Hothotレビュー

電気的プライバシーフィルタ装備のNEC「LAVIE Pro Mobile」は安心・安全のビジネスノートだ

~自動的に覗き見を防止する検出機能などを搭載

NECパーソナルコンピュータ「LAVIE Pro Mobile」

 1kg前後のモバイルノートPCは、ノートPC市場では激戦区の1つだ。メーカー各社は、さまざまな趣向を凝らした個性的なモデルをこの市場に投入しており、存在感をアピールしている。今回紹介するNECパーソナルコンピュータの「LAVIE Pro Mobile」シリーズもその1つだ。デザインは初代を引き継いでおり、一見するだけではスタンダードな後継機種のようにも見える。

 しかし中身は大きく変わった。コロナ禍を乗り越えて生まれた新しいビジネス環境を前提に、プライバシーへの配慮やオンラインミーティングへの対応の強化など、単なるハードウェアの強化にとどまらずさまざまなギミックを積極的に取り入れ、最新のモバイルノートPCに生まれ変わっているのだ。

 なお、今回の試用機は製品版相当ではなかったため、ベンチマークテストは実行していない。あらかじめご了承いただきたい。

落ち着いたカラーリング、底面にもカーボンを配して剛性を強化

 LAVIE Pro Mobileは、13.3型ワイド液晶ディスプレイを搭載し、900g前後の軽量モバイルノートPCだ。店頭販売モデルは、搭載CPUや搭載メモリ/ストレージ、液晶ディスプレイのタイプが異なる3モデルを用意している。

 直販モデルではCPUやメモリ、ストレージ、液晶ディスプレイのタイプに加え、WAN機能(LTE)の有無などを選択できる。今回は店頭販売される最上位モデル「LAVIE Pro Mobile PM950/SA」を試用した。

【表】LAVIE Pro Mobileの店頭モデルのスペック
モデル名PM950/SAPM750/SAL、PM750/SAR、PM750/SAGPM550/SAL、PM550/SAR、PM550/SAG
OSWindows 10 Home 64bit
オフィスアプリMicrosoft Office Home & Business 2019
CPUCore i7-10510U(4コア/8スレッド、1.8~4.9GHz)Core i5-10210U(4コア/8スレッド、1.6~4.2GHz)
GPUにRadeonIntel UHD Graphics
メモリDDR4 16GBDDR4 8GB
ストレージ512GB(PCI Express NVMe)256GB(PCI Express NVMe)
ディスプレイ13.3型(1,920×1,080ドット、非光沢、プライバシーフィルタ内蔵)13.3型(1,920×1,080ドット、非光沢)
通信Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth
インターフェイスUSB 3.1 Type-C、USB 3.0 Type-C(USB PD、DisplayPort出力対応)、USB 3.1、HDMI、音声入出力端子
キーボード日本語キーボード
カメラ92万画素、顔認証センサー
バッテリ駆動時間約20時間約24時間
サイズ(幅×奥行き×高さ)307.2×216×16.9mm307.2×216×16.7mm
重量955g889g
実売価格26万円前後23万円前後21万円前後

 ビジネスユーザーをメインターゲットにしていることもあり、デザインはシンプルかつ高級感があり、安っぽさは感じない。カーボンを採用した外装には、さらっとした質感の表面加工が施されており手触りがよい。3色のカラーバリエーションも落ち着きのある色合いだ。

LAVIEシリーズのメタリックなエンブレムのみが刻まれた美しい天板
パームレストにもさらっとした質感の表面処理が施されている
左側面にはセキュリティスロットや2基のUSB Type-Cコネクタ(左は充電とディスプレイ出力に対応)、MicroSDメモリーカードリーダを装備
右側面には電源LEDやヘッドセット端子、USB 3.0ポート、HDMIを装備

 面耐圧150kgf、76cmの高さからの落下テストをクリアすると言った剛性の高さは前機種譲り。また今回のモデルからは天板だけでなく、底面にもカーボン素材を組み合わせており、筐体の剛性はさらに向上しているという。

 キーボードのキートップは、前機種に比べるとやや大きくなった。メインキーのキーピッチは19.05mm(前機種は18.45mm)、キーストロークは1.5mm(前機種は1.2mm)確保しており、おおむねA4版ホームノートPCと同じと考えてよい。

キーボード用のスペースは左右のフレームいっぱいまで広げられており、13.3型のモバイルノートPCとしてはキーピッチは広め
タッチパッドは、実測値で幅10cm、奥行き6cmだ

 前機種のキーボードにも不満があったわけではないが、デスクトップで使っているキーボードとほぼ同じサイズになったこともあり、指先をより自然に移動できるようになった印象はある。細くなったり、小さくなったりしているキーも少ない。外出先でそれなりの分量の書類作成を行なう機会が多いユーザーにとっては、大きな改善点と言える。

 CPUはComet Lake世代の「Core i7-10510U」、メモリは16GBでストレージは512GBと、モバイルノートPCとしてはハイエンドらしい構成だ。各操作にもたつきは一切感じられず、Windows 10をスムーズに利用できるのは言うまでもない。

 今回試用した最上位モデルは、プライバシーフィルタを組み込んだ特殊な液晶ディスプレイを搭載しており、重量は955g。スタンダードな液晶ディスプレイを搭載する下位モデルは889gと、おおむね900g前後と考えてよいだろう。

 最上位モデルのバッテリ駆動時間は、スペック上では約20時間。下位モデルは約24時間であり、これはプライバシーフィルタ搭載液晶と通常液晶の消費電力の違いによるものだという。

付属するACアダプタもコンパクト。コネクタはUSB Type-CでUSB PDに対応する

ユーザーの操作なしで利用できる充実のプライバシー保護機能

 バッテリ駆動時間にも影響しているこのプライバシーフィルタ搭載液晶、いったいどんな機能が利用できるのか気になるユーザーも多いだろう。これは簡単に言うと、「インテリジェンスなプライバシーフィルタ」である。

 人が多い場所でPCを使う機会が多いなら、作業中に情報を盗み見られる危険性にも留意すべきだ。そうした状況での情報漏洩を防ぐため、プライバシーフィルタを液晶ディスプレイに貼りつけて利用している人は多い。

 そして最上位のPM950/SAでは、液晶ディスプレイに電気的にオン/オフできるプライバシーフィルタ機能が組み込まれている。このプライバシーフィルタ機能をオンにすると、視野角を左右45度に狭めるだけでなく、輝度を50%まで低下する。

 実際に使ってみたところ、正面からだとプライバシーフィルタが無効のときに比べて「やや暗いかな」という程度でほぼ同じ感覚で作業できたが、斜めから覗き込んで見ると画面の内容はほぼ把握できない状態になった。

プライバシーフィルタが無効なら、斜め45度付近から見てもテキストなどを判別することは可能だった
プライバシーフィルタを有効にすると、画面の内容はほぼ判別できなくなる

 しかしプライバシーフィルタを単純にオン/オフできるだけでは、「インテリジェンス」とは言えない。LAVIE Pro Mobileでは、内蔵カメラと「Glance」(グランス)を利用した自動制御のプライバシー保護機能「LAVIE プライバシーガード」が利用できる。

 たとえば、左右から誰かが画面を盗み見ようとすると、その状況をWebカメラと連係したGlanceが認識して警告を発する(プライバシーアラート機能)とともに、プライバシーフィルタを自動で有効にして画面を見えにくくする。仕事に没頭していて覗き込み行為に気がつかない、というトラブルを防いでくれるのだ。

液晶ディスプレイの上部にあるWebカメラと連係してさまざまな制御が行なえる
Glanceは、初期設定が終わるとタスクトレイに常駐する
Glanceの機能名をクリックすると、設定画面が表示される。これはプライバシーガードの設定画面
同じくプライバシーアラートの設定画面だ。自分の好みや作業する場所の状況に合わせて設定しよう

 テレワークの環境が一気に整い、その利便性が広く認知されたことで、今後はオフィス以外の場所で仕事をする機会が増える。しかしこうした機能を利用することで、周囲に他人がいる状況でもより安全に仕事を継続できるようになるわけだ。

 なおプライバシーフィルタを搭載しない下位モデルでは、同じくGlanceを利用して自動で警告を表示するプライバシーアラート機能のほか、画面をぼんやりとかすませて内容を見えないようにする「Smart Display」機能が利用できる。

視線の移動を操作のトリガーに利用する便利機能

 Glanceで制御できるのは、液晶ディスプレイに組み込まれたプライバシーフィルタ機能だけではない。

 GlanceはWebカメラを通してユーザーの状況を確認しており、ユーザーが正面を向いていない(=画面を見ていない)ときにはロック画面やスクリーンセーバーを起動したり、ディスプレイをオフにできる。LAVIE プライバシーガードと同じく、プライバシー保護に役立つ機能である。

Glanceのメニューの一番上にある「Presence Detection」から、ユーザーが画面を見ていないときの挙動を設定できる

 またWebカメラは顔認証機能を利用できるタイプなので、ロック画面から復帰するにはWebカメラに自分の顔を向けるだけでよい。認証作業は一瞬で終了し、作業中のデスクトップをすぐに復帰できる。

 たとえば会議やトイレで席を外したらすぐにロック画面に移行するし、席に戻ったらすぐに作業を再開できる。こうした流れのなかで、ユーザーの能動的な操作はまったく必要ない。いったんきちんと設定してしまえば、あとはノートPC任せでプライバシー保護機能を利用できるのが非常に便利だ。

 ノートPCの画面の左側、または右側にサブディスプレイを設置している場合、視線をサブディスプレイに向けると、タイトルバーを掴んで移動中のウィンドウやマウスカーソルを自動でそのデスクトップに移動する機能もある。

「Smart Pointer」と「Snap Window」を有効にしておくと、画像のようにタイトルバーを掴んでいるウィンドウを別のデスクトップに移動できる
Smart Pointerの設定画面。

 複数のディスプレイにデスクトップを表示して利用している場合、マウスカーソルがどこにあるのか、アクティブなウィンドウがどこにあるのかがわからなくなってしまうことがある。Webカメラを通じて視線の移動を監視することで、こうしたことを防いでいるわけだ。おもに利便性を高める機能であり、利用したくなければ切ることも可能だ。

 対面できない状況が続いたこともあり、「Zoom」や「Microsoft Teams」を利用したオンラインミーティングが広く普及した。LAVIE Pro Mobileでは、こうした環境での使い勝手を高める機能も強化されている。

 前面に配置したスピーカーは、会議が複数のユーザーを交えてのものか、1対1かで音響特性を変更でき、どんな状況にもクリアな音声で会議の内容を聞き取れる。モードの切り換えも、ハードウェア設定ユーティリティだけではなく、Fn+F5キーで簡単に行なえる。

ステレオスピーカーを、ノートPCの底面手前に搭載する
ミーティングモードの設定画面

 またマイクがハウリング音や反響音を拾うタイプだと、快適な通話や会議ができなくなってしまう。そこでLAVIE Pro Mobileでは、エアコンの音や周囲の雑踏音を低減する「ノイズサプレッサ」機能や、部屋に反響する残響音を低減する「ルームエコー抑制」機能を搭載し、そうした「雑音」が混じるのを防いでくれるのだ。

ユーザーの手を煩わせない点が革新的

 モバイルノートPCというと、今までは軽さやバッテリ駆動時間、CPUやストレージなど使い勝手に関する基本スペックが評価として重視される傾向はあったと思う。もちろんこうしたポイントは今でも非常に重要だが、それだけではない「可能性」を、LAVIE Pro Mobileは示しているように思える。

 想像を超えるスピードで変貌したビジネス環境と、そのなかでノートPCがどういった役割を果たすべきか。そういったことに対するNECコンピュータの答えが、今回のLAVIE Pro Mobileなのだろう。

 強力なプライバシー保護機能をいくつ搭載しても、それが有効に使われない状況では意味がない。しかしLAVIE Pro Mobileでは、最初に設定してしまえばあとはもうユーザーは何もせずとも安心して利用できる。

 クルマで言えばオートマ車のようなものであり、こうしたセキュリティやプライバシー保護機能は、今後モバイルノートPCのスタンダードになる可能性がある。