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理研ら、初の光量子コンピュータの開発に成功

光量子コンピュータの実機

 理化学研究所(理研)量子コンピュータ研究センター 光量子計算研究チームの古澤明チームリーダーが率いる共同研究グループは8日、新方式である光量子コンピュータの開発に成功したと発表した。世界に先駆けた汎用型光量子計算プラットフォームになるという。

 量子コンピュータの方式としては、超伝導、中性原子、イオン、シリコン、光などさまざまな候補があるが、光方式は以下のメリットが挙げられている。

  • 計算のクロックを数百テラヘルツ(THz)まで原理的に高められる
  • ほぼ室温で動作可能
  • 光多重化技術によりコンパクトなセットアップで大規模計算が可能
  • 光通信との親和性が高く、量子コンピュータのネットワーク構築が容易

 特に、光通信で培われた超高速光技術が、光量子コンピュータにとって非常に有用なアセットかつ大きなアドバンテージであった。

 古澤氏は20年以上に渡って光量子コンピュータの研究をしてきており、理研と東京大学で培ったさまざまな技術が今回の光量子コンピュータで結実。基幹部である超広帯域量子光生成デバイスはNTT先端集積デバイス研究所の量子光源で、クラウドシステムはFixstars Amplifyの協力により整備さた。

 今回の光量子コンピュータは、時間分割多重化手法を用いた測定誘起型のアナログタイプで、量子テレポテーションの繰り返しによって計算が実行される。この実現には大規模な量子もつれが必要となるが、光の進行波としての性質と時間分割多重化手法を活用することで実現した。

光量子コンピュータ光学装置概略図
時間領域で多重化された量子もつれとそれを用いた量子計算

 また、クラウドとも接続されており、ユーザーは量子回路をデザインし、クラウドへ送信することで、実機パラメータへ変換されて光量子コンピュータ実機へと送られる。これにより、ユーザーはクラウド経由で実行結果が得られるという。連続量の最適化問題などへの応用や、非線形変換の機能を導入することでニューラルネットワークなどへの応用も期待される。

光パラメトリック増幅器とプログラマブルロジックデバイス
クラウドシステムの構成