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新宿地下街でロボットが消毒液散布実験

〜安全安心な地下空間維持へ

 新宿サブナード株式会社、株式会社日建設計シビル、株式会社ZMPは、11月19日、新宿サブナード館内で、新型コロナ感染対策の一環として無人警備・消毒ロボット「PATORO(パトロ)」による無人消毒液散布実証実験を報道陣に公開した。

 新宿サブナードは新宿駅直結の地下街。今回の実証実験が行われたのはサブナードのなかの「1丁目」。ロボットは予め設定されたコースを走行しながら、各店舗の店員が出入りする防火扉のノブや、不特定多数が往来する通路の床面に消毒液(今回は次亜塩素酸水)を散布しながら自律走行した。日中、一般の人がいる地下街での自律走行ロボットによる消毒デモは今回が日本で初めてとのこと。

低速自律走行ロボット「PATORO(パトロ)」

「PATORO(パトロ)」

 ロボット「PATORO(パトロ)」はZMPが開発している低速自律走行ロボット。大きさは65.4×80×108.9cm(幅×長さ×高さ)。重量は110kg。移動速度は最大で6km/hと、ほぼ人の歩行速度程度に抑えられている。稼働時間は利用状況によって異なるがおよそ2〜6時間。充電時間は1時間。段差は5cmまで、8度までの斜面なら乗り越えられる。

新宿サブナード内を自律走行する様子

 ロボットは複数のカメラやレーザーセンサーを使って周囲の通行人を検出して回避したり、自己位置推定による自動運転が可能。先頭部のディスプレイで目を表示したり、声による周囲とのコミュニケーションをとることができる。自律走行させるためには事前に3次元地図を作る必要がある。ZMPでは自社開発した「RoboMap」を用いて地図を製作している。

事前に作成された自律走行用の3次元マップ
画像は遠隔地から監視可能

 今回のデモで使用された消毒液散布機能や、赤外線カメラによる熱検知機能はオプション。本格商用化は12月からで、消毒液散布機能付き「パトロ」は5年リースで月額11万円〜(税別)とされている。なお、離れた場所にディスプレイを設置しインターネット経由でロボットに実装されたカメラの様子等を確認することもできる。この遠隔監視・制御用のクラウドシステムをZMPでは「ROBO-HI(ロボハイ)」と呼んでいる。

消毒液を手すりに散布するデモ
消毒液散布器はオプション
目は人などで前を遮られて動けないときは涙目を表示
動けるようになったらハートマークを表示

 ロボットはスタートするときにはコロナに睨みを効かせるという意味を込めて歌舞伎風の目を表示して移動を始める。動き始めるのに時間がかかっているのは、マップを読み込んでいるため。

昼間は防犯、夜は消毒、人とロボットの役割分担で安全安心な地下空間を維持

株式会社日建設計シビル エンジニアリング部門 CM・防災部長 大森高樹氏

 株式会社日建設計シビル エンジニアリング部門 CM・防災部長の大森高樹氏は、今回の実証実験について「ロボットの社会受容性を見るという側面もある」と語った。同社は全国79の地下街において防災・減災を推進してきたという。そして「新型コロナウイルスも一つの災害だと思っている。安全安心な空間を維持してきた地下街がコロナにどう対応するかも重要な問題。我々は設計コンサルとしてさまざまな対応をしてきた。その提案の1つが今回の消毒ロボットだ」と紹介した。消毒の実証実験は、8月に行われた名古屋地下街での実験が1回目で、2回目が今回の新宿サブナードとなる。昼間の実証実験ははじめて。

 大森氏は「地下街の空気は中央管理室とセンサーで空調管理されており十分換気されている。安全安心な地下空間を認識してほしい。さらに空調に加えて消毒を行なっている。消毒は手間がかかるが、大変なことをロボットにやってもらうこともできるのではないか。人がやることとロボットがやることを分けることができるのではないか、役割分担ができるのではないかというのが今回の提案だ。たとえば昼間は防犯、夜は消毒といった使い方ができる」と語った。

 同社は現在、ZMPをパートナーとして全国で実証実験・ロボット活用提案を進めている。その理由については「ZMPは国内で製造している。また要望を取り入れて改良ができる。今後のことも考えると国内の会社でなければダメだと考えた」と語った。

日中の地下街での実証実験は今回が初めてとのこと

ロボットを活用する「街づくり」の提案を

株式会社ZMP ロボライフ事業部長 龍健太郎氏

 株式会社ZMP ロボライフ事業部長の龍健太郎氏は、同社は現在、自律移動技術にフォーカスして開発を進めていると紹介。ただ、公道での実用化には時間がかかるため、現在は、空港やテストコースなどプライベートエリアでの活用や、今回の「パトロ」のように生活圏で低速走行するロボットの2種類に注力している。同社では人の歩行速度で走行するロボットを「ライフロボット」と名付けている。「パトロ」の発表は2019年末で、当初は警備ロボットだったが、その後の新型コロナウイルス禍を受けて、2020年に入ってからは消毒業務用途の実証実験も進めている。前述のとおり自律移動のためにはマップ作りが必要だが、今回のデモの準備にかかった時間は数時間程度とのこと。

ZMPの低速域走行ロボットシリーズ。左はパトロ、中央は宅配用、右は乗車用

 今回の実証実験は1日のみ。日建設計シビルとZMPは兵庫県姫路市などで「ウォーカブルな街づくり」などを一緒に提案している。今後も共に「街づくり」という視点でのロボット活用提案を行なっていくという。