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Lenovoが富士通のPC事業を支配下に。FMVブランドはNECに加え継続
2017年11月2日 19:02
富士通のPC事業を行なう富士通クライアントコンピューティング(FCCL)に、Lenovo Group Limited(レノボ・グループ・リミテッド)が51%を出資し、レノボ傘下で事業を推進することになる。
2017年11月2日午後3時30分から、都内で行なわれた会見で、富士通クライアントコンピューティングの齋藤邦彰社長は、「レノボが持つ世界屈指の調達力、スケールメリットを手に入れることで、FCCLのビジネスを強化したい。これは顧客に対して、より魅力のある製品、サービスを提供するための提携である。レノボ、富士通、そして富士通クライアントコンピューティングの3社のシナジーを最大限に発揮し、これからもグローバルのお客様に、より一層、魅力的な商品とサービスを提供していく。日本の市場は成長すると予測されているが、FCCLは、それ以上の伸びをしたい」と述べた。
また、「FCCLは、人を中心にして、いつでもどこでもよりリアルにといった、人が本質的にほしがるものを追求し、心地よさを提供することにこだわっている。これによって、成長し、イノベーションをクリエイトするという姿勢は、これからも変わらない。FCCLは、セキュリティやモビリティが強みであり、自前の工場でカスタマイズし、フレキシビリティを持った製品を提供できる。この体制は今後も維持できる。自前の開発、製造、営業、サポートをタイトにつながるスーパーバリューチェーンがFCCLの特徴であり、これをさらに進化させたい」と述べた。
富士通は、2018年度第1四半期を目途に、同社の100%子会社であるFCCLの株式の51%をレノボに譲渡。富士通は44%の出資比率となり、日本政策投資銀行(DBJ)が5%を出資する。富士通が受け取る譲渡価額は合計280億円(約19億香港ドル)。そのうち、レノボが255億円、DBJが25億円となる。
FCCLは社名を継続して使用。代表取締役社長には、現在、FCCLの代表取締役社長を務める齋藤邦彰氏が引き続き就くことになる。なお、2017年6月1日時点でのFCCLの社員数は1,128人。
FCCLは、合弁会社となった後も、富士通ブランドのPCの開発、生産を行ない、現在の製品ポートフォリオを維持するほか、川崎の開発部門や、島根富士通による製造体制を維持することになる。富士通傘下でデスクトップPCを生産している福島県伊達市の富士通アイソテックは、FCCLから委託する形でデスクトップPCの生産を継続する。工場の閉鎖については「計画はない」とした。
法人向け製品については、従来どおり、富士通から販売パートナーを経由した販売と直販部門による販売体制を維持。サポートおよびサービスも富士通が提供する。一方、国内の個人向け製品は、FCCLから量販店およびFCCLの直販によって供給する体制になる。個人向け製品のサポートおよびサービスはFCCLが提供する。FCCLでは、2017年4月から、個人向けPCに関しては、富士通パーソナルズから営業部門を移管していた。
富士通では、「引き続き、高品質かつ革新的で信頼性の高い富士通ブランドのPC製品とサポートサービスをグローバルな企業に提供し、テクノロジソリューションと合わせて、顧客のデジタル革新に貢献していく」としたほか、「この戦略的提携により、富士通の持つグローバルな販売力と顧客サポート力、顧客の要望にきめ細かに対応する開発力やシステムインテグレーション力、高度に自動化、効率化された製造能力と、レノボが持つ世界規模の調達力とプレゼンスを活用し、日本を含めたグローバルPC事業のさらなる成長と、規模や競争力の拡大を目指す。また、DBJは金融機関の立場から合弁会社への投資を通じて、ファイナンスに関する知見の提供などを行ない、本事業の持続的な発展に貢献する」としている。
レノボ・グループ・リミテッド エグゼクティブバイスプレジデント兼CFOのワイミン・ウォン氏は、「この契約内容については、今後、一切変更を加えるつもりはない。唯一契約しているのは有益な協力関係を維持することだけである。富士通と協力しながら、多くの価値を日本のビジネスにもたらすことになる」とし、今後、出資比率の変更や、富士通ブランドの使用などに制限がないことを示した。
会見で、富士通の田中達也社長は、「今回の提携は、IoT時代における多様化する顧客ニーズに対して、より一層、貢献するのが狙い。法人向けPCはこれまで変わることなく、富士通が責任を持って、PC製品とサポートを提供。当社の企業向けサービスとあわせて、顧客のビジネス成長に貢献することになる。引き続き、富士通ブランドのPCを安心して利用してもらうようにする」とした。
また、提携の背景についても説明。
「富士通は顧客のデジタル革新に貢献することを目指し、さまざまなビジネスモデルの変革に取り組んでいるところだが、PC事業については、2016年にFCCLを設立し、グローバルの成長に向けた可能性について検討してきた。PCのグローバルリーダーであるレノボとの協業がベストなソリューションであると判断し、その実現に向けた協議を進めてきた。昨年(2016年)10月に提携の検討を発表してから、顧客にとってなにが最適かという観点から、両社のシナジーがもっとも効果的となるビジネススキームを目指して、真剣な協議を、丁寧に時間をかけて行ない、本日に至った。
30年以上にわたって培ってきた製品開発力と製造能力に加えて、レノボが持つ世界屈指の調達力と、スケールメリットを活用することが目的である。これにより、富士通ブランドのPCの商品力を強化し、国内およびグローバルの顧客に一層魅力的な製品を提供できる。まさに最高のコラボレーションであると考えている。
レノボとのコラボレーションは、グローバルサービスカンパニーを目指す富士通グループ全体にとってもたいへん有意義であると確信している。また、ジョイントベンチャーには、日本政策投資銀行にも参加してもらい、ファイナンスの知見を活用し、一緒にビジネスを育てることができる。富士通は今後も最先端のデジタルテクノロジでグローバルの顧客に貢献する。新生FCCLは、その一翼をになう」とした。
レノボ・グループ・リミテッド 会長兼CEOのヤンチン・ヤン氏は、「2005年にIBMのPC事業を継承してから、われわれは、多くのジョイントベンチャーの取り組みによって成功してきた。レノボの事業はPCの枠を超え、データセンター事業やモバイル事業を次の成長エンジンとし、AIなどの新たな技術にも投資をしている。
だが、PCは、われわれのビジネスの原点であり、コアである。今回の提携は、世界で3番目の市場である日本において、信頼されるブランドとの提携となる。レノボの規模と効率性を、富士通の成長にも活かすことができる。
また、レノボにとってもシナジーをもたらすことになる。富士通はグローバルな実績を持ち、とくに欧州で高い実績がある。PCだけでなく、サービス面でも協力できる。競争力を持つ製品を共通の顧客に対して提供できる。顧客に対して言いたいのは、今回のパートナーシップは日本におけるコミットメントを示したものであり、さまざまな選択肢を提供するものであるということ。今後、富士通とともに、PC業界を発展させたい」と述べた。
レノボ・グループ・リミテッドのケン・ウォンシニアバイスプレジデント兼アジアパシフィック地域プレジデントは、「今回の戦略的提携は、グローバルレベルにおける研究、開発、製造、販売までに至る提携になる。FCCLは、独立した専任の組織であり、FCCLの業務、販売ルート、経営陣には変更がない。富士通からのスムーズな移行を行なう」とした。
そして、「日本は、世界3大市場の一角であり、われわれにとっても重要な市場であり、多くなチャンスがある市場だと考えている。企業向けを中心に、PC需要が拡大している。2020年の東京オリンピックまでその勢いは続くだろう。日本のユーザーは、ARやVRなどの技術を重視しており、世界でもっとも先進的なテクノロジを好み、品質を望むユーザーであり、日本のPC市場全体の55%がプレミアムPCである。これは、全世界では17%であるのと比較してもその差がわかる。また、1人あたりの平均売り上げがもっとも高いのも日本である」とした。
さらに、「レノボのグローバルスケールと富士通のサービス、システムインテグレーション能力を組み合わせることで、チャンスを見いだすことができる。共通の目的は、意味ある革新を提供することと、優れたユーザー体験を提供することであり、よりよいデバイス、サービスの提供ができる。富士通は強力なプレミアムブランドとして知られ、システムテングレーションの能力、製造能力、サービス品質にも高い。
レノボは、フルレンジでの存在感を示すことができる。おたがいの強みを補完することで、さらなる成長ができる。今回の提携を通じて、PCやスマートデバイスの事業が躍進することになり、富士通のグローバルでの存在感を高めることにもつながり、PC産業を広げることもできる。レノボは、日本において引き続き投資を続けることになる」とした。
今後、富士通ブランドとNECブランドのPCが、レノボ傘下のなかで開発、生産されることになるが、レノボ・グループ・リミテッド シニアバイスプレジデント兼アジアパシフィック地域プレジデントのケン・ウォン氏は、「どんな市場でも競争がある。だからこそ選択肢が必要である」とし、ヤン会長兼CEOも「日本のユーザーに選択肢を提供することになる。これによって、富士通の顧客にも、レノボの顧客にも満足してもらえる」と、これまでの体制を維持する考えを示した。
FCCLの齋藤社長も、ミックスドリアリティの取り組みを例に出しながら、「MRやVRは、これから市場が大きく広がる。2社で出しても間に合わないほどである。おたがいに広がるところを目指していくことになる」とコメント。富士通の田中社長も、「コラボレーションのなかから、コンペティションが生まれることもある」などとした。
一方、交渉が長期化したことについては、「この提携は、これからが長い。本当に、本音で、徹底的に議論したために時間がかかった。顧客視点で、両社のシナジーがどう出せるのか、それを顧客価値にどうつなげることができるかを徹底的に議論した。そこは細かくなったが、議論をした」とし、ヤン会長兼CEOは、中国のことわざを引用しながら、「よい結果を望むならば、時間をかける必要がある。この合意には満足している。これは成功すると考えている」と述べた。