山田祥平のRe:config.sys
変わり続けるWindows ~ 11は帰ってきたVista
2021年6月26日 06:55
Windows 11が発表された。Windows 10が最後のバージョンになると明言していたどの口がとも思うが、とにもかくにも新しいWindowsということだ。もっとも、新しいのは名前だけで、基本的には従来のWindowsの延長線に過ぎないという見解もある。
Windowsのライフサイクルは5年間が妥当
初代のWindows 10がRTMした2015年から6年が経過した。6年間という歳月は2001年に発売されたWindows XPから2006年のWindows Vista発売の5年間より長い。
今から思えば、Vistaはとても野心的でかつ美しいWindowsで、個人的にはもっとも好きなバージョンだった。欠点は、当時にしては多くのリソースを要求しすぎる作りだったことから、「使える」と「快適に使える」の間に大きな溝があり、プアなハードウェア構成では不安定さが目立ったことだろう。
そのリソース喰らいをそぎ落としてダイエット、シンプルにしたのがWindows 7で2009年の発売だ。そして、そのWindows 7は、Windows 8の発売後も、メインストリームサポートが終了した2015年以降も延長サポートで企業ユーザーによって使われ続け、ついに、2020年初にサポート終了となったのは記憶に新しい。実質的に10年間多くの現場で現役で使われ続けたことになる。
もっと深掘りすると、現代のWindowsの礎は、1994年のWindows NTだ。サーバー用のOSだったが、5年後の1999年にはwindows 2000となり、企業用クライアントOSとしてのWindowsになった。そして、その翌年、コンシューマ用のWindows XPに化粧直しされた。
こうした経緯を考えると、Windowsの刷新サイクルは5年程度で、寿命としてはその倍の10年程度なのかなとも思う。だとすれば6年経過後のWindows刷新は恒例の範疇で考えてもいいのだが、結果として最後のWindowsがウソになった。ただ、今回のWindowsは明らかにマーケティング的な「新しいWindows」という位置づけるのが妥当だ。
見かけがモダンになったWindows
2021年6月24日午前11時(米国東部夏時間/日本時間では25日午前0時)、米Microsoftは「what's next for Windows」と称するライブストリームイベントを開催した。
イベントでは、新しいWindowsのGUI、UXがお披露目された。とても美しい。開いたウィンドウの四隅にわずかなRがあるなど、パッと見の印象がモダンだ。
個人的にはVistaがモダンになって帰ってきたという印象を持った。タスクバーが横たわるのはデスクトップ下部で、どうやら上部には移動できないらしい。そして、タスクバーボタンは中央寄せだ。しかもあの伝統のスタートボタンも他のタスクバーボタンと一絡げに中央に寄せられている。どうせなら、視線の移動が少なくて済むように通知領域の時刻表示も含めてセンタリングしてほしかったところだ。
Teamsが統合され、モダンコミュニケーションの基本的な環境がOSに標準装備されたことも大きい。
困ったのはメインで使っているデスクトップPCだ。MicrosoftはWindows 11をサポートするIntelプロセッサのリストを公開しているが、その中には手元で現役で使っている第6世代のCore i7が含まれない。第8世代以降が要件になっているのだ。
ただ、運用中の環境は、Windows Insider ProgramのDevチャンネルに登録している。その場合、公式の説明によると
となっている。Insider向けには6月28日週に最初のWindows 11用のInsiderPreviewビルドがリリースされるが、6月24日までにDevチャンネルからビルドをPCにインストールしているすべてのWindowsInsiderは、最小ハードウェア要件を満たしていない場合でも、Windows 11 Insider Previewビルドのインストールを続行できるとなっている。
実際、既にWindows Insider Programの設定画面では朱書きで、
「お使いのPCは、Windows 11の最小ハードウェア要件を満たしていません。お使いのデバイスは、Windows 11が一般に利用可能になるまで、Insider プレビュービルドを受信し続ける可能性があります。一般に利用可能になったら、Windows 10にクリーンインストールすることをお勧めします」。
と記載されている。つまり、正式リリースまでは、だましだましWindows 11のようなものを使い続けることができるというわけだが、いいかげんデスクトップ環境は、来年(2022年)を目処になんとかしなければなるまい。メモリも32GBを積んであり、実仕様で何の不自由も感じていないのだが、そろそろ年貢の納め時といったところか……。
現行の環境がWindows 11の要件を満たしているかどうかは、Microsoftが正式に公開している互換性チェックプログラムを使って調べることができる。目立ったところではIntelプロセッサの世代のほか、32bitプロセッサが打ち切られたことやTPMサポートが必須になったことくらいだろうか。
増築改築で10+1=11
つまるところ、Windows 11のリリース後も、Windows 10は併行して使われ続けられることになる。ある意味で、Windows 11は、Windows 10でオフになっていたオプション機能をオンにしたものであり、そのためのリソースを確保する際に稼働環境のハードルが上がると考えればいいだろう。できることという意味では、Windows 10は、Windows 11と変わらない。Androidアプリのサポートなどについては実装状況がどうなるかわからないが、名前は新しくなったがWindows 10が最後のWindowsであるというのはウソではないと考えることもできる。
Windows 11は、Windows 10のスペシャルエディションという位置づけだ。3~4年前の、モダンではない環境が切り捨てられるように見えても、Windows 10としてのサポートが続く。
来週以降、Insider Previewの配信が始まり、新しいことがいろいろとわかっていくだろう。手元の比較的新しい複数台のノートPCについては問題なくWindows 11の要件を満たしているようなので、さっそくInsider Previewを登録することにしよう。詳細は、今後、機会を見て報告する。