山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

「iPhone 13 mini」で電子書籍を試す。数少ないアンダー150gの利点とは

Apple「iPhone 13 mini」。今回紹介するスターライトのほか、ミッドナイト、ブルー、ピンク、(PRODUCT)REDの5色展開。価格は8万6,800円から

 Appleの「iPhone 13 mini」は、5G対応の5.4型スマートフォンだ。現行のiPhoneのラインナップの中ではもっとも小型、かつ軽量でありながら、上位モデルと同じA15 Bionicチップを搭載するなど、高い性能と可搬性を兼ね備えた1台だ。

 新しく登場したiPhone 13シリーズで、電子書籍ユースに適した画面サイズの端末と言えば、6.7型の「iPhone 13 Pro Max」が筆頭に挙げられる。とは言えボディサイズはそのぶん大きく、重量も238gとかなりのヘビー級だ。日々持ち歩くスマホとしては躊躇するという人もいるだろう。

 こうした場合に次に候補に上がってくるのは、6.1型のiPhone 13およびiPhone 13 Proだが、可搬性を重視した場合は、さらにコンパクトなこのiPhone 13 miniも候補に入ってくる。140gという軽さは、片手で長時間保持しても疲れにくいことから、持ち歩いてどこででも電子書籍を楽しむには最適だ。

 とは言え画面サイズの関係で表示まわりに制約があるのは当然で、本製品から見て大型版にあたるiPhone 13と比べて、どれほどの違いがあるのか、気になる人も多いだろう。今回は筆者が購入したSIMロックフリーモデルを、iPhone 13、および従来のiPhone 12 miniと比較しつつ、電子書籍ユースでの実用性をチェックする。

従来モデルとはほぼ同一。重量や厚みも誤差レベル

まずは従来モデルであるiPhone 12 miniとスペックを比較してみよう。

【表】iPhone 13 miniのスペック比較
iPhone 13 miniiPhone 12 miniiPhone SE(第2世代)
発売年月2021年9月2020年11月2020年4月
サイズ(幅×奥行き×高さ)64.2×131.5×7.65mm64.2×131.5×7.4mm67.3×138.4×7.3mm
重量140g133g148g
CPUA15 Bionicチップ
2つの高性能コアと4つの高効率コアを搭載した新しい6コアCPU
新しい4コアGPU
新しい16コアNeural Engine
A14 Bionicチップ
2つの高性能コアと4つの高効率コアを搭載した6コアCPU
4コアGPU
16コアNeural Engine
A13 Bionicチップ
第3世代のNeural Engine
メモリ4GB4GB3GB
ストレージ128/256/512GB64/128/256/GB64/128/256/GB
画面サイズ5.4型5.4型4.7型
解像度2,340×1,080ドット(476ppi)2,340×1,080ドット(476ppi)1,334×750ドット(326ppi)
Wi-FiWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)
コネクタLightningLightningLightning
防水防塵IP68IP68IP67
生体認証Face IDFace IDTouch ID
駆動時間/バッテリー容量ビデオ再生:最大17時間
ビデオ再生(ストリーミング):最大13時間
オーディオ再生:最大55時間
ビデオ再生:最大15時間
ビデオ再生(ストリーミング):最大10時間
オーディオ再生:最大50時間
ビデオ再生:最大13時間
ビデオ再生(ストリーミング):最大8時間
オーディオ再生:最大40時間

 このように、フルモデルチェンジだった従来モデルと異なり、今回のモデルにおける変更点はCPUが強化されている点などごくわずかで、見るからにマイナーチェンジといった体裁だ。外観も、カメラの配置が変わっていること、また画面上のノッチの幅が狭くなっていることを除けば、両者を見た目で識別するのは困難だ。

従来のiPhone 12 mini(右)との比較。上部ノッチの幅がかなり狭くなっていることが分かる

 とは言え、細かいところを見ていくと、進化の跡は随所に見られる。ひとつは駆動時間の延長で、従来モデルに比べて2時間長くなっている。電子書籍ユースへの影響は軽微だが、バッテリの消費が激しい用途、例えば動画撮影などを頻繁に行なうユーザーにとっては、魅力的なポイントだろう。

カメラの2レンズは従来は縦に並んでいたが、直径が大きくなったためか、斜めに配置されるようになった。従来モデルと見分けるには、この背面を見るのが手っ取り早い

 その一方、重量と厚みがわずかに増しているのはマイナスだ。バッテリの容量が増えたことが理由と見られるが、電子書籍ユースではあまり歓迎できない。とは言っても誤差レベルではあるのだが、iPhone 12 miniからこのiPhone 13 miniへの買い替えを考えているユーザーにとっては、やや躊躇するポイントだろう。

 ちなみに同時発売のiPhone 13 ProおよびPro Maxは、リフレッシュレート120Hzに対応しているが、本製品については対応していない。また生体認証は従来と同じくFace IDのみで、Touch ID対応は見送られている。

 なお本製品は、側面ボタンや底面ポートの位置は従来のiPhone 12 miniと変わっていないが、背面のカメラレンズが載る厚みがある部分の幅が広がっているため、iPhone 12 mini用の保護ケースは利用できない。従来のiPhone 12 miniから買い替えるユーザーは注意したい。

ノッチ部のサイズの違い。よく見ると従来のiPhone 12 mini(奥)では右寄りにあったフロントカメラが本製品(手前)では左側に移動していることが分かる
厚みの比較。左が本製品、右が従来のiPhone 12 mini。ほんのわずかに増しているが、保護ケース類をつければ分からなくなる程度の差だ
上面。特に違いはない。iPhone 12シリーズと同様、側面は垂直にカットされている
底面。Lightningコネクタを採用。こちらも特に違いはない
左側面。SIMカードスロットの位置が微妙にずれているが、ボタン類の位置はそのままだ
右側面。特に違いはない

使い勝手も相違なし。パフォーマンスは2割程度アップ

 では実際に使ってみよう。本製品は初代のiPhone SEほどではないとは言え、第2世代のiPhone SEよりもコンパクトな筐体ゆえ、手の平の大きなユーザーであれば、握ることでボディをほぼ覆ってしまえる。

 本体の質感、ボタン類の配置などは従来と同じで、新製品発表のたびに「今回もUSB-Cじゃない」とネットでツッコミが入るLightningコネクタもそのまま。MagSafeの充電器などもそのまま使える。

 前述のようにボディの重量はわずかに増し、さらに厚みも増しているのだが、体感する機会はほぼない。筆者はもともとiPhone 12 miniをメイン端末として常用しているが、iPhone 13 miniをしばらく使って違いを感じるのは、ケース無しで持った場合に厚みの差をわずかに感じる程度。現実的には誤差レベルと言っていいだろう。

5.4型のOLEDディスプレイを搭載。iPhone 12シリーズの中ではもっともコンパクトだ
背面。MagSafeによるアクセサリの吸着、および充電器を接続してのワイヤレス給電に対応する
左側面はサウンドオン/オフスイッチと音量ボタン、SIMカードスロットを備える
右側面は電源ボタンを備える。iPad mini/AirのようなTouch ID一体型ではない
画面上部のノッチの幅が狭くなったことで、左右のアイコン類は余裕を持って配置されるようになった
カメラレンズ。左上が超広角、右下が広角。従来よりも径が大きくなっており、上下に並べられなかった理由が分かる

パフォーマンスについては、複数のベンチマークアプリで測定した限り、概ね2割程度スコアが向上している。もちろんアプリによって差はあるが、変わっているのは実質CPUのみ、メモリ容量も同じ4GBという中、かなり健闘している印象だ。使うたびにパフォーマンスの向上を如実に感じる……というレベルではないが、恩恵は確実にあるだろう。

Google Octaneでの比較は「58444」。従来モデルの「43760」に対して34%増
3DMark Wild Lifeでの比較は「9090」。従来モデルの「7671」に対して18%増
Geekbench 5での比較は、シングルコアが「1683」、マルチコアが「4498」。従来モデルの「1586」「3677」に対してそれぞれ6%増、22%増
Geekbench 5(Metal)での比較は「10745」。従来モデルの「9438」に対して14%増

コミックよりもテキスト本向け。ハンドリングの良さが魅力

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を用いている。電子書籍ストアはApple BooksのほかKindleストアを使用している。

 解像度は476ppiということで、品質の部分で何ら問題はない。問題は5.4型という、やや小ぶりな画面サイズだが、テキストについては文字サイズを調節すればよいだけなので、画面サイズのハンデは特にない。

 そもそもテキストの場合、一画面に表示できる文字数があまりに多すぎると、小説などで先の展開が目に入ってネタバレする危険もあり、本製品のコンパクトな画面はむしろプラスになることもある。老眼などの場合のみ、多少気を付けたほうがいいだろう。

テキストはコンパクトで読みやすい。文庫本の左右を切り詰めた感覚だ

 ただしこれがコミックともなると、セリフの量が多い作品などでは、やはり読みづらさを感じる場合があるのは事実。このあたりは、セリフの量のほか、作画が緻密な作品か否かといった、タイトルそのものによっても読みやすさに差がある。画面サイズが大きい端末と違って、万能でないことは認識しておいたほうがよいだろう。

コミックは横幅によってページ全体が縮小され、細かいセリフなどは読み取りづらくなる

 ちなみにiPhone 12 miniとは、画面が若干明るくなっているなどの差を除けば、見た目の差はなく、操作性も違いを感じない。第2世代iPhone SEなどに比べると縦長の画面も、ストアページやライブラリなどで、多くのコンテンツを表示できる利点がある。

従来のiPhone 12 miniとの比較。違いはまったくない
同じくコミックについても、特に相違点は見受けられない

 一方で、本製品から見て大画面版に当たるiPhone 13と使い比べると、画面サイズの差はなにかと実感させられる。iPhone 13では問題なく読めていたコミックを、本製品で表示したところ「これは読みづらい」と感じることもしばしばだ。

 このほかストアページやライブラリなどでは、本製品よりもiPhone 13のほうが、一画面に表示できるコンテンツの数は多い。それらも加味して、電子書籍ユースにどちらが有利かと言われると、iPhone 13に軍配が上がる。

iPhone 13(中)iPhone 13 Pro Max(右)との比較。画面が大きくなるごとに、1行あたりプラス数文字、1画面ごとにプラス2行ほど余分に表示できる。情報量を揃えて、文字サイズをもう1~2段階上げることもできる
同じくコミックの比較。本製品では読み取るのが難しかった吹き出し内のセリフが、サイズが大きくなるたびに読み取りやすくなっていく。本製品はかなり不利だ
ストアのようにタイトルの一覧が並ぶページは、画面サイズが大きくなるごとに、表示できるコンテンツの数が増えていく。ライブラリなどでも同様の現象は起こる
本製品の画面の横幅は約57.5mm
iPhone 13は約64.5mm。7mmの差は大きい
iPhone 13 Pro Mixは約71mm。スマホとしては最大級だ

 ただし重量差はそこそこあるので悩ましい。本製品だと手に長時間持っていても気にならないところ、iPhone 13に取り替えると、明らかに手が疲れてしまう。本製品が140gなのに対してiPhone 13は173g、さらにiPhone 13 Proともなると203gもあるので、差は歴然だ。このあたり、サイズ差から受ける印象より、実際の重量差はかなりあるので注意したい。

 こうした場合、スマホリングやベルトなど、持ちやすさを改善するアクセサリを導入することで持ちやすくする方法もあるが、本製品はそうしたアクセサリに頼らなくとも、長時間持っていられるのが利点だ。寝転がって読書をするユーザーにとっては、こうした特徴がメリットとして響くかもしれない。

本製品はその軽さゆえ、宙に浮かせた状態で長時間読書を行なっても苦にならない。睡魔に負けて顔面に落下させないよう気を付けたいところ

貴重なアンダー150gの端末。iPhone 8以前のモデルから乗り換えに最適

 以上のように、コミックの読みやすさは作品に左右されるところがあり、どちらかというとテキスト>コミック向けの端末というのが本製品の評価だ。Androidのように、音量ボタンを使ってページがめくれるような特殊なギミックはないが、現行モデルとしては数少ない150gを切ったスマホということで、ハンドリングの良さを重視するならば魅力的だ。

 買い替えの対象となるのはどんなユーザーだろうか。現時点でiPhone 12 miniを使っているユーザーは、電子書籍ユースに限れば無理に買い替える必要はないだろうが、第2世代のiPhone SEや、iPhone 8以前のモデルから乗り換える候補としては、ボディサイズや重量になるべく違和感を持たずに使い続けられるという点で、最良の選択肢と言える。

 比較対象となるiPhone 13とは、同一容量で1万2千円安価に設定されていたりと、財布に優しいのが利点だが、iPhone 13はここまで見てきた画面サイズの違いのほかに、バッテリ駆動時間が本製品より2時間長いという利点もある。軽さおよび予算面はあまり重要視しないユーザーにとっては、なかなか悩ましい選択肢と言えそうだ。

iPhone 13(右)との比較。そのまま拡大したかのようなデザインだ
こちらは背面のカメラの配置も同一だ
本製品はやはりそのコンパクトさが魅力。ここまでガッシリと握れるスマホもなかなかない