イベントレポート

経済産業省の世耕弘成大臣がはじめてCESを視察

CES 2019の会場で取材に応じる経済産業省の世耕弘成大臣

 経済産業省の世耕弘成大臣が、米ネバダ州ラスベガスで開催中のCES 2019の会場を視察した。

 日本政府の現職大臣が、CESを視察するのは初めてのことになる。世耕大臣は、2018年10月に、千葉県幕張の幕張メッセで開催されたCEATEC JAPAN 2018も視察。このときも、現職の経済産業大臣が視察するのははじめてのこととなった。

 CES 2018の一般公開前日の2019年1月7日(現地時間)には、同イベントにおいて、Tech Westエリアの1つとなっているSANDS EXPOの会場で、JーStartupに参加している企業などのブースを視察。さらに、1月8日には、メイン会場となるラスベガスコンベンションセンターのセントラルホールおよびノースホールを視察。約1時間30分をかけて、パナソニックやソニー、ホンダなどの日系企業大手のブースを視察した。

 視察後に取材に応じた世耕大臣は、「CESには、日本のスタートアップ企業の参加が増加していることを感じた。経済産業省とJETROが支援することで、イノベーションアワードを受賞した企業をはじめとした、JーStartupに参画している6社のスタートアップ企業のほか、22社のスタートアップ企業が固まったかたちで出展した。まさに、日本のスタートアッブ企業の代表として出展したものであり、これだけの規模で出展するのは初めてのことである。

 海外の企業に比べると、固まりとしての参加は、まだ規模が小さいが、それでも、日本のスタートアップ企業の参加は増加しており、来場者に対して、『日本も来たな!』という印象を持ってもらえたのではないか。今後、何年も出展を続けることで、CESにおける日本のスタートアップ企業の存在感を高めたい」とした。

 J-Startupは、経済産業省が推進するスタートアップ企業の育成支援プログラムで、今後、世界に向けて成長していく可能性がある92社の企業に対して、集中的な支援を行なっているのが特徴だ。トップベンチャーキャピタリスト、アクセラレーター、大企業のイノベーション担当などが外部審査委員会として、スタートアップ企業を推薦し、成長を支援。海外展開においても、サポートする仕組みとなっている。

CES 2019のホンダブースを視察する世耕弘成大臣

 また、世耕大臣は、「1月8日は、家電および自動車関連メーカーのブース視察を行なった。家電では、日本のメーカーによる8Kディスプレイの展示など、技術の高さをみることができた。その一方で、モノからサービスへと、潮流が変化していることも明確になり、プラットフォーマーと呼ばれる企業が、音声認識システムを、さまざまな企業の製品に提供していることも印象的であった」と述べた。

 そして、「日本では、CEATECというイベントを開催しており、CESに負けないように充実させていかなくはならないことを痛感した」などと語った。

 一方で、CES 2019における自動車メーカーの展示については、「自動車メーカーは大きな変革期にあるが、各社の展示内容にはそれほど変化がなく、目指している方向は一緒であると感じた。

 時速100kmや、60kmというスピードを出す、高速道路や幹線道路での自動運転を実現するというよりも、時速20kmや30kmで移動するコミュニティサービスとしての自動運転、公共交通における自動運転の採用、店舗などと連動したサービスを実現していくことが、日本の自動車メーカーの自動運転に対する取り組みの特徴だと感じた。

 高齢化や過疎化が進展する日本において、買い物難民が生まれている地域や、公共交通がない地域での課題解決にもつながるだろう。この分野において、日本の企業がリードをしていくことに期待している」とした。

 米中貿易戦争が激化するなかでのCES 2019の開催であったが、「CESにおける中国企業の存在感が大きいことを痛感した。だが、CES 2019の展示会場においては、米中の対立の影響は感じなかった。米国で開催される展示会に、多くの中国の企業が参加していることを見て、逆に米国の懐の深さを感じた」と発言。

 「CES 2019の視察のあと、ワシントンD.C.に移動して、日米およびEUの貿易大臣会合に参加する。ここでは、デジタルという新たな分野におけるルールを、日米欧が主導してつくることを議論することになる。自由なデータの流通、ソースコードの開示要求の禁止、個人情報の保護の徹底など、普遍的ルールを各国に守ってもらうことが大切である」などと述べた。

自らのスマホを使って、熱心に撮影する様子も見られた