藤山哲人と愛すべき工具たち
猛暑に備えて超冷却。PCのファンを25cmの換気扇に換装する【前編】
~ジグソー&ドリルで取りつけ
2018年5月30日 11:00
今回使用する工具
ついに恐ろしい夏がやってくる! 空から悪の大王が降臨するより怖く、漢字の抜き打ち小テストごとく、いつ来るかわからない。しかもその衝撃は、親にエロ本が見つかったときぐらい、背中から嫌な汗が出るほどだ。
それが、熱暴走だ。
怖ぇ~!超怖え~!稲川淳二の怪談より怖えーよ!
PC Watchの読者たるものIntel Turbo Boostはもちろん、ベースクロック3割増しは当たり前(※個人の感想です)。冬はなんとかやり過ごせても、ちょっとでもエアコン切って、エンコードやらレンダリングしてたら、あっという間に顔面真っ青、画面真っ青だ。
それならまだあきらめもつくが、画面はフリーズしているものの、マウスだけは動く状態だと、リセットや電源ボタンを押すのはためらわれる。人間で言うなら脳死状態。だから俺の心の倫理が「このPCはまだマウスが動くじゃないか!」と叫ぶのだ。
そんな恐怖の大魔王、熱暴走に効果的なのは液体窒素! と言いたいところ。だが危険なうえに、高いしヤバい。大型ヒートシンクの搭載なんてのもあるが、それはあくまで局所的な話。CPUやGPUの温度は下げられても、いろんなギャルゲーの女の子たちが住む、「マザボパーク」には、たくさんの「ちほー」がある。最近では「しーぴーゆー」や「ぐらぼ」ちほーの温暖化は収束しつつあるという。しかし「ちっぷせっと」ちほーの温暖化が激しく、パークの女の子たちは瀕死の状態だ。
そんなマザボパークをなんとかせにゃならん! と考えた結果、ファンを大型化する方法を思いついた。
さっそくアキバに大型ファンを探しに行っても、せいぜい14cm程度しかない。「大型コンピュータ用のでっかい空冷ファン探してるんですけど」って聞いてまわってると、衝撃の事実が!
「大型機はPC用のファンをたくさんつけているだけ」と。
ぬぁにーっ!マジか! しょんぼりアキバを後にしようと、家電量販店を覗いたらあるじゃないか!大きいファン!
そう、換気扇! これならPCのサイドパネルにつけられるし、風量もPC用の14cmファンとか桁違い。14cmファンが高原のそよかぜだとすれば、換気扇ファンはハリケーンだ!
こうして超空冷マシンの製作がはじまった。
結果にコミットできそうな換気扇は吸い込み専用だった!
さてさっそく、超空冷マシンの設計にかかったが、いきなり問題が。なぜなら換気扇は、煙を吸って外に出す、吸い込み用しかない!吐き出しの換気扇がないのだ。
なら吸い込みで設置しようと思えど、四角い換気ユニット&シャッターモジュール(写真右側)がPC内部に深くメリ込むとなると、ビデオカードやCPUファンにブチ当って、ケース内に収まらない!
悩んだ結果、超空冷マシンは換気扇を逆さまに取り付け、できるだけPC内部を圧迫しないようにし、吐き出しとして使うことにした。
まずは換気扇選びだが、サイズはサイドパネルに取りつけられる大きさだ。PC用のファンであれば、ファンの直径=ほぼ取り付けサイズだが、換気扇の場合は、スイッチユニットや油ポケットなどの機構があり、ファンのサイズより、取りつけサイズがかなりでかくなっていることに注意。
ミニタワーなら20cmファンぐらいで、取り付けサイズが30cm角になるという感じ。もっともフルタワーなどの大きい筐体の場合は、サイドパネルの大きさにものを言わせて、バカでかい30cm以上の換気扇をつけるといい。最高にイカすマシンに仕上がる。
ただ業務用の厨房向け金属ファン仕様は避けたほうがいい。風量は稼げるが、取り付けが難しいし(ステンレス製なので穴あけなど加工が超ムズイ)、それ以上に危険性も増す(安全性は考えてないので、指とか吹っ飛ぶ)ので避けたほうがいいだろう。
PC用として使うなら、ごく一般的な家庭用の換気扇がおすすめだ。ん? 言ってて意味がわからなくなってきた……。
サイドパネルの穴あけは「ジグソー」で3分!
今回はあまり精密な工作じゃないので、ファンの枠をPCに当てて、穴の部分をなぞってやればいい。この下書きで使うのは、ダーマトグラフという色鉛筆。ちょっと太めの芯で、芯がなくなったらヒモを引っ張って、くるくると巻かれた紙を剥がすと、新しい芯が出てくるいろ鉛筆だ。
このペンは紙に書けるのはもちろん、プラスチックや金属、ガラスにも書けるので工作に重宝する。とくに水色や白は、黒い筐体などにもかけるので便利だ。
しかも指でこすると、書いた線を消せる。間違えた場合や、仕上げで線を消したい場合は、アルコールなどでさっとひと拭きすればいい。
下書きしたら、それに沿って切るだけ。とはいえ、鉄板の中央に穴をあける場合は、まず下書きの線の内側に太めのドリルで穴をあける。穴の大きさは、金属のこぎりの刃の厚みだ。
今回はジグソーという電動のこぎりを使ったので、だいたい10mmの穴をあけた。もし手動の金ノコを使う場合は、さらに太い穴をあける必要があるだろう。
さてツワモノになると「金切ばさみでもイケるんじゃネ?」という人もいるはず。サイドパネルがベコベコいう激安筐体なら、金切ばさみでも切れるかもしれない。しかし8割がたのPCはハサミじゃ切れないので注意が必要だ。
紙であれば、自由な形を切るならハサミが圧倒的に便利である。ハサミなら直線をスイスイいけるが、曲線が超ムズイ。これポイント!
なおジグソーや金ノコには、いろんな種類の刃があるので、必ず鉄板用を使うこと。木工用だと、まさに刃が立たないし、金属用に似ている塩ビ、プラスチック用もだめ。アルミ用の刃も使えないので注意しよう。パネルの金属がアルミか鉄かを見きわめるには、磁石がつくかどうかで調べる。もちろんくっ付けば鉄。数や経験をこなせば、表面を見れば素材がわかるようになる。精進だ!
もしサイドパネルを傷つけずにキレイにカットしたいという場合は、まずパネル全体に養生テープを貼ってから作業するといい。こうすると、切りくずがノコとパネルの間に入り込んで、パネル表面に傷をつけてしまうことがない。
これはPCなのか!?換気扇の取り付け
パネルにあけた穴に換気扇のカバーを合わせ、テープなどで仮止めして、取り付け用のねじ穴をあける。
このときのポイントは、サイドパネルと換気扇の間にビビり防止の発泡ゴムを挟み込むこと。高速回転するファンは、必ずなんらかの振動があるので、直にパネルにつけると振動で「ビビビビ」というビビり音がする。そこでゴムを貼って振動を吸収するのだ。
たいていテープ状になった発泡ゴムがあるので、これを使うといい。また一般的なゴムだと硬すぎるので注意。厚みはだいたい5mmで幅20mmくらいがいい。
さらに換気扇のスイッチは、だいたいヒモ式が多い。ヒモを引っ張ると吹き出し口のシャッターが開き、ファンが回転するという具合だ。
そこでこのヒモをマシンの前に持ってくるようにする。プーリーなどを使ってもいいが、ちょっと機構が面倒なので、ヒートンを使って前にもってくるようにした。
爆音!強風!で猛烈冷却!-10℃はイケるぜ!
完成したのがこちら。向かって左サイドのパネルが異様に出っ張っているのは、換気扇を逆向きに取りつけてあるからだ。設置場所は従来機の2倍ぐらいの幅を必要とする。
最近はサイドパネルが透明なアクリル板になっていて、なかのイルミネーションを見せるケースもあるようだ。しかし超空冷マシンは、サイドパネルのドデカい穴からファン越しに内部が見えて、ちょっとオシャレだ。
しかしファン越しに覗き込むと猛烈な風をと、轟音を立ててエアーを吐き出すので、騒音を測定してみたところ85.6db!カラオケ店の店内や地下鉄クラスの騒音とタメを張る。
コレだけ猛烈なエアフローなら確実に冷えるはず! もうね何CFMとか桁が違うもん。ということで、OCCT(4.5.1)を使って負荷をかけ、CPUとGPUの温度を測ってみることにした。測定条件は、次の画面キャプチャのとおり。
さてベンチマーク直後の状態をチェックすると、すべてのコアにおいて、フツーのファンに比べ10℃ほど冷やせた。
さらに10分のクールダウンで猛烈に冷却。風が見えるようにヒモをつけたら、猫の餌食になった。しかも猛烈な風に吹かれて、いつものモフモフのウチの猫じゃなくなってる!お前は誰だ!
そして10分後の測定値がコレ。
クールダウンの効果は絶大!のきなみ改造前に比べて10℃ほど低くなっている。
本テストは、Core i7-5960Xを用いた。これの利用限界温度は、95~100℃なので、かなり余裕をもったベンチマークの結果と言える。これだけの冷却効率が得られれば、空冷式でももう少しクロップアップさせることも可能だろう。
しかしトラブル!PC内部に爆弾低気圧が発生!(笑)
ベンチマークテストを行なっていると、1つの問題が発生。換気扇の吐き出し力があまりにも強く、PCに重力があるかのごとく、まわりのものを吸い込む!阿鼻叫喚!掃除機じゃん!
フロントやリアパネルのあらゆる穴からエアーを吸い込んでいるのだが、吐き出す風のあまりの強さにPC内部は気圧が低くなってしまうようだ。結果、周りのものをグイグイ吸い込んじゃう。周りに置いてあった資料も、フロントパネルにペタッ! いろんなグラフもリアパネルにピタっ!と。
しかもリアパネルにもともとあった吐き出し用ファンは、PC内部の気圧に負けてしまい、ファンが止まったり逆転してしまったり。
この事態を収集するためには、換気扇のファンの強さをコントロールできる「大電力ファンコン」が必要だ。加えて最大パワーで運転しても、PC内部が低気圧にならない「エアーインテーク」も増設する必要がある!