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待望のPCIe 4.0対応ミドルレンジ向けチップセット「AMD B550」をASUS製マザーでチェック

ROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)

 AMDのメインストリーム向けチップセット「AMD B550」を搭載したマザーボードの販売が6月20日より開始される。

 この発売に先立って、ASUSより同チップセットを搭載するゲーミングマザーボード「ROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)」を試用する機会が得られたので、最新チップセットを搭載したSocket AM4対応ゲーミングマザーボードの出来をチェックしてみよう。

新世代のSocket AM4対応ゲーミングマザーボード

 ASUSのROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)は、同社のゲーマー向けブランド「ROG STRIX」に属するAMD B550チップセット搭載マザーボード。フォームファクターはATXで、基板サイズは305×244mmだ。

ROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)の基板表面
ROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)の基板裏面

 CPUソケットはSocket AM4だが、サポートするCPUはZen 2アーキテクチャを採用する第3世代Ryzenのみとなっており、ZenやZen+ベースの第1~2世代のRyzenやRyzen APUは非対応となっている。これは、AMD B550チップセット自体の仕様であり、AMDによればAMD B550ではZen 2と次世代のZen 3ベースの製品をサポートするとしている。

 メモリスロットには片ラッチタイプのDDR4メモリスロットを4本搭載。DDR4-4400までのオーバークロックメモリと、合計128GBまでのメモリ容量をサポートしている。

CPUソケットのSocket AM4。Zen 2ベースの第3世代Ryzen以降のCPUのみのサポートで、第1~2世代のRyzenとRyzen APUには非対応
DDR4メモリスロット。合計128GBのメモリ容量とDDR4-4400メモリをサポートしている

 新世代のメインストリームチップセットであるAMD B550チップセットは、CPUが内蔵するPCI Express 4.0のうち、dGPU用の16レーンとNVMe SSD用の4レーンが利用可能となったほか、これまで「AMD X570」などのX系チップセットでのみサポートされていたdGPU用16レーンの分割利用に対応した。

 ROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)では、CPU直結となるdGPU用PCI Express x16スロットとM.2スロットがPCI Express 4.0をサポートしている。2本目のPCI Express x16スロットとM.2スロットはチップセット接続となっているため、dGPU用16レーンの分割というAMD B550の新機能は利用できない。

 なお、上位モデルのROG STRIX B550-E GAMINGは同機能に対応しており、2本のPCI Express x8が必須なNVIDIA SLIにも対応している。

CPU付近に配置されたdGPU用のPCI Express x16スロット。第3世代Ryzen搭載時はPCIe 4.0 x16接続が可能
dGPU用以外の拡張スロットは、いずれもチップセット接続のPCI Express 3.0スロット。PCI Express x16スロットはPCIe 3.0 x4に対応しているが、PCI Express x1スロット利用時はPCIe 3.0 x1接続に制限される
CPUソケット付近に配置されたCPU直結のM.2スロット。PCIe 4.0 x4または6Gbps SATAに対応しており、SSD冷却用のヒートシンクも付属している
2番目のM.2スロットはチップセット接続で、SATA 5~6番ポートと排他利用となっている。対応インターフェイスはPCIe 3.0 x4または6Gbps SATAで、SSD冷却用ヒートシンクを搭載

 ストレージ接続用の6Gbps SATAポートは6ポート。いずれもチップセット接続のSATAポートで、このうち5~6番ポートはチップセット接続のM.2スロットと排他利用となっている。

 ROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)は、その名のとおりWi-Fi機能を備えており、Wi-Fi 6とBluetooth 5.1をサポートする「Intel Wi-Fi 6 AX200」を搭載している。有線LANには2.5GbE対応の「Intel I225-V」を搭載しており、無線・有線ともに先進的なネットワーク機能を備えている。

 そのほか、サウンドチップ「SupremeFX S1220A」を搭載したサウンド回路や、CPUやメモリが不要なUEFI(BIOS)更新機能「BIOS FlashBack」を搭載している。

6Gbps SATAを6ポート搭載。写真左端の5~6番ポートはM.2スロットと排他利用となっている
バックパネルインターフェイス。I/Oシールドはマザーボードに固定されている
Intel Wi-Fi 6 AX200を搭載しており、Wi-Fi 6(802.11ax)とBluetooth 5.1をサポート
2.5GbE NIC「Intel I225-V」
SupremeFX S1220Aを搭載するサウンド回路
CPUやメモリを搭載することなくUEFIを更新できる「BIOS FlashBack」機能を搭載

PCI Express 4.0対応M.2スロットをテスト

 先に紹介したとおり、ROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)は2本のM.2スロットを備えており、CPU直結のM.2スロットがPCIe 4.0 x4、チップセット接続のM.2スロットはPCIe 3.0 x4にそれぞれ対応している。

 今回は、各スロットにNVMe SSDを搭載した場合のパフォーマンスをチェックすべく、PCI Express 4.0対応SSD「CORSAIR MP600 (1TB)」を両スロットに搭載。ベンチマークテストの「CrystalDiskMark」を実行してみた。テスト機材については以下のとおり。

PCIe 4.0対応SSD「CORSAIR MP600 (1TB)」
ROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)が備える2本のM.2スロットにPCIe 4.0対応SSDを搭載してテスト
【表1】テスト機材一覧
CPURyzen 9 3950X
CPUパワーリミットPPT:142W、TDC:95A、EDC:140A
CPUクーラーサイズ APSALUS G6 (ファンスピード=100%)
マザーボードROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI) [UEFI:0603]
ビデオカードGeForce GT 1030 2GB
メモリDDR4-3200 16GB×2 (2ch、22-22-22-53、1.20V)
システム用SSDCORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)
テスト用SSDCORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)
電源CORSAIR RM850 CP-9020196-JP (850W/80PLUS Gold)
グラフィックスドライバGeForce Game Ready Drivers 446.14 (26.21.14.4614)
OSWindows 10 Pro 64bit (Ver 2004 / build 19041.329)
電源プランAMD Ryzen Balanced
室温約25℃

 CPU直結のM.2スロットに搭載した場合、CORSAIR MP600の「リード4,950MB/s、ライト4,250MB/s」というスペックどおりの転送速度を達成しており、PCIe 4.0 x4接続ならではパフォーマンスを発揮している。

 一方、チップセット接続のM.2スロットではSSDのインターフェイスがPCIe 3.0 x4となるため、転送速度はリード・ライトともに3,100MB/s程度となった。

CPU直結のM.2スロットに搭載した場合のスコア。SSDのスペックどおりの速度を達成している
チップセット接続のM.2スロットに搭載した場合のスコア。PCIe 3.0 x4接続のため3,100MB/s程度まで速度が低下した

12+2フェーズの強力で低発熱なVRMを搭載Ryzen 9 3950Xの高負荷動作でも余裕の低温動作を実現

 ROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)は、1フェーズあたり50Aの供給が可能なDrMOSを採用した12+2フェーズのVRMを備えている。8+4ピンの電源コネクタや大型のヒートシンクも備えており、電源周りの仕様は相当にハイスペックだ。

大型ヒートシンクを搭載したVRMを装備
CPU給電用コネクタは8+4ピン
DrMOSを採用した12+2フェーズ構成のVRM
ヒートシンクはサーマルパッドを介して、チョークコイルとDrMOSに接続している
デジタルPWMコントローラ「ASP1106」
50A対応のDrMOS「Vishay SiC639」

 ここで、見た目からも豪華な仕様であることが伺えるROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)のVRMが、どの程度の実力を備えているかをチェックしてみよう。

 テスト機材はM.2スロットの検証と同じものを使用し、CPUクーラーにオールインワン水冷クーラーを用いることで、VRMやCPUソケット周辺のエアフローを排除。TMPGEnc Video Mastering Works 7で、Ryzen 9 3950Xが約20分間4K動画のエンコードを実行し続けた場合、どこまで温度が上昇するのかをサーモグラフィで測定してみた。

エンコード開始前。画像内の最大温度は35.7℃
エンコード開始から20分経過後。画像内の最大温度は54.6℃

 テストの結果、VRM周辺の最大温度は35.7℃から54.6℃に上昇した。Ryzen 9 3950Xに140W前後の電力を供給していて、なおかつVRM周辺のエアフローを排除した無風状態での温度としては驚くほど低い数値だ。大型ヒートシンクの冷却能力が優れていることもさることながら、高効率なDrMOSを採用したVRMの発熱自体が少ないことが、低いVRM周辺温度を実現したのだろう。

 いずれにせよ、Ryzen 9 3950Xを搭載した場合でも、余裕で無風動作が可能なROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)なら、どんなSocket AM4対応CPUを使っても安心だ。オーバークロックやリミット解除での動作を狙うユーザーにとっても注目の製品となりそうだ。

第2世代以前のRyzen&Ryzen APUは本当に使えないのか? Ryzen 7 2700XとRyzen 5 3400Gで動作テスト

 前述のとおり、AMD B550チップセットを搭載するROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)は、公式にはZen 2ベースの第3世代Ryzen以降のCPUのみをサポートするとされており、記事執筆時点ではCPUサポートリストには第3世代Ryzenしか記載されていない。

 だが、本当に第2世代以前のRyzenやRyzen APUは利用できないのだろうか。

 この疑問を確かめるべく、第2世代Ryzenである「Ryzen 7 2700X」と、第2世代Ryzen APUの「Ryzen 5 3400G」を用意。これらをROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)に搭載して、挙動をチェックしてみた。

第2世代Ryzenの8コア16スレッドCPU「Ryzen 7 2700X」
第2世代Ryzen APUである「Ryzen 5 3400G」

 結論から言えば、Ryzen 7 2700XとRyzen 5 3400Gを搭載したROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)は、これらを正しく認識して起動することができた。

 CPU内蔵PCI Expressが3.0世代であるためPCI Express 4.0が利用できないことは当然として、Ryzen 5 3400G搭載時はCPU直結のM.2スロットがPCIe 3.0 x2接続となる不可解な動作もみられたが、OSの起動などに問題はなかった。

Ryzen 7 2700X搭載時のUEFI画面
Ryzen 5 3400G搭載時のUEFI画面

 ただし、記事執筆時点でこれらのCPUのサポートは非公式なものだ。UEFIバージョン「0603」時点では動作しているものの、今後のUEFIアップデートで利用できなくなる可能性もある点に注意して欲しい。

充実したスペックのSocket AM4対応マザーボード

 提供可能なPCI Express 4.0レーン数では上位のAMD X570チップセットに及ばないものの、「チップセット冷却ファン無しでPCI Express 4.0が使えるマザーボード」を欲していたユーザーにとって、AMD B550チップセット搭載マザーボードは選択肢の幅を大きく広げる製品だ。

 そのなかでも、Ryzen 9 3950Xを余裕で搭載できる強力なVRMを備えたROG STRIX B550-F GAMING (WI-FI)は、ROG STRIXブランドがターゲットとしているゲーマー層のみならず、第3世代Ryzen上位モデルの利用や、オーバークロックに挑戦したいユーザーにとっても有力な選択肢となるだろう。

チップセット冷却ファンが不要なのもAMD B550チップセットの魅力