Hothotレビュー
“Maxperformer”でサクサク動作の「レッツノートLV9」を試す
2020年6月12日 06:55
パナソニックは、第10世代CoreプロセッサやWi-Fi 6対応無線LAN搭載などの強化を実現したレッツノートシリーズ 2020年夏モデルを発表した。
本稿では、そのレッツノート最新モデルのなかから、14型「レッツノート LV9」シリーズの個人店頭向け最上位モデルとなる「レッツノートLV9 CF-LV9KDNQR」をいち早く試用できたので、ハード面を中心に紹介する。2020年6月12日より発売を予定しており、実売価格は346,500円前後。
外観は従来モデルから変化なし
「レッツノートLV9 CF-LV9KDNQR」(以下、CF-LV9KDNQR)の外観は、従来モデルとなるLV8シリーズからほぼ変更はない。
天板には、レッツノートシリーズの特徴でもあるボンネット構造のおうとつが用意され、一目でレッツノートだと判断できる。今回試用した個人店頭向け最上位モデルはカラーがブラックのみとなるが、そのほかのモデルではおなじみのシルバーも用意されている。レッツノートと言えばどうしてもシルバー筐体の印象が強いが、ブラックは重厚な雰囲気となるため、こちらも人気となっているようだ。筐体素材にマグネシウム合金を採用し、軽さと強度を両立している点も従来同様だ。
サイズは333×225.3×24.5mm(幅×奥行き×高さ、突起部なし)と、従来モデルとまったく同じだ。ディスプレイの左右ベゼル幅は比較的狭められているが、近年流行の超狭額縁仕様とはなっていないため、14型のモバイルノートPCとしてはややフットプリントが大きいくなっている。また高さも24.5mmと比較的厚い。
このあたりは、堅牢性を損なってまで小型化や薄型化を実現するのではなく、優れた堅牢性を維持しつつ筐体の軽さを突き詰めるという設計思想によるもので、シリーズの一貫した特徴となっている。CF-LV9KDNQRでも、従来モデル同様に76cmの高さからの落下試験や100kgf加圧振動試験をはじめ、さまざまな堅牢性試験をクリアする優れた堅牢性を確保している。そして、この姿勢を貫いているからこそ、ビジネスシーンで圧倒的な支持を集めているわけで、その点が変わっていないという点は、多くのレッツノートユーザーにとって安心できる部分と言える。
重量は、公称で約1,405gとなっており、実測で1,388.5gと1.4kgを下回っていた。このところ、14型で1kg前後の軽量モバイルノートが増えていることを考えるとやや重いという印象もあるが、これは光学式ドライブを標準搭載していたり、重量的に不利となる大容量の「バッテリーパックL」を標準採用しているためで、標準の「バッテリーパックS」を搭載する下位モデルでは重量が約1,270gとなっている。
その反面、バッテリ駆動時間は公称で約18.5時間と非常に長く、外出時に電源の有無を気にすることなく安心して利用できることになる。外出時に長時間PCを利用することが多いという場合には、多少の重量増でも大きな不満はないはずだ。合わせて、バッテリが着脱式のため、予備バッテリの用意でさらなる長時間駆動が行なえる点も大きな魅力だ。
CPUの性能を最大限引き出す「Maxperformer」採用で歴代最速を実現
冒頭紹介しているように、レッツノート2020年夏モデルでは、ほとんどのモデルが第10世代Coreプロセッサを採用している。今回試用しているCF-LV9KDNQRでは、6コア12スレッド処理に対応するCore i7-10710Uを採用しており、従来モデルからの強化を実現している。
加えてCF-LV9KDNQRには、CPUの性能を最大限引き出すという「Maxperformer」という新機能を搭載している。これによってパナソニックは、レッツノートシリーズ歴代最速を実現したとしている。
Maxperformerは、パナソニックが独自に開発したCPU冷却システムと、Intel製CPUに用意されている電力制御技術「インテル ダイナミック・チューニング・テクノロジー(DTT)」を利用して、レッツノートの放熱・省電力設計に合わせてパナソニックが独自にチューニングを行なうことによって、CPUの性能を最大限に引き出すものとなっている。
Maxperformerの具体的な仕様については非公開となっているが、CPUの動作状況と、CPUおよび筐体内の発熱状況を監視しつつ、CPUに供給される電力や動作クロックを細かく調整することによって、最大限の処理能力を引き出しているという。
まず、独自開発の空冷ファンを利用したCPUの冷却システムを採用することで、CPUの放熱能力を高めている。また、DTTを利用した独自チューニングによって、CPUや筐体の温度が特定のレベルに達するまでCPUへの供給電力とCPUの動作クロックを標準よりも高めることで、通常よりも高い処理能力を引き出す仕組みを採用。温度が特定のレベルに達するとCPUへの供給電力や動作クロックは下がるものの、その後も温度状況を監視しつつCPUへの供給電力や動作クロックを細かく上下させることで、通常よりも優れた処理能力が引き出せるとのことだ。
Maxperformerによって具体的にどの程度供給電力や動作クロックが高められるのか、またMaxperformerの有無による処理能力の差がどの程度になるかといった細かな仕様は公開されていない。加えて、実機でMaxperformerの利用をオフにできないため、ベンチマークテストなどでもどの程度の効果があるのか判断できない。ただ、パナソニックが説明するとおりの仕様であれば、Maxperformerのない状態に比べて処理能力が高まることは間違いないだろう。
気になるのは消費電力の増大だ。CPUへの供給電力が増え、動作クロックも高められると、消費電力は間違いなく増える。ただ、処理能力が高まることで同じ処理を通常よりも短時間で終了できるようになるため、トータルでの消費電力の影響はそれほど大きなものではないだろう。もちろん、処理が短時間で終了することで利用時の快適度が高まるため、Maxperformer搭載のメリットはかなり大きいと言える。
フルHD表示対応の14型液晶を搭載
ディスプレイは、1,920×1,080ドット表示に対応する14型液晶を搭載する。パネルの種類は非公開だが、視野角は十分に広く、TNパネルのように視点を大きく移動させると明るさや色合いが変化するといったことはない。また、パネル表面は非光沢処理となっているため、外光の映り込みはほとんど感じられず、とくに文字入力などは非常に快適に行なえる。レッツノートはビジネスシーンでの利用が中心になることを考えても、非光沢液晶という点は当然の仕様と言える。
発色に関しては、鮮やかさという点では光沢液晶にはやや劣るという印象だ。それでもモバイルノートとして標準的な発色性能は問題なく備えている印象で、とくに大きな不満は感じない。
フルピッチのキーボードで軽快な入力が可能
キーボードは、従来モデルと同じものを搭載している。アイソレーションタイプではないが、レッツノートシリーズで標準的に採用されている、キートップが木の葉状となるリーフ型キーを採用することで、アイソレーション型キーボード同等の使い勝手となっている。また、キーの左上と右上を大きなカーブで切り取ることで、爪の引っかかりも低減しており、軽快な入力をサポートしている。
主要キーのキーピッチは約19mmフルピッチを確保。ほかのレッツノートシリーズのキーボードでは縦キーピッチがやや狭くなっているのに対し、CF-LV9KDNQRのキーボードは縦も約19mmの正方形キーとなっているため、その点でも非常に扱いやすいと感じる。合わせて、ストロークも約2mmと深く、クリック感もしっかりしているため、打鍵感も良好だ。
ただ、気になるのがキー入力時のカチャカチャという音がやや大きいという部分だ。うるさいというほどではないものの、できればもう少し静音性を高めてもらいたいように思う。また、キーボードバックライトも引き続き搭載していない。この点も今後改善を期待したい。
ポインティングデバイスは、レッツノートシリーズおなじみの、円形のタッチパッド「ホイールパッド」を採用。通常の長方形タッチパッドに比べるとパッド面が小さく、カーソルを大きく移動させる場合の操作性はやや劣る印象だが、特別使いづらいと感じることはない。また、パッドの周囲をくるくるなぞることでスクロール操作が可能という、ホイールパッドならではの特徴も、使い勝手を高めていると感じる。
Wi-Fi 6対応など仕様も強化されている
CF-LV9KDNQRに搭載されるCPUは、先に紹介したように6コア12スレッド処理に対応するCore i7-10710Uを採用。メモリはLPDDR3-2133を8GB搭載しており、増設は不可能。Core i5-10210U採用の下位モデルにはメモリ16GB搭載モデルが用意されていることを考えると、CF-LV9KDNQRでもメモリは16GB搭載してもらいたかったように思う。なお、パナソニックオンラインストアでの直販モデルでは、メモリ搭載量を16GBにカスタマイズ可能だ。
内蔵ストレージは、512GBのNVMe/PCIe SSDを搭載。また、本体前面右側からアクセスできるブルーレイディスクドライブも標準で搭載している。ビジネスシーンでも光学式ドライブが必要となる場面は以前に比べて減少しているのではないかとも思うが、まだ標準搭載となっていることから、企業からの光学式ドライブ搭載への要望がまだ多いと考えられる。なお、従来モデルでは光学式ドライブ非搭載モデルも用意していたが、LV9シリーズでは全モデルが光学式ドライブ搭載となっている。
側面ポート類が充実している点も、従来モデル同様だ。左側面には電源コネクタ、HDMI、USB 3.0、Thunderbolt 3を、右側面にはUSB 3.0×2、ミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernetポートを、前面にはSDカードスロットとオーディオジャックをそれぞれ搭載している。ビジネスシーンで必要となるポート類をほぼ網羅しており、この点もレッツノートシリーズがビジネスシーンで根強い人気を保っている理由の1つだろう。
無線機能は、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)準拠の無線LANとBluetooth 5.0を標準搭載。また、パナソニックオンラインストアの直販モデルではLTE対応のワイヤレスWANの搭載も可能となっている。
生体認証機能は、ディスプレイ上部の顔認証カメラと、右パームレストの指紋認証センサーを同時搭載となる。TCG V2.0準拠のTPMチップも搭載しており、セキュリティ機能は万全だ。
ディスプレイ上部のカメラは1080p対応の約207万画素カメラとなっており、HD対応のWebカメラよりも高画質の撮影が可能。また、周囲の雑音をカットするアレイマイクを搭載しているため、ビデオ会議にも柔軟な対応が可能だ。
ただ、スピーカーはキーボード後方にステレオスピーカーを搭載しているものの、音質は今一歩という印象。ビデオ会議などで人の声を再生するには問題ないものの、できればもう少し高音質のスピーカーを搭載してもらいたい。
付属ACアダプタも、従来モデルに付属しているものと同じだ。モバイルノートPC用のACアダプタとしてはやや大きく、本体と同時に持ち歩くことを考えるとややかさばる印象。また付属電源ケーブル込みの重量は実測で314gとやや重い点も気になる。
なお、Thunderbolt 3ポートにUSB PD対応の汎用ACアダプタを接続することで本体への給電やバッテリの充電が可能だが、出力61W対応のUSB PD対応ACアダプタでも出力不足の警告が表示される。付属ACアダプタの出力は85Wなので、それ以上の出力を備えるUSB PD対応ACアダプタがあれば問題ないはずだ。ただ、低出力のUSB PD対応ACアダプタでも、就寝中にバッテリを充電するといった用途に活用することは可能だ。
Maxperformerの効果で性能は申し分ない
では、ベンチマークテストの結果を紹介しよう。今回利用したベンチマークソフトは、UL LLCの「PCMark 10 v2.0.2177」、「3DMark Professional Edition v2.11.6911」、Maxonの「CINEBENCH R20.060」の3種類だ。
比較として、同じCPUを搭載するエムエスアイコンピュータージャパンのクリエイター向けノートPC「Prestige-14-A10SC-165JP」の結果も加えてある。なお、Prestige-14-A10SC-165JPの結果は、ユーザーシナリオを「高性能」、ファンの動作モードを「Cooler Boost」に設定した場合のものとなっている。
レッツノート LV9 CF-LV9KDNQR | Prestige-14-A10SC-165JP ユーザーシナリオ「高性能」 ファン「Cooler Boost」 | |
---|---|---|
CPU | Core i7-10710U(1.10/4.70GHz) | Core i7-10710U(1.10/4.60GHz) |
チップセット | ― | ― |
ビデオチップ | Intel UHD Graphics | GeForce GTX 1650 with Max-Q Design |
メモリ | LPDDR3-2133 SDRAM 8GB | LPDDR3-2133 SDRAM 16GB |
ストレージ | 512GB SSD(NVMe/PCIe) | 512GB SSD(NVMe/PCIe) |
OS | Windows 10 Pro 64bit | Windows 10 Home 64bit |
PCMark 10 | v2.1.2177 | |
PCMark 10 Score | 4462 | 5421 |
Essentials | 9447 | 9192 |
App Start-up Score | 13032 | 12200 |
Video Conferencing Score | 7926 | 7660 |
Web Browsing Score | 8163 | 8312 |
Productivity | 7270 | 7197 |
Spreadsheets Score | 8056 | 8747 |
Writing Score | 6562 | 5922 |
Digital Content Creation | 3512 | 6538 |
Photo Editing Score | 4259 | 6186 |
Rendering and Visualization Score | 2372 | 10800 |
Video Editting Score | 4289 | 4184 |
CINEBENCH R20.060 | ||
CPU | 1935 | 2045 |
CPU (Single Core) | 462 | 418 |
3DMark Professional Edition | v2.11.6911 | v2.11.6866 |
Night Raid | 6090 | 24046 |
Graphics Score | 5980 | 36338 |
CPU Score | 6799 | 8244 |
Sky Diver | 5000 | 21755 |
Graphics Score | 4553 | 25497 |
Physics Score | 10156 | 12367 |
Combined score | 4885 | 22622 |
Time Spy | 486 | 3078 |
Graphics Score | 421 | 2855 |
CPU Score | 3950 | 5536 |
結果を見ると、比較用のPrestige-14-A10SC-165JPの結果に対して、上回っている部分がいくつか見られる。Prestige-14-A10SC-165JPにはディスクリートGPUとしてGeForce GTX 1650 with Max-Q Designを搭載しているため、グラフィックス関係のテストが大きく劣るのは当然だが、それ以外の結果については多少の優劣はあるものの、全体的にはほぼ拮抗していると言える。
Prestige-14-A10SC-165JPの結果は、動作モードがオーバークロックも駆使した最大限の性能を引き出す状態での結果であることを考慮しても、CF-LV9KDNQRに搭載されているMaxperformerの効果はかなり大きいと言っていいだろう。
続いてバッテリ駆動時間の検証だ。CF-LV9KDNQRには容量6,300mAhの大容量「バッテリーパックL」が標準で付属しており、公称の駆動時間は約18.5時間(JEITAバッテリー動作時間測定法 Ver2.0での数字)とされている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、電源モードを「より良いバッテリー」、バックライト輝度を50%に設定し、PCMark 10のBatteryテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用して計測した。
なお、今回は正常にベンチマークテストが終了しなかったため、計測状態をビデオカメラで撮影し、計測開始からスリープに落ちるまでの時間を計測している。
測定の結果は、約15時間56分だった。公称には届いていないものの、実測で16時間弱の駆動時間があればまったく不満がなく、1泊2日の出張でもACアダプタ不要で乗りきれる可能性が高いだろう。毎日のように外出先でPCを利用するモバイルワーカーにとっておおいに心強いはずだ。
ビジネスモバイルPCとして魅力は申し分ないが、個人ユーザーにとって価格は厳しい
CF-LV9KDNQRは、筐体などは従来モデルをベースとして、第10世代Core i7や、CPUの性能を最大限引き出すMaxperformer、Wi-Fi 6などの最新スペックを採用した、いわゆるマイナーバージョンアップモデルだ。
とはいえ、性能面の強化はかなり大きく、レッツノートシリーズがターゲットとしているビジネスユーザーにとって、より仕事を快適にこなせるという意味で、進化度の合いはフルモデルチェンジに近いものと感じる。
また、新型コロナウイルス感染拡大以降はテレワークを採用する企業が増えているが、ビデオ会議などを行なうにはPCに比較的高い処理能力が求められることもあり、その点でも性能面の強化は大きな魅力となるだろう。圧倒的な長時間駆動や扱いやすいキーボードなどの特徴もあり、ビジネスユーザーが気兼ねなく外出先で利用できるモバイルノートPCとして、おおいにおすすめできる。
ただし、気になるのは個人向けモデルの価格の高さだ。実際に同等スペックのモバイルノートPCのなかには半額程度で購入できる製品が存在していることを考えると、CF-LV9KDNQRの35万円近い価格はさすがに高すぎると感じる。もともとレッツノートシリーズは法人向けをターゲットとしているとはいえ、個人ユーザーにもファンは多く、価格についてももう少しがんばってもらいたいように思う。