山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

「iPhone 13 Pro Max」で電子書籍を試す。6.7型大画面のメリットとデメリットとは

Apple「iPhone 13 Pro Max」。今回紹介するゴールドのほか、シルバー、グラファイト、シエラブルーの4色展開。価格は13万4,800円から

 Appleの「iPhone 13 Pro Max」は、5G対応の6.7型スマートフォンだ。現行のiPhone 13シリーズの中で最大の画面サイズを備えたモデルで、カメラ機能にも注力した、同シリーズの中でフラグシップモデルにあたる製品だ。

 電子書籍ユースにおいて、画面サイズの大きさは、コミックを中心に、快適な読書に直結する。6.7型という、スマートフォンとしては最大級の画面サイズを備える本製品は、こうした用途にもっとも向いた製品の一つであることは間違いない。その一方、従来モデルと比べて重量が増加していたりと、気になる点もチラホラあるのも事実だ。

 本稿では筆者が購入したSIMロックフリーモデルを用い、従来モデルであるiPhone 12 Pro Maxや、本製品から見て小型版に当たるiPhone 13 Proと比較しつつ、その実力をチェックしていく。

iPhone 12 Pro Maxのマイナーチェンジ。駆動時間が大幅延長

 まずは従来モデルiPhone 12 Pro Maxとの比較から。もうひとつ前の世代であるiPhone XS Maxについても併せて比較する。

【表】iPhone 13 Pro Maxのスペック
iPhone 13 Pro MaxiPhone 12 Pro MaxiPhone 11 Pro MaxiPhone XS Max
発売年月2021年9月2020年11月2019年9月2018年9月
サイズ
(幅×奥行き×高さ)
78.1x160.8x7.65mm78.1x160.8x7.4mm77.8x158.0x8.1mm77.4x157.5x7.7mm
重量238g226g226g208g
CPUA15 Bionicチップ
2つの高性能コアと4つの高効率コアを搭載した新しい6コアCPU
新しい5コアGPU
新しい16コアNeural Engine
A14 Bionicチップ
次世代のNeural Engine
A13 BionicチップA12 Bionicチップ
RAM6GB6GB4GB4GB
ストレージ128/256/512GB/1TB128/256/512GB64/256/512GB64/256/512GB
画面サイズ/解像度6.7型/2,778×1,284ドット(458ppi)6.7型/2,778×1,284ドット(458ppi)6.5型/2,688×1,242ドット(458ppi)6.5型/2,688×1,242ドット(458ppi)
Wi-FiWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)Wi-Fi 6Wi-Fi 6Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)
コネクタLightningLightningLightningLightning
防水防塵IP68IP68IP68IP68
生体認証Face IDFace IDFace IDFace ID
駆動時間/
バッテリ容量
ビデオ再生:最大28時間
ビデオ再生(ストリーミング):最大20時間
オーディオ再生:最大95時間
最大20時間のビデオ再生最大20時間のビデオ再生最大15時間のビデオ再生
備考MagSafe対応MagSafe対応--

 この表からも分かるように、従来モデルとの差はごくわずかだ。電子書籍ユースと縁のないカメラ部は大幅な進化が認められるが、こと表示まわりについては、目立った違いはない。強いて挙げれば、表示内容に応じてリフレッシュレートを可変させるProMotionテクノロジーが、スクロールを多用する操作で関係してくるくらいだ(後述)。

 メリットは駆動時間が延びたことで、ビデオ再生で20時間→28時間と、実に1.4倍になっている。電力消費があまりない電子書籍ユースではそう重要ではないが、動画撮影などバッテリの消費が激しい用途では重宝するはずで、結果的に、電子書籍で使える時間が増えるという恩恵はあるだろう。

 気になるのは重量の増加だ。従来モデルとの差は12gと、値そのものは大きくないが、もともとかなりの重量があるところ、さらに増えているのは困りものだ。本製品はフラグシップモデルでもあり、全部盛りにしなくてはならないのは分かるが、250gの大台に到達しかねない勢いだけに、どこかで歯止めをかけてほしいものである。

 このほかのスペックはほぼ従来通り、生体認証は従来と同じくFace IDのみで、Touch ID対応は見送られているほか、コネクタもLightningのままだ。背面のMagSafeを使ってアクセサリを吸着したり、また充電が行なえるのも従来と同様だ。筆者は充電はLightningを使わずほぼこのMagSafeに一本化しているのだが、充電器を部屋ごとに用意することで得られるシームレスな充電環境は実に快適だ。

従来のiPhone 12 Pro Max(右)との比較。正面から見て分かる違いは上部のノッチの幅が狭くなっていることくらいだ
背面の比較。3眼構成のレンズの径が、従来のiPhone 12 Pro Max(右)よりも大きくなっていることが分かる
上部ノッチの比較。本製品(手前)はかなりコンパクトになり、ノッチ左右のアイコン配置にも余裕ができた
厚みの比較。数値および写真ではわずかだが、手に持つとかなりの違いを感じる
上面。特に違いはない。iPhone 12シリーズと同様、側面は垂直にカットされている
底面。Lightningコネクタとスピーカーが配置される。こちらも特に違いはない
左側面。SIMカードスロットの位置が微妙にずれているが、ボタン類の位置はそのままだ
右側面。特に違いはない
カメラの突起はかなりあり、周囲を保護ケース類で覆わなければ、設置するデスク面に傷をつけかねない

外観は同一も重量差あり。パフォーマンスはGPU中心に向上

 では実際に触ってみよう。なにせ従来モデルに当たるiPhone 12 Pro Maxとは、デザインが踏襲されている上、画面サイズも共通なので、見た目の違いはまったくない。特に正面側は、上部のノッチの幅が狭くなっているくらいで、区別自体つかないほどだ。

 当初懸念していたのは、背面のカメラ部が大きくなったことで、重心がやや上に移動して持ちにくくなっているのではないかという点だが、試した限りそうした問題はないようだ。ただし厚みの差、さらに重量差は、両者を持ち比べるとノーヒントで分かってしまう。

 12gしか違わない従来モデルとの比較ですらこれなので、3世代前のiPhone XS Maxや、それ以前の大画面モデルから乗り換えた場合は、相当ずっしりと感じるだろう(iPhone XS Maxとの重量差は30gある)。買い替えにあたっては気をつけたいポイントで、なるべく気にならないようにしたければ、そのぶん軽量な保護ケースと組み合わせるなど工夫したい。

6.7型のOLEDディスプレイを搭載。iPhone 13シリーズの中ではもっとも大型だが、重量も238gとずっしりしている
背面。MagSafeによるアクセサリの吸着、および充電器を接続してのワイヤレス給電に対応する
左側面はサウンドオン/オフスイッチと音量ボタン、SIMカードスロットを備える
右側面は電源ボタンを備える。iPad mini/AirのようなTouch ID一体型ではなく純粋な電源ボタンだ

 パフォーマンスについては、ベンチマークアプリで測定する限り、GPU周りのスコアが大きく伸びている。そのほかの項目はばらつきがあるが、平均的には20%アップといったところだろうか。メモリ容量は従来と同じである中、かなり健闘している印象だ。使ってすぐに体感できるような違いこそないが、恩恵は確実にあるだろう。

Google Octaneでの比較は「54852」。従来モデルの「51990」に対して6%増
3DMark Wild Lifeでの比較は「8533」。従来モデルの「6175」に対して38%増
Geekbench 5での比較は、シングルコアが「1688」、マルチコアが「4491」。従来モデルの「1553」「3505」に対してそれぞれ7%増、28%増
Geekbench 5(Metal)での比較は「14220」。従来モデルの「6333」に対して125%増と、ここだけスコアの伸びが頭一つ抜けている

 ちなみに同時発売のiPhone 13 Proとはカメラの構成は同じで、実質的に画面サイズの違いのみとなっている。後述するProMotionテクノロジーにも対応するので、スクロールにも強い。

 重量は204gと、大画面モデルである前述のiPhone XS Max(208g)と大差ないのが困りものだが、それでも本製品よりは30g近く軽量だ。画面サイズよりも軽さを優先するのならば、本製品よりもこのiPhone 13 Proが、候補に入ってくる場合もあるだろう。

iPhone 13 Pro(右)との比較。実質的に画面サイズの違いのみ
従来のiPhone 12 ProとPro Maxと異なり、カメラのスペックも統一されている

表示性能は従来と同様。コミックの表示にも余裕のあるサイズ

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を用いている。電子書籍ストアは原則としてKindleストアを使用している。

 解像度は458ppiということで、表示性能は文句のつけようがない。雑誌などを表示するには画面サイズからしては向かないが、解像度が高いことから、ページが縮小された状態でも、ある程度読めてしまうのは驚異的だ。これらについては、従来モデルであるiPhone 12 Pro Maxと同じで、特に相違点は感じられない。

テキストはコンパクトで読みやすい。感覚的には「幅が多少狭い文庫本」といったところ
コミックについても、一定の横幅が確保されているため、セリフなども問題なく読み取れる
従来のiPhone 12 Pro Max(右)との比較。まったく同一だ
コミックについても相違点は見受けられない

 また6.1型のiPhone 13 Proと比較しても、同じコミックを表示した時のページサイズは明らかに大きく、快適に読める。さすがに見開き表示は難しいが、タブレットではなくスマホであることにこだわって見やすいデバイスを探すならば、最適な選択肢と言える。

 特にこれらとの比較では、「ライブラリの一覧表示」「ストアでコンテンツの閲覧」などで、縦方向により多くのコンテンツが並べられるのが利点だ。と言っても1項目多いかどうかというところなのだが、本製品に慣れてしまうと、6.1型のiPhone 13 Proでは圧迫感を感じるほどだ。

iPhone 13 Pro(右)との比較。フォントサイズを揃えた状態では、行あたりの文字数が5文字程度、行数が2行ほど異なる
コミックは、iPhone 13 Pro(右)もそこそこの表示サイズだが、本製品はさらに一回り大きく表示できる
ストアやライブラリのようにタイトルの一覧が並ぶページは、画面サイズが大きいぶん多くの項目を表示できる
iPhone 13 Proの画面の横幅は約64.5mm。ちなみにiPhone 13でも同じだ
iPhone 13 Pro Mixは約71mmということで、5mm以上の差がある

 ちなみにiPhoneとしては最大の6.7型ということで、8.3型の第6世代iPad miniとかなり近いように感じるが、実際にはおそろしく差がある。iPad miniを見開き表示にし、1画面に2ページ表示できる状態にしても、ページあたりのサイズは本製品の方がはるかに小さい。想像以上に差があるというのが、実際に比較した感想だ。

本製品のページあたりのサイズは、見開き表示にした第6世代iPad mini(左)に及ばない。想像以上に差があることに驚かされる
一方のテキストについては、表示できる行数は大きな差があるものの、1行あたりの文字数はそれほど極端な違いがないのがおもしろい

スクロールしながらでも電子書籍のタイトルが読み取れる新機能とは?

 ところで本製品は、新たにProMotionテクノロジーにより、最大120Hzのリフレッシュレートに対応している。120Hz固定ではなく10~120Hzの間で可変するのが特徴で、これにより電力消費をも抑えられるとしている。本製品のバッテリ駆動時間が従来より長いのは、この恩恵もあると考えられる。

 高いリフレッシュレートは一般的に、動きの速いゲームなどでメリットが大きいとされるが、電子書籍でも縦スクロールを行なう場合に、カクカクとした動きが滑らかになることが期待できる。従来モデルと動きの違いがどのくらいあるかをチェックしてみよう。

 電子書籍ユースで発生する縦スクロールと言えば「ライブラリやストアでのコンテンツの一覧表示」と「縦スクロールコミックの閲覧」に大別される。前者は目的のコンテンツを見つけるのが目的なので、スクロールしながらそのタイトルなどがきちんと読み取れなくてはいけない。

 これまではスクロールしながらだと文字がブレてしまってタイトルが読み取れず、スクロールのスピードを落とさざるを得なかったが、ProMotion対応の本製品はそこそこ高速にスクロールしても、きちんとタイトルなどの情報が読み取れ、またなにより目が疲れない。スローで確認すると、その違いは一目瞭然だ。

ProMotion対応の本製品(左)、非対応の従来モデル(右)で、画面を縦スクロールする様子をスロー撮影したもの。非対応だと文字がブレたようになるが、本製品ではブレもなく、スクロール中も文字がきちんと読み取れる

 一方、縦スクロールコミックの閲覧のように、短い距離をピッと動かしてピッと止める動きの場合、スクロール中に表示内容を目で追う必要がないので、恩恵のあるなし以前に、そもそも需要がない。一般的な横方向のページめくりも同様だ。

 まとめると、電子書籍ユースでは、スクロールしながらお目当てのコンテンツを探す用途では、かなり有用と言える。ライブラリの蔵書数が多い場合や、どんな本があるかをランキングを見ながら探すのが日課になっている人は、単に探しやすいというだけではなく、目が疲れにくいという意味で、知らず知らずのうちに恩恵を受けることになるはずだ。

iPhoneの中では電子書籍に向いた一台。課題はやはり重量か

 以上のように本製品は、その画面サイズの大きさから、スマホの中ではコミックの閲覧に向いており、また前述のProMotionテクノロジーのように、コンテンツの検索などに間接的に寄与する機能も追加されている。

 一方で気になるのはやはり重量だ。すでに極限まで達していた重量がさらに重くなり、片手で長時間持つには厳しくなっている。なにせ238gと言えば、本製品と同時に発表された第6世代iPad mini(293g)と比べて50g強しか変わらない。スマホにこだわらないのであれば、ほかの選択肢は多数ある。

寝転がった状態で片手でかざして持てるのは短時間に限られる。スマホリングやグリップなどが欲しいところだ

 またiPhoneのどの製品にも言えることだが、iOSの制限ゆえ、Androidのようにアプリの中でコンテンツを購入できないこと、音量ボタンを使ってのページめくりができないという制限もある。これらについては、同等サイズのAndroidデバイスに比べると、本製品はどうしても不利だ。

Googleの6.34型AndroidスマホPixel 5a(5G)(右)との比較。画面サイズは本製品の方が大きいが、Androidは表示の自由度がやや高いせいで、テキストなどは実質同等サイズで表示できる
コミックは画面の横幅で表示サイズが決まることから、こちらは本製品の方が有利だ

 以上のような点から、本製品が電子書籍に向いているというのは、あくまでも「iPhoneの中では」という但し書きがつくことは意識しておきたい。ただ、フラグシップモデルだけあって、機能面では文句のつけようがなく、本稿では取り上げなかったカメラ機能も魅力的だ。バッテリ駆動時間が伸びたことも、電子書籍を閲覧する時間的な余裕ができるという意味ではプラスだろう。

 個人的には「本製品からカメラ機能などを省略した、Proではない軽量なMax」も見たいところだが、こうしたモデルを出してみて現実的に売れたという話はなかなか聞かないので、その場合はiPhone 13あたりがおすすめになるだろう。いずれにせよ、iPhoneの中で電子書籍ユースに向いた機種を探す場合、その基準としてチェックすべき製品であることは、変わりないと言ってよさそうだ。