる
Premiereで左上のホームアイコンの横にある「読み込み」タブをクリックし、BGMを選択したのちに「読み込み」をクリックする
左下の「プロジェクトパネル」で先頭の「プロジェクト:霧降の滝」をクリックすると、その下に読み込み済みの素材が表示される。その中からBGMをドラッグして、タイムラインパネルの音声トラックにドロップする
クリップ全体よりBGMのほうが長い場合には、BGMの終端を左にスライドして長さを合わせる。逆に短い場合にはBGMをもう一度貼り付けてループさせるといい
このままだとBGMが急に途切れて動画が終了してしまう。「オーディオトランジション」→「クロスフェード」の「指数フェード」をBGM終端にドラッグ&ドロップして、BGMがフェードアウトするように設定しよう
最後にクリップの音声とBGMの音量を調整する。メニューから「ウィンドウ」→「オーディオクリップミキサー」と選択する
オーディオ1がクリップ、オーディオ2がBGM調整用のスライダーだ。声、環境音の音量に合わせて、BGMの音量を調節していこう。聞きづらいところがないように、動画全体を通して確認することをお勧めする

最後にファイルを書き出して完成

 いよいよファイルの書き出し。Premiereではそのまま書き出す方法と、外部アプリ「Media Encoder」で書き出す方法の2種類がある。複数の動画をまとめて書き出すならMedia Encoderが便利だが、1つのファイルを書き出すだけならPremiereでそのまま実行すればいい。

 動画を書き出す際には画質やファイル形式を選択できるが、YouTubeにアップするのであれば最大解像度でアップしておけば、低解像度版は自動的に作成される。基本的には元動画の解像度、フレーム数のままで書き出しておけばいい。

書き出す動画のファイル名を分かりやすい名前に変更しておこう。なお、拡張子は自動的に追加されるので入力する必要はない。あとは「書き出し」を押して数分待てば、動画の完成だ
完成した動画

今回使用したノートPC「DAIV6N」のショートレビュー

 今回の動画編集にはマウスコンピューターの16型ノートPC「DAIV 6N」を使用した。CPUは第12世代の「Core i7-12700H」、ディスクリートGPUは「GeForce RTX 3060 Laptop GPU」を搭載しており、写真の現像、動画の編集にも利用可能なクリエイター向けマシンだ。

マウスコンピューター「DAIV 6N

 Premiereでは動画の書き出しにディスクリートGPU支援を利用しており、DAIV 6Nが搭載しているGeForce RTX 3060が生きてくる。実際、今回は4K/60fpsで約2分43秒の動画を書き出したが、2分24秒で処理を終えた。編集中に動画をプレビューする際も、引っかかりなどはほとんど感じなかった。クリエイティブワークに集中できるマシンパワーだ。

Premiere以外の多くの動画編集ソフトでもディスクリートGPUの恩恵を受けられる

 クリエイターマシンとして嬉しいのがインターフェイスの充実。特にフルサイズのUHS-I対応SDメモリーカードリーダーを搭載しているので、デジカメなどで撮影した動画データも手軽に取り込める。今回は本機の16型WQXGAディスプレイ(2,560×2,160ドット、Dolby Vision対応)のみで作業したが、Thunderbolt 4、USB 3.1 Type-C、HDMI端子を利用して最大4画面のマルチディスプレイ環境を構築できる点も、クリエイティブ向けマシンとしても大きなアドバンテージだ。

デジカメとデータをやり取りする際には、やはりフルサイズのSDメモリーカードスロットは重宝する

 ハイパフォーマンスなCPUとディスクリートGPUを採用しつつ、16型WQXGAディスプレイを搭載。それでいてサイズは353.7×245.3×18.5mm、重量は約1.64kgと薄型、軽量に仕上げられている。バッテリ駆動時間は最大約11.5時間と謳われており、USB Power Deliveryによる本体の給電にも対応している。DAIV 6Nはどこにでも持ち運べるクリエイティブ向けノートPCと言えよう。

 次回は「DaVinci Resolve 18」で、同じ構成の動画の作成を解説していく。異なる動画編集アプリで編集工程がどのように変わるのか、ご覧いただければ幸いだ。