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Windows 11発表。年内提供予定でWindows 10からは無償アップグレード

 米Microsoftは24日午前11時(米国東部時間、日本時間6月25日午前0時)より、「What's next for Windows」と題したオンライン発表会を開催し、「Windows 11」を正式発表した。Windows 11ではユーザーインターフェイスを刷新するとともに、新機能も追加し、Windows 10に次ぐ新しいブランド名が与えられることになった。年内に搭載機の販売や、Windows 10からのアップグレードが開始される予定。

21H2として開発されてきた「Sun Valley」がWindows 11という名称にブランド変更

開発コードネーム「Sun Valley」で開発されてきたWindows 11の画面

 Microsoftは2015年に、「最後のバージョンのWindows」と説明したWindows 10をリリースした。Windows 10は、メジャーバージョンアップは行なわず、「機能アップグレード」と呼ばれる半年に1度の機能やセキュリティーパッチなどを含んだアップグレードを提供するアジャイル開発方式を採用したWindowsとして提供されてきた。

 それから6年が経過し、Microsoftはその考え方を完全に変えたようだ。今回、最後のバージョンだったはずのWindows 10の次バージョンとして「Windows 11」を正式に発表した。主にマーケティング的な観点から、大きな強化がもたらされていることがわかりやすいよう「Windows 11」という製品名をつけたと考えられる。

 実際Windows 11は、元々は「Sun Valley」(サンバレー)という開発コードネームで開発されてきたもの。Windows 10の21H2(21年後半に提供される予定の機能アップグレードという意味)として提供されるものとして、既にWindows Insider Program経由で開発者向けに提供されてきた。それがWindows 11という名称に変更されて提供される形となる。

64bit CPU、4GBメモリ、64GBストレージが必要最低要件。Windows 10から無償アップグレード可能

 Windows 11を利用する必要最低要件は64bitプロセッサ(AMD、Intel、Qualcomm)、4GBメモリ、64GBのストレージとなっている。これは、Windows 10までの、1GHz以上のプロセッサ(32bit、64bit問わず)、1GB(32bit)/2GB(64bit)メモリ、16GB(32bit)/20GB(64bit)ストレージからはやや厳しめになっている。ただ、現行のほとんどのPCは64bitプロセッサ、メモリ8GB以上、ストレージ256GB以上となっている現状を考えれば、新しいハードウェアに関しては全く問題がないだろう。

 古いPC(特にWindows 8.x時代のWindowsタブレット)の場合には、ストレージが32GBだったり、32bitのみに対応したIntel AtomなどのSoCを採用しているものもあるので注意が必要だ。そうした必要最低条件を満たさないPCの場合にはWindows 11へのアップグレードはできない。

 今後5~6日後に、Windows Insider BuildでWindows 11のアーリープレビューが配信される計画になっている。既にDevチャネルなどで21H2のプレビュー版を導入しているユーザーには、そのアップグレードとしてWindows 11が提供されることになる。なお、このアーリープレビュー版では、今回の発表会で紹介された全機能などが提供されるわけではない。

6つの方向性で大きな改善を実現

 今回のWindows 11には6つの特徴がある。それが「新しいデザイン」、「高い生産性」、「高い接続性」、「優れたゲーミング体験」、「より洗練されたWebアクセス」、「ストアの大幅な改善」の6つだ。

(1)新しいデザイン

新しい「スタート」ボタン

 Windows 11では新しいユーザーインターフェイスが採用された。従来左下にあったWindowsロゴの「スタート」ボタンが、タスクバーの中央に寄せられている。中央に寄せられただけでなく、応答性も大きく改善されているという。各種システムアイコンも変更されており、よりカラフルで視認性が高いものになっている。また、従来タスクバーに表示されていた検索機能などは、Windows 11ではフローティング表示に変更されている。

 操作は、キーボードやマウスに加えて、タッチ、ペン、ボイス機能による操作も強化されており、例えばタッチ向けには新しいソフトウエアキーボードが導入される。

(2)高い生産性

新しいマルチタスク機能

 マルチタスクでアプリを利用できることはWindowsの強みで、例えば、Teamsで電話会議をしながらOneNoteでメモを取るなど、多くのユーザーが何か1つのことをするために、複数のアプリケーションを同時に利用している。そうした複数アプリを利用する場合に便利なように、複数のウインドウを簡単に再配置できる機能などが追加されている。

 またドッキングステーションを利用した体験の改善も図られる。ドッキングステーションに追加のディスプレイが接続された際に、メイン以外のアプリケーションが外付けディスプレイ側に自動で移動する機能などが追加される。

(3)接続性

 コロナ禍でPCのコミュニケーションツールとしての重要性は増している。Microsoftもそれに呼応するように一般消費者向けのMicrosoftアカウントで利用できるTeamsなどの提供を開始している。そうしたツール向けに、ホットキーを利用したユニバーサルミュート、アンミュート機能が提供され、Zoomのようなサードパーティーソフトウエアベンダのツールからも利用できるようになる。

 また、既にTeamsに統合されているデスクトップシェア機能が、APIとしてサードパーティーソフトウエアベンダも利用できるようになる。これによりタスクバーなどからウインドウを指定してそのアプリの表示をシェアすることが可能になる。

(4)ゲーミング

Xbox Game Passなどが提供される

 既にWindowsはPCゲーミングの世界ではデファクトスタンダードになっており、引き続きゲーム周りの機能の強化が図られる。DierctX12 UltimateのサポートやDirectStorageのサポートなどによりゲームタイトルの起動時間を短縮したりすることが可能になるほか、以前から提供されてきたXbox Game Pass、HDRサポートなどが引き続き提供される。

(5)情報へのアクセスの改善

ウィジェット

 既にWindows 10でもサポートされているデスクトップからの検索機能はフローティング表示になりより使いやすくなり、さらに画面の左側からスワイプすることでウィジェットを呼び出し、タブレットやスマートフォンのように使うことが可能になる。

 Webブラウザ性能の強化もポイントの1つで、Chromiumベースのブラウザ(Google Chrome、Microsoft Edge、Operaなど)が高速化される。なお、Microsoft Edgeは既に最新版で、スリープタブやスタートアップ ブーストなどによりCPUやメモリの消費を抑えてリソースが少ないPCでも快適で使えるようにしているほか、性能も70%ほど改善されている。

(6)ストアの改善

新しいMicrosoft Store

 Windows 10のアプリストアである「Microsoft Store」は、もともとUWP(Universal Windows Platform)を配信するプラットフォームとして作られたが、開発者がUWPへの移行をしなかったという事情を反映して、あまり成功したとは言えないのが実態だ。途中で一般的なWin32アプリケーションをパック化して公開する仕組みなどが導入されたものの、サードパーティーのソフトウエアベンダがあまり使っていないだけでなく、Microsoft自身のOfficeアプリの配布経路としてもあまり機能していない、というのが現状であることは否定できない。

 そこで、MicrosoftはWindows 11で、Storeに関し思い切った3つの施策を打ってきた。それがデザインや検索の改善、Win32アプリの標準サポート、そしてビジネスモデルの転換だ。

 特にStoreでのWin32アプリの標準サポートは大きな意味がある。従来はソフトウエアベンダが、Win32アプリを作成した後、UWPと同じようにパッケージ化してストア経由で提供するという手順になっていた。今後はそのパッケージ化をすることなくアプリケーションをMicrosoft Store経由で配布できるようになる。ソフトウェアベンダにとってはMicrosoft Storeを使うハードルが下がることを意味する。

 また、従来からMicrosoft Storeでは売上に占めるMicrosoftの取り分は12~15%で、iOSやAndroidにおけるAppleやGoogleの30%という取り分に比べると、もともと低いレートに抑えられていた。これに加えWindows 11のMicrosoft Storeでは、ソフトウエアベンダが自社の決済プラットフォームを利用することを許可する仕組みを導入し、この場合Microsoftの取り分はゼロになる。

 例えば、AdobeのCreative CloudのサブスクリプションはAdobe自身の決済プラットフォームを利用して課金されているが、仮にAdobeがアプリの配布にMicrosoft Storeを利用してもMicrosoftへ何かを払う必要がなくなるため、ソフトウェア配信の仕組みにMicrosoft Storeを検討するというよい影響が考えられるだろう(なお、AdobeはCreative Cloudのアプリケーションのうち、既にLightroom CCはMicrosoft Store経由で配布している)。

 さらに、Amazonアプリストアを介してAndroid向けのアプリも入手でき、Intelの技術によりWindows上で動作させることができるとしている。

Android向けのTikTokアプリも動作させられる

正式リリース時期は年内

 正式リリース時期は年内と予告されている。まずは年内に登場する予定のOEMメーカーが提供するPCに搭載されて出荷される計画で、同じく年内にはWindows 10からの無償アップグレードが提供される計画だ。

 SKU構成や価格モデルはWindows 10と同様になる。PCにバンドルされて販売されるのは家庭向け(Microsoftアカウントのみに対応したバージョン)となるWindows 11 Home、ビジネス向けはWindows 11 Pro(Microsoftアカウントと職場学校向けのアカウントが利用できるバージョン)が用意されるほか、従来通りMicrosoft 365経由で提供されるBusinessやEnterpriseなども同様のスキームになる。

 企業向けのWindows 11も提供されるが、Windows 10とほぼ同じアップデートポリシーでWindows Updateなどの運用が行なわれる予定。このため、企業向けのビジネスPCでは、ブランドこそ変わるが、基本的にはWindows 10と同じ運用を行なうことができると考えてよい。

 企業ユーザーにとってはようやくWindows 10のアップグレードサイクルに慣れてきたところに新しいバージョン登場ということで懸念もあったところだが、Windows 10と同じ機能アップデートのポリシーでの運用が可能であれば、ブランドが変わる以外の大きな影響はないと考えられる。