PC Watchのキーボード黙示録

メカニカル、US配列、金属筐体。こだわりの末に辿りついた先は「中つ国」のキーボードだった

このコーナーは、ライターや編集者愛用のキーボードについて語る短期リレーコラムです。

 キーボードのようなデバイスの優劣は、単純なスペックでは決まらない。要は自分に合うかどうかがすべてで、高級品ならよいというわけでもないからだ。特定のモデルしか手に馴染まず、それを指名買いするタイプの人も多い。

 筆者はキーボードマニアではないし、特定のモデルでなければ嫌だということもない。だが毎日キーボードを叩く仕事をしている以上、いくつかこだわりのポイントもある。そんな観点から、筆者のお気に入りキーボードを紹介しよう。

メカニカルキーボードであること

 筆者がキーボードを自分で選ぶようになったのは、DOS/Vの自作をはじめた90年代後半からになる。とはいえ当時の筆者は学生。キーボードは「可能な限り費用を削減する場所」でしかなく、いつもワゴンの中にある最安のものだった。

 だが就職して経済的に余裕が出てからは、PCにおいて大事なのはCPUやメモリよりも、キーボードやディスプレイのような人間とのインターフェイスではないかと考えるようになった。そこで手を出したのがメカニカルキーボードである。当時はアキバのクレバリーによく通い、Cherry茶軸から入った記憶がある。2000年代前半の話だ。

 その後、コードを書くなら一度は……と、ハッカー御用達のRealForceやHHKB Pro2なども使ってみた。だが静電容量無接点式の、ラバードームによるややしっとり(あるいはねっとり)した打鍵感が筆者には合わなかったようで、数年でやめてしまった。その後リニアのキースイッチが良いとすすめられ、Cherry黒軸に手を出し、新型の赤軸へと乗り継いできた。これが筆者のおおまかなキースイッチ遍歴になる。

 このように好みの変遷はあるものの、言えることはキーボードはメカニカル一択という点だ。もちろんここは今でも譲れない。

US(英語)配列であること

 筆者も昔はJIS(日本語)配列のキーボードを使っていた。だがデータセンターのサーバーコンソールは、だいたい英語である。また業務で海外向けの環境に触れる機会も増え、そうこうするうちに、プライベートの機材もUS配列で統一するようになった。もちろん日本語配列は物理的なキーが英語配列より多いため、日本語配列のキーボードを英語配列として使うことも可能だ。だが筆者は印字との不一致がどうにも気持ち悪かったのである。

 劉デスクも言っているが、キーボード沼では、US配列が使えると選択肢が一気に広がる。日本語配列しか使ったことがないという人は、ぜひUS配列も試してみてほしい。ただし筆者のように「日本語配列が使えない」身体になってしまうと、今度は逆にノートPCの選択肢が致命的に狭まるため気をつけよう。

重たい金属筐体は正義

 樹脂製のキーボード、特に小型のものを使うと、高速打鍵時に震動したり、たわんでしまった経験はないだろうか?筆者はそれが気に入らない。キーボードには、高速打鍵に耐えるだけの安定感が必要だ。そのため剛性のある金属筐体はマスト。そして持ち運びを考えないのであれば、その重量は可能な限り重い方がいいと考えている。

エスリル ニューキーボード NISSE

 そんな条件を満たすキーボードを探し、出会ったのが「エスリル ニューキーボード NISSE」だ。

手の小さい人でも使いやすいように配慮されたエルゴノミックキーボードであり、長時間の作業でも疲れにくいようデザインされている

 NISSEの特徴の1つが、QWERTY以外にもDvorak、Colemak、親指シフト、TRONかな配列といった複数の配列に、キーボード単体で切り替え可能な点だ。また小指や親指で押す修飾キーも、12パターンの中から選択できる。

 ところがNISSEは、近年のQMK/VIA対応キーボードのような、個別キーの入れ替えには対応していない。だが筆者としては、CTRLキーはAの左隣にないと困るし、Enterは右人差し指ではなく右親指で打ちたい。そこで公開されているファームウェアを自分で書き換え、独自のレイアウトに変更している。

 筆者はだいぶ昔に初期モデルを購入したが、現在ではポインティングデバイス内蔵モデルや、Bluetoothに対応した新モデルも存在する。エルゴノミックキーボードの宿命として、使う側の慣れが必要ではあるものの、キーボードにおける「正解」のひとつかもしれないと筆者は考えている。

なお筆者が使っている個体は、Windowsキーの刻印が通常とはちょっと違っている

Drop + The Lord of the Rings Keyboard

 長い間NISSEを愛用していた筆者だが、興味本位で触れたHoly Panda Xキースイッチのよさに惚れてしまった。そこで手を出したのが、Dropの販売するHoly Panda Xのテンキーレスキーボードである「The Lord of the Ringsコラボモデル」だ。

ドワーフモデルとエルフモデルの2台を購入した。キーキャップにはキルス文字などが刻印されているが、どれも筆者には読めない

 本機のENTRアルミニウム筐体は見た目以上に重い。たとえばHHKB Professional HYBRID Type-Sは約540gで、一般的なメカニカルテンキーレスキーボードの多くが600g~800g程度なのに対し、本機の重量は約980gだ。

この1kgに迫る重量が、安定した打鍵感を支えている

 また本機はキーキャップにもこだわりがある。本機ではMT3プロファイルというキーキャップが採用されており、これは一般的なキーキャップと比較して背が高く、また表面のくぼみが非常に深いのが特徴だ。その吸い付くようなフィット感によって、「指を正しい位置へ導く感覚」が味わえるのだ。そしてHoly Panda Xが持つ、高級感のあるアーリータクタイルな打鍵感は最高である。

 そんなわけでここ数年、普段の仕事にはこのキーボードを使っている。思えば昔のキーボードには、しっかりとしたキーの存在感があったように思う。あの頃の「道具を操作している感覚」が好きな方におすすめしたい。

メーカー/製品エスリル ニューキーボード NISSEDrop + The Lord of the Rings Keyboard
使用PC自作デスクトップPCMac miniと各種ミニPC
キースイッチCherry赤軸Holy Panda X
キー配列USUS
サイズ/キー数76キー(エルゴノミック)87キー(テンキーレス)
キーピッチ18.8mm約19mm
キーストローク4.0mm3.5mm
押下圧(重さ)約45g(リニア)約60g(アーリータクタイル)
打鍵音スコスココトコト
接続方式USB Type-BUSB Type-C
筐体アルミ筐体/赤+シルバーアルミ筐体/ダークグレー
カスタマイズファームウェア書き換えによるキーリマップ付属のキーキャップに変更
キーバックライトなし