福田昭のセミコン業界最前線

2018年後半、メモリは高止まりもSSDは“買い”

~過去最高の業績を更新し続けるDRAMトップ3企業の動向

Samsung Electronics、SK Hynix、Micron Technologyの業績(直近の四半期)。各社の公表資料を基に筆者がまとめたもの。「過去最高」の売り上げと営業利益、そして50%を超える売上高営業利益率(営業利益/売上高)がならぶ

 DRAMの大手メーカー3社、すなわちSamsung Electronics、SK Hynix、Micron Technologyが昨年(2017年)から、過去最高の業績(四半期ベース)を更新し続けている。本コラムで昨年11月にレポート(DRAM値上がりで、空前の利益を享受するメモリ企業)したように、これらのDRAM大手3社は昨年に入ってから、四半期ベースで売上高と営業利益の史上最高額を更新するようになった。その勢いは、今年(2018年)に入っても止まっていない。

 DRAM大手3社はいずれも、NANDフラッシュメモリも手がけている。昨年はDRAMとNANDフラッシュメモリの両方が値上がりしたため、一昨年(2016年)前半のメモリ不況から一気呵成の業績回復をはたし、その勢いで空前の利益を享受するまでになった。

 今年はさすがに、昨年のような異常な勢いはやや落ち着いてきたように見える。今年の第1四半期は、季節要因もあって前の四半期と比べてメモリ需要の伸びが鈍化した。またNANDフラッシュメモリの需給が緩和し、値下がりが起きている。DRAMはまだ値上がりが続いているものの、昨年前半のような勢いはない。

 それでも四半期ベースの売上高、営業利益、売上高営業利益率のいずれもが、直近の四半期では過去最高を更新、あるいは過去最高に近い水準にあるという状況には、思わず嘆息が漏れる。

 各社の直近の四半期業績を、本コラムが昨年11月にレポートした四半期業績とごく簡単に比較してみよう。

昨年(2017年)11月に本コラムでレポート(https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/semicon/1093687.html)した、Samsung Electronics、SK Hynix、Micron Technologyの業績(直近の四半期)。各社の公表資料を基に筆者がまとめたもの

 Samsung Electronics(以降は「Samsung」と表記)が発表した2018年第2四半期(2018年4月~6月期)の半導体売上高は約202億ドルで過去最高を更新した。昨年11月のレポート(以降は「前回レポート」と表記)では2017年第3四半期(2017年7月~9月期)の業績を紹介しており、このときも半導体売上高は過去最高に達していた。金額は約169億ドルである。Samsungの半導体事業の営業利益額と半導体メモリの売上高も、2018年第2四半期(2018年4月~6月期)は過去最高を更新した。

 SK Hynixが発表した2018年第2四半期(2018年4月~6月期)の全社売上高(ほぼ100%近くをDRAMとNANDフラッシュメモリが占める)は約95億ドルでこれも過去最高を塗り替えた。前回レポートでは2017年第3四半期(2017年7月~9月期)の業績を紹介しており、このときも売上高は過去最高に達していた。金額は約72億ドルである。SK Hynixの営業利益も、2018年第2四半期(2018年4月~6月期)は過去最高を更新した。

 Micron Technology(以降は「Micron」と表記)が発表した2018会計年度第4四半期(2018年6月~8月期)の売上高(約96%をDRAMとNANDフラッシュメモリが占める)は84.4億ドルで、同社も過去最高の売上高を記録した。前回レポートでは2017会計年度第4四半期(2017年6月~8月期)の業績を紹介しており、このときも過去最高の売上高を塗り替えていた。金額は61.4億ドルである。

 DRAM販売の金額別シェアはトップがSamsung、2位はSK Hynix、3位はMicronである(調査会社のDRAMeXchangeによる)。この3社でDRAM市場全体の約95%を占める。残りは台湾や米国などのごく小規模なDRAMベンダーだ。以降はトップ3の公表資料から各社の最近の業績と、DRAMの市場動向、それからNANDフラッシュメモリの市場動向を見ていこう。

Samsungの営業利益は7四半期連続で過去最高を更新中

 初めはSamsungである。Samsungの半導体事業はメモリだけではない。メモリ事業のほかに、システムLSI事業とファウンダリ事業がある。ただし半導体事業の約8割は、メモリ事業が占める。

 同社は半導体事業全体の売上高と半導体事業の営業損益、半導体メモリ事業の売上高は四半期ごとに公表しているものの、半導体メモリ事業の営業損益は公表していない。

Samsung Electronicsの半導体事業の業績。四半期の売上高と営業利益、売上高営業利益率の推移。同社の公表資料を基に筆者がまとめた

 前回レポートでは、Samsungの半導体事業は「2016年第4四半期以降、4四半期連続で過去最高の売上高と過去最高の営業利益を更新し続けている」と述べた。これは2017年第3四半期(2017年7月~9月期)までの状況報告である。その後、続く同年第4四半期も売上高と営業利益の過去最高額を更新した。2018年第1四半期(2018年1月~3月期)は季節要因(クリスマス商戦の反動)によって売上高は前四半期と比べて低下した。しかし営業利益は前四半期比で上昇し、6四半期連続で過去最高を更新した。

 そして直近の2018年第2四半期(2018年4月~6月期)では前述のように、売上高と営業利益の両方で過去最高を塗り替えた。営業利益の最高額の更新は7四半期連続に達した。売上高営業利益率は52.8%で、前回レポートの2017年第3四半期から、さらに2.8ポイント上昇した。ちなみに売上高営業利益率が過去最高に達したと見られるのは前四半期の2018年第1四半期で、55.6%である。

半導体売り上げの約85%をメモリが占めるSamsung

 次にSamsungの半導体メモリ売り上げを見ていこう。半導体メモリの売上高は2016年第3四半期に過去最高を記録したのち、2017年第4四半期まで6四半期連続で過去最高額を更新した。2018年第1四半期は前四半期と比べてわずかに下がったものの、2018年第2四半期は再び過去最高を塗り替えた。

 半導体事業全体の売り上げに占める半導体メモリ事業の割合は、2016年第3四半期から急上昇している。同四半期では75.0%、前回レポート(2017年第3四半期)の時点では81.9%である。半導体メモリの占める比率はその後も上昇し、昨年第4四半期には85.0%と過去最高の割合に達した。今年の第1四半期は83.4%、第2四半期は84.1%と、いずれも過去最高に近い水準にある。

Samsung Electronicsの半導体メモリ売上高と、半導体事業全体に占める売上高比率の推移。同社の公表資料を基に筆者がまとめた

2018年のDRAMビット需要は20%、NANDビット需要は40%の成長へ

 Samsungはまた、半導体メモリ市場の現状と動向を分析した結果を公表している。以下にその概要を説明しよう。

 半導体メモリ市場の成長率を考えるときは、記憶容量、すなわち「ビット」に換算した需要あるいは出荷がどのくらい伸びるかという、「ビット成長率」を基本とすることが多い。これはたとえば年間のビット成長率が50%であるとするならば、同じ記憶容量のチップが前年に比べて今年は、50%多く出荷される、あるいは同等の需要がある、という意味になる。ここで半導体メモリチップの平均販売価格(ASP)が一定であると仮定すると、金額ベースの市場の成長率は50%となる。

 ASPはおおむね、需要と供給のバランスによって決まる、とされている。当たり前のことだが、供給不足になるとASPは上昇し、供給過剰になるとASPは下降する。そこで需要側の動向と、供給側の動向を予測する必要がある。

 半導体メモリ市場に関する上記の考え方を基本に、SamsungはDRAMとNANDフラッシュメモリの市場動向を分析、予測した。初めは両者のビット成長率とASPの動向である。

 DRAMのビット成長率(前四半期比)は2018年第1四半期が5%未満のマイナス成長、同年第2四半期が5%前後のプラス成長とSamsungは推定した。そして第3四半期は15%前後のプラス成長と予測した。クリスマス商戦の第4四半期に向かってビット需要が伸びていくイメージである。そして2018年通年のビット成長率は、20%になると予測している。

 NANDフラッシュメモリのビット成長率(前四半期比)は2018年第1四半期が5%前後のマイナス成長、同第2四半期が15%前後のプラス成長とSamsungは推定した。そして第3四半期は15%前後のプラス成長と予測した。2018年通年のビット成長率は40%台前半のプラス成長になると予測している。

 ASPは、DRAMが上昇基調、NANDフラッシュメモリが下降基調にある。DRAMのASP(前四半期比)は2018年第1四半期が5%前後の上昇、同第2四半期が5%未満の上昇と推定した。それぞれ5%の上昇、2.5%の上昇と仮定すると上半期全体では8%近く値上がりしたことになる。

 NANDフラッシュメモリのASP(前四半期比)は2018年第1四半期が5%弱の下降、同第2四半期が15%弱の下降である。それぞれ5%下降、15%下降と仮定すると上半期全体では20%ほど値下がりしたことになる。

Samsungによる半導体メモリ市場の現状と展望。同社の公表資料を元に筆者がまとめた。予測は2018年7月末時点に同社が公表したもの

2018年下半期もDRAMの需給バランスは緩まないと予測

 Samsungはさらに、2018年下半期(2018年7月~12月期)のDRAMとNANDフラッシュメモリの需給バランスについても予測を公表している。DRAMの需給バランスはタイトな状況が続く。需要が拡大し、供給が追いつかないと見る。供給が追いつかない理由は、10nm級の最先端製造技術がまだ成熟しておらず、プロセスパラメータの調整が必要なためだとする。

Samsungによる2018年下半期のDRAM市場展望。同社の公表資料を基に筆者がまとめた。予測は2018年7月末時点に同社が公表したもの

 NANDフラッシュメモリでは、販売価格の低下が、記憶容量ベースの需要拡大を促すと予測する。エンタープライズ向けSSDでは、ハイエンド品である8TB以上のドライブの導入が進む。モバイル向けでは、128GBの大容量フラッシュストレージを搭載したスマートフォンが主力となる。供給側は、メモリセルの積層数で64層の3D NANDフラッシュ製品の生産数量が増加すると見る。需給バランスについては「流動的(volatile)」との抽象的な表現にとどまった。

 なお、DRAMの大手メーカーはすべてNANDフラッシュメモリも生産しているため、生産ラインの割り振りが両者の需給バランスに影響を与えるとコメントしている。

Samsungによる2018年下半期のNANDフラッシュメモリ市場展望。同社の公表資料を基に筆者がまとめた。予測は2018年7月末時点に同社が公表したもの

2018年末にはDRAM製造の7割が10nm級の世代に移行

 そしてこういった市場環境の変化を予測した上で、Samsungはどのように半導体メモリ事業を進めていくのか。製造技術の開発状況を公表した。

 2018年上半期の半導体設備投資額は13.3兆ウオン(約1,200億ドル)である。Samsung全社の設備投資の約8割を占める。この巨額の半導体投資は、2018年下半期以降の製造ラインへとおもに費やされていく。

 DRAMの製造技術は、20nm世代から1Xnm世代への転換を急速に進めている。2018年第2四半期の時点で、DRAM生産(ウェハ枚数ベース)の50%強が1Xnm世代へと移行した。さらに微細化を進めた1Ynm世代のDRAM生産を同年上半期にははじめており、下半期に向けて数量を増やしていく。2018年末の時点では、1Xnm世代と1Ynm世代の合計が70%を占める見込みである。

 NANDフラッシュメモリ(3D NANDフラッシュ)の製造技術では、今年は64層品の生産を拡大する。そして来年(2019年)は、90層を超える積層数の製品の量産を立ち上げる。

Samsungの半導体メモリ製造技術の現状と将来。同社の公表資料を元に筆者がまとめた

Micronは7四半期連続で売上高と営業利益の過去最高を更新

 続いてMicronの業績推移を見ていこう。Micronは四半期業績の区切りが複雑で、ややわかりにくい。会計年度の期末は8月とかなり変則的だ。このため、四半期の期末が11月(第1四半期)、2月(第2四半期)、5月(第3四半期)、8月(第4四半期)となっている。そして「2018会計年度」は、2018年8月が期末となる。

 前回レポートでは、2017会計年度第4四半期(2017年6月~8月期)における四半期業績を紹介した。売上高と営業利益がともに過去最高を記録していた。売上高の金額は61.4億ドルである。ちなみにMicronは、売上高の95%前後をDRAMとNANDフラッシュメモリが占める。

 前回レポートの時点で、Micronは3四半期連続で売上高と営業利益の過去最高額を更新中だった。その後も現在まで、過去最高記録の塗り替えは続いた。直近の2018会計年度第4四半期(2018年6月~8月期)の時点で、7四半期連続で過去最高を更新している。

Micron Technologyの四半期業績推移。同社の公表資料を基に筆者がまとめた

 Micronの業績で注目すべきは、2016会計年度第4四半期(2016年6月~8月期)以降、一貫して売上高営業利益率が上昇してきたことだ。同四半期の売上高営業利益率はわずか0.6%で、その前四半期は営業赤字だった。それが1年後の2017会計年度第4四半期(2017年6月~8月期)には、売上高営業利益率が41.5%と異常なほどの急激な上昇を見せた。その後も売上高営業利益率は上昇し、直近の2018会計年度第4四半期(2018年6月~8月期)では、52.6%に達した。過去10年間では最高の営業利益率である。

MicronのDRAM事業、粗利益率は7割の高水準に

 MicronはDRAM事業とNANDフラッシュメモリ事業の現状を定量化して公表している。DRAM事業におけるビット成長率は、2018会計年度第3四半期(2018年3月~5月期)が前の四半期と比べて0%とフラット、前年同期と比べて15%前後の成長である。続く2018会計年度第4四半期(2018年6月~8月期)は、前の四半期と比べて6%~9%の成長率、前年同期と比べて15%~19%の増加となった。

 DRAM市場全体として2018年のDRAMビット成長率は、20%強になると見込んだ。さらに来年のDRAMビット成長率について、20%前後との予測値を公表済みである。

 MicronのDRAM販売における平均販売価格(ASP)は、2018会計年度第3四半期(2018年3月~5月期)が前の四半期と比べて5%~9%の上昇、前年同期と比べて30%の上昇である。続く2018会計年度第4四半期(2018年6月~8月期)は、前の四半期と同じ水準、前年同期と比べて20%の上昇となった。

 注目すべきはDRAM事業の粗利益率の高さだ。2018会計年度第3四半期(2018年3月~5月期)が69%、直近の2018会計年度第4四半期(2018年6月~8月期)では71%に達している。前年同期の粗利益率はそれぞれ54%、56%であり、これもかなり高い水準だと言える。現在のDRAM販売における粗利益率が7割というのは、「DRAM大手3社は儲けすぎだ」との批判にかなりの正当性を与えているように見える。

MicronによるDRAM事業の現状。同社の公表資料を基に筆者がまとめた

MicronのNAND事業は値下がりでも粗利益率が上昇

 次はMicronのNANDフラッシュメモリ事業である。NANDフラッシュ事業におけるビット成長率は、2018会計年度第3四半期(2018年3月~5月期)が前の四半期と比べて0%とフラット、前年同期と比べて20%弱の成長である。続く2018会計年度第4四半期(2018年6月~8月期)は、前の四半期と比べて35%増と大きく成長した。前年同期比では56%~59%と高い成長率となった。

 NANDフラッシュメモリ市場全体としてのビット成長率は、2018年に45%前後になると見込んだ。さらに来年のビット成長率は、35%~40%との予測値を公表済みである。

 MicronのNANDフラッシュメモリ販売における平均販売価格(ASP)は、2018会計年度第3四半期(2018年3月~5月期)が前の四半期と比べて5%~9%の上昇、前年同期と比べて5%前後の下降である。続く2018会計年度第4四半期(2018年6月~8月期)は、前の四半期に比べて15%前後の下降となり、かなりの値下がりが発生した。前年同期と比べたASPは25%前後の下降と、大幅に低下してきた。

 そしてNANDフラッシュメモリ事業の粗利益率は、2018会計年度第3四半期(2018年3月~5月期)が47%、2018会計年度第4四半期(2018年6月~8月期)が48%である。前年同期の粗利益率はそれぞれ41%と40%で、値下がりにもかかわらず、利益率は上昇している。

MicronによるNANDフラッシュメモリ事業の現状。同社の公表資料を基に筆者がまとめた

独自開発による次世代3D NANDの進行度は順調

 MicronはDRAMとNANDフラッシュメモリの技術開発についても概要を公表している。その内容を以下に紹介しよう。

 DRAMの製造技術は、20nm世代から1Xnm世代へと移行を進めている。2018年9月~11月期(2019会計年度第1四半期)には、20nm世代の数量を1Xnm世代の数量が上回る見込みである。さらに微細化を進めた1Ynm世代の販売は、2019年(暦年)にはじめる。量産の本格的な立ち上げは2019年3月~5月期(2019会計年度第3四半期)になる。

 NANDフラッシュメモリ(3D NANDフラッシュ)の製造技術は、第3世代である96層の3D NANDフラッシュの生産を2018年(暦年)は拡大していく。独自開発となる次世代品(第4世代品)の開発は順調に進んでいるとする。

Micronによる半導体メモリ技術開発の現状。同社の公表資料を基に筆者がまとめた

SK Hynixの売上高営業利益率は8四半期連続で上昇

 最後はSK Hynixである。半導体メモリベンダーとしては、Samsungに次ぐ2位につける。SK Hynixは売上高の100%近くをDRAMとNANDフラッシュメモリが占める。Micronと同様に、DRAMとNANDフラッシュメモリが会社を支えていると言える。

 前回レポートではSK Hynixの四半期業績について「2016年第4四半期以降は売上高が過去最高を更新し、2017年第1四半期以降は営業利益が過去最高を更新し続けている」と報告した。前回レポートで最新の四半期は2017年第3四半期(2017年7月~9月期)だったので、4四半期連続で売上高の過去最高を更新し、3四半期連続で営業利益の過去最高を更新していた。

 その後は2017年第4四半期(2017年10月~12月期)に売上高と営業利益の過去最高をさらに塗り替えた。次の2018年第1四半期(2018年1月~3月期)は季節要因の影響を受けて売上高と営業利益を減らしたものの、直近の2018年第2四半期(2018年4月~6月期)では再び、売上高と営業利益の最高額を更新した。

SK Hynixの四半期業績推移。同社の公表資料を基に筆者がまとめた

 SK HynixはMicronと同様に、売上高営業利益率を順調に伸ばしてきた。SK Hynixの売上高営業利益率が上昇をはじめたのは、2016年第3四半期である。同期の売上高営業利益率は17.1%。前四半期は11.5%で2016年前半のメモリ不況によるボトム(底)だった。営業利益率の上昇は急激で、1年後の2017年第3四半期には、営業利益率は46.1%に増加した。ここまで5四半期連続の上昇である。

 営業利益はその後も上昇を続けた。直近の2018年第2四半期(2018年4月~6月期)では、53.7%に達している。じつに8四半期連続の増加だ。

SK HynixのNANDフラッシュ事業は成長が鈍化

 SK HynixもMicronと同様に、DRAM事業とNANDフラッシュメモリ事業の現状(ビット成長率と平均販売価格)を定量化して公表している。DRAMのビット成長率(前四半期比)は、2018年第1四半期がマイナス5%、同年第2四半期がプラス16%である。NANDフラッシュメモリのビット成長率(前四半期比)は2018年第1四半期がマイナス10%、同年第2四半期がプラス19%である。

 DRAMの平均販売価格(ASP)は、2018年第1四半期が前の四半期と比べて9%の上昇、同年第2四半期は4%の上昇となった。合計すると2018年上半期は13%の上昇である。ビット成長率が10.2%なので、単純積算では金額ベースで24.5%の増加となる。

 NANDフラッシュメモリのASPは、2018年第1四半期が前の四半期と比べて1%の下降、同年第2四半期は9%の下降となった。合計すると2018年上半期は9.9%の下降である。ビット成長率が7.1%なので、単純積算では金額ベースで3.5%の減少となる。

SK Hynixによる半導体メモリ事業の現状。同社の公表資料を基に筆者がまとめた

DRAM市場の拡大は続くが、NANDフラッシュ市場はゼロ成長の恐れ

 SamsungとMicron、SK Hynixの公表資料からわかるのは、2018年上半期でDRAM市場とNANDフラッシュメモリ市場ではすでに、かなりの違いが生じていることだ。

 DRAM市場は平均販売価格(ASP)の上昇が上半期も続いた。ただし上昇幅は明らかに縮まっており、下半期に値上がりが続くかどうかは微妙な状況である。一方で需要は旺盛なので、供給が増えるとともに市場規模(金額ベース)はかなり順調に増加していくように見える。2018年のDRAMビット成長率は20%前後と見込まれているので、金額ベースでは2018年のDRAM市場は25%~30%の成長が十分にあり得る。

 NANDフラッシュメモリ市場はASPが下降している。そして下降幅が大きくなる傾向が出ている。値下がりによって需要は拡大しているものの、3D NANDフラッシュの供給は順調に増加しており、下半期も値下がりが続きそうだ。2018年のNANDビット成長率の伸びは40%前後と非常に高い率が見込まれている。しかし第2四半期の段階で前年同期比の価格が25%ほど下がっており、下半期はさらに下がる可能性が高い。金額ベースでは、2018年のNANDフラッシュメモリ市場は1桁成長以下にとどまりそうだ。

 ただし企業業績は、2018年下半期もかなり良好だと見込まれる。前回レポートでは、DRAM大手3社の売上高営業利益率はSamsungが50%(半導体全体)、Micronが42%(ほぼメモリ専業)、SK Hynixが46%(ほぼメモリ専業)とかなり差があった。Samsungは売り上げ比率で20%弱の非メモリ部門(利益率はメモリ部門よりも低いと思われる)を抱えているにもかかわらず、トップの利益率をたたき出していた。

 それが2018年に入ると、3社の格差は縮まり、さらには逆転している。直近の四半期における売上高営業利益率はSamsungが53%、Micronが53%、SK Hynixが54%である。いずれも2017年の前回レポート時点よりも高く、各社での差がほとんどない。しかもNANDフラッシュメモリが値下がりしているのに、Micronが公表したNANDフラッシュ事業の粗利益率は前年に比べて上昇していた。今後の値下がりに対するマージンが十分に備わっている。値下げの余力はまだ十分にあると言えそうだ。