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NTTと東大、汎用光量子コンピュータチップの実現につながる高性能量子光源を開発
2020年3月31日 16:33
日本電信電話株式会社(NTT)および東京大学は3月30日、高性能な量子光源(スクィーズド光源)を開発したと発表した。
大規模な汎用量子計算の実現に向けて、一方向量子計算と呼ばれる手法を利用した「光量子コンピュータ」が期待されている。あらゆる量子計算の重ねあわせとなる汎用的な量子もつれ状態(2次元クラスター状態)をあらかじめ用意しておき、量子ビットを順次測定して残りの量子ビットを操作し、計算を実行するもので、近年では、光学的遅延線による時間領域多重方式を飛行する光を量子ビットを用いることで、1万量子ビット以上の量子もつれ状態が実現できている。
この方式では、非線形光学効果によって生成できる、広帯域で連続的に飛行するスクィーズド光が用いられる。これまでの研究では、光共振器内部に非線形光学結晶を設置することで非線形光学効果を高めており、97%以上の高い量子ノイズ圧縮率が実現されてきた。しかしこの手法では構造上の理由から、帯域が数GHz程度に制限されてしまい、光が本来持つTHz(テラヘルツ)単位の広帯域性が活かせなかった。
広帯域のスクィーズド光の生成には共振器ではなく単回通過による生成が有効だとされているが、連続波に対する光生成効率が低く、2次元クラスター状態の生成に必要な量子ノイズ圧縮率が65%なのに対して、単回通過の場合は37%程度にとどまっていた。
単回通過によって高い非線形光学効果を得る手法としてはおもに、励起光としてピークパワーの大きな超短パルスを用いるものと、非線形光学導波路を用いるものの2種類が挙げられる。今回研究グループでは後者を用いてこれらの問題を克服した高性能な量子光源の開発に成功した。
この手法を用いたスクィーズド光の生成では、非線形光学材料の加工が難しく、性能の良い導波路がこれまで得られなかった。しかし、NTTが研究開発を行なってきた非線形光学結晶デバイス「周期分極反転ニオブ酸リチウム導波路」を用いることでこれを克服。東京大学の高精度な光制御・受光技術を使った測定において、量子ノイズ圧縮率75%を実現しつつ、およそ2THz以上のスクィーズド光が生成されていることが確認された。
同グループでは、これまで以上の大規模量子もつれ状態の生成や各種量子操作の実証を行なうほか、光集積デバイス技術を用いて小型化を図り、コンパクトな光チップ上で実現する光量子コンピュータを目指し研究開発を進めていくとしている。