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創立50周年のMicrosoft。ナデラCEOが東京でAIについて語る

Microsoft CEO サティア・ナデラ氏

 Microsoftは、3月27日に東京ビッグサイトでAIイベント「Microsoft AI Tour Tokyo」を開催した。基調講演には、同社CEO サティア・ナデラ氏が登壇し、CopilotやCopilot+ PCをはじめとするMicrosoftの生成AIソリューションに関する説明を行なった。

 この中でナデラ氏は、Microsoftが今年50周年を迎えていることや、日本では進出以来47年が経過していることなどを強調したほか、「Copilot」、「Copilot & AI Stack」、「Copilot Device」という3つのテーマで講演を行なった。

Microsoft中興の祖となったサティア・ナデラCEO、CopilotなどのMicrosoftのAIソリューションを説明

スケーリングの法則

 Microsoft CEO サティア・ナデラ氏は、2014年のMicrosoft CEOに就任して以来、一貫して同社の経営をリードしてきた。2010年代の前半まではWindowsとOfficeの会社だったが、「クラウド・ファースト」のスローガンの下でMicrosoft Azureなどのクラウド事業への投資と注力を進め、今やMicrosoftはクライアントからクラウドまで幅広くITを扱う企業へと変貌を遂げている。

 生成AIのトレンドにいち早く乗ったのもナデラ氏の功績で、OpenAIにいち早く投資を進めるなどして、OpenAIのモデルを活用するのならMicrosoft Azureという流れを作った。

 「Microsoftは50周年を迎えたが、日本では既に47周年となっており、Microsoftが米国以外で事業を行なった初めての国が日本だ。それほど長く我々は日本でビジネスを行なっており、日本の顧客と深い関係を築いてきた」とした。

生成AIのパフォーマンスはトークンを増やして、消費電力とコストを減らしていくことが増加できる
エージェンティックワールド
AIが一般消費者の生活などを変えていっている

 ナデラ氏は最近同氏がイベントでよく使っているスケーリングの法則を紹介した。スケーリングの法則は、生成AIのモデルのパラメータのべき乗に応じてAIの知的レベルが向上しており、現在は6カ月で2倍になる勢いで急速にAIが発展しているというものだ。

 そうした生成AIの性能は、トークン÷(消費電力+コスト)で決まってくるとし、それらを考慮に入れながら最適なシステムを構築していくことが重要だとしてきた。

Copilot、Copilot & AI Stack、Copilot Device

 Microsoftが生成AI向けに提供している製品やサービスは大きく言って3つあるとし、それが「Copilot」、「Copilot & AI Stack」、「Copilot Device」だとナデラ氏は述べ、今回の講演ではその3つに関して説明していくとした。

CopilotはAIと人間の媒介となるユーザーインターフェイス

CopilotはAIのためのUI

 その最初の製品およびサービスである「Copilot」に関してナデラ氏は「Copilotはユーザーインターフェイスだ」と強調し、Copilotが人間とAIを媒介するためのツールであり、OSのUIやWebブラウザのように、人間とコンピュータの媒介となるものだとした。

 Copilotには2つの役割があるという。1つはMicrosoftが提供するさまざまなレベルのAIに対して、フロントエンドとして動作するというものだ。Windows PCにおいて、CPUやGPUなどに演算する命令を出すためのフロントエンドとしてWindows OSがあるが、それと同じようにクラウドにあるGPU、ローカルのNPUなどを利用してAI演算を行なわれるためのフロントエンドとしてCopilotが動作するという考え方だ。

 そしてそのCopilotの向こう側には、各種のAIエージェントが動作しており、人間がCopilotのプロンプトに入力した質問や疑問、命令などに答えを返していくという形になっている。

アプリケーションにもCopilotが統合されている
リーズニングの機能をMicrosoft 365 Copilotに追加するアップデートをまもなく提供予定

 2つ目はリーズニング(論理思考)と呼ばれる、AIが人間のように考えて論理的に答えを出す仕組みで、先日Microsoftがまもなく提供を開始すると発表した「Microsoft 365に追加されるリーズニング機能」(Bringing the power of reasoning to Microsoft 365 Copilot」などが紹介された。

 この追加により、いわゆるエージェンティックAIと呼ばれる、自律的に動作するAIエージェントの機能などをMicrosoft 365やアプリケーション(Word/Excel/PowerPoint/Teamsなど)に追加していく。ビジネスパーソンにとって時間泥棒的な会議の文字起こしやその要約などの作成を自動で行ない、そうした作業にかかっていた時間を短縮し、他のことをやったりできると強調した。

Copilotをフロントエンドに、Azureがバックエンドとして動作するMicrosoftのAI

日本の東日本リージョン、西日本リージョンにHPCやNVIDIA GPUなどのインスタンスなどを拡張

 Copilot & AI stackでは、MicrosoftがAzureで提供している、各種のAIサービスに関して説明した。Copilot & AI stackは、Copilotの背後で動いているAIサービスのことで、世界各地60箇所などに設置されているMicrosoft Azureのデータセンターで動作しているサービス群などになる。

 ナデラ氏は「日本では、東日本リージョンと、西日本リージョンの2つのリージョンを設置して、顧客にサービスを提供している。本日はその2つのリージョンに、最新のHPCとNVIDIA GPUの提供を開始することを明らかにしたい。それにより、両リージョンの顧客や開発者はAIを利用したアプリケーションの開発や展開が容易になる」と述べ、日本の東リージョンと西リージョンのそれぞれに、HPCとNVIDIA GPUを利用したサービスの展開を行なっていくと説明した。

ベストパフォーマンスを、ローコストで
Microsoft Intelligent Data Platfrom
Azure AI Foundry

 また、データを保存する場として「Microsoft Intelligent Data Platform」を提供しており、さらにその上で「Azure AI Foundry」と呼ばれるテーラーメイドのAIを顧客が自分で容易に構築できる仕組みを提供していると述べ、「Azure AI Foundryでは1,800を超えるファウンデーションモデルを提供している。それによりAzureの顧客は自分が提供しようと考えているAIアプリケーションを短期間でコストを最適化して構築できる」とアピールした。

日本航空のSLMを利用した業務報告書アプリ

 その上で、アイシン、東京都立小石川中等教育学校、Turingなどの顧客事例を紹介したあと、日本航空がSLM(Small Language Model)であるPhi-4を利用している事例をビデオで公開した。ビデオによれば、JALでは客室乗務員の業務報告書を、以前はテンプレートに従って客室乗務員がそれを自分でカスタマイズして使っていたが、Phi-4ベースのSLMをローカルデバイス上で処理するアプリケーションに切り替えてから、従来は50分程度かかっていた報告書作成が20~30分に短縮されたという。

Copilot+ PCや量子コンピューターチップ「Majorana 1」などを紹介

Copilot+ PC

 そして、最後にCopilot Deviceの話題として、Copilot+ PCに関しての説明が行なわれた。ナデラ氏は「Copilot+ PCはシリコンパートナーの協力により、40TOPSを上回るNPUを内蔵しており、強力な処理能力を有している」と述べ、Recallや強化されたWindows Search、Click to DoなどのCopilot+ PCのさまざまなアプリケーションを紹介した。

RecallなどのCopilot+ PCのアプリ
信頼されるAI
Microsoft Security Copilot Agent

 また、「そうしたAI時代には信頼されるAIが何よりも重要だ。信頼されるAIとは、高いセキュリティ性を備えており、顧客のプライバシーに配慮し、そして安全であることが重要だ。Microsoftはそうした目的のために、Microsoft Security Copilot Agentを提供している」と述べ、AI時代にも高いセキュリティや信頼性などを確保するためのソリューションを提供していくのだと強調した。

Majorana 1

 先日Microsoftが発表した量子コンピュータ向けのシングルチップ「Majorana 1」についても言及し、将来そうした技術を利用して強力な量子コンピュータを構築していくことが、コンピュータの進化にとって重要だと強調した。

最後のスライドでナデラ氏は、日本のユーザーが何かを成し遂げたいと思うことを支援したいとまとめた