西川和久の不定期コラム

Microsoft「Surface 2」

~4倍速でフルHDになったWindows RT 8.1搭載2代目Surface!

 少し前に「Surface Pro 2」の記事を掲載したが、今回はWindows RT 8.1を搭載した「Surface 2」の試用レポートをお届けする。筆者は初代Surfaceを持っているだけに、その違いに興味津々だ。

10.6型フルHDになった上にTegra 4で4倍速

 Windows RTとWindowsの違いについては、以前に「Surface RT」の記事で説明しているのでそちらを参考にして欲しいが、ソフトウェア的に当時と今との一番の違いはWindows RTが“8”か“8.1”かという点だ。所有している「Surface」(旧Surface RT)は、Windows RTからWindows RT 8.1 Previewを経て、Windows RT 8.1へアップデートした。Windows RTと比較して、IEのレンダリング速度が向上したほか、全体的な性能も良くなった。UIも改善されている。

 Officeに関してはOutlookが追加された。個人的には「iWork」や「OpenOffice」など、Microsoft Officeでなくても事足りるのだが、他社とやり取りするOfficeデータは100%、Microsoft形式なだけに、純正が動くのは安心感がある。

 個人的にはFacebookアプリの登場により、一気に使用頻度が増した。日頃のパターンだとTwitterアプリとFacebookアプリ、もしくはIEやメールをスナップインで分割表示し、必要に応じて切り替えている。このスナップインは、ライブタイルとともにiOSとAndroidにはないWindows RTの強みと言えよう。

 ただ、まだまだ(使い物になる)Windowsストアアプリは少なく、不足部分はスマートフォンなどで補完する必要はあるが、適材適所で使えば、ほとんど事足りている。

 個人的には「PuTTY」や「WinSCP」、「FileZilla」、「秀丸」などに替わるWindowsストアアプリが欲しいところ。これさえあれば「Photoshop」や「Illustrator」、動画編集などのハイエンド用途や、XAMPPなどを使ったテストサーバー環境以外、全ての仕事をSurface 1台でまかなえてしまう。

 そう考えると、Bay Trailを搭載したタブレットや2-in-1はフルのWindows 8.1が作動し、筆者のニーズを満たすが、現状「これは!」と思うデバイスは登場していない。むしろ3G/LTEに対応したNokia「Lumia 2520」(Windows RT 8.1/Snapdragon 800)が気になる存在だが、残念ながら日本での発売は期待薄だ。

 そのような中、発表されたのが今回ご紹介するSurface 2だ。主な仕様は以下の通りだが、初代Surfaceと大きく違うのはTegra 4(前モデル:Tegra 3)、フルHD(前モデル:HD)、USB 3.0(前モデル:USB 2.0)、2段階(前モデル:1段階)のキックスタンドとなる。

「Surface 2」の仕様
プロセッサNVIDIA Tegra 4
メモリ2GB
ストレージ32/64GB
OSWindows RT 8.1
ディスプレイ10.6型液晶ディスプレイ(IPS/光沢)、1,920×1,080ドット(206ppi)、5点タッチ対応、Micro HDMI出力
ネットワークIEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0
インターフェイスUSB 3.0×1、microSDXCカードスロット、ヘッドフォン出力、マイク×2、ステレオスピーカー、350万画素前面/500万画素背面カメラ、カバー端子
センサー光センサー、加速度センサー、ジャイロスコープ、電子コンパス
サイズ/重量275×173×8.9mm(幅×奥行き×高さ)/約676g(本体のみ)
バッテリ駆動時間最大10時間
その他Microsoft Office Home and Business 2013 RT搭載
価格44,800円(32GBモデル)から

 プロセッサはARM Cortex-A15ベースのNVIDIA Tegra 4。同社の説明によると対Surface比で約4倍(場合によっては6倍)の性能だと言う。

 実際の描画もスムーズで、IMEももたつかず、Webのレンダリングも高速。一度Surface 2を触ってしまうと、Surfaceは何をしても遅く感じる。発表会場でのハンズオンでは「Surface 2ができる範囲ならSurface Pro 2は不要かも!?」と言う意見が複数聞こえたほどだ。

 加えて同じ10.6型でも1,366×768ドットから1,920×1,080ドット(フルHD)になり画素密度(ppi)が高くなった。206ppiなのでRetinaレベルとまでは行かないものの、明らかにドットが見えなくなり、フォントなどがスムーズになった。液晶パネルも色域の広いタイプに変わり色が鮮やかになっている。もともとSurfaceは価格を考えるとディスプレイの品質は高かったが発色が少し浅めだった。解像度とともにこのウィークポイントも改善され、完成度が向上した。

 速度と画面がこれだけ違うと、もうこの時点で、完全にSurfaceとは別物だ。一気に物欲が高まる。

 そのほかの違いは、USBが2.0から3.0になった。ただ外部に大容量のストレージを付けるような使い方は似合わず、メディアリーダを接続するにも、そもそもストレージが少ないので、大量のデータを転送するとすぐに一杯になってしまうため、あまりメリットはないかも知れない。キックスタンドはSurface Pro 2同様、24度と40度の2段階、そしてマイクはモノラルからステレオへ変更された。

 サイズは275×173×8.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量約676g(本体のみ)。ほんの僅か薄く軽くなっているものの、ほとんど同じ。それでいてバッテリ駆動時間は8時間から10時間に伸びている。

 価格は32GBモデルが44,800円、64GBモデルが54,800円と1万円の違いとなる。なお、初代Surfaceは32GBモデル34,800円、64GBモデル44,800円とSurface 2より1万円安く併売される。これだけポテンシャルが違うと、1万円の差であれば、Surface 2をお勧めしたい。

 アクセサリに関しては、カバー端子は新旧ともに相互互換であり、新しいSurface 2に古いType CoverやTouch Cover、古いSurfaceに新しいType Cover 2やTouch Cover 2を取り付けることが可能だ。同時に発表のあったドッキングステーションだけがSurface Pro / Pro 2専用となる。

前面。中央下にWindowsボタン、中央上に350万画素前面カメラ
右/下面。右スピーカー、Micro HDMI、USB 3.0、電源端子/カバー端子。microSDXCカードスロットはキックスタンドを上げた背面にある
左/上面。左スピーカー、ヘッドフォン端子、音量±ボタン/電源ボタン。背面上中央に500万画素背面。色は黒からシルバーへ
リア+キックスタンド(チルト40度/新たに追加された角度)。扉の写真が従来のチルト24度。かなり違うのが分かる
重量。実測で649g(本体のみ)
ACアダプタ(24W)。Surface Pro 2(ACアダプタは48W)より小型で、プラグがACアダプタ側に付いている。サイズ65×45×28mm(同)、重量121g

 筐体は初代同様、VaporMg(マグネシウム合金)が使われ非常に質感もよく強度も十分。色はブラックからシルバーに変更された。キックスタンドは膝上などでも使いやすいよう、従来の24度に加え40度も追加。利用できるシーンが広がった。Surface Pro 2は持った時にズッシリ重たく感じたが、Surface 2は軽く感じる。Type CoverやTouch Coverをつけても1kg未満に収まり、カバンなどへ入れても然程苦にならない。

 前面は中央下にWindowsボタン、中央上に350万画素カメラ。右側面に右スピーカー、Micro HDMI、USB 3.0、電源端子。左側面に左スピーカー、ヘッドフォン端子、音量±ボタン、上側面に電源ボタン、下側面にカバー端子を配置。またキックスタンドを上げた背面右下にmicroSDXCカードスロットがある。

 少し不満点があるとすれば、スピーカーが側面にあるため、音が前方に周りにくいのと、Surface Pro/Pro 2は、USBとMini DisplayPortのコネクタが側面下側にあるのに対して、Surface/Surface 2はコネクタが側面上側にあり、ケーブルを接続すると邪魔で、見栄えが悪くなる点だ。

 10.6型フルHDのIPS液晶パネルは、先に書いたように、ドットやジャギーがほぼ見えなくなり、非常に見やすくなった。加えて色域が広がり、赤や青など原色系の色が鮮やかだ。写真も動画もさらに楽しめる。タッチは5点だが、困ることはないだろう。

 振動やノイズは皆無。発熱に関しては、Surface Pro 2とは違い、長時間作動させても熱を持つこともなく冷たいままだ。さすがにARMと言ったところか。サウンドに関しては、クラスの割りにクオリティも高く、最大音量も十分だ。

スタート画面からデスクトップのタイルが消えた

 ストレージは32GBの「Hynix HBG4e」が使われている。BitLockerが掛かったC:ドライブのみの1パーティションで約25.86GBが割り当てられ、初期起動時の空きは19.6GBとかなり少ない。microSDXCカードスロットがあるので、データ関係はこちらに逃がすなど、運用上の工夫が必要だ。また、SkyDrive 200GBの2年間無料使用権も付いてくる。容量上、全てはマッピングできないものの、PCやOS X/iOS、Androidとデータ共有するのに非常に有効な手段と言えよう。

 スタート画面は1画面+3アプリ。「Fresh Paint」、「OneNote」、「Skype WiFi」の3つが追加されている。OneNoteはデスクトップアプリ版とWindowsストアアプリ版の2種類ともインストールされている。Skypeは世界61カ国固定電話かけ放題と、Skype WiFiが1年間使い放題になっている。

 ほかのデバイスは、オーディオ系にHigh DefinitionとTegra系、Wi-FiモジュールはMarvell AVASTAR Wireless-Nが使われていた。BluetoothのオーディオコーディックはSBCのみでapt-XやAACには未対応。高音質での再生はもちろん、他機種との差別化も含め、できれば対応して欲しい部分だ。

スタート画面1。デスクトップのタイルが消えている
スタート画面2。Fresh Paint、OneNote、Skype WiFiが追加Windowsストアアプリ
起動時のデスクトップ。Windows RT 8.1標準で、タスクバー上にデスクトップ版のOfficeアプリがピン止めされている
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージは32GBの「Hynix HBG4e」。オーディオにHigh DefinitionとTegra系、Wi-Fiモジュールは、Marvell AVASTAR Wireless-N
HDDのパーティションBitLockerが掛かったC:ドライブのみの1パーティションで約25.86GBが割り当てられている
背面カメラで撮影した写真。2,560×1,440ドット。ISO100、F値不明、1/141秒。焦点距離は3mm(※クリックすると800×450ドットの画像が開きます。元画像はこちら)

 少し驚いたのはスタート画面から、デスクトップのタイルが消えていることだ。インストール済みのデスクトップアプリしか動かず、事実上ほぼOffice専用なので、混乱を避けるための配慮だろうか。

 もちろんOutlook、PowerPoint、Excel、Wordのタイルがあり、一発で起動できるようになっている。デスクトップのタイルが必要な場合は、アプリ画面からスタート画面にピン止めすればよい。

 8.1の新機能で、スタート画面のチャーム/タイルで「タイルを縮小して表示」にすれば、1画面に収まるタイルの数を増やすことが可能になり一覧性が高くなる。特に解像度が低いSurfaceにこのオプションは有効だ。

 背面カメラを使った作例を1枚掲載した。色乗りはそこそこだが、残念ながらパンフォーカスで、恐らく1m程度以上離れないとピントが合わず用途はかなり限定される。また室内などあまり明るくない場所ではISO感度はある程度上がるものの、シャッタースピードが遅めのプログラムシフトで、手ぶれの発生率は高くなる。いずれにしても主に動画用で、スチルカメラとしては期待しない方が無難だろう。この点は、後発の割りにほかと比べ遅れている部分だ。

アプリ画面1
アプリ画面2
タイルを縮小して表示(はい)
初期起動時のWindows Update(1/3)
初期起動時のWindows Update(2/3)
初期起動時のWindows Update(3/3)

 アプリ画面は約1画面半。Fresh Paint、OneNote、Skype WiFi、Microsoft Office 2013が追加分となる。Windows RTの特性上、Windowsストアアプリは追加できるが、デスクトップアプリは追加することができない。

 余談になるが、Windows RT用のデスクトップアプリはコンパイラもあり、開発は可能だ。ただしMicrosoftの署名が埋め込まれたバイナリ以外は、実行できない仕掛けになっているため、事実上、標準搭載しているデスクトップアプリしか使えない。Windowsストアアプリを推奨し、デスクトップ環境をセキュアにしたい気持ちも分かるが、なんらかの方法でこの制限が撤廃できれば、一気にWindows RTの存在価値も向上する。再検討して欲しい部分だ。

 初期起動時のWindows Updateは、原稿執筆時点で、IMEの辞書更新×5、Windows RTのセキュリティアップデートと更新×7、Office 2013のセキュリティアップデートと更新×7、システムファームウェアの更新、Windows Defenderの更新、Camera Codec Packの更新……と、結構な量がある。

 下に掲載した画面キャプチャは、(Windows 8.1もだが)Windows RT 8.1の特徴的な部分となる。Outlookも含めMicrosoft Officeが使え、スナップインでWindowsストアアプリ同士はもちろん、Windowsストアアプリとデスクトップアプリも1画面上で分割表示が可能だ。

 iOSデバイスは新規購入分からiWorkが無料、Androidは多くのケースでOffice Suiteがバンドルされており、似たようなOffice環境はあるものの、そこは業界標準Office、そして、ほかのアプリを参照しながら操作可能と、この点に関しては圧倒的なアドバンテージがある。

新しく追加されたOutlook(デスクトップアプリ)
FacebookとFresh Paintをスナップインで同時表示
Windowsストアアプリ版のIEとデスクトップアプリのExcelをスナップイン

 ベンチマークテストはJavaScriptのベンチマーク「Google Octance」を使用した。Webベースなので気軽に測定でき、ほかのiOSやAndroidでも実行可能なので、ある程度の参考にはなるだろう(カッコ内はSurface)。

 Surface 2はOctane Score 3640(1630)。Richards 4229(1996)、Deltablue 3015(1229)、Crypto 5127(2203)、Raytrace 2983(1623)、EarleyBoyer 5509(2643)、Regexp 1299(549)、Splay 1693(1254)、NavierStokes 7275(2331)、pdf.js 4241(1940)、Mandree 1922(992)、GB Emulator 6469(2168)、CodeLoad 5212(2422)、Box2DWeb 4167(1524)。Surfaceと比較して全ての項目でかなり速いことが分かる。

 参考までにiPhone 5s/SafariではOctane Score 5131、Nexus 7(2013)/ChromeはOctane Score 2563だった。いずれにしても一般的なCore i5プロセッサ搭載PCだと桁
1つ違うスコアなので、速いと言ってもPCとは比較にならない。

Octane Score 3640/Surface 2
Octane Score 1630/Surface

 バッテリ駆動時間は、明るさ/音量ともに50%、Wi-Fi経由でフルHD動画を連続再生して測定したところ10.9時間作動した。若干長めだがほぼスペック通りの結果だ。これなら1日仕事で使っても大丈夫だろう。

 また詳細なデータは貸し出し期間の関係上取れていないが、「InstantGo」に対応していることもあり、スタンバイ時でもそれなりにバッテリを消費する。ただ、Surfaceは3日程度でバッテリが切れていたが、Surface 2はあと数日は大丈夫なようだ。


 以上のようにMicrosoft Surface 2は、初代Surfaceと比較して、大幅にパフォーマンスが向上し、解像度はフルHDと、ほとんど見かけは同じだが、別物と言えるほど進化している。作動はサクサク、表示は綺麗、ライブタイルやスナップインも魅力的だ。Surface 2/Surfaceとも、量販店に並んでいるケースが多いので、是非その違いを確かめて欲しい。

 まだまだ実用的なWindowsストアアプリは少ないものの、写真、動画、ネットに加え、Microsoft Officeが使え、バッテリ駆動時間も十分長い。標準以外のデスクトップアプリは使えないが、この価格なら納得の内容だ。iPadやAndroidタブレットを使って馴染めなかった人にお勧めしたい1台と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/