山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
「iPhone 13 Pro Max」で電子書籍を試す。6.7型大画面のメリットとデメリットとは
2021年10月12日 09:50
Appleの「iPhone 13 Pro Max」は、5G対応の6.7型スマートフォンだ。現行のiPhone 13シリーズの中で最大の画面サイズを備えたモデルで、カメラ機能にも注力した、同シリーズの中でフラグシップモデルにあたる製品だ。
電子書籍ユースにおいて、画面サイズの大きさは、コミックを中心に、快適な読書に直結する。6.7型という、スマートフォンとしては最大級の画面サイズを備える本製品は、こうした用途にもっとも向いた製品の一つであることは間違いない。その一方、従来モデルと比べて重量が増加していたりと、気になる点もチラホラあるのも事実だ。
本稿では筆者が購入したSIMロックフリーモデルを用い、従来モデルであるiPhone 12 Pro Maxや、本製品から見て小型版に当たるiPhone 13 Proと比較しつつ、その実力をチェックしていく。
iPhone 12 Pro Maxのマイナーチェンジ。駆動時間が大幅延長
まずは従来モデルiPhone 12 Pro Maxとの比較から。もうひとつ前の世代であるiPhone XS Maxについても併せて比較する。
iPhone 13 Pro Max | iPhone 12 Pro Max | iPhone 11 Pro Max | iPhone XS Max | |
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発売年月 | 2021年9月 | 2020年11月 | 2019年9月 | 2018年9月 |
サイズ (幅×奥行き×高さ) | 78.1x160.8x7.65mm | 78.1x160.8x7.4mm | 77.8x158.0x8.1mm | 77.4x157.5x7.7mm |
重量 | 238g | 226g | 226g | 208g |
CPU | A15 Bionicチップ 2つの高性能コアと4つの高効率コアを搭載した新しい6コアCPU 新しい5コアGPU 新しい16コアNeural Engine | A14 Bionicチップ 次世代のNeural Engine | A13 Bionicチップ | A12 Bionicチップ |
RAM | 6GB | 6GB | 4GB | 4GB |
ストレージ | 128/256/512GB/1TB | 128/256/512GB | 64/256/512GB | 64/256/512GB |
画面サイズ/解像度 | 6.7型/2,778×1,284ドット(458ppi) | 6.7型/2,778×1,284ドット(458ppi) | 6.5型/2,688×1,242ドット(458ppi) | 6.5型/2,688×1,242ドット(458ppi) |
Wi-Fi | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax) | Wi-Fi 6 | Wi-Fi 6 | Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac) |
コネクタ | Lightning | Lightning | Lightning | Lightning |
防水防塵 | IP68 | IP68 | IP68 | IP68 |
生体認証 | Face ID | Face ID | Face ID | Face ID |
駆動時間/ バッテリ容量 | ビデオ再生:最大28時間 ビデオ再生(ストリーミング):最大20時間 オーディオ再生:最大95時間 | 最大20時間のビデオ再生 | 最大20時間のビデオ再生 | 最大15時間のビデオ再生 |
備考 | MagSafe対応 | MagSafe対応 | - | - |
この表からも分かるように、従来モデルとの差はごくわずかだ。電子書籍ユースと縁のないカメラ部は大幅な進化が認められるが、こと表示まわりについては、目立った違いはない。強いて挙げれば、表示内容に応じてリフレッシュレートを可変させるProMotionテクノロジーが、スクロールを多用する操作で関係してくるくらいだ(後述)。
メリットは駆動時間が延びたことで、ビデオ再生で20時間→28時間と、実に1.4倍になっている。電力消費があまりない電子書籍ユースではそう重要ではないが、動画撮影などバッテリの消費が激しい用途では重宝するはずで、結果的に、電子書籍で使える時間が増えるという恩恵はあるだろう。
気になるのは重量の増加だ。従来モデルとの差は12gと、値そのものは大きくないが、もともとかなりの重量があるところ、さらに増えているのは困りものだ。本製品はフラグシップモデルでもあり、全部盛りにしなくてはならないのは分かるが、250gの大台に到達しかねない勢いだけに、どこかで歯止めをかけてほしいものである。
このほかのスペックはほぼ従来通り、生体認証は従来と同じくFace IDのみで、Touch ID対応は見送られているほか、コネクタもLightningのままだ。背面のMagSafeを使ってアクセサリを吸着したり、また充電が行なえるのも従来と同様だ。筆者は充電はLightningを使わずほぼこのMagSafeに一本化しているのだが、充電器を部屋ごとに用意することで得られるシームレスな充電環境は実に快適だ。
外観は同一も重量差あり。パフォーマンスはGPU中心に向上
では実際に触ってみよう。なにせ従来モデルに当たるiPhone 12 Pro Maxとは、デザインが踏襲されている上、画面サイズも共通なので、見た目の違いはまったくない。特に正面側は、上部のノッチの幅が狭くなっているくらいで、区別自体つかないほどだ。
当初懸念していたのは、背面のカメラ部が大きくなったことで、重心がやや上に移動して持ちにくくなっているのではないかという点だが、試した限りそうした問題はないようだ。ただし厚みの差、さらに重量差は、両者を持ち比べるとノーヒントで分かってしまう。
12gしか違わない従来モデルとの比較ですらこれなので、3世代前のiPhone XS Maxや、それ以前の大画面モデルから乗り換えた場合は、相当ずっしりと感じるだろう(iPhone XS Maxとの重量差は30gある)。買い替えにあたっては気をつけたいポイントで、なるべく気にならないようにしたければ、そのぶん軽量な保護ケースと組み合わせるなど工夫したい。
パフォーマンスについては、ベンチマークアプリで測定する限り、GPU周りのスコアが大きく伸びている。そのほかの項目はばらつきがあるが、平均的には20%アップといったところだろうか。メモリ容量は従来と同じである中、かなり健闘している印象だ。使ってすぐに体感できるような違いこそないが、恩恵は確実にあるだろう。
ちなみに同時発売のiPhone 13 Proとはカメラの構成は同じで、実質的に画面サイズの違いのみとなっている。後述するProMotionテクノロジーにも対応するので、スクロールにも強い。
重量は204gと、大画面モデルである前述のiPhone XS Max(208g)と大差ないのが困りものだが、それでも本製品よりは30g近く軽量だ。画面サイズよりも軽さを優先するのならば、本製品よりもこのiPhone 13 Proが、候補に入ってくる場合もあるだろう。
表示性能は従来と同様。コミックの表示にも余裕のあるサイズ
では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を用いている。電子書籍ストアは原則としてKindleストアを使用している。
解像度は458ppiということで、表示性能は文句のつけようがない。雑誌などを表示するには画面サイズからしては向かないが、解像度が高いことから、ページが縮小された状態でも、ある程度読めてしまうのは驚異的だ。これらについては、従来モデルであるiPhone 12 Pro Maxと同じで、特に相違点は感じられない。
また6.1型のiPhone 13 Proと比較しても、同じコミックを表示した時のページサイズは明らかに大きく、快適に読める。さすがに見開き表示は難しいが、タブレットではなくスマホであることにこだわって見やすいデバイスを探すならば、最適な選択肢と言える。
特にこれらとの比較では、「ライブラリの一覧表示」「ストアでコンテンツの閲覧」などで、縦方向により多くのコンテンツが並べられるのが利点だ。と言っても1項目多いかどうかというところなのだが、本製品に慣れてしまうと、6.1型のiPhone 13 Proでは圧迫感を感じるほどだ。
ちなみにiPhoneとしては最大の6.7型ということで、8.3型の第6世代iPad miniとかなり近いように感じるが、実際にはおそろしく差がある。iPad miniを見開き表示にし、1画面に2ページ表示できる状態にしても、ページあたりのサイズは本製品の方がはるかに小さい。想像以上に差があるというのが、実際に比較した感想だ。
スクロールしながらでも電子書籍のタイトルが読み取れる新機能とは?
ところで本製品は、新たにProMotionテクノロジーにより、最大120Hzのリフレッシュレートに対応している。120Hz固定ではなく10~120Hzの間で可変するのが特徴で、これにより電力消費をも抑えられるとしている。本製品のバッテリ駆動時間が従来より長いのは、この恩恵もあると考えられる。
高いリフレッシュレートは一般的に、動きの速いゲームなどでメリットが大きいとされるが、電子書籍でも縦スクロールを行なう場合に、カクカクとした動きが滑らかになることが期待できる。従来モデルと動きの違いがどのくらいあるかをチェックしてみよう。
電子書籍ユースで発生する縦スクロールと言えば「ライブラリやストアでのコンテンツの一覧表示」と「縦スクロールコミックの閲覧」に大別される。前者は目的のコンテンツを見つけるのが目的なので、スクロールしながらそのタイトルなどがきちんと読み取れなくてはいけない。
これまではスクロールしながらだと文字がブレてしまってタイトルが読み取れず、スクロールのスピードを落とさざるを得なかったが、ProMotion対応の本製品はそこそこ高速にスクロールしても、きちんとタイトルなどの情報が読み取れ、またなにより目が疲れない。スローで確認すると、その違いは一目瞭然だ。
一方、縦スクロールコミックの閲覧のように、短い距離をピッと動かしてピッと止める動きの場合、スクロール中に表示内容を目で追う必要がないので、恩恵のあるなし以前に、そもそも需要がない。一般的な横方向のページめくりも同様だ。
まとめると、電子書籍ユースでは、スクロールしながらお目当てのコンテンツを探す用途では、かなり有用と言える。ライブラリの蔵書数が多い場合や、どんな本があるかをランキングを見ながら探すのが日課になっている人は、単に探しやすいというだけではなく、目が疲れにくいという意味で、知らず知らずのうちに恩恵を受けることになるはずだ。
iPhoneの中では電子書籍に向いた一台。課題はやはり重量か
以上のように本製品は、その画面サイズの大きさから、スマホの中ではコミックの閲覧に向いており、また前述のProMotionテクノロジーのように、コンテンツの検索などに間接的に寄与する機能も追加されている。
一方で気になるのはやはり重量だ。すでに極限まで達していた重量がさらに重くなり、片手で長時間持つには厳しくなっている。なにせ238gと言えば、本製品と同時に発表された第6世代iPad mini(293g)と比べて50g強しか変わらない。スマホにこだわらないのであれば、ほかの選択肢は多数ある。
またiPhoneのどの製品にも言えることだが、iOSの制限ゆえ、Androidのようにアプリの中でコンテンツを購入できないこと、音量ボタンを使ってのページめくりができないという制限もある。これらについては、同等サイズのAndroidデバイスに比べると、本製品はどうしても不利だ。
以上のような点から、本製品が電子書籍に向いているというのは、あくまでも「iPhoneの中では」という但し書きがつくことは意識しておきたい。ただ、フラグシップモデルだけあって、機能面では文句のつけようがなく、本稿では取り上げなかったカメラ機能も魅力的だ。バッテリ駆動時間が伸びたことも、電子書籍を閲覧する時間的な余裕ができるという意味ではプラスだろう。
個人的には「本製品からカメラ機能などを省略した、Proではない軽量なMax」も見たいところだが、こうしたモデルを出してみて現実的に売れたという話はなかなか聞かないので、その場合はiPhone 13あたりがおすすめになるだろう。いずれにせよ、iPhoneの中で電子書籍ユースに向いた機種を探す場合、その基準としてチェックすべき製品であることは、変わりないと言ってよさそうだ。