Hothotレビュー
13.3型4K液晶搭載で薄さもきわめたASUS製軽量ノート「ZenBook S UX391UA」
2018年7月7日 12:00
ASUSは、ZenBookシリーズ新モデル「ZenBook S UX391UA」を発売した。2018年6月のCOMPUTEX TAIPEI 2018に合わせて発表された新製品で、12.9mmの超薄型筐体に13.3型4K液晶や第8世代Core i7を搭載する、意欲的な仕様が特徴となっている。すでに発売されており、直販価格は248,184円。
薄さ12.9mm、軽さ1.08kgのスタイリッシュな薄軽筐体
以前紹介した「ZenBook 13 UX331UAL」は、1kgを切る軽さを追求したモデルとなっていた。筐体素材にマグネシウム・アルミニウム合金を採用することで軽さを追求し、携帯性が高められているが、外観からはZenBookシリーズらしさがやや失われて、どちらかというとおとなしい印象となっていた。
それに対し、今回紹介する「ZenBook S UX391UA」(以下、UX391UA)は、筐体がアルミニウム合金のユニボディとなり、天板に同心円状のヘアライン処理を施したり、側面にゴールドに輝くダイヤモンドカット加工を施すなど、ひと目でZenBookシリーズとわかるスタイリッシュな筐体となっている。
筐体デザインは好みによって評価が変わるとは思うが、多くの人がUX391UAのほうがデザイン性に優れると感じるはずだ。カラーはディープダイブブルーと呼ばれる濃紺で、落ち着いた印象だ。なお、COMPUTEX TAIPEI 2018での発表時にはブルゴーニュレッドという鮮やかなレッド筐体のモデルも発表されたが、そちらは日本での発売は未定だ。
そして、本体を見て最初に驚かされるのが、その薄さだろう。高さはわずか12.9mmと極限まで薄型化を追求。一般的なモバイルPCのキーボード側のみに匹敵するほどの薄さしかない。また、フットプリントも311×213.75mm(幅×奥行き)と、13.3型ノートPCとしてまずまずのコンパクトさとなっている。これなら、薄いブリーフケースにも余裕で収納して持ち運べるだろう。
合わせて、アルミニウム合金の筐体は剛性も優れており、液晶を閉じた状態はもちろん、液晶を開いて液晶部分のみをひねってもほとんどゆがむことなく、十分な強度が実感できる。これなら安心して持ち歩けるはずだ。
もう1つの特徴となるのがディスプレイヒンジ部の構造だ。ヒンジはディスプレイ後方よりやや内側に用意されており、ディスプレイを開くと本体後方下部にもぐり込んで、キーボード後方をリフトアップする構造となっている。ASUSはこの構造を「エルゴリフトヒンジ」と呼んでいるが、ディスプレイを開くとキーボード面に5.5度の角度が備わり、快適なタイピングが可能になるとし、底面に大きな空間が確保されることで冷却性能も高められるという。
同様の仕様を採用する競合製品も存在するが、キーボードの利便性や冷却性能を高められる、有利な仕様と言っていいだろう。
重量も1.08kgと申し分ない軽さを実現。アルミニウム合金の筐体を採用するノートPCは重量が重くなることが多いが、ZenBook 13に比べて100gほど重い程度に収められている。
近年、13.3型モバイルノートは1kgを切る軽さの製品が増えているため、それらと比べるとやや見劣りするものの、1.1kg程度ということで大きな不満は感じないはずだ。実際に手にすると、本体が薄いせいか数字ほどは軽く感じなかったものの、モバイルノートとして納得の軽さで、これなら毎日の持ち歩きも苦にならないと言える。なお、実測では約1106.5gと公称をやや上回っていた。
4K表示対応の13.3型液晶を搭載
ディスプレイは、3,840×2,160ドット(4K)表示対応の13.3型液晶を標準で搭載。標準で4K表示対応の高解像度パネルを採用する点は、UX391UAの大きな特徴だ。
パネルサイズを考えるとオーバースペックとも思えるが、画像を表示すると細部までの緻密な表示に息をのむほど。写真を趣味にしている人なら、この超高解像度表示はかなり大きな魅力になるはずだ。しかも、sRGBカバー率100%の広色域表示にも対応。発色の鮮やかさも申し分なく、ディスプレイの表示品質に不満は少ない。
また、パネル周囲のベゼル幅もせばめられており、ディスプレイ部に対する画面占有率は80%に達している。極限までの狭額縁仕様というわけではないが、本体の小型化に大きく貢献している。
さすがに13.3型で4K表示となると、等倍表示では文字サイズがかなり小さくなり、文字の視認性が低下するため、スケーリングでサイズを拡大して利用するのが基本となる。標準では300%に設定されており、200%に設定するとフルHD相当で利用可能となる。文字サイズを大きくすると表示される情報量は減るが、その加減を利用者が自由に設定できる点が、超高解像度液晶の利点だ。
パネルの種類は非公開だが、視野角は十分に広く、視点を大きく動かしても明るさや発色の変化は少ない。ただ、パネル表面は光沢処理となっており、外光の映り込みはやや気になる。
また、ディスプレイには標準でタッチパネルも搭載する。10点マルチタッチに対応しており、ウィンドウ操作などをタッチで軽快にこなせる。2in1仕様ではないが、タッチ非対応のクラムシェルノートよりも操作性に優れる点はうれしい。
バックライト内蔵のフルサイズキーボードを搭載
キーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプのキーボードを搭載する。主要キーのキーピッチは約19mmとフルピッチを確保。Enterキー付近など一部キーでピッチがせまくなっている部分もあるが、違和感なくタイピングが可能だ。
本体の薄さもあり、ストロークはかなり浅く、タッチは柔らかめという印象だが、コツコツとやや硬めのクリック感があり、打鍵感はまずまずと言ったところ。また、キートップにわずかなへこみがあり、指へのなじみも良い。キーボードバックライトも標準で内蔵しているため、暗い場所でのタイピングも問題なく行なえる。
加えて、ディスプレイを開くと本体後方がリフトアップされ、キーボード面に角度がつく点も、快適なタイピングに大きく影響している。個人的には、配列も標準的で、快適なタイピングが行なえるという印象だった。
ただし、電源ボタンがBack Spaceキーのすぐ上に配置されている点は残念に感じる。ZenBook 13でも同様だったが、この位置に電源ボタンがあると押し間違える可能性が高いだろう。とくに、標準では押すと瞬時にスリープへと移行してしまうため注意が必要だ。電源オプションで電源ボタンを押したときの動作内容を変更すればなんとかなるが、電源ボタンが長押し動作するようになっていれば、まだ気にならなかったと思うため、今後の改善を期待したい。
ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型のタッチパッドを採用。サイズは十分に大きく、ジェスチャー操作にも対応しており、快適な利用が可能だった。ただ、個人的にはクリック操作時のカチカチという音の大きさがやや気になったが、全体的には大きな不満なく利用できた。
なお、タッチパッド右上隅にはWindows Hello対応の指紋認証センサーを搭載している。この部分はタッチパッドとして動作しないものの、操作時に気になることはなかった。
ポートは必要最小限も、Thunderbolt 3×2で拡張性は十分
UX391UAは極限まで薄さを追求しつつも、トップクラスのスペックを搭載している点も大きな魅力の1つだ。搭載CPUは、Core i7-8550Uで、メインメモリは標準でLPDDR3-2133を16GB搭載。内蔵ストレージも容量1TBのPCIe接続SSDを標準で搭載するなど、スペック面はかなり贅沢なものとなっている。
無線機能はIEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠無線LAN(2×2)とBluetooth 4.1を搭載。ディスプレイ上部には92万画素Webカメラも搭載している。
側面ポートは、左側面にUSB 3.1 Gen1 USB Type-C×1を、右側面にThunderbolt 3×2とオーディオジャックを用意する。USB Type-AポートやHDMIなどは搭載されず、ポートは必要最小限という印象だ。
このあたりは、極限まで薄型を追求したことによる影響だろう。それでも、Thunderbolt 3が2ポート用意されているため、拡張性は申し分ないと言える。また、標準でHDMIとUSB 3.0を備える小型のポートリプリケータ「ASUSミニドック」が付属しており、映像出力やUSB周辺機器も別途変換アダプタを用意することなく利用可能だ。
このほか、底面に高音質ステレオスピーカーを搭載。このスピーカーの音質は、ボリュームを上げても音が割れず、超薄型筐体とは思えないほどに優れている。これなら、音楽鑑賞にも十分に堪えられそうだ。
付属ACアダプタはケーブル直結型のUSB PD準拠(出力65W)アダプタで、本体のUSB Type-Cに接続して利用する。本体にはUSB 3.1 Gen1とThunderbolt 3×2と3つのUSB Type-Cを備えるが、そのすべてがUSB PDに対応しているため、どのポートに接続しても給電や内蔵バッテリの充電が可能だ。
ACアダプタは比較的コンパクトだが、電源プラグが収納型ではない点は少々残念。重量は実測で214gだった。このほか、製品には専用のスリーブケースも付属する。
薄型化の影響かサーマルスロットリングの影響が見られる
では、ベンチマークテストの結果を紹介していこう。
今回利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 10 vv1.1.1722」、「PCMark 8 v2.8.704」、「3DMark Professional Edition v2.5.5029」、Maxonの「CINEBENCH R15.0」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の5種類。比較用として、ASUSの「ZenBook 13 UX331UAL」の結果も加えてある。
ZenBook S UX391UA | ZenBook 13 UX331UAL | |
---|---|---|
CPU | Core i7-8550U(1.8~4GHz) | Core i5-8250U(1.6~3.4GHz) |
GPU | Intel UHD Graphics 620 | |
メモリ | LPDDR3-2133 SDRAM 16GB | LPDDR3-2133 SDRAM 8GB |
ストレージ | 1TB SSD(PCIe) | 512GB SSD(SATA) |
OS | Windows 10 Home 64bit | |
PCMark 10 | v1.1.1722 | v1.0.1493 |
PCMark 10 Score | 3,523 | 3,604 |
Essentials | 7,264 | 7,956 |
App Start-up Score | 7,783 | 9,764 |
Video Conferencing Score | 7,214 | 7,171 |
Web Browsing Score | 6,829 | 7,194 |
Productivity | 5,546 | 5,945 |
Spreadsheets Score | 6,945 | 7,162 |
Writing Score | 4,430 | 4,936 |
Digital Content Creation | 2,947 | 2,686 |
Photo Editing Score | 3,350 | 3,271 |
Rendering and Visualization Score | 2,051 | 1,699 |
Video Editting Score | 3,728 | 3,488 |
PCMark 8 | v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 3,022 | 3,136 |
Creative accelarated 3.0 | 4,572 | 3,406 |
Work accelarated 2.0 | 3,723 | 4,262 |
Storage | 5,030 | 4,951 |
CINEBENCH R15.0 | ||
OpenGL (fps) | 52.85 | 54.78 |
CPU | 631 | 597 |
CPU (Single Core) | 165 | 142 |
3DMark Professional Edition | v2.5.5029 | v2.4.4264 |
Cloud Gate | 7,712 | 8,469 |
Graphics Score | 8,032 | 9,825 |
Physics Score | 6,771 | 5,712 |
Sky Diver | 3,879 | 4,724 |
Graphics Score | 3,462 | 4,440 |
Physics Score | 8,274 | 7,619 |
Combined score | 4,344 | 4,336 |
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク | ||
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) | 4,236 | 4,170 |
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC) | 2,406 | 2,294 |
結果を見ると、Core i5-8250U搭載のZenBook 13に対して結果はおおむね上回っているが、細かく見るとスコアが劣っている部分もあり、やや物足りなさを感じる。
CPUの熱は空冷ファンで冷却されるようになっているが、ベンチマークテスト実行中などの高負荷時には、本体底面やキーボード後方がかなり高温となり、キーボード後方では40℃を超える温度となっていた。ベンチマークテスト中のCPUの動作クロック推移を見ても、クロックが低下する場面が見られるため、おそらくサーマルスロットリングの影響によるものと考えられる。
近くにファンを置いて強制的に冷却すれば、より高い性能を引き出せる可能性もあるが、このあたりは薄型化を突き詰めた影響と言えそうだ。それでも、よほど長時間、高負荷な状態が続くような作業を行なわないかぎり、大きな問題とはならないだろう。
ちなみに、高負荷時にキーボード後方が高温にはなるが、キーボード上は温かいと感じる程度で、それほど高温とはならないため、不快感は感じなかった。
また、空冷ファンの動作音は標準ではやや大きめで気になるが、専用ツールでファンの動作音を低減する「Quiet Fan」モードに切り替えれば、ファンの動作音がほぼ気にならないレベルとなる。利用環境に応じてモードを切り替えることで、静かな場所でもためらうことなく利用できるはずだ。
次にバッテリ駆動時間だ。UX391UAの公称の駆動時間は約11.2時間JEITAバッテリ動作時間測定法 Ver2.0での数字)とされている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、電源モードを「(バッテリー)より良いバッテリー」、バックライト輝度を50%、キーボードバックライトを消灯に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約7時間16分を記録した。
公称より4時間ほど短いが、計測条件を考えるとまずまず納得できる。とくにUX391UAのディスプレイは輝度を50%以下にしても十分な明るさのため、輝度を落とすことでさらに駆動時間を延ばせるはずで、十分満足できる駆動時間が確保できると考えていいだろう。
性能と携帯性のバランスに優れるモバイルノートを探している人におすすめ
UX391UAは、超薄型でスタイリッシュな軽量筐体に加え、タッチ対応の13.3型4Kディスプレイや、第8世代Core i7、16GBのメモリや1TBのSSDの標準搭載、実働7時間超の駆動など、携帯性や性能も充実した仕様が大きな魅力となる。
電源ボタンの仕様や、放熱能力の弱さなど、一部に気になる点もあるが、全体的にはよくまとまった製品と言える。そのため、毎日持ち歩ける携帯性に加えて、仕様面も充実したモバイルノートを探している人におすすめしたい。