Hothotレビュー

iPhone 13 Pro MaxのカメラをHUAWEI P50 Pro、Mi 11 Ultraと撮り比べてみた
2021年10月7日 06:55
「iPhone 13 Pro Max」が発売されてから約2週間が経過した。iPhone 13シリーズを購入した人も、そうでない人も、すでに多くのレビューを目にしていることだろう。
そこで今回のレビューでは、iPhone 13 Pro Maxについては軽くおさらいして、従来モデル「iPhone 12 Pro Max」とのベンチマーク比較、そしてそれに「HUAWEI P50 Pro」、「Mi 11 Ultra」を加えたカメラ画質比較という企画でレビューをお届けしよう。
iPhone 13 Pro Maxの進化点はカメラ周りに集中
まずはスペックのおさらいから。iPhone 13 Pro MaxはOSに「iOS 15」、SoCに「A15 Bionicチップ」を採用。メモリ容量は非公表だが6GB搭載されており、ストレージ容量は128GB/256GB/512GB/1TBの4種類が用意されている。
A15 Bionicチップは、新しい6コアCPU(2つの高性能コアと4つの高効率コア)、5コアGPU、16コアNeural Engineを搭載。他社製SoCに比べて、CPU性能は50%、GPU性能は30%高速と謳われている。
ディスプレイは、6.7型ProMotion搭載Super Retina XDRディスプレイ(2,778×1,284ドット、458ppi、色域P3、コントラスト比2,000,000:1、標準時最大輝度1,000cd/平方m、HDR時最大輝度1,200cd/平方m)を搭載。ProMotionは利用状況に応じて最大120Hzまでリフレッシュレートを可変する技術で、高速描画と省電力性を両立する。
カメラは望遠(F2.8、1,200万画素、3倍光学ズーム、6枚構成レンズ、OIS)、超広角(F1.8、1,200万画素、120度、6枚構成レンズ)、広角(F1.5、1,200万画素、1.9μm、7枚構成レンズ、OIS)の3つを搭載。広角カメラのOISには「Sensor-shift optical image stabilization(センサーシフト光学式手ブレ補正)」が採用されている。
通信方式は5G(Sub-6)、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1、超広帯域(UWB)、NFC、FeliCaをサポート。SIMカードはNano SIMとeSIMのデュアルSIM仕様で、かつデュアルeSIMに対応。有線インターフェイスは引き続きLightningを採用する。
本体サイズは78.1×160.8×7.65mm(幅×奥行き×高さ)、重量は238g。ボディはIP68等級の防沫/耐水/防塵性能を備える。バッテリ容量は公表されていないが、ビデオ再生で最大28時間、ストリーミングビデオ再生で最大25時間、オーディオ再生で最大95時間のバッテリ駆動時間が謳われている。
デザインは従来モデルのiPhone 12 Pro Maxをほぼ踏襲しているが、外観上の大きな変更点として、顔認識のための「TrueDepthカメラ」が小型化されて、ディスプレイ上部の「ノッチ(切り欠き)」が小さくなっている。またカメラの新設計にともない大型化し、厚みも増している。よってiPhone 12 Pro Max用のケースは流用できない。
iPhone 13 Pro Maxの進化点をiPhone 12 Pro Maxと比較すると、カメラシステムの再設計(望遠倍率を2.5倍から3倍に、広角と超広角の低照度での画質を改善)、浅い被写界深度でビデオ撮影できる「シネマティックモード」、自分好みの色で撮影できる「フォトグラフスタイル」、最短2cmのマクロ撮影、最大4K/30fpsのProResビデオ撮影(後日提供)と、主にカメラ周りに集中している。カメラ機能に重きを置く方には、買い換えに値する新型iPhoneと言えよう。
CPUよりGPUが大きく性能を伸ばしている
今回は下記のベンチマークを実施した。
- 総合ベンチマーク「AnTuTu Benchmark V9.0.3」
- CPUベンチマーク「Geekbench 5.4.1 Pro」
- マシンラーニングベンチマーク「Geekbench ML 0.5.1」
- 3Dグラフィックベンチマーク「3DMark Wild Life Extreme」
- 3Dグラフィックベンチマーク「BASEMARK METAL」
- 3Dグラフィックベンチマーク「Basemark GPU」
- ストレージベンチマーク「Jazz Disk」
- ミュージックビデオを連続再生(バッテリベンチマーク)
比較対象機種は前述の通り「iPhone 12 Pro Max」を採用している。下記が検証機の仕様とその結果だ。
iPhone 13 Pro Max | iPhone 12 Pro Max | |
---|---|---|
SoC | A15 Bionicチップ | A14 Bionicチップ |
CPU | 新型6コア | 6コア |
GPU | 新型5コア | 4コア |
Neural Engine | 新型16コア | 16コア |
メモリ | 6GB(非公表) | |
ストレージ | 512GB | |
AnTuTu Benchmark V9.0.3 | ||
総合 | 852,462 | 759,379 |
CPU | 216,127 | 188,335 |
GPU | 343,863 | 302,734 |
MEM | 157,406 | 140,435 |
UX | 135,066 | 127,875 |
Geekbench 5.4.1 Pro | ||
Single-Core Score | 1,733 | 1,602 |
Multi-Core Score | 4,799 | 4,233 |
Metal Score | 14,302 | 9,514 |
Geekbench ML 0.5.1 | ||
TensorFlow Lite CPU Score | 961 | 909 |
TensorFlow Lite GPU Score | 2,286 | 1,597 |
TensorFlow Lite Core ML Score | 2,736 | 2,435 |
3DMark Wild Life Extreme | ||
Overall score | 3,018 | 2,451 |
Average frame rate(fps) | 18.1 | 14.7 |
3DMark Wild Life Extreme Unlimited | ||
Overall score | 2,685 | 2,042 |
Average frame rate(fps) | 16.1 | 12.2 |
BASEMARK METAL | ||
Overall | 4,182 | 3,037 |
Lighting | 86 | 77 |
Compute | 87 | 90 |
Instancing | 97 | 97 |
Post-Processing | 89 | 80 |
Basemark GPU | ||
Overall Score | 14,623 | 11,519 |
Average FPS | 146.24 | 115.19 |
Minimum FPS | 71.42 | 74.59 |
Maximum FPS | 655.31 | 196.73 |
Jazz Disk | ||
Sequential Read | 1,610.06 | 1,610.06 |
Sequential Write | 1,333.33 | 1,137.78 |
Random(4K) Read | 36.36 | 36.41 |
Random(4K) Write | 22.94 | 22.11 |
Latency Read | 0.09 | 0.087 |
Latency Write | 0.123 | 0.127 |
ミュージックビデオを連続再生 | ||
輝度100%、音量25% | 20時間10分46秒 | - |
まずCPU性能については、iPhone 13 Pro MaxはiPhone 12 Pro Maxに対して、AnTuTu Benchmark V9.0.3のCPUで115%、Geekbench 5.4.1 ProのMulti-Core Scoreで113%のスコアを記録している。着実な進化といったところだ。
GPU性能については、AnTuTu Benchmark V9.0.3のGPUで114%、Geekbench 5.4.1 ProのMetal Scoreで150%、3DMark Wild Life ExtremeのOverall scoreで123%、3DMark Wild Life Extreme UnlimitedのOverall scoreで131%、BASEMARK METALのOverallで138%、Basemark GPUのOverall Scoreで127%のスコアを記録している。GPUを新設計した上で、コア数を4コアから5コアに増やしているだけに、CPUよりも大きく性能を伸ばしている。
ストレージ速度については、Jazz DiskのSequential Writeのみ117%のスコアを記録しているが、ほかは97~104%のスコアに留まっている。この結果がSoCの変更によるものか、ストレージ自体の性能向上によるものかは不明だが、いずれにしても体感できるほどの違いではない。
バッテリ駆動時間については、ディスプレイ輝度100%、音量25%という条件で端末内のミュージックビデオを連続再生したところ、20時間10分46秒動作した。カタログスペックでは最大28時間だが、ディスプレイ輝度を下げれば容易に達成できると思われる。なお、iPhone 12 Pro Maxはバッテリの最大容量が93%に低下しているため、今回は計測を実施していない。
完全スマホまかせで撮影すると、どのような写真を得られるか?
カメラ画質については、プロフォトグラファーでもある西川和久氏がiPhone 13 Proを用いた美しい作例を掲載している。
よって、本記事ではデフォルトでの比較に徹して、iPhone 12 Pro Max、iPhone 13 Pro Max、HUAWEI P50 Pro、Mi 11 Ultraで、フレームをあわせただけでフルオート撮影した写真を掲載している。
iPhone 13 Pro Maxには「フォトグラフスタイル」が用意されているが、ここではもちろんデフォルトの「標準」スタイルを使用している。完全スマホまかせで撮影したときに、どのような写真を得られるのかという視点からご覧いただきたい。
筆者が写真を見比べた感想だが、昼景では個別に見たかぎりでは大きな差は感じなかった。特にiPhone 12 Pro MaxとiPhone 13 Pro Maxは、筆者に見分けがつかない。
ただ、他メーカーを含めると、解像感はHUAWEI P50 Proが最も上だと思う。細部を見ると、微妙な質感までしっかりと記録されているのが分かる。ただし、色を作りすぎているという印象も受ける。単体で見れば美しい画像だが、忠実さを求める方は問題だと感じるだろう。
イメージ情報: 4,032×3,024ドット(Jpeg,YUV420,ICC profile)
焦点距離: 5.10mm(35mm換算焦点距離: 26mm)
シャッタースピード: 0.000514s(1/1946)
F値: f/1.6
ISO感度: 32
露出モード: Program(auto)
測光方式: Pattern
イメージ情報: 4,096×3,072ドット(Jpeg,YUV420,ICC profile,sRGB)
焦点距離: 5.54mm(27mm)
シャッタースピード: 0.000532s(1/1880)
F値: f/1.8
ISO感度: 50
露出モード: Program(auto)
測光方式: Pattern
イメージ情報: 4,032×3,024ドット(Jpeg,YUV420,ICC profile)
焦点距離: 5.10mm(26mm)
シャッタースピード: 0.000281s(1/3559)
F値: f/1.6
ISO感度: 32
露出モード: Program(auto)
測光方式: Pattern
イメージ情報: 4,096×3,072ドット(Jpeg,YUV420,ICC profile,sRGB)
焦点距離: 5.54mm(27mm)
シャッタースピード: 0.000400s(1/2500)
F値: f/1.8
ISO感度: 50
露出モード: Program(auto)
測光方式: Pattern
イメージ情報: 4,032×3,024ドット(Jpeg,YUV420,ICC profile)
焦点距離: 5.10mm(26mm)
シャッタースピード: 0.000368s(1/2717)
F値: f/1.6
ISO感度: 32
露出モード: Program(auto)
測光方式: Pattern
イメージ情報: 3072×4096ドット(Jpeg,YUV420,ICC profile,sRGB)
焦点距離: 5.54mm(27mm)
シャッタースピード: 0.000364s(1/2747)
F値: f/1.8
ISO感度: 50
露出モード: Program(auto)
測光方式: Pattern
イメージ情報: 4,032×3,024ドット(Jpeg,YUV420,ICC profile)
焦点距離: 5.10mm(26mm)
シャッタースピード: 0.006s(1/181)
F値: f/1.6
ISO感度: 32
露出モード: Program(auto)
測光方式: Pattern
イメージ情報: 3072×4096ドット(Jpeg,YUV420,ICC profile,sRGB)
焦点距離: 5.54mm(27mm)
シャッタースピード: 0.001s(1/887)
F値: f/1.8
ISO感度: 160
露出モード: Program(auto)
測光方式: Pattern
イメージ情報: 4,032×3,024ドット(Jpeg,YUV420,ICC profile)
焦点距離: 5.10mm(26mm)
シャッタースピード: 0.000471s(1/2123)
F値: f/1.6
ISO感度: 32
露出モード: Program(auto)
測光方式: Pattern
一方、夜景では昼景より大きな差が表われている。筆者は今回の4機種の中では、Mi 11 Ultraが白飛びを強力に抑えており、最も好ましく感じた。
予想外だったのは、iPhone 12 Pro MaxのほうがiPhone 13 Pro Maxより白飛びを抑えていること。iPhone 13 Pro Maxはナイトモードの最適化が不十分な可能性がある。なお、昼景では高い描写力を見せたHUAWEI P50 Proだったが、夜景では全体的に白っぽく写る傾向があった。
イメージ情報: 4,032×3,024ドット(Jpeg,YUV420,ICC profile)
焦点距離: 5.10mm(26mm)
シャッタースピード: 0.040s(1/25)
露出補正: 0.07 eV
F値: f/1.6
ISO感度: 640
露出モード: Program(auto)
測光方式: Pattern
イメージ情報: 4,096×3,072ドット(Jpeg,YUV420,ICC profile,sRGB)
焦点距離: 5.54mm(27mm)
シャッタースピード: 6.0s
F値: f/1.8
ISO感度: 640
露出モード: Program(auto)
測光方式: Pattern
イメージ情報: 4,032×3,024ドット(Jpeg,YUV420,ICC profile)
焦点距離: 5.10mm(26mm)
シャッタースピード: 0.020s(1/50)
露出補正: -0.04 eV
F値: f/1.6
ISO感度: 500
露出モード: Program(auto)
測光方式: Pattern
最も長く携帯する「カメラ」なのだから毎年買い換えても十分元は取れる
サイズの好みはあるにせよ、iPhone 13 Pro Maxが歴代最高のiPhoneであることは間違いない。望遠カメラの高倍率化、シネマティックモード、フォトグラフスタイル、マクロ撮影、最大4K/30fpsのProResビデオ撮影と、カメラ機能が大幅に向上しているところはポイントが高い。特にシームレスに切り替わるマクロ機能は筆者には待望の機能であった。
新搭載された機能がかなりプロフェッショナルやマニア向けなので、iPhone 12 Pro Maxから買い換える価値があるかどうか悩む方の気持ちはよくわかる。しかし、最も長く携帯する「カメラ」なのだから、毎年買い換えても十分元は取れると筆者は考える。