やじうまPC Watch

【懐パーツ】プロマニア御用達のビデオカード「Number Nine Revolution IV」

Number Nine Visual Technology「Revolution IV」

 Number Nine Visual Technology(#9)の「Revolution IV」は、独自開発のチップ「Ticket To Ride IV」を搭載したビデオカードで、1998年に発売された。

 買収や統合、廃業が続き、今や事実上NVIDIAとAMDの2社しか残っていないディスクリートGPU開発だが、当時は多くの企業がひしめき合う群雄割拠の時代だった。#9は1983年設立当初、他社のチップを使ったビデオカードの開発/製造を手掛けていたのだが、後に1993年に「Imagine 128」というオリジナルのチップを開発するようになる。

 Ticket To Ride IVはこのImagine 128の流れを汲む第4世代の自社製チップ。1,920×1,200ドット/65,536色/83Hz表示が可能な250MHz駆動のRAMDACを内蔵するほか、MPEG-2ハードウェア再生支援機能などを搭載。ビデオメモリはSDRAMに加え、SGRAMとWRAMをサポートしている。

 3Dセットアップエンジンの演算能力は430MFLOPSで、性能は第3世代にあたる「Ticket To Ride」の3倍にあたるという。当時としては珍しく、32MBものビデオメモリを搭載できる点が特徴だった。ただ、先述のとおりビデオチップとしてはSGRAMとWRAMもサポートしているが、実際に搭載したカードはSDRAM版のみとなったようである。

 ちなみにNumber Nineという社名や、Revolution、Ticket To Rideといった製品名は、いずれもビートルズに縁のあるものだが、基板上の「Got to be good looking...」(Come togetherより)、「'cause it's Silver Hammer you see」(Maxwell's Silver Hammerより)といった透かしも、ビートルズの歌詞を彷彿とさせるものとなっており、遊び心は満載だ。

 筆者が入手したのは32MBのSDRAMを搭載したバージョンで、カード表裏にSamsungのSDRAM「KM416S1020CT-G8」が合計16枚実装されている。このSDRAMは最大125MHz駆動で、ビデオチップとは128bitで接続されているため、バンド幅はちょうど2GB/s。メモリ付近の配線は複雑に曲がっており、かなりユニークだ。

 一方でほかの部品実装は少なく、目立ったところではTexas Instrumentsのオクタルバッファ/ドライバの「ABT244A」、ATMELのNORフラッシュ「AT29LV512-15JC」、MMD製水晶発振器「MB3100HAH」、TIのDタイプラッチ回路「HA373」が実装されている程度だ。

 Revolution IVが登場していた時代は、「Voodoo Banshee」や「RIVA TNT」といった3D性能に優れた強力なライバルが存在していた。そのためRevolution IVはWindows 9x上で動作するDirect DrawやDirect3Dのアプリよりも、Windows NT上で動作するOpenGLアプリ向け最適化を行ない差別化を図ることとなった。

 3Dゲームをプレイするコンシューマとはほぼ縁がない製品となってしまった一方で、2Dはかなり高速であった。そのためデュアルCPUや大容量メモリ環境を構築するプロユーザーやパワーユーザーが、Windows NT環境で使うさいに選ばれていた。

 もちろん、それでもPermediaやMillenniumといった選択肢があっただろうから、あえてRevolution IVを選ぶ人はほんの一握り。そのため中古市場にはまったくと言っていいほど出回らず、筆者がヤフオクで目星をつけてから入手できたのは、懐パーツをはじめてから4年経った今年となってしまった。

Revolution IV本体
Ticket To Ride IVのチップ
基板上にはビートルズの歌詞を彷彿とさせるものも
ビデオメモリはSDRAM「KM416S1020CT-G8」。WRAM利用時は256bit接続が可能だったが、実際に発売はされなかったようだ
32MBを実現するため、実装は裏面にまでおよぶ。当時の32MBのビデオメモリは、今で言えば32GB相当ぐらいの価値だろうか(全然安かったけど)
MMD製水晶発振器「MB3100HAH」
ATMEL製のNORフラッシュメモリ「AT29LV512」
空きパターンが見えるが、OpenLDIインターフェイスを備えたSilicon Graphics製液晶「1600SW」向けの実装で、Mac向けの“Formac”では部品が実装された(ただしPCI版)