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NVIDIA、“Naviキラー”のGeForce RTX SUPERシリーズを投入

~GeForce RTX 2080/2070/2060 SUPERの3製品を展開

GeForce RTX SUPERシリーズ、左からGeForce RTX 2070 SUPER、GeForce RTX 2080 SUPER、GeForce RTX 2060 SUPERの3製品

 米NVIDIAは7月2日(現地時間)、新GPU「GeForce RTX SUPER」シリーズを発表した。同社は5月からティザーで「SUPER」を冠したなんらかの製品を発表すると公式に告知しており、今回その正体が明かされたかたちだ。

 GeForce RTX SUPERは、昨年(2018年)の8月(一部製品は今年)に発表されたGeForce RTX 20シリーズの追加製品と位置づけられ、GeForce RTX 2080などの後ろに日本語で“超”の意味を持つ「SUPER」をつけた製品になる。GeForce RTX 2080 SUPER、同2070 SUPER、同2060 SUPERの3種類が用意され、2080 SUPERおよび2070 SUPERは、無印の2080と2070よりも性能が向上しているものの、価格は据え置きとなる。

GeForce RTX SUPERの3SKUを追加、GeForce RTX 2080 Ti、2060は継続販売

GeForce RTX SUPERに採用されている「SUPER」ロゴ

 今回NVIDIAが発表したGeForce RTX SUPERシリーズは、GeForce RTX 2080 SUPER、同2070 SUPER、同2060 SUPERという3つの製品から構成されている。昨年の8月に発表されたGeForce RTX 20シリーズと同じ12nmで製造されるTU10x(TU104/106)のダイを利用しており(NVIDIA、リアルタイムレイトレーシングに対応した「GeForce RTX 20」シリーズ参照)、歩留まりの向上などにより性能などが強化された追加SKUと考えることができるだろう。

GeForce RTX SUPERの概要
【表1】GeForce RTX 2080 SUPERのスペック
GeForce RTX 2080 SUPERGeForce RTX 2080
ダイ※筆者予想TU104
FLOPS11+11TFLOPS(11.2TFLOPS/FP32、11.2TFLOPS/INT32)10+10TFLOPS(10.1TFLOPS/FP32、10.1TFLOPS/INT32)
Tensor FLOPS89TFLOPS80.5TFLOPS
Rayコスト8Giga Rays
Streaming Multiprocessor4846
CUDAコア3,0722,944
テクスチャユニット192184
ベースクロック1,650MHz1,515MHz
GPUブーストクロック1,815MHz1,710MHz
メモリ8GB
メモリバス幅256bit
メモリデータレート15.5Gbps14Gbps
メモリバス幅496GB/s448GB/s
ビデオカードの消費電力250W215W
【表2】GeForce RTX 2070 SUPERのスペック
GeForce RTX 2070 SUPERGeForce RTX 2070
ダイ※筆者予想TU104TU106
FLOPS9+9TLOPS(9.1TFLOPS/FP32、9.1TFLOPS/INT32)7.5+7.5TLOPS(7.5TFLOPS/FP32、7.5TFLOPS/INT32)
Tensor FLOPS72TFLOPS60TFLOPS
Rayコスト7Giga Rays6Giga Rays
Streaming Multiprocessor4036
CUDAコア2,5602,304
テクスチャユニット160144
ベースクロック1,605MHz1,410MHz
GPUブーストクロック1,770MHz1,620MHz
メモリ8GB
メモリバス幅256bit
メモリデータレート14Gbps
メモリバス幅448GB/s
ビデオカードの電力215W175W
【表3】GeForce RTX 2060 SUPERのスペック
GeForce RTX 2060 SUPERGeForce RTX 2060
ダイ※筆者予想TU106
FLOPS7+7TLOPS(7.2TFLOPS/FP32、7.2TFLOPS/INT32)6+6TLOPS(6.5TFLOPS/FP32、6.5TFLOPS/INT32)
Tensor FLOPS57.4TFLOPS51.6TFLOPS
Rayコスト6Giga Rays5Giga Rays
Streaming Multiprocessor3430
CUDAコア2,1761,920
テクスチャユニット136120
ベースクロック1,470MHz1,365MHz
GPUブーストクロック1,650MHz1,680MHz
メモリ8GB6GB
メモリバス幅256bit192bit
メモリデータレート14Gbps
メモリバス幅448GB/s336.1GB/s
ビデオカードの電力175W160W

 SUPER版では、無印版に比較してそれぞれSM(Streaming Multiprocessor)の数が増やされており、演算エンジンに相当するCUDAコアが増えている。また、クロック周波数のうちベースクロックが引き上げられているほか、2080 SUPERと2060 SUPERに関しては、メモリも強化されている。2080 SUPERはメモリのデータレートが14Gbpsから15.5Gbpsに引き上げられ、2060 SUPERはメモリのバス幅が192bitから256bitに引き上げられている。

GeForce RTX 2080 SUPER
GeForce RTX 2070 SUPER
GeForce RTX 2060 SUPER

 ただし、ビデオカード全体の消費電力は2080 SUPERで250W、2070 SUPERで215W、2060 SUPERで175Wと無印に比べて増えているが、これは性能とのトレードオフなので致し方ないだろう。

 NVIDIAは、2080 SUPERはTITAN XP(PascalベースのTITAN)よりも高い性能を持ち、2070 SUPERは2070無印と比較して平均16%、最大24%の性能向上があり、GeForce GTX 1080 Tiに匹敵する性能を実現したと説明している。2060 SUPERは2060無印と比較して平均15%、最大22%の性能向上を実現しており、GeForce GTX 1080以上で2070無印に近い性能を発揮するという。

 なお、OEMメーカー筋の情報によれば、利用されているダイは2080 SUPERがTU104(-450)、2070 SUPERがTU104(-410)、2060 SUPERがTU106となる。2080無印がTU104、2070無印と2060無印がTU106だったのに比べると、2070 SUPERに関しては上位ダイに使われているTU104のカットオフ版に切り替えられており、それが今回の3つのGPUのなかで一番性能が向上している理由の1つになりそうだ。

GeForce RTX SUPERシリーズ投入は“Naviキラー”が狙いか

GeForce RTX SUPERのロゴ

 注目すべきは製品の位置づけだ。まず昨年8月に発表されたGeForce RTX 2080 Ti/2080/2070、および今年の1月に発表された同2060という現行のGeForce RTX 20シリーズのうち、2080無印と2070無印は生産終了となり、2080 SUPERと2070 SUPERに置き換えられる。いずれの製品も性能が強化されるが、価格は699ドル、499ドルで据え置き。また、Founder Edition(FE)も用意されるが価格は同じとなる。

SUPERの裏面、左からGeForce RTX 2060 SUPER、GeForce RTX 2080 SUPER、GeForce RTX 2070 SUPER

 これに対して、トップエンドのGeForce RTX 2080 Tiは販売が継続され、価格も据え置きとなる。通常版が999ドル、FE版も1,199ドルと従来の価格が据え置かれる。

 2060無印に関しても販売が継続され、価格も従来と同じ349ドルが維持される。2060 SUPERに関しては、2070 SUPERと2060無印の中間の新しいSKUと位置づけられ、399ドルという新しい価格が設定されている。この2つの製品もFE版があり、やはり価格は通常版と同等になる。

 販売は7月9日より開始される予定だが、期間限定でこれらSUPERがつく製品にはリアルタイムレイトレーシングに対応した「Control」、「Wolfenstein: Youngblood」という2つのタイトルがバンドルされる。NVIDIAによれば2つのゲームを合わせて90ドルの価値があるという。

 なお、NVIDIAが今回GeForce RTX SUPERシリーズを投入したのは、明らかにAMDが7月7日に販売を計画している7nmで製造される開発コードネーム「Navi」こと、Radeon RX 5700シリーズへの対抗措置という側面が強いと言えるだろう(AMD、RDNA初の製品となるRadeon RX 5700シリーズ参照)。

【表4】GeForce RTX SUPERシリーズとAMDのRadeon RX 5700シリーズの価格帯
今回の発表以前のSKU今回の発表後の製品市場想定価格FE市場想定価格AMD Naviの価格帯
GeForce RTX 2080 Ti継続販売999ドル1199ドル-
GeForce RTX 2080GeForce RTX 2080 SUPER699ドル-
GeForce RTX 2070GeForce RTX 2070 SUPER499ドルRadeon RX 5700 XT(449ドル)
-GeForce RTX 2060 SUPER399ドルRadeon RX 5700 (379ドル)
GeForce RTX 2060継続販売349ドル-

 AMDのRadeon RX 5700シリーズは上位版のRadeon RX 5700 XTが449ドル、Radeon RX 5700が379ドルに設定されている。AMDの主張としてはRadeon RX 5700 XTが2070無印(449ドル)に対抗できる性能を持っており、コストパフォーマンスをアピールしている。Radeon RX 5700に関しては2060無印(349ドル)よりわずかに価格が上だが、高い性能を持っていると説明している。

 そうした状況のなかで、Radeon RX 5700 XTの449ドルに対して499ドルの2070 SUPERを、Radeon RX 5700の379ドルには399ドルの2060 SUPERを投入し、“Naviキラー”として対抗させようというのがNVIDIAの狙いだと考えられるだろう。

ビデオカードの平均フレームレートや平均消費電力などを計測できる「FrameView」を投入

FrameViewの概要

 NVIDIAはGeForce RTX SUPERシリーズの投入に合わせて、新しいベンチマークツールである「FrameView」の提供も開始する計画を明らかにした。

 FrameViewはゲームプレイ時のフレームレートやGPUの消費電力などのログを取るツールで、瞬間的なフレームレートではなく、ある特定の時間のフレームレートのログを取り、その平均値を出すことができる。また、そのフレームレートを計測しているときの消費電力を測定できるのも特徴で、ボードレベルの平均消費電力、ビデオカードの性能をExcelのグラフとして表示させることができる。

フレームレートなどを四隅などに表示できる
Excelでデータを処理することができる。平均フレームレート、平均消費電力、TGPあたりの性能などをグラフにすることができる