山田祥平のRe:config.sys

なぜWindowsにAndroidアプリが必要なのか

 Windows 11では、Androidアプリがサポートされるようになるという。現状で提供されているInsider Previewではまだ実装されていないが、もう少し待つ必要がある。ただ、それを心待ちにしていいのかどうか。

PCでスマホ用アプリを使う

 Windowsデスクトップのような画面でスマホ用のアプリを使うときのイメージは、Chromebookの環境で体験すればなんとなくわかる。Chromebookで使えるアプリは、ChromeブラウザとAndroidアプリだから、アプリの種類に応じて使い分けることができる。たいていのサービスは、アプリでの利用に加えて、ブラウザでの利用ができるので、どちらか好きな方を使えばいい。

 ブラウザでのサービス利用ができるのなら問題がなさそうだが、どうしてAndroidアプリが求められるのだろう。いろいろな理由があると思うが、大きくは2つだ。

1.サービスがAndroidアプリでしか利用できない
2.サービスがブラウザよりも使いやすい

 1についてはともかく、2についてもそれなりに多い。例えば個人的によく使うサービスとして「Yahoo! 乗換案内」がある。このサービスのブラウザ版とアプリ版を比べてみると、圧倒的にアプリ版が使いやすい。Yahoo!のサービスは、ブラウザでの利用にレスポンシブデザインを採用することにあまり熱心ではないので、乗換案内を使うためだけでも、それなりに大きなウィンドウ領域を要求する。

 もっとも、ChromebookでこのサービスのAndroidアプリを開くと、ウィンドウサイズは固定となる。デスクトップを占有することはないが、これはこれでちょっと不便を感じることがある。大げさ過ぎるのだ。最寄り駅の次の電車の発車時刻をカウントダウンするだけのためにはウィンドウサイズが大きすぎると感じることがある。

タッチ、そしてタブレットという鬼門

 Windowsにはストアアプリがある。決して豊富なアプリがあるとはいえないが、ストアアプリならウィンドウのサイズは自由になるし、ブラウザでサービスを使うよりも便利かもしれないと、使いたいアプリをストアで探すのが、見つからないことの方が多い。Yahoo!乗換案内もない。

 また、ストアアプリはウィンドウ内コンテンツのズーミングができない。それなら、レスポンシブデザインされたサービスをブラウザで使う方がずっといい。ウィンドウのサイズも、コンテンツのサイズも自分の使いやすいように設定できるからだ。

 一方、Amazonの電子書籍サービスKindleのようなサービスはどうだろう。Kindle用のコンテンツをブラウザで見ることはできるが、そのために提供されているKindle Cloud Readerで開けるコンテンツはコミックなどに限定されるので、一般的な文字だけの書物を開くには、専用のアプリが必要になる。もちろんWindows版Kindleアプリも提供されているので、普段はそちらを愛用している。いずれにしてもプラットフォームごとに専用のアプリが必要となる。

 ただ、Windows版のKindleアプリはタッチで使うことを想定していない。中途半端なのだ。というよりも、多くのアプリはタブレットでの立ち居振る舞いがとても微妙だ。タブレットの画面サイズが千差万別であるにもかかわらずだ。これは、AndroidタブレットでAndroidアプリを動かした時にも言えることだ。個人的には、単に、タブレットは大きなスマホとして扱ってくれればそれでいいのにと思う。

 例えばOfficeアプリやGoogleドキュメントが理不尽な振る舞いをする。Officeアプリは、MicrosoftのWordやExcelのランチャーとなるアプリだし、Googleドキュメントは、Google Workplaceのワープロ機能を提供うするサービスだ。これらはスマホで使うととても使いやすい。小さなスマホで使うことが想定され、表示サイズの拡大縮小にしたがって文字列の折り返し位置がリフローされる。印刷イメージを見たい時のために、そのためのモードも用意されているが、スマホで印刷イメージを確認しながらコンテンツを読みたいことはほぼない。

 ところが、これらのアプリをタブレットで開くと、印刷イメージモードに移行し、拡大縮小に応じてリフローする機能が使えなくなってしまうのだ。

 AndroidアプリがWindows環境で使えるようになるのは大歓迎だが、ここは1つ、そのクライアント領域は、タブレットではなくスマホであると想定し、そのウィンドウサイズがデスクトップ全体への最大化はもちろん、拡大縮小が自由になるようになる仕様を望みたい。

 また、Andoroidアプリ内でほかアプリを呼び出す時に、Windowsアプリを呼び出せるかどうかも大事だ。PDFを開いたら、立派なWindows用リーダーがあるのに、それが使えないのでは使い勝手は著しく低くなる。Webサイトへのリンクを開こうとしたときに、本家のブラウザが開くかどうかも同様だ。

アプリにとってスマホは特別な存在

 結局のところ、スマホで使うスマホ用のアプリが使いやすいのは、スマホの小さな画面に最適化された画面設計で、そのサービスのエッセンスをうまくまとめているからだ。にもかかわらず、スマホよりもおそらくは画面が大きいに違いないという思い込みだけで、スマホアプリの使い勝手を変えてしまうのはどうなんだろう。これは、プラットフォームとして用意するインターフェースの仕様決めの考え方はもちろんだが、アプリの作り込みの姿勢の上でも重要な要素だ。

 画面サイズの大小や縦横比に依存せず、また、デスクトップにおける他のアプリとの共存を考慮した使い勝手という点では、ブラウザによるサイトのアプリ化がもっとも使いやすい。ただ、そのような使い方をうまくサポートするサイトはまだまだ少ない。うがった見方をすれば、Webサイトがレスポンシブデザインを拒みがちなのは、広告スペースというある程度の面積を専有する要素を無視できないからだとも言える。サービスは無償で成立するはずもなく、エンドユーザーはなんらかの代償を支払う必要がある。それは広告を見ることであったり、使用料金の支払いを受け入れることであったりする。ただより高いものはないわけだ。

 WindowsデスクトップにおけるAndroidアプリの利用が、こうした課題をどのように解決していくのか。そもそもエンドユーザーは、インストールが求められ、頻繁に更新しなければならないアプリを本当に望んでいるのか。個人的には背に腹は代えられないからYahoo! 乗換案内のAndroidアプリを使うのだが、これをブラウザでアプリ化できるのならそれでいい。大事なことは多種多様なデバイスにおける画面サイズで、ユーザーごとに異なる視力や使われる現場によって、優れた使い勝手をサービスが提供できるかどうかだ。

 PCにはアプリの数だけ使い方がある。それは今なお真理だが、アプリの使い方はユーザーの数だけあるというのも真理だ。そしてまた、アプリをインストールしようとしないユーザー層が増えつつあることも忘れてはならない。