福田昭のセミコン業界最前線

2018年上半期の半導体ランキング、SamsungがIntelを突き放す

2018年上半期の半導体ベンダー売上高ランキング。半導体市場調査会社のIC Insightsとハイテク市場調査会社IHS Markitの発表データから筆者がまとめた

Samsungが売上高ランキングのトップを維持

 市場調査会社がまとめた、今年(2018年)上半期の半導体ベンダー売上高ランキングがでそろった。半導体市場調査会社のIC Insights(アイシーインサイツ)が8月20日に上半期(2018年1月~6月)の売上高トップ15社を発表したのに続き、ハイテク市場調査会社のIHS Markit(アイエイチエスマーキット)が8月22日に第2四半期(2018年4月~6月)の売上高トップ10社を発表した。

 両社の発表を総合すると、2017年の半導体売上高ランキングでトップに立ったSamsung Electronics(以降は「Samsung」と表記)が、2018年上半期もトップを維持した。2位はIntelで、2017年のランキング2位と同じ席を確保した。3位はSK Hynix、4位はMicron Technology(以降は「Micron」と表記)である(半導体ファウンダリ企業のTSMCを除く)。これら2位~4位のベンダーも、2017年のランキングと変わっていない。

 なお2017年の半導体ベンダー売上高ランキングは、IHS Markitが2018年3月28日に発表したランキングと、ハイテク市場調査会社のGartnerが同年4月23日に発表したランキング(確定値)を参考にした。

2017年の半導体ベンダー売上高ランキング。IHS Markitの発表データとハイテク市場調査会社Gartnerの発表データから筆者がまとめた。半導体メモリベンダーのランクアップが目立つ

昨年から続く、半導体メモリ大手3社の急激な成長

 2018年上半期のランキングでトップ4社の成長率(対前年同期比の増加率)は、IC Insightsの発表データによるとSamsungが36%、Intelが13%、SK Hynixが56%、Micronが45%である。半導体メモリ大手3社、すなわちSamsungとSK Hynix、Micronは昨年(2017年)に売上高を急激に伸ばした。その勢いは、今年の前半も残っている。

 なお、IHS Markitは四半期ごとの売り上げデータだけを発表している。同社の発表データによると、第1四半期(2018年1月~3月)の成長率(対前年同期比の増加率)はSamsungが45.4%、Intelが11.1%、SK Hynixが47.1%、Micronが52.7%、第2四半期(2018年4月~6月)の成長率(対前年同期比の増加率)はSamsungが33.7%、Intelが14.9%、SK Hynixが61.3%、Micronが39.0%となっている。IC Insightsの発表データと同様に、半導体メモリ大手3社の成長率が高い。

非メモリ企業ではNVIDIAが50%を超える高い成長率を示す

 半導体市場調査会社IC Insightsとハイテク調査会社IHS Markitの分析を、もう少し詳しく見ていこう。

 IC Insightsが8月20日に発表した上半期のランキングによると、上位15社の地域別内訳は、米国が7社、欧州が3社、韓国が2社、台湾が2社、日本が1社である。米国企業が半数近くを占める。

 成長率(対前年同期比の増加率)では、2桁の成長率を示した企業が11社あり、さらには20%以上の成長率を達成した企業が7社ある。この7社中5社が、半導体メモリのベンダーであり、具体的には上記の大手3社と、東芝(東芝メモリを含む)(25%成長)、それからWestern Digital(SanDiskを含む)(27%成長)だ。残りの2社はNVIDIA(53%成長)とSTMicroelectronics(20%成長)である。非メモリ企業では、NVIDIAの成長が著しい。

 なお、上位15社全体の成長率は、24%であり、かなり高い。半導体市場全体では、上半期の成長率は約20%だという。

市場調査会社IC Insightsが2018年8月20日に発表した、2018年上半期の半導体ベンダー売上高ランキング。2018年第1四半期と同年第2四半期の売上高を、集積回路(IC)と個別半導体(オプトとセンサー、ディスクリート(O-S-D))に分けて推定している。なお16位には、Appleがつけた。同社の半導体売上高(Appleは半導体ベンダーではないので、内製した半導体の金額を売上高として換算したもの)は約35億ドルである

 ランキング8位の東芝には補足がある。IC Insightsは、東芝メモリのNANDフラッシュメモリ事業、東芝本体のシステムLSI事業とディスクリート事業を個別に推計し、合計した。2018年第2四半期における売上高は、NANDフラッシュメモリ事業が31億700万ドル、システムLSI事業が4億6,800万ドル、ディスクリート事業が3億1,500万ドルとなっている。

第1四半期の半導体メモリ市場はDRAMが牽引

 ここからは、IHS Markitによる分析結果である。同社は6月26日に第1四半期(1月~3月)のランキング上位10社を、そして8月22日に第2四半期(4月~6月)のランキング上位10社を発表した。これらの発表では、半導体市場全体についても解説を加えている。

 はじめは第1四半期(1月~3月)のランキング上位10社と半導体市場全体に関する発表内容を見ていこう。ランキング上位10社はトップのSamsungから、Intel、SK Hynix、Micron、Broadcom、Qualcomm、Texas Instruments、東芝、NVIDIA、Infineon Technologiesの順である。

 第1四半期における世界の半導体市場規模は1,157億6,200万ドルで、対前年同期比では21.4%増と大きく増加しているものの、対前四半期比では3.4%減とわずかに減少した。この減少はおもに、無線通信向け半導体の季節要因によるものだという。わかりやすく言い換えると、2017年第4四半期(10月~12月)はクリスマス商戦に向けた販売が伸び、翌四半期である2018年第1四半期にその反動が出たということだ。

 製品分野別では半導体メモリの市場が対前四半期比1.7%増の397億ドルとなり、過去最高を記録した。第1四半期にDRAMの価格と販売金額はともに上昇し、半導体メモリ市場の成長を牽引した。DRAMの応用分野では、とくにサーバー向けDRAMの需要が強かった。一方、NANDフラッシュメモリの市場には軟調の兆しが見られた。販売金額は対前四半期比でわずかに減少した。この減少はおもに、NANDフラッシュメモリの販売単価が1桁のパーセンテージで低下したことによる。

 半導体メモリ企業では、Micronが対前四半期比で9.8%増と販売金額を大きく伸ばしたのが目立つ。この増加率は、ランキング上位10社の中ではもっとも高かった。

ハイテク調査会社IHS Markitが2018年6月26日に発表した、2018年第1四半期の半導体ベンダーランキング。対前年同期比ではNVIDIAが、対前四半期比ではMicron Techologyが売上高をもっとも大きく伸ばした

第2四半期の半導体市場は四半期ベースで過去最大の規模に

 続いて第2四半期(4月~6月)のランキング上位10社と半導体市場全体に関する発表内容を見ていこう。ランキング上位10社はトップのSamsungから、Intel、SK Hynix、Micron、Broadcom、Qualcomm、Texas Instruments、NVIDIA、東芝メモリ、Infineon Technologiesの順である。東芝は本体と東芝メモリを別会社としてカウントしたため、順位が下がった。それ以外は、第1四半期と同じ順位である。

 第2四半期における世界半導体市場は1,208億3,800万ドルで、対前年同期比では19.4%増と20%近い高成長を記録した。対前四半期比でも4.4%増と伸びた。この結果、四半期ベースでは過去最大の市場規模となった。エンタープライズ向け、ストレージ向け、有線通信向けなどを中心に、あらゆる応用分野で半導体の需要が拡大したとする。

 製品分野別では半導体メモリ市場が第1四半期の397億ドルから、第2四半期は420億ドルへと伸びた。9四半期連続で、前四半期に比べて増加した。NANDフラッシュメモリの需給バランスが緩くなっているものの、NANDフラッシュの価格低下がフラッシュストレージの需要と金額を押し上げ要因になっているとする。

ハイテク調査会社IHS Markitが2018年8月22日に発表した、2018年第2四半期の半導体ベンダーランキング。対前年同期比と対前四半期比の両方ともに、SK Hynixが、売上高をもっとも大きく伸ばした

トップSamsungと2位Intelの差分が拡大

 ここからはIHS Markitの発表データから、SamsungとIntelの四半期ごとの半導体売上高を見ていこう。本コラムの既報(「メモリ無双」が引き起こした半導体ランキングの下剋上)で詳しく述べたように、昨年の半導体ベンダー売上高ランキングでIntelは25年連続のトップを譲って2位にランクダウンした。Intelに替わってトップの座についたのはSamsungだ。

 このトップ交代を昨年の第1四半期から四半期ごとに現在まで振り返る。IHS Markitの発表データによると、昨年の第1四半期の時点ではIntelがトップ、Samsungが2位だった。両社の差分は約12億ドル、9%である。

 そして第2四半期になると、両社の半導体売上高はほぼ等しくなる。厳密にはほんのわずかだけIntelが高いのだが、差分はわずか8,100万ドル、1%である。約144億ドルの売り上げ金額から見ると、その差はきわめて小さい。

 第3四半期にはIntelをSamsungが抜き、トップの逆転が発生した。両社の差分は6億5,200万ドル、4%である。第4四半期には両社の差分は12億6,400万ドル、7%へと広がる。

 今年第1四半期には、両社の差分は28億6,200万ドル、18%とさらに拡大する。第2四半期に入ると差分は約25億ドル、15%と縮むが、依然として10%を超える差がついている。

SamsungとIntelの四半期ごとの半導体売上高推移。IHS Markitが発表したデータを元に筆者がまとめた

 今年下半期のランキングはどうなるだろうか。半導体メモリの勢いは明らかに弱ってきた。DRAMはまだ需給バランスがタイトで、価格は高値で安定している。DRAM市場は今年に入っても伸びてきた。しかしNANDフラッシュメモリは値下がりが続いており、今年に入ってからのNANDフラッシュ市場は、ほとんど伸びていない。

 それでもランキングのトップ4社中で3社を半導体メモリ大手が独占する状況は、変わらないだろう(半導体ファウンダリのTSMCを除く)。上位4社と、5位以降の半導体ベンダーとの差分はまだ、かなり大きい。今年いっぱいは、昨年後半と同様の状況が続くだろう。

 ランキングに大きな変化があるとしたら、来年(2019年)だ。現時点で考えられる要因は2つ。1つは半導体メモリ、とくにDRAMの価格が大幅に値下がりすること。もう1つはNVIDIAの急速な成長が継続することだ。両者が同時に起これば、2019年のランキングは大きく変動する可能性が少なくない。