西川和久の不定期コラム

ASUS「TransBook T100TA」

~Bay Trail-Tを搭載した10.1型2-in-1!

 ASUSは10月29日、液晶着脱式ノートPC「TransBook」シリーズの10.1型を発表、11月2日より順次発売した。Clover Trailよりさらに強力になり、そして長時間バッテリ駆動が期待できるBay Trail-T搭載機だ。編集部から実機が送られて来たので、試用レポートをお届けする。

Bay Trail-Tを搭載しWindows 8.1が作動する2-in-1

 これまでTransBookとしては、13.3型でCore iプロセッサを搭載した「TransBook TX300CA」が存在した。メモリ4GB、ストレージはSSD 128GB+HDD 500GBと、単独でタブレット、キーボードドックと合体してノートPCにもなる2-in-1だ。

 そして今回発表された「TransBook T100TA」は、10.1型でIntel Atom Z3740、Bay Trail-Tを搭載した2-in-1となる。前世代に相当するClover Trailは、PCとしては驚異的なバッテリ駆動時間を可能としたが、代わりにパワーはそれなりで、パフォーマンスに不満があった。それを改善したのが、Bay Trail-Tとなる。

 特徴としては、4コア4スレッドでクロックは1.33GHz。Intel Burst Technology 2.0と呼ばれる、Turbo Boostのようなダイナミック・クロックコントロールが可能で最大1.86GHzまで上昇する。キャッシュは2MB、SDP(シナリオ・デザイン・パワー)はたったの2Wだ。SoCなのでプロセッサだけでなくグラフィックスやメモリコントローラなど全てが含まれている。

 アーキテクチャ上の最大メモリサイズは4GB(メモリの種類に依存)/LPDDR3-1066。チャネル数は2、最大メモリ帯域幅は17.1GB/secとなる。また Intel Quick Sync Video、Intel WiDi、VT-x、Intel 64にも対応している。グラフィックスはIntel HD Graphicsだ。

 スペックだけ見ていると、CeleronやPentiumとあまり差が無いように思われるが、後半のベンチマークテストでもそれを証明する結果となった。

ASUS「TransBook T100TA」の仕様
プロセッサIntel Atom Z3740(4コア/4スレッド、クロック 1.33GHz/1.86GHz、キャッシュ2MB、SDP 2W)
メモリ2GB
ストレージ(本体)32GB/64GB eMMC
ストレージ(キーボードドック)無し/500GB HDD
OSWindows 8.1 (32bit)
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics
ディスプレイIPS式10.1型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット、5点タッチ対応、Micro HDMI(最大1,920×1,080ドット)
ネットワークIEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0
インターフェイス(本体)Micro USB×1、microSDメモリカードスロット、マイク・ヘッドフォンコンボ、ステレオスピーカー、126万画素Webカメラ(前面)、ドック端子
センサー電子コンパス、加速度センサー、ジャイロスコープ
インターフェイス(キーボードドック)USB 3.0×1、ドック端子
サイズ/重量(タブレット)263×171×10.5mm(幅×奥行き×高さ)/約520g
サイズ/重量(キーボードドック)263×171×13.1mm(同)/約520g
サイズ/重量(合体時)263×171×23.6mm(同)/約1.07kg
バッテリ駆動時間約15.8時間(タブレット)/約14.9時間(合体時)
その他InstantGo対応、Office Home and Business 2013搭載モデルあり(T100TA-DK532GS)
価格44,800円(32GB/0GBモデル)から

 手元に届いたのは、下位モデルの「T100TA-DK32G」。プロセッサとグラフィックスに関しては上記の通り。メモリは2GB、本体側のストレージはモデルによってeMMC 32GBと64GBの2種類、キーボードドックも無しか500GB HDDの2種類ある。「T100TA-DK32G」は32GB/0GBだ。

 液晶ディスプレイは、IPS式10.1型光沢タイプで1,366×768ドット、5点タッチ対応で、本体側にMicro HDMIを装備し、外部出力時は最大1,920×1,080ドットとなる。

 本体のインターフェイスは、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0、Micro USB×1、microSDメモリカードスロット、マイク・ヘッドフォンコンボ×1、ステレオスピーカー、126万画素Webカメラ(前面)、ドック端子。キーボードドックのインターフェイスは、USB 3.0×1、ドック端子。センサーは本体側に電子コンパス、加速度センサー、ジャイロスコープを搭載している。

 少し複雑なのはモデル構成だ、本体32GB+キーボードドック0GB/Office無し(T100TA-DK32G)が44,800円、本体64GB+キーボードドック500GB HDD/Office無し(T100TA-DK564G)が54,800円前後、本体32GB+キーボードドック500GB HDD/Office有り(T100TA-DK532GS)が59,800円前後となる。

 キーボードドック側にバッテリは無く、HDDを搭載した場合、本体側の消費電力が増えるため、本体のみ約15.8時間、本体+キーボードドック/0GBで約14.9時間、キーボードドックに500GB HDDを搭載すると32GBモデルで約7.6時間、64GBモデルで約7.5時間となる。InstantGoにも対応する。

 サイズは本体のみで263×171×10.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量約520g、キーボードドック単体で263×171×13.1mm(同)、重量約520g、合体時のサイズ263×171×23.6mm(同)、重量約1.07kg。

 なお現在、10,000台限定で下位モデルのT100TA-DK32Gを購入すると、32GBのmicroSDHCカードをプレゼントする「32GB倍返し! キャンペーン」を実施中だ。

前面。中央上にWebカメラ。Windowsボタンが無い
背面(右/下)。microSDカードスロット、Micro USB、microHDMI、マイク・ヘッドフォンコンボ×1/ドック端子
背面(左/上)。音量±ボタン、Windowsボタン(相当)/電源ボタン。カメラは無い
キーボードドック(前面)。アイソレーションタイプの87キー日本語キーボード。タッチパッドは1枚プレート。キーピッチは実測で約18mmと少し狭い
キーボードドック(リア)。前面と同じ質感のプレートが使われている。ネジを外せば内部にアクセスできそうだが、今回は試していない
合体時(斜め前)。このチルトが最大。キーボードドックの右側面には何も無い
合体時(斜め後ろ)。キーボードドックの左側面にUSB3.0がある。少し分かり難いが、本体背面両端に細かいメッシュがあり、その後ろにスピーカーがある
ドック端子。キーボード側の凸を押すと本体が外れる。両サイドの凹は固定用。コネクタ本体は中央にある
ACアダプタ。出力5V/2A。サイズ約43×43×25mm(同)、重量49g。充電時に結構熱を持つ
本体重量。実測で577g
キーボードドック重量。実測で537g
合体時重量。実測で1,114g

 本体、キーボードドックと共に濃いグレー1色が使われ、パームレスト部分だけアクセントとしてヘアライン仕上げ。5万円未満であるが、安っぽいな雰囲気は無い。本体は重量約520g、厚みは約1cmなので、片手でも楽々持つことが可能だ。キーボードドックと合体時は、重量約1kg、厚み約23mmと、倍になってしまうが、それでも薄型で軽量級だろう。

 出力5V/2AのACアダプタは、サイズ約43×43×25mm(同)、重量49gとかなり小型。ただし、充電時それなりの熱を発生する。本体のMicro USBを使い充電するので、同タイプの汎用ACアダプタでも充電可能だ。

 本体の前面上中央にWebカメラ。左側面には音量±ボタン、Windowsボタン(相当)。右側面にはmicroSDカードスロット、Micro USB、Micro HDMI、マイク・ヘッドフォンコンボ。上側面には電源ボタン、下側面にはドック端子がある。

 キーボードドックにはフルサイズのUSB 3.0が1ポート。下位モデルは32GBとストレージは少ないが、中位/上位モデルはキーボードドック側に500GBのHDDを搭載しているので、転送速度の速いUSB 3.0は役に立つ。

 IPS式10.1型の液晶ディスプレイは、発色、輝度・コントラスト、視野角も良好だ。少し指紋が目立つだろうか。価格を考えるとクオリティは高い。5点タッチも一般的用途では問題無いだろう。

 ただ個人差が大きいと思うが、意外だったのは、直前までSurface 2(10.6型フルHD)を触っていて、その後10.1型HD解像度に表示される文字が非常に見にくかったことだ。特にIEをスナップインした時の文字はそのままだとパッと見、読めないに近いレベルとなる。画素密度の差がここまで大きいとは思わなかった。気になる方は量販店などでチェックして欲しいと思う。

 キーボードはアイソレーションタイプで、キーピッチは18mmと若干狭いものの、たわみもなく快適に入力できる。1枚プレートのタッチバッドも良好だ。本体とのドッキングは簡単。必要に応じてタブレットかノートPCに変身できるのは便利と言えよう。

 ノイズや発熱、振動に関しては試用した範囲では全く問題無いレベルだ。サウンドは、リア側にスピーカーがあるので、後ろに音が抜けてしまうものの、筐体のサイズのわりに、最大出力が大きく、動画や音楽を十分楽しめる。

 同社はネットブックの頃からこの手のマシンを数多く世に送り出してきただけに、その完成度はなかなかのもの。後述するBay Trail-Tのパワーが加わって、グッとくる人も多いのではないだろうか。

Clover Trailより2倍以上パフォーマンスが向上しCeleronに近い性能

 OSは32bit版Windows 8.1。メモリが2GBそしてIntel HD Graphicsと共有なので、最近のPCとしてスペックはやや低いが、標準搭載しているアプリを動かす程度では、メモリ不足は気にならない感じだ。スタンバイへの移行/復帰も素早くARMを採用したタブレット並みの軽やかさをWindowsマシンで体感できる。

 スタート画面は1画面+5アプリ。ASUSアプリグループにある3つが追加分だ。デスクトップは、同社製の壁紙に変わり、タスクバーにeManualがピン止めされている。このeManualはデータで実際はWindowsストアアプリのリーダーが起動する。

 ストレージは、32GBのSanDisk「SEM32G」が使われていた。C:ドライブのみの1パーティションで約28.2GBが割り当てられている。初期起動時の空きは17.7GB。Windowsマシンとしてはかなり少なく、microSDカードなどを使い、運用でカバーが必要だろう。

 Wi-FiはBroadcom製。デバイスマネージャーには、Capella Micro CM3218x Ambient Light Sensorなど幾つかのセンサーも見える。グラフィックスはIntel HD Graphics。Clover TrailではIntel Graphics Media Accelerator(PowerVR SGX 545)だったので、一般的なPCと同じアーキテクチャに変わった。

スタート画面1。Windows 8.1標準
スタート画面2。ASUSアプリが追加分のアプリ
起動時のデスクトップ。壁紙が変更され、タスクバーにeManualがピン止めされている
デバイスマネージャー/主要なデバイス。ストレージは32GBのSanDisk「SEM32G」、Wi-FiはBroadcom製だ。Capella Micro CM3218x Ambient Light Sensorなど幾つかのセンサーも見える
HDDのパーティション。C:ドライブのみの1パーティション。約28.2GBが割り当てられている

 プリインストール済のソフトウェアは、Windowsストアアプリは、「ASUS WebStorage」、「NAVITIME」、「OneNote」と少なめだ。デスクトップアプリも含め、少ないストレージ容量を考慮し、無理にアプリを詰め込んでいないと思われる。

アプリ画面1
アプリ画面2
ASUS WebStorage
NAVITIME

 デスクトップアプリは、「ASUS Live Update」、「ASUS On-Screen Display」、「ASUS Reading Mode」、「WebStorage」、「WinFlash」、「Kingsoft Office」。同社のツール系と、Office系アプリだ。Microsoft OfficeではないもののKingsoft Officeは互換性など定評がある。

ASUS Live Update
ASUS On-Screen Display
Kingsoft Office

 ベンチマークテストはWindows 8.1からWindows エクスペリエンス インデックスが無くなったため同等の結果が得られる、「winsat formal」コマンドを実行後、C:\Windows\Performance\WinSAT\DataStoreの下に収納されているxxxx-xx-xx xx.xx.xx.xxx Formal.Assessment (Recent).WinSATの情報掲載する。

 PCMark 7は既にWindows 8.1にも対応したPCMark 8があるものの、スコアの互換性が無いため、当面は7のまま様子をみたい。バッテリ駆動時間テストは従来通りBBench。またCrystalMarkの結果も掲載した(今回は4コア4スレッドと条件的には問題ない)。カッコ内は比較のため、Clover Trail(Intel Atom Z2760/最大1.8GHz)を搭載したDELL「Latitude 10」(Windows 8)の値だ。

 winsat formalの結果は、総合 4.1(3.3)。プロセッサ 6.3(3.4)、メモリ 5.5(4.7)、グラフィックス 4.3(3.7)、ゲーム用グラフィックス 4.1(3.7)、プライマリハードディスク 6.1(5.8)。PCMark 7はWeb Browsingの項目が動かず完走しなかった。

 CrystalMarkは、ALU 24470(12043)、FPU 20815(9392)、MEM 20519(9593)、HDD 12923(9672)、GDI 4303(2039)、D2D 3119(488)、OGL 3045(7843)。

 OGLだけ何故か逆転しているものの、他はほぼダブルスコアの差が付いている。また、2012年初頭に記事にしたCeleron G1610は、Windows エクスペリエンス インデックス総合 5.1。プロセッサ 6.7、メモリ 5.9、グラフィックス 5.1、ゲーム用グラフィックス 6.2、プライマリハードディスク 7.4。

 これだけ見ると、Celeronにあと一歩と言える程度にまでパフォーマンスが迫っているのが分かる。実際操作しても、Clover Trailで感じていたパワー不足は、全く気にならないレベルになっている。

 下位モデルと同じ価格のSurface 2/32GBとパフォーマンス差が気になり、「Google Octance」を試したところ、Octane Scoreは3745。Surface 2のOctane Scoreは3640とほぼ同等の結果となった。ただ詳細項目では4対9でSurface 2の方が高いスコアが多い。体感的には、Surface 2の方が全体の切れが良いように思う。

 BBenchはキーボードドック接続、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、WiFi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残2%で49,172秒/13.6時間。いつもの残5%でも13.3時間。スペック上、約14.9時間なのでほぼ近い結果で、軽々12時間オーバーをクリア。ただ液晶ディスプレイの輝度最小だと暗いため、実際はもう少し短くなると思われる。とは言え、1日仕事で使っても余裕がありそうだ。

winsat formalコマンドの実行結果。総合 4.1。プロセッサ 6.3、メモリ 5.5、グラフィックス 4.3、ゲーム用グラフィックス 4.1、プライマリハードディスク 6.1
BBench。キーボードドック接続、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、WiFi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残2%で49,172秒/13.6時間
CrystalMark。ALU 24470、FPU 20815、MEM 20519、HDD 12923、GDI 4303、D2D 3119、OGL 3045
Octane Score 3745/TransBook T100TA
Octane Score 3640/Surface 2

 以上のようにASUS「TransBook T100TA」は、IPS式10.1型タッチ対応のHD液晶ディスプレイ、そしてBay Trail-Tを搭載した2-in-1だ。Clover Trailと比較してパフォーマンスがアップし、バッテリ駆動時間も軽く12時間越えと驚異的に長い。もちろんフルのWindows 8.1が動くので無数にあるデスクトップアプリも利用可能だ。下位モデルの44,800円は内容を考えるとかなり安い。

 全体的に欠点らしい欠点もなく、10.1型HD解像度でスナップインした時など、文字が小さ過ぎなければ、お勧めできる1台と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/