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AMD、RDNA初の製品となるRadeon RX 5700シリーズ
2019年6月11日 09:00
AMDは、6月10日(現地時間)、E3 2019が開催されている会場近くで製品発表会を行ない、「第3世代Ryzenデスクトップ・プロセッサー」(以下第3世代Ryzen」、次世代GPUアーキテクチャRDNAを採用した「Radeon RX 5700シリーズ」の詳細を明らかにした。
COMPUTEX TAIPEI 2019では「Radeon RX 5700シリーズ」というシリーズ名だけが明らかにされていた開発コードネームNaviで知られる製品は、上位モデルがRadeon RX 5700 XTとRadeon RX 5700という2製品が投入される。
RDNAに対応したNaviの最初の製品となるRadeon RX 5700シリーズ
AMDが今回発表したRadeon RX 5700シリーズは、Naviの開発コードネームで知られる製品の第1弾となる製品。2つのSKUが用意されており、Radeon RX 5700 XTとRadeon RX 5700の製品となる。価格は前者が449ドル、後者が379ドルだ。
Radeon RX 5700 XT | Radeon RX 5700 | |
---|---|---|
アーキテクチャ | RDNA | RDNA |
Cu(コンピュートユニット) | 40 | 36 |
SP(ストリームプロセッサ) | 2,560 | 2,304 |
ROP | 64 | 64 |
テクスチャユニット | 160 | 160 |
処理能力 | 最大9.75TFLOPS | 最大7.95TFLOPS |
メモリ | 8GB GDDR6 | 8GB GDDR6 |
メモリクロック幅 | 256bit | 256bit |
メモリ帯域幅 | 448GB/s | 448GB/s |
ブースト時最大クロック | 1,905MHz | 最大1,725MHz |
ゲームクロック | 1,755MHz | 1,625MHz |
ベースクロック | 1,605MHz | 1,465MHz |
ディスプレイ出力 | HDMI 2.0b/DP 1.4 | HDMI 2.0b/DP 1.4 |
PCI Express 4.0 | 対応 | 対応 |
補助電源 | 8ピン+6ピン | 8ピン+6ピン |
ボードパワー | 225W | 180W |
Radeon RX 5700シリーズの最大の特徴は、同社がRDNA(Radeon DNA)と呼んでいる新しいGPUアーキテクチャを採用していることだ。
RDNAは従来世代(Vega)までで採用されていたGCNと異なる新コンピュートエンジンデザインを採用しており、命令実行効率などが大きく改善されているという。キャッシュ階層も新しくなっており、新しく128KBのL1キャッシュが改善され、メモリレイテンシや帯域幅の有効活用が可能になっており、それにあわせて低消費電力になっている。
また、「ストリームラインドパイプライン」という新しいグラフィックスパイプラインを導入し、アーキテクチャレベルでの性能効率が改善しているほか、より省電力になっているのも特徴となっている。それらの改善により、従来世代と同じ消費電力であれば50%の性能向上が実現されていると説明している。
同時に7nmプロセスという最先端のプロセスルールを採用したことによるメリットもあり、Vegaアーキテクチャに比べ性能が大きく向上しているという。従来の14nmで製造されるRadeon RX Vega 64のダイサイズが495平方mmであるのに対して、新しいNaviは251平方mmで、ダイあたりの性能は2.3倍になっている。
メモリはGDDR6で、256bit幅でアクセスが可能になっており、最大のメモリ帯域幅は448GB/sとなる。ディスプレイ出力も強化されており、HDMI 2.0bとDisplayPort 1.4に対応しているほか、VESAで規定されているストリームデータを圧縮して送るDSC(Display Stream Compression)1.2規格に対応しており、4K/144Hzなどの従来は2本のケーブルで接続しないといけない高解像度/高リフレッシュレート環境でも1本のDP 1.4ケーブルで伝送できるようになっている。
ゲームクロックが仕様に追加される
従来のRadeonでは、クロックはベースクロックとブースト時の最大クロックの2つが公開されてきたが、今回はそれに加えて「ゲームクロック」と呼ばれる新しいクロック設定が追加されている。
このゲームクロックは、クロックブーストが有効時にゲームプレイをした場合に安定して動作すると想定されるクロック周波数となる。CPUやGPUのブースト機能は、一般的に排熱に余裕があるときに、まず最大クロックまで引き上げられ、その後GPUのセンサー温度に応じて徐々に下がっていき、GPUの温度センサーがある一定の温度内であれば「ある一定のクロック周波数」で落ち着く。その後、さらに筐体内部に熱がこもったりしてGPUの温度センサーがさらに上がると、ベースクロックまで落ちて動作を続ける仕組みになっている。
この「ある一定のクロック周波数」がゲームクロックで、GPUに負荷をかけてゲームをプレイしている場合、GPUはこのクロック付近で動作しているクロック周波数になる(CPUのブースト機能で言えば、PL1、PL2と規定されている動作モードのうちPL1に相当するのがこのゲームクロックになる)。
ただし、すでに述べたとおり、GPUがクロック周波数で動作するためにはGPUの温度センサーの温度がある一定以下である必要があるため、筐体の排熱が十分ではない場合などには、このゲームクロックでは動作せずに、ベースクロックに落ちることになるので、あくまでゲームを行なう時の典型的なブーストクロックという理解でいればいいだろう。
なお、AMDはRadeon RX 5700 XT、Radeon RX 5700の性能に関しても公開しており、Radeon RX 5700 XTはGeForce RTX 2070と比較して97%~122%、Radeon RX 5700はGeForce RTX 2060に比較して105~123%というゲーム性能の結果を公開している。解像度は1440pで、AMDは現在メインストリームゲーマーが一般的に使っている1440pでの性能が優れていると、アピールしている。
PCI Express Gen4対応で8K編集も可能に
すでに明らかになっているとおり、Radeon RX 5700シリーズはPCI Express Gen4に対応しており、同じくPCI Express Gen4に対応している第3世代Ryzenと組み合わせて利用することで、PCI Express Gen 3(1レーン/片方向あたり8GT/s)に比べて2倍の帯域幅(1レーン/片方向あたり16GT/s)を実現することが可能になる。
AMDではとくにこの帯域幅の向上はコンテンツクリエーションに効くと説明しており、現地では動画編集ソフトDaVinciを利用した8Kの編集デモも行なわれた。
8Kのコンテンツをリアルタイムに編集する場合、GPUを利用する場合には、GPUとCPU・メインメモリ間で大量のデータがやりとりされることになる。そこがつまりPCI Expressになるので、そこがボトルネックになってしまってリアルタイムに編集するのが難しくなる。
このため、AMDも従来はビデオカードにSSDを搭載し、そこにデータを展開することで対応するという特殊なカードを投入していた。
しかし、PCI Express Gen4であれば、PCI Express Gen3に比べて帯域幅が倍になるため、GPUとCPU・メインメモリ間がボトルネックが解消され、実用になる可能性がでてくる。実際、AMDのデモではDaVinciを利用して8Kをリアルタイム編集を行なうさいに、PCI Express Gen 3に設定すると20fps程度でしか再生できずコマ落ちしてしまっていたが、PCI Express Gen4では40fpsとなり、30fpsあればリアルタイムに編集できると考えれば、実用になってくる可能性が高い。現時点ではドライバなどはまだベータで、製品版では改善される可能性が高い。
こうした8Kの編集環境としては、先日AppleがRadeon Pro Vega IIを2GPU搭載した Mac Proを発表したが、8Kビデオ編集用にFPGAの「Afterburner」を搭載しており8K ProRes RAW(30fps)をハンドルできることを明らか(別記事:Apple、最大28コアCPU/Vega II Duo×2搭載の「Mac Pro」参照)にしているが、このRadeon RX 5700 XTと第3世代Ryzenで2ストリーム程度であれば実現できる可能性が出てくるだけに期待したいところだ。