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待望のPCIe 4.0対応ミドルレンジ向けチップセット「AMD B550」をASUS製マザーでチェック
2020年6月16日 22:00
AMDのメインストリーム向けチップセット「AMD B550」を搭載したマザーボードの販売が6月20日より開始される。
この発売に先立って、ASUSより同チップセットを搭載するゲーミングマザーボード「ROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)」を試用する機会が得られたので、最新チップセットを搭載したSocket AM4対応ゲーミングマザーボードの出来をチェックしてみよう。
新世代のSocket AM4対応ゲーミングマザーボード
ASUSのROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)は、同社のゲーマー向けブランド「ROG STRIX」に属するAMD B550チップセット搭載マザーボード。フォームファクターはATXで、基板サイズは305×244mmだ。
CPUソケットはSocket AM4だが、サポートするCPUはZen 2アーキテクチャを採用する第3世代Ryzenのみとなっており、ZenやZen+ベースの第1~2世代のRyzenやRyzen APUは非対応となっている。これは、AMD B550チップセット自体の仕様であり、AMDによればAMD B550ではZen 2と次世代のZen 3ベースの製品をサポートするとしている。
メモリスロットには片ラッチタイプのDDR4メモリスロットを4本搭載。DDR4-4400までのオーバークロックメモリと、合計128GBまでのメモリ容量をサポートしている。
新世代のメインストリームチップセットであるAMD B550チップセットは、CPUが内蔵するPCI Express 4.0のうち、dGPU用の16レーンとNVMe SSD用の4レーンが利用可能となったほか、これまで「AMD X570」などのX系チップセットでのみサポートされていたdGPU用16レーンの分割利用に対応した。
ROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)では、CPU直結となるdGPU用PCI Express x16スロットとM.2スロットがPCI Express 4.0をサポートしている。2本目のPCI Express x16スロットとM.2スロットはチップセット接続となっているため、dGPU用16レーンの分割というAMD B550の新機能は利用できない。
なお、上位モデルのROG STRIX B550-E GAMINGは同機能に対応しており、2本のPCI Express x8が必須なNVIDIA SLIにも対応している。
ストレージ接続用の6Gbps SATAポートは6ポート。いずれもチップセット接続のSATAポートで、このうち5~6番ポートはチップセット接続のM.2スロットと排他利用となっている。
ROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)は、その名のとおりWi-Fi機能を備えており、Wi-Fi 6とBluetooth 5.1をサポートする「Intel Wi-Fi 6 AX200」を搭載している。有線LANには2.5GbE対応の「Intel I225-V」を搭載しており、無線・有線ともに先進的なネットワーク機能を備えている。
そのほか、サウンドチップ「SupremeFX S1220A」を搭載したサウンド回路や、CPUやメモリが不要なUEFI(BIOS)更新機能「BIOS FlashBack」を搭載している。
PCI Express 4.0対応M.2スロットをテスト
先に紹介したとおり、ROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)は2本のM.2スロットを備えており、CPU直結のM.2スロットがPCIe 4.0 x4、チップセット接続のM.2スロットはPCIe 3.0 x4にそれぞれ対応している。
今回は、各スロットにNVMe SSDを搭載した場合のパフォーマンスをチェックすべく、PCI Express 4.0対応SSD「CORSAIR MP600 (1TB)」を両スロットに搭載。ベンチマークテストの「CrystalDiskMark」を実行してみた。テスト機材については以下のとおり。
【表1】テスト機材一覧 | |
---|---|
CPU | Ryzen 9 3950X |
CPUパワーリミット | PPT:142W、TDC:95A、EDC:140A |
CPUクーラー | サイズ APSALUS G6 (ファンスピード=100%) |
マザーボード | ROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI) [UEFI:0603] |
ビデオカード | GeForce GT 1030 2GB |
メモリ | DDR4-3200 16GB×2 (2ch、22-22-22-53、1.20V) |
システム用SSD | CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4) |
テスト用SSD | CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4) |
電源 | CORSAIR RM850 CP-9020196-JP (850W/80PLUS Gold) |
グラフィックスドライバ | GeForce Game Ready Drivers 446.14 (26.21.14.4614) |
OS | Windows 10 Pro 64bit (Ver 2004 / build 19041.329) |
電源プラン | AMD Ryzen Balanced |
室温 | 約25℃ |
CPU直結のM.2スロットに搭載した場合、CORSAIR MP600の「リード4,950MB/s、ライト4,250MB/s」というスペックどおりの転送速度を達成しており、PCIe 4.0 x4接続ならではパフォーマンスを発揮している。
一方、チップセット接続のM.2スロットではSSDのインターフェイスがPCIe 3.0 x4となるため、転送速度はリード・ライトともに3,100MB/s程度となった。
12+2フェーズの強力で低発熱なVRMを搭載Ryzen 9 3950Xの高負荷動作でも余裕の低温動作を実現
ROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)は、1フェーズあたり50Aの供給が可能なDrMOSを採用した12+2フェーズのVRMを備えている。8+4ピンの電源コネクタや大型のヒートシンクも備えており、電源周りの仕様は相当にハイスペックだ。
ここで、見た目からも豪華な仕様であることが伺えるROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)のVRMが、どの程度の実力を備えているかをチェックしてみよう。
テスト機材はM.2スロットの検証と同じものを使用し、CPUクーラーにオールインワン水冷クーラーを用いることで、VRMやCPUソケット周辺のエアフローを排除。TMPGEnc Video Mastering Works 7で、Ryzen 9 3950Xが約20分間4K動画のエンコードを実行し続けた場合、どこまで温度が上昇するのかをサーモグラフィで測定してみた。
テストの結果、VRM周辺の最大温度は35.7℃から54.6℃に上昇した。Ryzen 9 3950Xに140W前後の電力を供給していて、なおかつVRM周辺のエアフローを排除した無風状態での温度としては驚くほど低い数値だ。大型ヒートシンクの冷却能力が優れていることもさることながら、高効率なDrMOSを採用したVRMの発熱自体が少ないことが、低いVRM周辺温度を実現したのだろう。
いずれにせよ、Ryzen 9 3950Xを搭載した場合でも、余裕で無風動作が可能なROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)なら、どんなSocket AM4対応CPUを使っても安心だ。オーバークロックやリミット解除での動作を狙うユーザーにとっても注目の製品となりそうだ。
第2世代以前のRyzen&Ryzen APUは本当に使えないのか? Ryzen 7 2700XとRyzen 5 3400Gで動作テスト
前述のとおり、AMD B550チップセットを搭載するROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)は、公式にはZen 2ベースの第3世代Ryzen以降のCPUのみをサポートするとされており、記事執筆時点ではCPUサポートリストには第3世代Ryzenしか記載されていない。
だが、本当に第2世代以前のRyzenやRyzen APUは利用できないのだろうか。
この疑問を確かめるべく、第2世代Ryzenである「Ryzen 7 2700X」と、第2世代Ryzen APUの「Ryzen 5 3400G」を用意。これらをROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)に搭載して、挙動をチェックしてみた。
結論から言えば、Ryzen 7 2700XとRyzen 5 3400Gを搭載したROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)は、これらを正しく認識して起動することができた。
CPU内蔵PCI Expressが3.0世代であるためPCI Express 4.0が利用できないことは当然として、Ryzen 5 3400G搭載時はCPU直結のM.2スロットがPCIe 3.0 x2接続となる不可解な動作もみられたが、OSの起動などに問題はなかった。
ただし、記事執筆時点でこれらのCPUのサポートは非公式なものだ。UEFIバージョン「0603」時点では動作しているものの、今後のUEFIアップデートで利用できなくなる可能性もある点に注意して欲しい。
充実したスペックのSocket AM4対応マザーボード
提供可能なPCI Express 4.0レーン数では上位のAMD X570チップセットに及ばないものの、「チップセット冷却ファン無しでPCI Express 4.0が使えるマザーボード」を欲していたユーザーにとって、AMD B550チップセット搭載マザーボードは選択肢の幅を大きく広げる製品だ。
そのなかでも、Ryzen 9 3950Xを余裕で搭載できる強力なVRMを備えたROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)は、ROG STRIXブランドがターゲットとしているゲーマー層のみならず、第3世代Ryzen上位モデルの利用や、オーバークロックに挑戦したいユーザーにとっても有力な選択肢となるだろう。