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Intel Arc B580、ついにRTX 4060の壁を超えた?待望の新GPUをテスト

Intel Arc B580

 12月13日より、Intelの新世代GPUである「Arc B580」を搭載したビデオカードの販売がスタートする。Xe2アーキテクチャを採用したBattlemageこと「Intel Arc Bシリーズ」最初の製品であり、249ドルという価格が設定されたミドルレンジGPUだ。

 今回は、発売に先立ちIntel純正カードである「Arc B580 Limited Edition」をテストする機会が得られたので、前世代の最上位GPUである「Arc A770」、およびライバルと目される「GeForce RTX 4060」との比較を通して、Intelの新世代ミドルレンジGPUの実力を探ってみた。

Xe2世代のディスクリートGPU「Arc B580」

 Arc B580は、Battlemageの開発コード名で知られる新世代GPU「Intel Arc Bシリーズ」の第1弾製品となるミドルレンジGPU。Arc Bシリーズでは、GPUアーキテクチャを「Xe2」に刷新し、製造プロセスも前世代のTSMC N6から「TSMC N5」に変更されている。

 Arc B580のGPUコア「BMG-G21」では20基のXeコアが有効化されており、160基のXeベクトルエンジンとXMX、20基のレイトレーシングユニットなどが利用できる。また、Xe2アーキテクチャを採用したことでXeSS 2をサポートしており、フレーム生成技術の「XeSS FG」や遅延低減技術「XeLL」が利用可能となった。

 VRAMには19Gbps動作のGDDR6メモリを12GB搭載しており、GPUとは192bitのメモリインターフェイスで接続することで、456GB/sのメモリ帯域幅を実現した。電力指標のTBPは190Wで、バスインターフェイスはPCIe 4.0 x8。

【表1】Arc B580/B570の主な仕様
GPUArc B580Arc B570Arc A770(16GB)
アーキテクチャXe2(BMG-G21)Xe2(BMG-G21)Xe-HPG(ACM-G10)
製造プロセスTSMC N5TSMC N5TSMC N6
Xeコア20基18基32基
Xeベクトルエンジン160基144基512基
レイ・トレーシング・ユニット20基18基32基
Xe Matrix eXtensions(XMX)160基144基512基
ベースクロック2,670MHz2,500MHz2,100MHz
最大クロック2,850MHz2,750MHz
メモリ容量12GB GDDR610GB GDDR616GB GDDR6
メモリスピード19.0Gbps19.0Gbps17.5Gbps
メモリインターフェイス192bit160bit256bit
メモリ帯域幅456GB/s380GB/s560GB/s
バスインターフェイスPCIe 4.0 x8PCIe 4.0 x8PCIe 4.0 x16
消費電力(TBP)190W150W225W
価格249ドル219ドル349ドル

 Intelは、Intel Arc Bシリーズが発売時点でサポートするプラットフォームについて、第10世代Core以降のIntel製CPU、またはRyzen 3000シリーズ以降のAMD製CPUを搭載した環境を挙げている。

 これらに共通するのはResizable BAR(およびAMD Smart Memory)をサポートしていることであり、Intel Arc Bシリーズが最適なパフォーマンスを発揮するためにはResizable BARの有効化が必要であるとしている。

Arc Bシリーズがサポートするプラットフォーム

Intel純正カード「Arc B580 Limited Edition」

 今回、Intelより借用したのはArc B580を搭載するIntel純正カード「Arc B580 Limited Edition」だ。

 2基の冷却ファンを搭載したGPUクーラーを搭載しており、外装には前世代であるArc AシリーズのLimited Editionと同じく滑らかな手触りのラバー素材が仕様されている。補助電源コネクタはPCIe 8ピン×1系統で、映像出力端子はDisplayPort 2.1(3基)とHDMI 2.1a。

Arc B580 Limited Edition。外装は滑らかな手触りのラバー素材で覆われている
裏面にはバックプレートを搭載しており、カード後部には大きな通気口が設けられている
カードの占有スロット数は約2スロット
補助電源コネクタはPCIe 8ピン
ブラケット部。映像出力端子はDisplayPort 2.1(3基)とHDMI 2.1a
前世代のArc A770 Limited Edition(写真下)と並べたところ。カードサイズに大きな違いはない
Arc B580 Limited EditionのGPU-Z実行画面

テスト環境と比較用GPU

 Arc B580の比較用として、前世代の最上位GPUであるArc A770の純正カード「Arc A770 Limited Edition」と、GeForce RTX 4060を搭載する「MSI GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC」を用意した。

Arc A770 Limited Edition
Arc B770 Limited EditionのGPU-Z実行画面
GeForce RTX 4060搭載ビデオカード「MSI GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC」
MSI GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OCのGPU-Z実行画面

 各ビデオカードのテスト時動作仕様は以下の表の通り。

 GPUドライバについては、Arc B580は原則としてレビュアー向けドライバの「32.0.101.6251」を使用するが、F1 24のみ「32.0.101.6252」でテストを行なっている。なお、ほかのGPUについては通常配布されているドライバを導入しており、Arc A770は「32.0.101.6314」、GeForce RTX 4060は「Game Ready Driver 566.36」でテストを行なった。

【表2】各ビデオカードの動作仕様
GPUArc B580Arc A770GeForce RTX 4060
ビデオカードベンダーIntelIntelNVIDIA
製品型番B580 Limited EditionA770 Limited EditionGeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC
ベースクロック2,670MHz2,100MHz1,830MHz
ブーストクロック2,850MHz2,490MHz
メモリ容量12GB GDDR616GB GDDR68GB GDDR6
メモリスピード19.0Gbps17.5Gbps17Gbps
メモリインターフェイス192bit256bit128bit
メモリ帯域幅456GB/s560GB/s272GB/s
PCI ExpressPCIe 4.0 x8PCIe 4.0 x16PCIe 4.0 x8
Power Limit190W(推測値)190W115W
温度リミット不明90℃83℃
Resizable BAR有効有効有効
GPUドライバ32.0.101.625132.0.101.6314GRD 566.36(32.0.15.6636)

 各ビデオカードを搭載するテスト環境には、現行のCPUでは最高峰のゲーミング性能を有する「Ryzen 7 9800X3D」と、AMD X870Eチップセットを搭載する「ASUS ROG STRIX X870-F GAMING WIFI」を用意した。その他の機材や条件については以下の通り。

3D V-Cacheを搭載する8コア/16スレッドCPU「Ryzen 7 9800X3D」
AMD X870Eチップセット搭載マザーボード「ASUS ROG STRIX X870-F GAMING WIFI」
【表3】テスト機材
CPURyzen 7 9800X3D(8コア/16スレッド)
CPUリミット設定PPT=162W、TDC=120A、EDC=180A、TjMax=95℃
CPUアンコア設定MCLK=UCLK=2,800MHz、FCLK=2,000MHz
マザーボードASUS ROG STRIX X870-F GAMING WIFI [BIOS=0606]
メモリDDR5-5600 16GB×2(2ch、46-45-45-90、1.1V)
システム用SSDSamsung 970 EVO Plus(NVMe SSD/PCIe 3.0 x4)
ゲーム用SSDCFD CSSD-M2B2TPG3VNF 2TB(NVMe SSD/USB 10Gbps)
CPUクーラーADATA XPG LEVANTE 360 ARGB(ファンスピード=100%)
電源玄人志向 KRPW-PA1200W/92+(1,200W/80PLUS Platinum)
ディスプレイ3,840×2,160ドット、60Hz
OSWindows 11 Pro 24H2(build 26100.2454、VBS有効)
電源プランバランス
計測HWiNFO64 Pro v8.17、ラトックシステム RS-BTWATTCH2
室温約25℃

ベンチマーク結果

 今回実施したベンチマークテストは以下の通り。

  • 3DMark
  • ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク
  • STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール
  • F1 24
  • Microsoft Flight Simulator 2024
  • サイバーパンク2077
  • フォートナイト
  • VALORANT
  • エーペックスレジェンズ
  • オーバーウォッチ 2
  • ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON
  • エルデンリング
  • Forza Horizon 5
  • モンスターハンターライズ:サンブレイク
  • 黒神話:悟空 ベンチマークツール
  • UL Procyon
  • Blender Benchmark
  • DaVinci Resolve 19
  • Adobe Camera Raw

3DMark「Speed Way」

 3DMarkのDirectX 12 Ultimateテスト「Speed Way」において、Arc B580のスコアは「2,482」で全体2番手となっており、GeForce RTX 4060を約6%下回り、Arc A770を約4%上回った。

3DMark「Speed Way」

3DMark「Steel Nomad」

 3DMarkのDirectX 12テスト「Steel Nomad」では、GPU負荷の高い通常版Steel Nomadと、より軽量なSteel Nomad Lightを実行した。

 負荷の高いSteel Nomadのスコアで「3,092」を記録したArc B580は、Arc A770を約8%、GeForce RTX 4060を約37%上回り、全体ベストのパフォーマンスを発揮した。

 一方、負荷の軽いSteel Nomad LightではArc A770に逆転されたArc B580は全体2番手となっており、Arc A770を約6%下回り、GeForce RTX 4060を約7%上回った。

3DMark「Steel Nomad」
3DMark「Steel Nomad Light」

3DMark「Port Royal」

 3DMarkのDXR(DirectX Raytracing)テスト「Port Royal」において、Arc B580は「7,940」を記録して全体ベストを獲得。Arc A770を約14%、GeForce RTX 4060を約32%上回った。

3DMark「Port Royal」

3DMark「Solar Bay」

 3DMarkの比較的軽量なレイトレーシングテスト「Solar Bay」において、Arc B580は「56,724」を記録して全体ベストを獲得。Arc A770を約8%、GeForce RTX 4060を約19%上回った。

3DMark「Solar Bay」

3DMark「Wild Life」

 3DMarkのVulanテスト「Wild Life」では、通常のWild Lifeと、より高負荷なWild Life Extremeを実行した。

 Arc B580は通常版と高負荷版の両方で全体ベストを記録しており、Arc A770を6~7%、GeForce RTX 4060を37~47%上回った。

3DMark「Wild Life」

3DMark「PCI Express feature test」

 バスインターフェイスの速度を計測する「PCI Express feature test」において、PCIe 4.0 x8を採用するArc B580は「14.37GB/s」を記録。PCIe 4.0 x16を採用するArc A770は「23.17GB/s」で、Arc B580と同じPCIe 4.0 x8のGeForce RTX 4060は「13.40GB/s」だった。

3DMark「PCI Express feature test」

ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク

 ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークでは、描画設定を「最高品質」に設定して、フルHD/1080p~4K/2160pまでの画面解像度をテストした。

 Arc B580はすべての解像度で全体ベストを獲得しており、Arc A770を10~15%、GeForce RTX 4060を3~24%上回った。

ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク「スコア」
ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク「平均フレームレート」

STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール

 STREET FIGHTER 6 ベンチマークツールでは、グラフィックプリセットを最高の「HIGHEST」に設定して、フルHD/1080p~4K/2160pまでの画面解像度をテストした。

 メインコンテンツにして上限フレームレートが60fpsのFIGHTING GROUNDに関しては、どのGPUもWQHD/1440pまでは約60fpsを維持しており差がついていない一方、4K/2160pでは「58.88fps」を記録したArc B580がArc A770を約6%、GeForce RTX 4060を約24%上回った。

 BATTLE HUBとWORLD TOURについては、WORLD TOURの方がGPU性能の差がフレームレートに反映されており、Arc B580はWQHD/1440p以上の解像度において、Arc B580がArc A770を6~7%、GeForce RTX 4060を9~23%上回っている。

STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール「フルHD/1080p」
STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール「WQHD/1440p」
STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール「4K/2160p」

F1 24

 F1 24では、XeSS 2で導入されたフレーム生成技術「XeSS FG」と遅延低減技術「XeLL」が利用できるレビュアー向けベータ版「v1.16.1184800」でテストを行なった。なお、このテストのみArc B580のGPUドライバに「32.0.101.6252」を導入している。

 テストでは、描画プリセットを最高の「超高」に設定。アンチエイリアスを超解像無効の「TAA」に設定した場合と、「XeSS」で超解像のみを有効にした場合、XeSSによる超解像とフレーム生成を有効化した場合のデータを計測した。なお、参考までにNVIDIAのDLSS 3による超解像とフレーム生成有効時のデータも取得している。このテストでXeSSとDLSSの比較はできない点に注意して欲しい。

 Arc B580は超解像とフレーム生成無効のアンチエイリアス「TAA」設定で、Arc A770を18~24%、GeForce RTX 4060を9~29%上回って地力の高さを示した。XeSS超解像を有効化した場合でも全体ベストは変わらずArc B580で、Arc A770を15~19%、GeForce RTX 4060を8~25%上回った。

 比較製品の中で唯一XeSS FGが利用できるArc B580は、フレーム生成を実行することで無効時に比べ49~74%高い平均フレームレートを記録している。WQHD/1440p解像度以下では71~74%のフレームレート向上を達成しており、かなり効果的にフレームレートを増やせていることが伺える。

F1 24「フルHD/1080p」
F1 24「WQHD/1440p」
F1 24「4K/2160p」

Microsoft Flight Simulator 2024

 Microsoft Flight Simulator 2024では、ディスカバリーモードで東京を選択し、スタート地点からAI操縦によってまっすぐ飛行した際のフレームレートを計測した。テスト時の描画設定は「ウルトラ」で、アンチエイリアスを「TAA(超解像無効)」、「FSR2(超解像有効)」、「DLSS(超解像・フレーム生成有効)」に設定し、フルHD/1080p~4K/2160pまでの画面解像度で計測した。

 12GBのVRAMを備えるArc B580は、すべての条件でVRAM不足による極端な性能低下を起こしておらず、フルHD/1080p時点でVRAM容量に余裕のないGeForce RTX 4060を「TAA」設定で31~324%、「FSR2」設定でも137~194%も上回った。

 一方で、Arc A770に対してはTAA設定のWQHD/1440p以下で8~6%上回っているものの、FSR2設定ではWQHD/1440p以上で8~9%下回っている。

Microsoft Flight Simulator 2024「フルHD/1080p」
Microsoft Flight Simulator 2024「WQHD/1440p」
Microsoft Flight Simulator 2024「4K/2160p」

サイバーパンク2077

 サイバーパンク2077では、グラフィックプリセットを「レイトレーシング:ウルトラ」に設定し、超解像を「XeSS 1.3」、「FSR 3」、「DLSS」にした場合と、フルHD/1080p~4K/2160pまでの画面解像度でベンチマークモードを実行した。なお、「FSR 3」と「DLSS」ではそれぞれのフレーム生成機能を利用している。

 超解像のみを行なうXeSS 1.3設定において、Arc B580はフルHD/1080pでGeForce RTX 4060をわずかに下回っているものの、WQHD/1440p以上では逆に9~17%上回った。なお、Arc B580はすべての解像度でArc A770に勝利しており、21~25%と大きく上回った。

 FSR 3による超解像とフレーム生成を行なった場合のArc B580は、すべての条件で全体ベストを獲得しており、Arc A770を28~31%、GeForce RTX 4060を4~23%上回った。

サイバーパンク2077「フルHD/1080p」
サイバーパンク2077「WQHD/1440p」
サイバーパンク2077「4K/2160p」

フォートナイト

 フォートナイトでは、グラフィックプリセット「最高」をベースに、超解像とNaniteおよびLumenを無効化したアンチエイリアス「TAA」設定と、NaniteとLumen(ハードウェアレイトレーシング)を有効化して超解像を行なう「XeSS」設定および「DLSS」設定でフレームレートを計測した。

 TAA設定でのArc B580は、GeForce RTX 4060をフルHD/1080pで約10%下回ったが、WQHD/1440pで同等になり、4K/2160pでは逆に19%上回った。Arc A770にはすべての解像度で勝利しており、35~42%と大きく上回った。

 XeSS設定でのArc B580はすべての条件で全体ベストを獲得しており、Arc A770を50~69%、GeForce RTX 4060を2~9%上回った。

フォートナイト「フルHD/1080p」
フォートナイト「WQHD/1440p」
フォートナイト「4K/2160p」

VALORANT

 VALORANTでは、射撃場の中でも特に負荷の高い場所(全景が見える場所)で平均フレームレートを計測した。なお、テストでは描画設定を可能な限り高品質に設定し、フルHD/1080p~4K/2160pまでの画面解像度で計測した。

 全体ベストを獲得したのはGeForce RTX 4060で、Arc B580はGeForce RTX 4060を10~40%も下回った。また、Arc A770をフルHD/1080pと4K/2160pで約4%下回り、WQHD/1440pでは逆に3%上回ったが、これはあまり意味のある差ではないようだ。

 VALORANTにおいて、Arc B580とArc A770は330fps前後でフレームレートが頭打ちになっている様子がみられ、この時はGPU使用率が100%を割り込んでいる。現象としてはCPUボトルネックが生じている状況であり、DirectX 11タイトルのVALORANTではGeForce RTX 4060以上にCPUボトルネックが生じやすいというのがIntel Arcの現状であると考えられる。

VALORANT

エーペックスレジェンズ

 エーペックスレジェンズでは、描画設定をできる限り高品質に設定し、フルHD/1080p~4K/2160pまでの画面解像度で平均フレームレートを計測した。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 12で、上限フレームレートは300fps。

 Arc B580はすべての条件で全体ベストを獲得しており、Arc A770を22~27%、GeForce RTX 4060を22~23%上回った。

エーペックスレジェンズ

オーバーウォッチ 2

 オーバーウォッチ 2では、グラフィックプリセットを最高の「エピック」に設定し、フルHD/1080p~4K/2160pまでの画面解像度で平均フレームレートを計測した。テスト時の上限フレームレートは600fps。

 Arc B580は、WQHD/1440p以下でGeForce RTX 4060を6~9%上回ったが、4K/2160pでは逆に約6%下回っている。Arc A770にはすべての条件で勝利しており、11~13%上回った。

オーバーウォッチ 2

ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON

 ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICONでは、グラフィックプリセットを「最高」に設定し、フルHD/1080p~4K/2160pまでの画面解像度で平均フレームレートを計測した。テスト時の上限フレームレートは120fps。

 Arc B580はすべての条件で全体ベストを獲得しており、Arc A770を26~34%、GeForce RTX 4060を6~30%上回った。

ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON

エルデンリング

 エルデンリングでは、グラフィックプリセットを「最高」に設定し、フルHD/1080p~4K/2160pまでの画面解像度で平均フレームレートを計測した。テスト時はレイトレーシングを無効にしており、上限フレームレートは60fps。

 WQHD/1440p以下ではすべてのGPUが上限の60fpsに達しており差がついていない。一方、4K/2160pでは49.7fpsを記録したArc B580が全体ベストで、Arc A770を約25%、GeForce RTX 4060を約37%上回った。

エルデンリング

Forza Horizon 5

 Forza Horizon 5では、グラフィックプリセットを最高の「エクストリーム」に設定し、フルHD/1080p~4K/2160pまでの画面解像度でベンチマークモードを実行した。

 Arc B580はすべての条件で全体ベストを獲得しており、Arc A770を15~27%、GeForce RTX 4060を3~13%上回った。

Forza Horizon 5

モンスターハンターライズ:サンブレイク

 モンスターハンターライズ:サンブレイクでは、グラフィックプリセットを「高」に設定し、フルHD/1080p~4K/2160pまでの画面解像度で平均フレームレートを計測した。

 Arc B580はすべての条件で全体ベストを獲得しており、Arc A770を24~38%、GeForce RTX 4060を22~31%上回った。

モンスターハンターライズ:サンブレイク

黒神話:悟空 ベンチマークツール

 黒神話:悟空 ベンチマークツールでは、画質レベルを「最高」、アンチエイリアスを「TSR」、フレーム生成を「オン」、フルレイトレーシングを「オフ」にそれぞれ設定し、フルHD/1080p~4K/2160pまでの画面解像度でベンチマークモードを実行した。

 Arc B580はすべての条件で全体ベストを獲得しており、Arc A770を3~6%、GeForce RTX 4060を48~65%上回った。

黒神話:悟空 ベンチマークツール

UL Procyon「Photo Editing Benchmark」

 UL Procyonの「Photo Editing Benchmark」は、AdobeのPhotoshopとLightroom Classicで写真編集作業のパフォーマンスを計測するテスト。

 Arc B580は総合スコアで全体ベストの9,572を記録し、Arc A770を約5%、GeForce RTX 4060を約1%上回った。

 個別のスコアをみてみると、レタッチではArc A770とほぼ同等でGeForce RTX 4060を約6%下回った。一方、RAW現像などのバッチ処理ではArc A770を約10%、GeForce RTX 4060を約7%上回っている。

UL Procyon「Photo Editing Benchmark」

UL Procyon「AI Computer Vision Benchmark」

 AI推論性能を計測するUL Procyonの「AI Computer Vision Benchmark」では、Intel OpenVINO、NVIDIA TensorRT、Windows MLでテストを行なった。

 Arc B580はOpenVINO利用時にArc A770を約67%上回っており、全GPU共通でテストできるWindows MLにおいてはArc A770を166%、GeForce RTX 4060を約7%上回った。

UL Procyon「AI Computer Vision Benchmark」

UL Procyon「AI Image Generation Benchmark」

 UL Procyon「AI Image Generation Benchmark」は、画像生成AIでのパフォーマンスを計測するテスト。今回は「Stable Diffusion 1.5(FP16)」をOpenVINO、TensorRT、ONNX Runtimeで実行した場合のスコアを計測した。

 Arc B580はOpenVINO利用時にArc A770を約49%上回っており、全GPU共通でテストできるONNX RuntimeにおいてはArc A770を201%、GeForce RTX 4060を約125%上回った。なお、Arc A770はONNX Runtime利用時にスコアこそ計測できたものの画像生成自体が失敗していたが、Arc B580は画像生成に成功した上で全体ベストのスコアを記録している。

UL Procyon「AI Image Generation Benchmark」│Stable Diffusion 1.5(FP16)

Blender Benchmark

 各GPUでBlender Benchmarkを実行した結果が以下のグラフ。テスト時のベンチマークバージョンは「3.1.0」で、Blenderのバージョンは「4.3.0」。

 Arc B580はすべての条件で最下位に沈んでおり、Arc A770を9~21%、GeForce RTX 4060を39~43%下回った。

Blender Benchmark

DaVinci Resolve 19

 DaVinci Resolve 19では、YouTube向けの4K/2160pプリセットをベースに、出力フォーマットをH.264、H.265、AV1に設定したさいの書き出し速度を比較した。プリセット自体は同じものを使用しているが、書き出された動画の品質は必ずしも一様ではない点に留意してほしい。

 Arc B580のレンダリング速度は比較製品中最速で、Arc A770を3~26%、GeForce RTX 4060を50~61%上回った。少なくとも、同じIntel系のArc A770よりもメディアエンジンが強化されていることは間違いなさそうだ。

DaVinci Resolve 19「動画の書き出し」

Adobe Camera Raw「AIノイズ除去」

 Adobe Camera Rawで、2,400万画素のRAWファイル20枚にAIノイズ除去を実行したさいの処理速度を比較した結果が以下のグラフ。

 Arc B580の処理速度は比較製品の中でもっとも速く、Arc A770を258%、GeForce RTX 4060を10%上回った。

 Arc A770がスペックの割に遅かったというのもあるが、AIノイズ除去はGeForce RTX 40シリーズが非常に強い傾向のあった処理であり、Intel製のGPUであるArc B580がGeForce RTX 4060を1割程度とはいえ上回ったことは驚きだ。

Adobe Camera Raw「AIノイズ除去」

システム消費電力と電力効率

 ワットチェッカーを使ってシステムの消費電力を測定し、アイドル時の最小消費電力と、ベンチマーク実行中の平均消費電力および最大消費電力をグラフ化した。

 なお、Intel Arcは接続しているPCIeの「ASPM(L1)」が有効で、なおかつWindowsの電源詳細設定でPCI Express > リンク状態の電源管理を標準の「適切な省電力」から「最大限の省電力」に変更しなければ、アイドル時の省電力プロファイルが有効にならない。Ryzen 7 9800X3Dを用いる今回の環境はASPMが標準で有効なので、今回は「適切な省電力」と「最大限の省電力」設定でのアイドル時最小電力を計測した。ちなみに、アイドル時消費電力の計測以外はすべて「適切な省電力」設定でテストしている。

 まず、「適切な省電力」設定で計測したアイドル時最小消費電力は、Arc B580が適切設定で98.2W、Arc A770が113.2W、GeForce RTX 4060は75.5W。Arc B580はArc A770より改善しているものの、GeForce RTX 4060より20W以上高い数値となっている。

 「最大限の省電力」設定でのアイドル時消費電力は、Arc B580が適切設定で67.5W、Arc A770が99.1W、GeForce RTX 4060は73.9W。Intel Arcは「適切な省電力」より大きく消費電力が低下しており、Arc B580はほぼ変化のないGeForce RTX 4060よりも低い数値になっている。これ自体は優秀と言える結果だが、設定変更なしでこの結果を得られるように改善してもらいたいところだ。

 一方、ベンチマーク実行中にArc B580が記録した平均消費電力は219.2~290.6Wで、Arc A770の320.2~340.7Wよりだいぶ省電力になっているが、GeForce RTX 4060の179.4~224.4Wよりだいぶ高い数値だ。

ベンチマーク実行中とアイドル時のシステムの消費電力(平均/最大)

 各GPUを搭載したシステムの平均消費電力でベンチマークスコアを割ることによって求めたワットパフォーマンスを、Arc A770を基準に指数化したものが以下のグラフ。

 Arc B580のワットパフォーマンスはArc A770を20%以上上回っており、パフォーマンス自体が飛躍したAdobe Camera RawのAIノイズ除去ではArc A770比440%のワットパフォーマンスを発揮している。

 ワットパフォーマンスが明らかに向上したArc B580ではあるが、ここでのベストはGeForce RTX 4060であり、製造プロセスで先行するGeForce RTX 40シリーズの域にはまだ届いていないというのが現状のようだ。

ワットパフォーマンス(Arc A770比)

ベンチマーク実行中のモニタリングデータ

 モニタリングソフトのHWiNFO64 Proを使って取得した、ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク(4K/2160p)実行中のモニタリングデータから、GPU温度などのデータをまとめた結果が以下のグラフ。

 Arc B580の温度リミットはモニタリングソフトで取得できなかったものの、平均62.3℃(最大66℃)で動作しているさいのGPUクロックは平均2,8231MHz(最大2,850MHz)と高い数値で安定しており、サーマルスロットリングや電力リミットスロットリングが作動した様子はみられない。実際、Arc B580の推移グラフでもGPUクロックがほかのパラメータの変化に影響されず、ほぼ一直線になっている様子を確認できる。

GPU/VRAM温度(平均/最大)│FF14ベンチマーク「4K/2160p(最高品質)」
消費電力(平均/最大)│FF14ベンチマーク「4K/2160p(最高品質)」
動作クロック(平均/最大)│FF14ベンチマーク「4K/2160p(最高品質)」
Arc B580(12GB)のモニタリングデータ│FF14ベンチマーク
Arc A770(16GB)のモニタリングデータ│FF14ベンチマーク
GeForce RTX 4060(8GB)のモニタリングデータ│FF14ベンチマーク

前世代から大きく飛躍したArc B580

 Arc B580のパフォーマンスは、前世代の最上位GPUであるArc A770をほとんどのテストで上回っている。Xeコアの数が32基から20基に減少していることや、ワットパフォーマンスの改善も考慮すると、Xe2アーキテクチャでIntelのGPUが大きな飛躍を果たしたことは間違いない。

 ライバルと目されるGeForce RTX 4060に対しても上回るテスト結果が多く、クリエイティブ系アプリでの性能改善や、DLSS 3に対抗するXeSS 2の導入も魅力的だ。とはいえ、既にDLSS 3やCUDA、Tensor RTなど、NVIDIAは強固なエコシステムを構築しており、Intel Arc Bシリーズを選択するならもう1つ強みが欲しいところだ。

 その強みとなり得るのが249ドルというArc B580の価格設定で、Intelは同価格帯における最高のコストパフォーマンスをアピールしている。日本国内でも、その強みを感じられる価格で購入できるビデオカードの登場を期待したい。