藤山哲人と愛すべき工具たち

100円ショップのドライバーは悪! DIY名人がイカしたドライバー教えちゃる

本連載では、家電製品から実験機器の製作、プログラミングなど、幅広いジャンルで活躍するテクニカルライター藤山哲人氏がさまざまな工具をレビューしたり、多少無茶なことにチャレンジしたりしていきます。
まさかとは思うが、100均のドライバーセットを使っているなんてPC Watchの読者はいないだろうな! ハイみんな目をつぶるから、使ってる人は挙手! えっ! マジ!? こんなにいるの?

 みなさんのお家には、どんな工具があるだろう? ペンチやドライバー、モンキーにスパナという人もいるだろう。ボクはニッパとヤスリと接着剤というモデラーもいるはず。いやいや、うちはハサミとカッターでだけという人も。ホントか!?

 持っている工具は多々あれど、たいていの家庭にはドライバーがあるはず。もちろんデバイスドライバじゃなくて、物理的なほう。物理的でも、我が家のロールスロイスを転がす運転手セバスチャンじゃなくて、ねじ回しのドライバー。って、そんなことわかっとるワイ!

 ふだん何気なく使っているドライバー。とくにPC Watchの読者ならPCをバラしたたり、組み立てたりで、頻繁に使ってるはず。でもまさかとは思うけど、100円ショップで売られているドライバーは使ってないっすよね? カラフルなヤツに黒い握りを被せるヤツ。それはかなり恥ずかしい。未だにフォークの背にごはんを乗せて食べてるとか、素っ裸で駅前商店街を走るぐらい恥ずいっ!

そんなに高いものじゃないから必須の3本は買いそろえてほしい

 いい仕事は、いい工具から。プロじゃないからこそ、いい道具を使って腕をカバーする! 今回はドライバーの選び方と使い方をご紹介!

PC用なら最低2本、水道や細かいものもバラすなら3本はほしい

 ドライバーの先が十字になっているプラスドライバー。これにはサイズがあるのをご存知だろう。ノートPCやメガネで使われている精密なネジ、それよりちょっと大きいデジタルガジェットのケースを止めているネジ、デスクトップPCの組み立てや木工で使われているネジ。だいたいこの3種類のプラスネジが家庭では一般的。

精密機器で使われるネジ。めがねのツルを調整するのにも使う
子どものオモチャの電池ケースのネジがだいたいこのサイズ。たまに木工用のネジでも小さい場合がある
一般的な大きさ。組み立てPCから家電、木工・金工だいたいこのネジ

 サイズがいろいろあるプラスネジだけど、「細いドライバー取って!」とか、「中ぐらいのドライバーください!」なんて言っても相手には伝わらない。だからきちんと規格化されて、番号が振られている。

#00のドライバー。精密ドライバーの仲間で右から3番目。一般的な呼び方は、たぶん「ゼロゼロ番」のドライバーだと思う。あんまり声にだして言ったことがない……。まさか「ダブルオー」とは言わんだろう
#0のドライバー。呼び方は0番のドライバーか精密の太いほう(笑)
#1のドライバー。1番クレー!とかよく使う。「ドライバー」まで言わなくても1番といったらドライバーだ。
#2のドライバー。キングオブプラスドライバー。ドライバーくれ!と言ったらだいたい2番
#0~#2まで並べたところ。左から00番、0番、1番、2番

 表記上は「#」をつけるのが一般的だが、呼び方は「○番のドライバー」って言うのが普通。人によっては阪急電車のように「○号」って言う場合もあるかも? (阪急の接近放送は「○号線に電車が到着します」と言う)。

 先に紹介した一番小さいネジは0番だったが、でもソレより小さいカメラや小型のガジェットなどに使われている00番もある。00番までくると「精密ドライバーのプラス」って感じで、大雑把にくくられちゃうかも。

 もっともポピュラーなのは2番。これは絶対いいドライバーがほしい。先っぽを取り替えるタイプや、反対に差しこむとマイナスになるなんてものもあるが、いずれも軸がブレやすいので、専用がオススメ。

最近のオモチャは、いたずら防止のために電池ボックスがネジ式になっている

 もう少し細いドライバーは1番。こちらも専用ドライバーを持っていたい。とくに小さい子どものいる家庭では、1番が活躍。最近のオモチャの電池ボックスはネジ止めされていて、たいてい1番のネジが使われているからだ。しかも頭が潰れやすい安っぽいネジが使われているので、いいドライバーを使いたい。

 ちなみに3番は、DIYショップでもあまり見かけない。ネジの頭がマッシュルームぐらいあるデカいネジでもなければ3番は不要。おそらく僕ら凡人は、一生使わないドライバーだ。

 いっぽうマイナスドライバーは、水道工事をする場合は必須。それ以外は、なにかこじ開けるときに持っておきたいという感じだ。また電気工事士の免許が必要になるが、壁コンセント・スイッチの工事でも必要になる。

世のなかのマイナスネジはほとんど淘汰された。しかし水道関係には、まだ多く残っているので侮れない

 マイナスドライバーにも大きさがいくつかあるが、5番を持っていればこと足りる。ちなみに番号の「5」はマイナス部分の長さ(mm)になっているので、プラスドライバーよりわかりやすいかも。なお3番と2番は電子工作でもしないかぎり使うシーンはないだろう。

ネジに合ったドライバーを使わないと2度と外れないネジに!

 ネジの頭に刻まれた+とドライバーの大きさがピッタリ一致していれば問題なし。でも合ってないものを使うと、ネジ頭の+を潰してしまって、2度と外れないネジになるので注意したい。とくに電動ドライバーを使うと、大きな力がかかるのでスグにネジ頭を潰してしまう。

電動式は大型のドライバーでも、小型のドライバーでもネジには大きな力がかかるので注意
1番のネジに対して2番のドライバーは刺さらない
ネジとドライバーの番号が一致するとピタリと刺さる
ネジのほうが大きいと、ドライバーを差し込んでもぐらぐらですき間だらけ

 慣れれば2番と1番の違いは、一目見ればだいたいわかるようになる。しかし最初は、2番を当てて入らなかったら1番に変えるといい。なぜならネジの+より小さいドライバーで回ると、十中八九ねじ山を潰してしまうからだ。

 また最近は、海外製の組み立て家具や、海外製のドリルドライバーなどが多く国内に入っていて、同じプラスのドライバーやネジにみえても微妙に違うなんてものがある。それが以下のネジだ。

IKEAの家具でよく使われているポジドライブというネジ。ニトリの家具は普通のプラスネジ

 プラスのように見えるが、45度傾けてもう1つのプラスが刻まれている。これに対応するドライバーも星型だ。これらはポジドライブと言い、IKEAの家具などで使われている。

ポジドライブネジは、ネジを強く締める必要があるところに使われる。IKEAの組み立て家具についてくる、簡易ドライバーはポジドライブ

 なおポジドライブのネジに対して通常のプラスドライバーを使うのは可能。ただポジドライブで絞めるより力が入りにくい。逆にプラスネジに対して、ポジドライバーを使うことはできない。ドライバーの星型の突起が邪魔をして、プラスネジにしっかりはまらないからだ。そのためネジ頭を潰す原因になる。

普通のプラスネジに対して、ポジドライバーを使ってはダメ。ドライバーが奥まで入らない。逆のポジドライバーネジに通常のプラスドライバーを使うのはOK!
電動ドライバー用の先端(ビット)には、通常のプラスドライバーには「PH」、ポジドライブの場合は「PZ」と刻印されている

 電動ドリルドライバーの先につける先端は、先端がわかりにくいので、ポジドライブにはPZ、プラスドライバーにはPHと刻印がしてあるので、これを目印にするといい。

ねじ回しだけど、回すより押すドライバー

 さてネジは回して絞めるのが常識かと思いきや、ネジは回す以上に押しつける力をかけないとダメ。とくに組み立てPCのネジは、安物が多く、焼入れ処理が省かれた頭の柔らかいネジだったり、アルミや真鍮などの柔らかい金属のネジだったりする。それなりに高いケースならきちんとしたネジや、場合によっては高級なステンレスネジがついている場合も。

ドライバーの使い方の基本は、押す力7に対して回す力3。錆びたり硬く絞まっている場合は、さらに押す力を増やす

 また木工では、パイン材などの硬い木にネジを打つときも、押す力を強くする必要がある。力の具合は、一般的に押す力7、回す力3と言われている。

 ネジが柔らかい場合、母材が硬い場合などは、9:1位の力加減でもいいだろう。とくに硬く絞まっているネジを外す場合やネジ頭がさびてしまっている場合は、少しネジが回り出すまで、自分の体重をドライバーに乗せるほど押し込みながら回すのがいい。

すばやくドライバーを回転させたい場合は、グリップではなく、軸を指で回すと超早い!写真は片手でしているが、正しくは片手で軸を併せるように手を添えて回す

 軽くネジが回せるほど外れたら、押す力を緩めて回転させるだけでいい。このときグリップを持って回すと何回も回す必要がある。こんなときは、ドライバーの軸を持って摘むように回すとすばやくネジを回せる。

石膏壁になにかをネジ止めするときに使うアンカーネジ。一度ネジ穴を壁に作ってしまうと、ネジ止めはほとんど力が要らないので、軸を指先で回して、最後にキュッ!と絞めるだけ

 石膏壁に売ったアンカーネジは、ネジが長いので軸を回すと作業が劇的に早くなるだろう。

グリップと軸の長さで選ぶマイベストのドライバー

 ドライバーの使い方や種類はわかったものの、DIY店に行くとたくさんのドライバーが売られていて、どれを買ったらいいのかわからないかもしれない。でもドライバーは、持ち手のクリップのかたちと、軸の長さで選ぶので、激安品でなければそれほどメーカーにこだわらなくてもいい。

ドライバーの軸の長さはいろいろ。ただ初心者向けにオススメしたいのは、軸が長い全長35cmほどあるヤツ
短いドライバーより垂直になっているかどうかをはっきり確認できるから長軸がオススメ

 まず長さは、一般的なドライバーだとグリップも含めて20cm程度のものが主流。でも初心者には、もっと長い35cm程度のものをオススメしたい。長いから扱いが難しそうに見えるが、じつは軸が長いとネジに対してドライバーが垂直になっているかが確認しやすいのだ。

 押し回しするさい、軸が斜めになっているとうまく力が入らなかったり、ねじ頭を潰してしまう。オススメする理由はコレ。また軸が長いと、軸を摘んでネジを回すのがやりやすい。ボルト・ナットをよく使うという場合は、長い軸が作業しやすい。

軸が長いと指先回しが楽。普通の長さだと指回しするスペースがない

 いっぽうグリップは、好みによるところが大きい。ただ、はじめてちゃんとしたドライバーを買いそろえるという場合は、グリップのお尻が丸くなったタイプがいいだろう。この丸い部分を手のひらで包み込むように持つと、自然と押す力を強く入れられ、回す力はそれより少し弱くなるので、作業しやすいはず。

 プロでもこの丸いグリップを使う人が多く、主流はこのタイプになっているようだ。

グリップのお知りが丸くゴムになっているドライバーを初心者にはオススメ

 筆者が使っているのは、細長のグリップ。意識しないと押す力をかけられないが、握ったときのホールド感や回す力をかけやすいというメリットがある。

筆者が長年愛用しているのは、ベッセルのドライバー。ボクが小学生の頃には丸いグリップのドライバーなんてなかったので、慣れた細長いグリップを使っている

磁化していないものを買って必要に応じてネオジム磁石で磁化

 ドライバーによっては軸を「磁化」したことを謳ったものがある。これはせまい場所で作業するときなど、ネジをドライバーの先端に磁石でくっつけて、片手でネジを締められるというものだ。

軸を磁化したドライバーは、使いやすいときも、使いにくくなるときもある

 しかし、ときおり磁化が邪魔になる場合もある。周りが鉄板に囲まれていると、ドライバーが鉄板に引き寄せられてしまうのだ。小さなベアボーンPCの組み立てでは、磁化がかえって邪魔なんてことがあるので注意。また組み立てPCによっては、まれにアルミのネジなどがあり、そもそも磁石につかないなんてときもある。

磁化されていないものを購入し、先端にネジをくっつけたくなったら、100円ショップで売っているネオジム磁石をグリップ近くにつければいい

 最初のドライバーなら磁化されていないものでもいいだろう。もし手を添えられないような場所にネジを打つ場合は、100円ショップで売ってるネオジム磁石を軸にくっつければいい。これで先端にネジがくっつくようになる。このときも長い軸のドライバーが役に立つ。磁石をグリップ近くにつけておけば、ネジ穴近くの鉄板にバチコーン!とくっつくことなく、作業できるからだ。

 磁化が不要になったら、磁石を取るだけ。何度もやっていると多少磁化されてくるものの、磁化されたドライバーに比べれば吸着力が弱いので作業の邪魔にならない。

長軸のプラス2番をぜひ購入! 使いやすさを試してほしい

 もし100円ショップのドライバーを使っている方がいたら、ぜひプラスの2番だけでもいいので、良質なドライバーを買ってほしい。作業効率が断然に違うはず。値段も500円前後から購入できるので、ぜひ長軸を使ってPCの組み立てなどに活用してもらいたい。