Intelのコーポレートカラーであるブルーをイメージしたブース。主な展示物はUltrabook |
会期:1月10日~13日(現地時間)
会場:米国ネバダ州ラスベガス
コンベンションセンター/ベネチアンホテル
Intelは、CES展示会初日となる10日16時(現地時間)に、社長兼CEOのポール・オッテリーニ氏による基調講演を行ない、そこでさまざまな新製品をリリースする予定になっている。
開場に先立ち、報道関係者を集め、同社がCESで展示する予定の製品をブースで展示した。ブースはUltrabookをメインに据えたものとなったが、新しく公開されたものとしては、開発コードネームMedfield(メッドフィールド)で知られてきた低消費電力プロセッサ、Atom Z2460を搭載したスマートフォンやタブレット、さらには昨年(2011年)末にリリースしたばかりのAtom N2800/2600(開発コードネーム Cedar Trail)を搭載したネットブックなどを展示した。
●展示の中心はUltrabookだが、多くはすでに販売されている製品別のレポートでも触れたように、現在Intelはマーケティング戦略の中心としてUltrabookを据えており、それに合わせてCESの展示会場でも、多数のUltrabookを展示した。しかし、展示されているUltrabookはいずれも発売済みの製品であったり、IDFで公開されたものであったり、目新しいものは多くなかったのも事実だ。
東芝、Acer、Lenovo、ASUSTeKのUltrabookはすでに日本でも販売されているものと同等で、特に目新しいものではなかった。日本ではまだ販売が始まっていない製品としては、HPのビジネス向けUltrabook“HP Folio 13”が展示されていたが、同製品も昨年の11月に発表済みの製品で、実際ラスベガスの小売店でも販売されているので、新製品とは言いがたい。
そうした中で気になった製品と言えば、台湾ODMメーカーのCOMPALが試作した、13.3型スレートPCとキーボードドックがドッキングして、クラムシェル型のUltrabookとして利用できる製品だ。PCに必要なコンポーネントはすべてスレート側に入っており、キーボードドック側にはキーボードとバッテリが入っているという、ASUSTeKの「EeePad Transformer」のUltrabook版という趣だ。COMPAL自身がこの製品をエンドユーザーに販売するということは考えられないのだが、どこかのOEMメーカーからでてきてもおかしくないだろう。
このように来場者が実際に触って試せるような形で展示されている | HPのFolio 13。Core i5を搭載し、TPMチップを搭載するなどビジネス向けのUltrabook |
COMPALのUltrabook試作機。キーボードドックと分離してスレートPCとして利用することができる | 日本では未発売のLG電子のUltrabook |
●ようやく登場したAtom Z2460、クロック周波数は1.6GHzでHT対応
Atom Z600シリーズの後継となるスマートフォン/タブレット向けプロセッサは、製品名がAtom Z2460となることが、CESのブースで明らかにされた。
Intelが公開した資料や説明員の説明によれば、Atom Z2460はクロック周波数は1.6GHz、物理的にはシングルコアだが、Hyper-Threadingに対応しており、OSからはデュアルコア相当のプロセッサとして見えることになる。Atom Zシリーズの流れを汲むPowerVR系GPUを内蔵しており、フルHDの動画を再生することが可能になっている。Atom Z2460はIntelの32nmプロセスルールを利用して製造されており、一般的なx86プロセッサに比べて圧倒的に低い消費電力で動作することが可能だ。
今回IntelはこのAtom Z2460を搭載したスマートフォンとタブレットを展示した。スマートフォンは、Intelが作成したリファレンスデザインで、Atom Z2460とIntel XMM6260という無線コントローラの2チップ構成で、HSPA+で下り最大21Mbpsで通信することが可能になっている。タッチパネルは4型で、背面に800万画素、前面に130万画素のカメラを備えている。ジャイロセンサーとデジタルコンパスを内蔵しているほか、無線関連ではWi-Fi、Bluetooth、NFCなどを内蔵しているという。
Intelが公開した資料によればバッテリ駆動時間は、スタンバイで14日間、3Gの音声通信で8時間、1080pのビデオ再生で6時間、3GでWeb閲覧で5時間、オーディオ再生で45時間の利用が可能だという。なお、バッテリ容量は非公開だが、説明員によれば「一般的なスマートフォンのバッテリの容量と同じ」とのことだ。
なお、今回のリファレンスプラットフォームではAndroid 2.3.7というGingerbreadベースのOSが利用されているが、Ice Cream SandwichことAndroid 4.0も利用可能であるという。
ただし、この製品に関してはあくまでOEMメーカーやODMメーカーに開発用として提供されるリファレンスプラットフォームであり、そのまま市場に投入されることはないという。そうした意味では、いち早くAtom Z2460を採用するメーカーが登場することが成功に必要と言えるだろう。
MedfieldことAtom Z2460を搭載するスマートフォンのリファレンスデザイン。無線部分にもIntelのコントローラを搭載している | MedfieldリファレンスデザインのスマートフォンのOS。GingerbreadベースのAndroid 2.3.7を搭載していた |
●Lenovoが試作したMedfield搭載10型タブレット、今年の後半頃市場に投入へ?
Atom Z2460を搭載したもう1つの製品は、Lenovoが試作した10型タブレットだ。従来のIAプロセッサを搭載したタブレットは、大きく重いモノと相場が決まっていたのだが、今回Intelブースに展示されたLenovoが試作した製品は、他のAndroidタブレットと遜色ない程度まで薄くなっており、重さは非公開だったものの、手に取ってみると特に重たいとは感じなかった。
このLenovoのタブレットには、Android 4.0がすでに搭載されており、実際に動作していた。従来IA版のAndroidは、ARM版に比べてかなり遅れてでてくるのが一般的だったのだが、デモ機はかなり完成しており、実際に動作をデモすることができたのはIntelにとって大きな意味があると言えるだろう。今のところGoogle公認のAndroid 4.0搭載タブレットを提供できているのはASUSTeKのEeePad Transformer Primeぐらいで、そのほか各社は開発の途上という状況なので、Android 4.0ではIA版もARM版に遅れずにリリースすることができるというIntelの公約(別記事参照)は守られていると言っていいだろう。
ただし、この製品がすぐに市場に登場するのかと言えば、そうではないようだ。Intelブースの説明員によれば、このタブレットは開発中のモノで、外観なども含めてまだまだ変わる可能性があるようで、リリースは“今年の終わりまでには”という形であるようだ。
Lenovoが試作したAtom Z2460搭載10型タブレット | 他のAndroid搭載タブレットに比較するとやや厚いように見えるが、現在のものは開発中の製品で、実際にの製品ではさらに薄くなるという |
●MSIブースではThunderbolt搭載マザーボードも
このほか、Intelブースでは昨年の末にネットブック用としてリリースされたAtom N2800/2600(開発コードネームCedar Trail)を搭載したネットブックや、昨年秋のIDFで公開されたThunderboltのWindows PCへの対応が引き続きでデモされた。利用されたのは先日発表されたばかりのThinkPad S430で、Thunderboltを利用してディスプレイやHDDなどに接続されている様子がデモされていた。
また、Intelのブースではないが、ベネチアンホテルに設置されていたMSIのブースでは、Thunderboltが搭載されたマザーボードが展示されていた。このマザーボードは、IntelがIvy Bridge用のチップセットとして計画している開発コードネーム“Panther Point”を搭載していた。現時点ではIntelから正式発表は無いものの、MSIによればこのチップセットはIntel Z77 Express Chipsetという名称になるとのことで、Ivy Bridgeこと第3世代Coreプロセッサと同時にリリースされることになるそうだ。
なお、OEMメーカー筋の情報によれば、Panther Pointのデモは今回はスタティックデモのみ許可されているとのことで、動作デモの公開は3月にドイツで行なわれるCeBITになるのだという。実際、今回MSIのデモでも、別のマシンでThunderboltのデモが行なわれており、Panther Point搭載マザーボードは利用されていなかったことからもそうした事情がうかがえるだろう。
ASUSのAtom N2800搭載ネットブック。Cedar TrailからサポートされたHDMIポートなどが確認できた | 東芝のAtom N2800搭載ネットブック。HDMIポートが用意されており、TVなどに接続して利用することができる |
発表されたばかりのLenovoのThinkPad S480を利用してのThunderboltのデモ。 | Intelに展示されていたThunderbolt搭載ビデオキャプチャーユニット | MSIのZ77A-GD80。Thunderboltのコントローラを搭載しているZ77(現在のZ68の後継チップセット)搭載マザーボード |
MSIのThunderbolt接続の外付GPUボックス。一般的なPCI Express x16のビデオカードが利用できる。ただし、Thunderbolt側の制限でx4までの対応となる |
(2012年 1月 11日)
[Reported by 笠原 一輝]