笠原一輝のユビキタス情報局

Windows 11に更新可能なCPUを解明。Intelは第8世代Core、AMDはRyzen 2000以降が必要

Windows 11互換性チェックプログラムを実行している所。中央のタブレットはアップグレードできず、両脇の2つはアップグレード可能と表示されている

 MicrosoftがWindows 11を発表した。その後Microsoftが公開した詳細な要件と、アップグレードできるかどうかを確認できるツール「Windows 11互換性チェックプログラム」を巡って困惑が広がっている。というのも、一見すると要件を満たしているが、そのツールで確認するとアップグレードできないと判別されるPC(特に4~5年前のPC)が続出しているからだ。

 そこで本記事では、このアップグレード要件を整理し、どのPCがアップグレード可能なのかを整理していきたい。分かってきたことは、Intel CPUでは第7世代と第8世代の間に、AMD CPUでは初代Ryzenと2000シリーズの間で線引きが行なわれている状況だ。

 Intelの第7世代Coreは2016年の8月に発表された製品で、2016年の冬から2018年初頭にかけて販売されたPCに搭載されている。それ以前に購入したノートPCなどでは、Windows 11にアップグレードできない可能性が高くなっている。

Windows 11では、64bit CPU、セキュアブート、TPM 2.0、WDDM 2.xに対応したグラフィックスドライバが必要

 Microsoftが発表したWindows 11が動作する「ハードウェア要件/仕様の最小要件」は以下のようになっている。

【表1】Windows 11が動作する「ハードウェア要件/仕様の最小要件」
プロセッサ1GHz以上で2コア以上の64bit互換プロセッサまたはSoC
メモリ4GB以上
ストレージ64GB異様
システムファームウェアUEFI/セキュアブート
TPMTPM 2.0
ビデオカードDirectX 12以上(WDDM 2.0に対応)
ディスプレイ9型以上で8bitカラーの720pディスプレイ以上

 現在Windows 10が動作する多くのPCはこのスペックを満たしている。ぱっと見ると問題になりそうなのは、システムファームウェアのUEFI/セキュアブート対応、TPM 2.0対応、それとビデオカードのドライバがWDDM(Windows Display Driver Model) 2.0以降に対応しているかだろう。

 ノートPCに関しては一部のゲーミングPCなどを除けば、既にシステムファームウェアはBIOSからUEFIになっており、セキュアブートに対応している。

 そしてTPM 2.0に関しても第4世代Coreプロセッサ(Haswell)以降のプロセッサなどには、「PTT」(Platform Trust Technology)として搭載されており問題がない。

 ただし、第4世代Coreプロセッサ以降のCPUでも、ノートPCによっては、特にビジネス向けのPCなどでは、別途TPM 1.2を外部のTPMとして搭載されている場合がある。これは企業側のニーズ(ソフトウェアがTPM 2.0に対応していないなどの理由)で、わざとTPM 1.2を搭載させたためだ。

 ただ、その場合でも近年は外部のTPMも2.0になっていることがほとんどで、ここ数年に販売されているノートPCであれば、よほどのことがない限り、TPM 1.2を搭載したものはないだろう。

 それに対してデスクトップPC、特に自作PCの場合には、ハードウェア的にUEFI/セキュアブート/TPM 2.0に対応していない例は少なくない。

 というのも、マザーボードベンダーが標準設定でセキュアブートやCPUに内蔵しているTPM(IntelならPTT、AMDならfTPM)をオフにしている場合があり、ユーザーは気付かずにそのままOSを使用している場合があるからだ。

 ハードウェア的には対応しているのに、セキュアブートやTPMが有効になっていない場合は、UEFIのファームウェア設定で有効にする必要がある。なお、TPMに関しては詳しく知りたい方は、下記の記事が詳しいのでそちらを参照して頂きたい。

 これらを設定した後、セキュアブートやTPM 2.0が有効になっているかどうかはWindows標準のツールで確認できる。

 セキュアブートの対応/非対応は、タスクバーの検索から「msinfo32」と入れると表示される「システム情報」を起動して確認する。その「システムの要約」から「セキュアブートの状態」が有効になっていればOKだ。

検索で「msinfo32」と入力するとシステム情報アプリが表示されるのでクリック
システム情報アプリで「セキュアブートの状態」が有効になっていれば、セキュアブートは有効

 TPMの方は、デバイスマネージャーの中に「セキュリティデバイス」があり、その下に「トラステッド プラットフォーム モジュール 2.0」があれば、TPM 2.0が有効になっていることになる。

デバイスマネージャに「トラステッド プラットフォーム モジュール 2.0」があれば、TPM 2.0が有効になっている

 グラフィックス機能の要件であるWDDM 2.0に対応しているかどうかは「DirectX 診断ツール」で調べることができる。タスクバーの検索から「dxdiag」と入力して起動し、表示されたDirectX 診断ツールの「ディスプレイ」のタブを選ぼう。ドライバの「ドライバモデル」の中にWDDM 2.x(小数点以下のバージョンはそれぞれのデバイスドライバにより異なる)と表示されていれば対応していることになる。

ドライバモデルにWDDM 2.Xと表示されていればWDDM 2.xに対応

 AMDも、Intelも、NVIDIAもWDDM 2.xに対応したドライバを配布しているので、新しいドライバがインストールされたPCであれば、ここの項目はほぼ気にする必要はない。

AMDならRyzen 2000シリーズ以降、Intelなら第8世代Core以降を搭載したPCがWindows 11にアップグレード可能

 そうした条件を満たした上で「Windows 11互換性チェックプログラム」を実行しても、「このPCでWindows 11を実行できます」とならない例が続出している。

 そのからくりは、Microsoftの「Windows 11の要件(英文)」についてのページを見ると分かる。掲載されている互換プロセッサの先にリンクがあり、そこからWindows 10/11のCPU互換性リストに飛べるようになっている。そこにWindows 11でサポートされるプロセッサの一覧が載っており、リスト非掲載のCPUははねられてしまうのだ。

 このリストはCPUが年代順にも並んでおらず、とても見づらいので、筆者がクライアントPCに使われるCPU(AMD EPYCとIntelのサーバー向けXeonを除外)に開発コードネームと発売時期などを付加して、並べ替えたものが以下の表2と表3になる。

※表が長いため、別ページに配置しています

 なお、Armプロセッサで唯一サポートされるQualcomm SnapdragonのPC版は、発表されたばかりのSnapdragon 7c Gen 2を除いて全てリストに入っている。Qualcommの最初のPC向け製品であるSnapdragon 8cxが発表されたのは2017年の12月で、実際に搭載製品が登場したのは2018年に入ってからと比較的新しい製品であるためこうなっているのだろう。

 この表2、表3のでもまだ分かりにくいので、製品ブランド/開発コードネーム/発表時期を基準に整理したのが、以下の表4と表5になる。

【表4】AMDのWindows 11対応CPU(コードネームと発表時期で抽出)
製品ブランド名開発コードネームターゲット発表時期
Ryzen 2000シリーズPinnacle RidgeデスクトップPC2018年Q2
Ryzen Threadripper 2000シリーズColfaxHEDT/ワークステーション2018年Q3
Ryzen 4000シリーズPicassoノートPC/デスクトップPC(iGPUモデル)2019年Q1
AMD/AthlonRaven RidgeノートPC/デスクトップPC(iGPUモデル)2019年Q1
Ryzen 3000シリーズMatisseデスクトップPC2019年Q2
Ryzen Threadripper 3000シリーズCastle PeakHEDT/ワークステーション2019年Q4
Ryzen 4000シリーズRenoirノートPC/デスクトップPC(iGPUモデル)2020年Q1
AthlonDaliノートPC2020年Q1
Ryzen 5000シリーズVermeerデスクトップPC2020年Q4
Ryzen 5000シリーズCezanneノートPC2021年Q1
Ryzen 5000シリーズLucienneノートPC2021年Q1
【表5】IntelのWindows 11対応CPU(コードネームと発表時期で抽出)
製品ブランド名開発コードネームターゲット発表時期
第8世代Core/Celeron/PentiumKaby Lake Refreshモバイルノート(Uシリーズ)2017年Q3
第8世代/第9世代CoreCoffee LakeデスクトップPC2017年Q4
Celeron/PentiumGemini Lakeモバイルノート2017年Q4
第8世代/第9世代CoreCoffee Lakeモバイルノート(Uシリーズ)/モバイルノート(Hシリーズ)2018年Q2
第8世代Core/第10世代Core/PentiumAmber Lake Yモバイルノート(Yシリーズ)2018年Q3
第8世代CoreWhiskey Lakeモバイルノート(Uシリーズ)2018年Q3
第10世代Core/PentiumIce Lakeモバイルノート(Uシリーズ)2019年Q2
第10世代CoreComet Lakeモバイルノート(Uシリーズ)/モバイルノート(Hシリーズ)2019年Q3
Xeon WCascade Lakeワークステーション2019年Q4
Core XCascade Lake-XHEDT2019年Q4
Celeron/PentiumGemini Lake Refreshモバイルノート2019年Q4
第10世代CoreComet LakeデスクトップPC2020年Q2
ハイブリッド・テクノロジー搭載CoreLakefieldモバイルノート2020年Q2
第11世代CoreTiger Lakeモバイルノート(Uシリーズ)/モバイルノート(Hシリーズ)2020年Q3
Atom/Celeron/PentiumElkhart Lake組み込み向け2021年Q1
Celeron/PentiumJasper Lakeモバイルノート2021年Q1
第11世代CoreRocket LakeデスクトップPC2021年Q1

 こうすると、AMDのデスクトップPC向けCPUであれば、「Ryzen 2000シリーズ」(Pinnacle Ridge)から、ノートPC向けであれば「Ryzen 3000シリーズ」(Picasso)からという切り分けであることが分かる。

 また、Intelの場合はデスクトップPC向けCPUであれば、「第8世代Core」(Coffee Lake)、ノートPC向けCPUであれば「第8世代Core」(Kaby Lake Refresh)以降で利用できることが分かるだろう。

第7世代と第8世代で明確に分かれるWindows 11へのアップグレード可否

 それでは手元にあったPCで実際に「Windows 11互換性チェックプログラム」を走らせてみてどうなったのかを紹介していきたい。

①ソニー VAIO Duo 13

【表6】ソニー VAIO Duo 13のWindows 11要件対応状況
互換プロセッサ搭載×(第4世代Core/Core i7-4650U)
メモリ8GB
ストレージ256GB
セキュアブート有効
TPMPTT搭載(TPM 2.0対応)
WDDM 2.x対応WDDM 2.0

 ソニーのVAIO Duo 13はWindows 11の要件のうち、CPUだけが対応していないというデバイスになる。タッチやペンにも対応しており、Windows 11で使えると便利そうなデバイスなのだが、発売は2014年と既に7年前のデバイスだ。そのため、Windows 11互換性チェックプログラムを走らせると「このPCではWindows 11を実行できません」と表示されてしまった。

ソニー VAIO Duo 13の結果

②Microsoft Surface Go初代

【表7】Microsoft Surface Go初代のWindows 11要件対応状況
互換プロセッサ搭載×(Pentium 4415Y)
メモリ8GB
ストレージ128GB
セキュアブート対応
TPMPTT(TPM2.0)
WDDM 2.x対応WDDM 2.6

 Microsoftの初代Surface Goは、Pentium 4415Y(Kaby Lake)を搭載しており、CPU以外の要件は全て満たしている。第7世代相当のPentium 4415Yと、スペック上はギリギリアウトな製品となる。こちらもやはり、Windows 11互換性チェックプログラムを走らせると「このPCではWindows 11を実行できません」と表示されてしまった。

 なお、現行製品となるSurface Go 2にはPentium Gold 4425YないしはCore i3-8100YというAmber Lake YベースのCPUが搭載されており、いずれもリストには掲載されているので、Surface Go 2はWindows 11にアップグレードできる。

Microsoft 初代Surface Goの結果

③FCCL LIFEBOOK UH90/B3

【表8】FCCL LIFEBOOK UH90/B3のWindows 11要件対応状況
互換プロセッサ搭載○(Core i7-8550U)
メモリ20GB
ストレージ1TB
セキュアブート対応
TPMPTT(TPM 2.0)
WDDM 2.x対応WDDM 2.4

 FCCL(富士通クライアントコンピューティング)のLIFEBOOK UHは、軽量さで人気を集めるモバイルPC。筆者が所有しているLIFEBOOK UH90/B3はCore i7-8550U(Kaby Lake Refresh)を搭載しており、こちらはCPU要件をギリギリクリアしている製品となる。結果は、当然とも言えるがWindows 11へのアップグレードが可能と表示された。

FCCL LIFEBOOK UH90/B3の結果

④MSI Modern-14-B4MW-011JP

【表9】MSI Modern-14-B4MW-011JPのWindows 11要件対応状況
互換プロセッサ搭載○(Ryzen 7 4700)
メモリ16GB
ストレージ512GB
セキュアブート対応
TPMfTPM(TPM 2.0対応)
WDDM 2.x対応WDDM 2.7

 MSIのModern-14-B4MW-011JPはRyzen 7 4700Uを搭載したノートPCで、昨年(2020年)筆者が購入してまだ1年程度しか経ってない新しいPCとなる。もちろんWindows 11のCPUサポートリストにRyzen 7 4700Uは入っており、結果はアップグレードが可能と表示された。

MSI Modern-14-B4MW-011JPの結果

⑤Microsoft 365でプロビジョニングされているビジネスノートPC

 この「Microsoft 365でプロビジョニングされたビジネスノート」というのは、筆者のメインマシンだが、Microsoft 365 Enterprise E3のサブスクリプションに付属してくるEnterpriseへのアップグレード権を利用し、Windows 10 Enterpriseを実行している。

 こういったAzure AD(Active Directory)のアカウントを利用して、プロビジョニングされているビジネス用のPCでは以下のような表示になる。要するにアップグレードできるかどうかは、企業のIT管理者がどのように設定するか次第ということだ。

 こういった企業の管理下にあるPCについては、Windows 11が正式に展開される時期に、IT管理者に聞いてみるしかない。

企業管理下にあるPCの場合の結果

現時点ではこのまま製品版となる可能性は高いが、Microsoftがユーザーの声をどこまで配慮するかに注目

 以上のテストから、Surface GoのKaby Lake世代で、Coreで言えば第7世代相当のPentium 4415Yはアウトで、FCCL LIFEBOOK UH90/B3のように第8世代Coreを搭載した製品はセーフということが分かった。

 つまりMicrosoftは、IntelのCPUであれば第7世代と第8世代CPUの間に、AMDは初代と2代目Ryzenの間に線を引いているということだ。Microsoftがこうしているのは、結局のところWindows 11に搭載されている新しい機能を利用するためには、より強力なハードウェアが必要だからなのだろう。

 ただ、冷静になって考えてみると、第7世代と第8世代でそんなに大きな差があると言えるのだろうか?確かに薄型ノートPC向けはKaby Lake Refreshでクアッドコアになったので、第7世代のデュアルコアからは大きな性能向上を果たした。

 また、Surface Goに搭載されている第7世代相当のPentium 4415Yがアウトで、同じデュアルコアのSurface Go 2に搭載されているPentium Gold 4425Yがセーフとなっているのもよく分からない。つまり性能だけでなく、別の理由もあると考えるのが妥当だろう。

 その理由は、Microsoftがこのプロセッサリストの「サポートされるプロセッサのリスト」という表現に隠されている。要するに、このリストにあるプロセッサを利用している場合には、Windowsが正しく動作することを保証しますが、それ以外は保証できませんよ、という表現だ。

 当然のことだが、動作を保証するためには膨大な動作検証をする必要があり、それなりのコストがかかる。結局そのコストは最終的には製品価格の値上げとなってユーザーに跳ね返るのだから、どこかで線引きをせざるを得ないのは致し方ないところだ。

 そのバランスを取った結果が、上の表で示したような動作するプロセッサのリストなのではないだろうか。そのため、リストに掲載されていないCPUを載せたPCでは、互換性チェックプログラムでアップグレードできないと判別されることになる。このプログラムで動作不可を言い渡されたPCが、絶対にWindows 11にアップグレードできないのかどうかは、今の時点では分からない。

 Microsoftは、まもなく始まるWindows 11のアーリープレビューにて、6月24日までにWindows Insider PreviewのDev Channelに登録したユーザーにだけ、このCPUなどの制限を緩和して参加できるようにすると明らかにしている。

 この例外を除き、リストに載っていないPCへの導入はできないとMicrosoftは説明しているわけだが、それはあくまでアーリープレビューの話で、製品版でもそうするかは、そういうことも含めてのベータテストなのだし、Microsoft次第だろう。

 ただ、MicrosoftはRelease Preview(リリース直前の安定バージョン)になった段階で、制限を抱えているPCでは利用できなくなると説明していることから、製品版でも厳格に制限をかける可能性は高いと言える。

 とは言え、現在のWindows 10でもこのCPUサポートリストが既に適用されていることを触れておく必要がある。

 例えばWindows 10 21H1では第4世代Core(Haswell)が既に対象外になっている。実際、筆者が持っているソニー VAIO Duo 13(Core i7-4650U搭載)は、Windows 10 20H2まではWindows Update経由でアップデートできたが、それ以降はアップデートが降ってこなかった。

 しかし、Microsoftが公開しているWindows 10のダウンロードページから「今すぐアップグレード」を押してダウンロードできる「Windows更新アシスタント」経由では、21H1にアップデートできた。もちろん、既に第4世代Coreがサポートされない以上、この21H1にアップデートすることは自己責任と言えるが、できることはできるのだ。

21H1が降ってこなかった第4世代CoreのVAIO Duo 13だったが、Windows更新アシスタント経由ではアップデート可能だった
Windows更新アシスタント経由で無事「Windows 10 21H1」に

 繰り返しになるが、そうした運用をMicrosoftがWindows 11へのアップグレードでも適用するのかどうかは、現時点では分からない。だが、そうしてほしいというユーザーの声が高まれば、Microsoftもある程度配慮せざるを得なくなるのではないだろうか。


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