レビュー

新世代グラフィックスの幕開けを告げる「GeForce RTX 2080 Ti」をテスト

 9月20日より、リアルタイムレイトレーシングに対応するNVIDIAの新GPU「GeForce RTX 20 シリーズ」の販売がスタートする。今回は、同日より販売開始となる「GeForce RTX 2080」と、シリーズ最上位モデルである「GeForce RTX 2080 Ti」のベンチマークレビューをお届けする。

RTコアとTensorコアが追加されたGeForce RTX 20 シリーズ

 現在までに発表されているGeForce RTX 20シリーズは、GeForce RTX 2080 Ti、GeForce RTX 2080、GeForce RTX 2070の3製品。いずれもNVIDIAの最新アーキテクチャ「Turing」に基づき、TSMCのNVIDIA向けプロセス「12nm FinFET NVIDIA(12nm FFN)」で製造されたGPUコアを採用している。

 Turingアーキテクチャでは、Voltaアーキテクチャで追加された機械学習用の「Tensorコア」と、レイトレーシング処理用の「RTコア」がStreaming Multiprocessor(SM)に追加された。これによりSMの構成は、64基のCUDAコア、8基のTensorコア、1基のRTコア、4基のテクスチャユニットとなっている。

 また、VRAMには14Gtps動作のGDDR6メモリを新たに採用した。これにより、メモリ帯域幅は最上位のGeForce RTX 2080 Tiで616GB/s、GeForce RTX 2080とGeForce RTX 2070でも448GB/sに達している。

 GeForce RTX 20 シリーズ各GPUの主な仕様は以下のとおり。NVIDIAのリファレンスモデルである「Founders Edition」は、一部の仕様が標準仕様より高く設定されているためカッコ書きで記載している。

【表1】GeForce RTX 20 シリーズのおもな仕様
モデルナンバーGeForce RTX 2080 TiGeForce RTX 2080GeForce RTX 2070
アーキテクチャTuring
製造プロセス12nm FFN
GPUコアTU102TU104TU106
Streaming Multiprocessor68基46基36基
CUDAコア4,352基2,944基2,304基
Tensorコア544基368基288基
RTコア68基46基36基
テクスチャユニット272基184基120基
ROPユニット88基64基64基
ベースクロック1,350MHz1,515MHz1,410MHz
ブーストクロック1,545MHz(1,635MHz)1,710MHz(1,800MHz)1,620MHz(1,710MHz)
メモリ容量11GB GDDR68GB GDDR68GB GDDR6
メモリスピード14.0Gtps14.0Gtps14.0Gtps
メモリインターフェース352bit256bit256bit
メモリ帯域616GB/sec448GB/sec448GB/sec
SLI対応対応(NVLink)対応(NVLink)
消費電力250W(260W)215W(225W)175W(185W)
価格999ドル(1,199ドル)699ドル(799ドル)499ドル(599ドル)

 GeForce RTX 20 シリーズでは、目玉機能であるRTコアによるリアルタイムレイトレーシングのほかにも、Tensorコアを活用するアンチエイリアシング「DLSS(Deep Learning Super Sampling)」が利用できる。GeForce GTX 10 シリーズ以前にはなかった新たなハードウェアを活用することで、映像の品質を高めることができるのがGeForce RTX 20 シリーズが特徴だ。

レイトレーシングは光の軌道を辿ることで影や映り込みを高品質に表現できるが処理が複雑なため、ゲームのようにリアルタイム性が求められるシーンでの利用は困難だった。Turingでは専用のRTコアが処理を請け負うことで、リアルタイムでの処理を可能としている
Tensorコアと深層学習を活用するDLSS。既存のTAAよりも精細感を損なわずにジャギーを除去できるとされている。利用にはTensorコアが必須であり、GeForce GTX 10 シリーズ以前のGPUでは利用できない

デュアルファンGPUクーラーを搭載するFounders Edition

 今回のテストにさいして、NVIDIAよりGeForce RTX 2080 TiとGeForce RTX 2080のFounders Editionをお借りした。

GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition2
GeForce RTX 2080 TiのGPU-Z実行結果
GeForce RTX 2080 Founders Edition。見た目はGeForce RTX 2080 Tiとほとんど変わらない
GeForce RTX 2080のGPU-Z実行結果

 前述のとおり、GeForce RTX 20 シリーズのFounders Editionは公式オーバークロック版ともいうべき高クロック仕様となっており、消費電力も標準仕様から10Wずつ高い。こうした仕様を支えるため、従来のFounders Editionとは全く異なるデュアルファンタイプのGPUクーラーを採用している。

 基板上部にはLEDを内蔵したGeForce RTXロゴのほか、SLI用のNVLinkコネクタ、補助電源コネクタを備える。電源コネクタは、GeForce RTX 2080 Tiが8ピン×2系統、GeForce RTX 2080は8ピン+6ピンを備えており、PCI Express スロットからの供給と合わせるとそれぞれ375Wと300Wを供給できる仕様だ。

 ブラケット部の画面出力端子には、DisplayPort 1.4a×3基とHDMI 2.0b×1基に加え、次世代VRヘッドセット向け規格であるVirtualLinkに対応したUSB Type-Cを1基備えている。

90mmファンを2基搭載するGPUクーラーを搭載。ファンの風は基板の上下に抜けるかたちとなっている
基板上部のGeForce RTXロゴ。LEDが内蔵されており、動作中は緑色に発光する
NVLinkコネクタ。従来のSLIコネクタに替わってSLI用のインターフェイスとして採用された
GeForce RTX 2080 Tiの補助電源コネクタ。8ピンを2系統備えており、最大375Wの電力を供給可能
GeForce RTX 2080の補助電源コネクタ。8ピン+6ピンを備えており、最大300Wの電力を供給可能
画面出力端子。HDMI 2.0b×1、DisplayPort 1.4a×3、USB Type-C(VirtualLink)×1
基板の裏面には金属製のバックプレートを備える。基板長は約267mm
ZOTACから発売される、ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 AMP。基板はFounders Editionと共通だが、クーラーがオリジナル設計となる
こちらはASUSのROG-STRIX-RTX2080-O8G-GAMING。全体がブラックで精悍な印象を受ける

テスト機材

 GeForce RTX 20 シリーズの比較用として、GeForce GTX 10 シリーズにおける同格のGPUである「GeForce GTX 1080 Ti」と「GeForce GTX 1080」、それにAMDのハイエンドGPU「Radeon RX Vega 64」を用意した。比較用GPUを搭載したビデオカードは、いずれもリファレンスモデルだ。

GeForce GTX 1080 TiのFounders Edition
GeForce GTX 1080 TiのGPU-Z実行画面
GeForce GTX 1080のFounders Edition
GeForce GTX 1080のGPU-Z実行画面
Radeon RX Vega 64のリファレンスモデル。テスト時は標準のプライマリBIOSで動作させている
Radeon RX Vega 64のGPU-Z実行画面

 各ビデオカードのテストには、6コア/12スレッドCPUのIntel Core i7-8700Kを搭載したIntel Z370環境を利用した。そのほかのパーツ構成については以下の表のとおり。

【表2】テスト機材一覧
GPUGeForce RTX 2080/2080 TiGeForce GTX 1080/1080 TiRadeon RX Vega 64
CPUCore i7-8700K
マザーボードASUS PRIME Z370-A(UEFI: 1002)
メモリDDR4-2666 8GB×2(2ch、19-19-19-43、1.2V)
システム用ストレージSamsung SSD 950 PRO(256GB SSD/M.2-PCIe 3.0 x4)
アプリケーション用ストレージSanDisk Ultra 3D SSD(1TB SSD/SATA 6Gbps)
電源玄人志向 KRPW-TI700W/94+(700W 80PLUS Titanium)
グラフィックスドライバGeForce Game Ready Driver 411.51GeForce Game Ready Driver 399.24Radeon Software Adrenalin Edition 18.9.1 Optional
OSWindows 10 Pro 64bit(Ver 1803 / build 17134.285)
電源設定高パフォーマンス
室温約25℃

ベンチマーク結果

 それでは、ベンチマークテストの結果を紹介する。実行したテストは「3DMark(グラフ1~5)」、「VRMark(グラフ6~7)」、「Ashes of the Singularity: Escalation(グラフ8)」、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー(グラフ9)」、「モンスターハンター:ワールド(グラフ10)」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(グラフ11)」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION(グラフ12)」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク(グラフ13)」、「オーバーウォッチ(グラフ14)」、「ニーア オートマタ(グラフ15)」、「ゴーストリコン ワイルドランズ(グラフ16)」、「アサシン クリード オリジンズ(グラフ17)」。

 3DMarkでは、DirectX 12テストの「Time Spy」では、GeForce RTX 2080がGeForce GTX 1080 Tiを約10~13%上回り、GeForce RTX 2080 Tiはそこからさらに約19~22%高いスコアを記録した。

 一方、DirectX 11テストの「Fire Strike」においては、GeForce RTX 2080はGeForce GTX 1080 Tiに逆転されており、同GPU比で94~98%のスコアとなっている。最高スコアを記録したのはGeForce RTX 2080 Tiで、比較製品中2番手のスコアを記録したGeForce GTX 1080 Tiを約12~19%上回った。

【グラフ01】3DMark v2.5.5029「Time Spy」
【グラフ02】3DMark v2.5.5029「Time Spy Extreme」
【グラフ03】3DMark v2.5.5029「Fire Strike」
【グラフ04】3DMark v2.5.5029「Fire Strike Extreme」
【グラフ05】3DMark v2.5.5029「Fire Strike Ultra」

 VRMarkのOrange Roomでは、Radeon RX Vega 64以外のGPUは、CPUがボトルネックとなる230fpsに到達している。多少の差がついているが、230fps前後のフレームレートを記録したGPUのスコア差は、GPU性能の差を反映したものではない。

 VRMarkにおいて唯一のDirectX 12テストである「Cyan Room」では、GeForce RTX 2080がGeForce GTX 1080 Tiを約36%も引き離して圧倒しており、GeForce RTX 2080 TiはそのGeForce RTX 2080を約23%上回る傑出したスコアを記録している。

 もっとも高解像度で実行されるBlue RoomでもGeForce RTX 20 シリーズの結果は良好で、GeForce RTX 2080がGeForce GTX 1080 Tiを約19%上回った。GeForce RTX 2080 Tiはそこからさらに約30%高いスコアであり、フレームレートは比較製品中唯一100fpsを超えている。

【グラフ06】VRMark v1.3.2020「スコア」
【グラフ07】VRMark v1.3.2020「平均フレームレート」

 Ashes of the Singularity: Escalationでは、2とおりの画面解像度(フルHDと4K)で、DirectX 11とDirectX 12のパフォーマンス差を確認した。描画品質は最高のCrazyに設定している。

 DirectX 11利用時は、最高フレームレートを記録したGeForce RTX 2080 Tiに次ぐのはGeForce GTX 1080 Tiだが、DirectX 12を利用することでGeForce RTX 2080がGeForce GTX 1080 Tiと同等以上にフレームレートを伸ばして逆転している。

 3DMarkやVRMarkほど顕著ではないが、GeForce RTX 20 シリーズはDirectX 12を利用した際のパフォーマンスの伸びが大きい傾向にあるようだ。

【グラフ08】 Ashes of the Singularity: Escalation(v2.75.32453)

 9月14日に発売されたばかりのシャドウ オブ ザ トゥームレイダーは、GeForce RTX 20 シリーズの新機能であるレイトレーシングとDLSSの両方をサポート予定のタイトルだが、リリース時点ではどちらも未実装となっているため、これらの機能を試すことはできなかった。

 今回は、APIをDirectX 12、描画品質プリセットを「最高」、アンチエイリアシングを「TAA」にそれぞれ設定し、3つの画面解像度でテストを実行した。

 GeForce RTX 2080がGeForce GTX 1080 Tiに4~7%の差で比較製品中2番手につける一方、GeForce RTX 2080 Tiは解像度が上がるごとに2番手のGeForce RTX 2080との差を広げており、4K解像度では約26%の差をつけて平均58fpsを記録している。

【グラフ09】 シャドウ オブ ザ トゥームレイダー(v1.0)

 モンスターハンター:ワールドでは、描画品質を最高に固定して、フルHDから4Kまでの3画面解像度でフレームレートを測定した。

 モンスターハンターワールドはDirectX 11タイトルだが、GeForce RTX 2080はGeForce GTX 1080 Tiを約8~10%上回った。GeForce RTX 2080 Tiはそれを約16~25%上回っており、画面解像度が大きくなるほどGeForce RTX 2080との差を広げている。

【グラフ10】 モンスターハンター:ワールド(Revision 152771)

 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、描画品質を「高品質」に設定して、フルHDから4Kまでの画面解像度でテストを実行した。

 ここでもGeForce RTX 2080は2~4%の僅差ながらGeForce GTX 1080 Tiを超えるフレームレートを記録して比較製品中2番手の位置を獲得した。

 そのGeForce RTX 2080に14~30%の差をつけて上回ったGeForce RTX 2080 Tiが、ここでもトップスコアを記録している。フルHD時に最高評価「非常に快適」の基準スコア12,000と、4K時に「快適」評価の基準スコアである6,000をクリアしている点も注目だ。

【グラフ11】FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク

 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONの製品版でもテストを実行した。こちらでは、高解像度テクスチャパックである4K Resolution Packを適用した状態で描画品質を「最高」に設定。NVIDIA ShadowWorksなどのオプション設定の有無と、フルHDから4Kまでの3画面解像度で、計6とおりの条件でフレームレートを測定した。

 今回のテストではCPUにCore i7-8700Kを用いたが、今回の測定ではNVIDIAのオプション設定を無効にした場合は106fps前後、有効にした場合は85fps前後でフレームレートが頭打ちになっている。フレームレートが頭打ちになった条件を除けば、GeForce RTX 2080はGeForce GTX 1080 Tiと同等以上のフレームレートを記録しており、GeForce RTX 2080 TiはGeForce RTX 2080を20~26%上回る。

 NVIDIAのオプションを無効にした場合、GeForce RTX 2080 Tiは4K解像度でも60fpsを超える68.7fpsを記録している。NVIDIAのオプション設定を全て有効にするとさすがに60fpsを下回っているが、4K解像度でのゲーミングを可能にする実力を備えていることが伺える。

【グラフ12】 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION(4K Resolution Pack/build 2990407)

 ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークでは、描画品質を「最高品質」に設定して、フルHDから4K解像度でスコアを取得した。

 GeForce RTX 2080は4K解像度以外ではGeForce GTX 1080 Tiを僅かに下回っているが、その差は約1%程度であり、ほぼ同等と言っても良い程度の差だ。GeForce RTX 2080 TiとGeForce RTX 2080の差は、CPU側がボトルネックの影響もあってフルHDで5%だが、描画負荷の高い4K解像度では約30%に拡大している。

【グラフ13】ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク

 オーバーウォッチでは、描画品質を最高の「エピック」に設定してフレームレートを測定した。

 ここでもGeForce RTX 2080とGeForce GTX 1080 Tiの結果は拮抗しているが、高解像度になるほどGeForce GTX 1080 TiがGeForce RTX 2080との差を広げている。いずれにせよ、GeForce RTX 20 シリーズの両モデルは4K解像度でも60fpsを超えており、4K解像度かつ最高品質設定で快適なプレイが可能だ。

【グラフ14】 オーバーウォッチ(v1.28.0.1)

 ニーア オートマタでは、描画品質を「HIGH」に設定してフレームレートを取得した。

 今回のテスト環境ではフレームレートの上限が59fpsとなっているため、WQHD解像度以下の解像度ではGeForce GTX 1080 Ti以上のGPUがフレームレート上限に張り付いている。

 4K解像度になるとGeForce RTX 2080は44.1fpsを記録する一方で、GeForce GTX 1080 Tiは36.4fpsまで落ち込んでいる。GeForce RTX 2080 Tiでも、わずかにフレームレート上限を下回っているが、実際にプレイしてみると多くの場面でフレームレート上限で動作するため、まずまず快適にプレイすることが可能だった。

【グラフ15】 ニーア オートマタ(build 1787043)

 ゴーストリコン ワイルドランズでは、描画品質プリセットの中から最高設定の「ウルトラ」と、そのひとつ下の設定である「非常に高い」で、ベンチマークを実行した。

 描画設定「非常に高い」では、GeForce RTX 2080 Tiが4K解像度でも60fpsを超え、GeForce RTX 2080もGeForce GTX 1080 Tiを上回る55.48fpsを記録した。最高描画設定の「ウルトラ」になると、GeForce RTX 2080 Tiをもってしても4K解像度のフレームレートは50fps以下まで落ち込んでいるが、WQHD解像度までならGeForce RTX 20シリーズの2製品は60fpsを超えている。

【グラフ16】 ゴーストリコン ワイルドランズ(v3088436)

 アサシン クリード オリジンズでは、描画品質を「最高」に設定してベンチマークを実行した。なお、今回のテスト環境ではCPU側がボトルネックとなってフレームレートが90fps前後で頭打ちになっている。

 GeForce RTX 2080 Tiにとって、アサシン クリード オリジンズも4K解像度で60fpsを狙えるタイトルだ。GeForce RTX 2080も54fpsを記録しており、60fpsにこだわらなければ十分プレイできるレベルの動作が望める。

【グラフ17】 アサシン クリード オリジンズ(v1.51)

画質とパフォーマンスを改善するDLSSの効果をチェック

 今回実行したテストでは、レイトレーシングやDLSSを利用できるものがなかったが、レビュアー向けにDLSS対応版の「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」が先行配布されたので、これでDLSSの効果をチェックしてみよう。

 このベンチマークはデモ版であり、通常のFINAL FANTASY XVでも使われているTAA(Temporal Anti-Aliasing)とDLSSの効果の違いを4K解像度で実行して確認するものだ。実行中に撮影したスクリーンショットを以下に掲載する。

DLSS適用時
TAA適用時

 DLSSとTAAの違いは並べてみれば一目でわかるレベルだ。TAAに比べてDLSSは明らかに高精細な描画となっており、車のナンバープレートやキャラクターの髪のジャギーもTAAよりきれいに除去されている。

 GeForce RTX 2080 Tiで実行したさいのベンチマークスコアはTAA適用時が「4,311」であったのに対し、DLSS適用時は「5,841」。これほど明確にTAAを上回る描画品質を実現しながら、DLSSの方が約35%も高い性能を発揮している。

DLSS適用時のベンチマークスコアは「5,841」
TAA適用時のベンチマークスコアは「4,311」

 DLSSは描画品質の向上だけでなく、フレームレートの向上も期待できる機能だ。今回のように35%の性能向上が得られるのであれば、TAA適用時に45fpsだったゲームでも60fpsでの動作が期待できるようになる。

 もっとも、このベンチマークはDLSSのデモンストレーションであり、今後登場するDSLL対応ゲームで同様の品質と性能が得られるのかは未知数だ。DLSS対応ゲームが増えてきた機会に改めて検証を行なうこととしたい。

消費電力とGPU温度をテスト

 ベンチマーク実行中のピーク消費電力を測定した結果をまとめたものが以下のグラフだ。

 アイドル時の消費電力はGeForce RTX 20 シリーズの2製品のみ40Wを超えており、比較製品と比べるとやや高めだ。

 GeForce RTX 2080は、250WのGeForce GTX 1080 Tiより9~33W低く、GeForce GTX 1080より5~83W高い。性能を考慮すれば妥当な値であり、GeForce GTX 1080 Tiよりも電力効率に優れていると言えるが、性能と共に消費電力の絶対値も増加したかたちだ。

 GeForce RTX 2080 Tiの消費電力は最大で427Wに達しており、GeForce GTX 1080 Tiよりも14~53W高い値を記録している。この値にはCPUの消費電力も含まれており、フレームレートが高くなるほどCPU負荷(=消費電力)が増加することを考慮すべきではある。いずれにせよ、GeForce RTX 2080 Tiを利用する場合は、CPUとGPUの電力消費を賄えるように電源ユニットの容量には注意すべきだろう。

【グラフ18】 システムの消費電力

 GeForce RTX 20 シリーズのFounders Editionでは、デュアルファン搭載のGPUクーラーが採用された。このクーラーの実力を確かめるべく、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」を実行したさいの温度をGPU-Zでモニタリングしてみた。

 なお、GPU-Zで表示したデータによれば、GPU Boost動作の基準となる温度ターゲットは、GeForce RTX 2080 Tiが84℃、GeForce RTX 2080は83℃に設定されていた。

GeForce RTX 2080 Tiの温度ターゲット(Temperature Limit)の標準値は84℃
GeForce RTX 2080の温度ターゲット(Temperature Limit)の標準値は83℃

 まずはGeForce RTX 2080 Tiのモニタリングデータから確認しよう。ベンチマーク中のピークGPU温度は76℃、ファンの回転数のピークは約2,000rpmだった。

 高負荷なベンチマークでもGPU温度は温度ターゲット未満に保たれており、またファンの回転数も2,000rpmと控えめであるため、従来のFounders Editionと比べても負荷時の動作音は控えめだ。

 特徴的なのはGPU温度が低い時でも冷却ファンの回転数が1,500rpmで維持されている点だ。このため、アイドル時の動作音はやや大きめであるものの、GPU温度に連動したファン回転数の変化が少ないため、結果的にクーラーの騒音が気になりにくかった。

【グラフ19】「GeForce RTX 2080 Ti」のGPU温度とファン回転数の推移

 続いて、GeForce RTX 2080の結果だ。ベンチマーク中のピーク温度は72℃で、ファン回転数のピークは約1,780rpmだった。

 見た目とおりGPUクーラーの冷却性能はGeForce RTX 2080 TiもGeForce RTX 2080も大差がないようで、発熱量の少ないGeForce RTX 2080ではファン回転数もGPU温度もより低く抑えられている。ファン回転数がアイドル時に1,500rpmより下がらないという仕様も上位モデルと同様だ。

【グラフ20】「GeForce RTX 2080」のGPU温度とファン回転数の推移

 GeForce RTX 20 シリーズのFounders Editionで採用された新たなGPUクーラーは、見た目にたがわず優れた冷却性能を備えており、GeForce RTX 2080 Tiの発熱もきっちり抑え込んでいる。

 ケース内をきちんと換気できるエアフローを構築しさえすれば、つねに安定した温度を維持してGeForce RTX 20 シリーズの性能を引き出すことができるはずだ。

レイトレーシングだけじゃないGeForce RTX 20 シリーズ。既存のウルトラハイエンドを凌ぐ実力とDLSSにも要注目

 今回実施したテストのほとんどは、既存のゲームシーンにおける既存のGPUとの比較であり、GeForce RTX 20 シリーズの特徴であるレイトレーシングやDLSSの真価は未知数だ。だが、そんな中でも、FINAL FANTASY XVベンチマークでわずかながら垣間見えたDLSSが実現する画質と性能は、ゲーマーの興味を大いに惹くものであるはずだ。

 だが、それら新要素を抜きにしても、GeForce RTX 2080 Tiは現在最速のゲーム用GPUであり、GeForce RTX 2080も従来のウルトラハイエンドGPUと同等以上の性能を多くのゲームで発揮した。

 描画品質と性能を追求するエンスージアストや、4Kゲーミング環境を構築したいユーザーにとって、GeForce RTX 2080 TiとGeForce RTX 2080は第一に検討すべきGPUであると言えるだろう。