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VR空間を歩き回れるスタンドアロンのHMD「Lenovo Mirage Solo with Daydream」実機レビュー
2018年5月5日 01:00
レノボ・ジャパンはスタンドアロン型VRデバイス「Lenovo Mirage Solo with Daydream」とVRコンテンツ撮影用デジタルカメラ「Lenovo Mirage Camera with Daydream」を4月24日に発表・予約を開始し、5月11日に販売を開始する。
Mirage SoloはGoogleのVRプラットフォーム「Daydream」に対応したスタンドアロン型VRデバイスとして世界初の製品。前面の2つのカメラを使ったインサイドアウト方式のセンサー技術「WorldSense」により「6DoF(6自由度)」に対応。VR空間で歩き回ったり、しゃがんだり、ジャンプしたりといった自由なアクションを可能にしている。
今回レノボ・ジャパンより実機を借用したので、Mirage Soloの詳細レビューを中心に、Mirage Cameraの使い勝手や画質についてもお伝えしよう。
OSはAndroidベース、構成パーツはほぼスマートフォンと同じ
Mirage Soloは、OSに「Daydream 2.0」を採用。CPUは「Qualcomm APQ8098」(8コア、最大2.45GHz)、メモリは4GB(LPDDR4)、ストレージは64GB(eMMC)を搭載。ディスプレイは5.5型IPS液晶パネル(2,560×1,440ドット)が採用されており、非球面フレネルレンズにより110度のFOV(視野角)が確保されている。
センサーは、WorldSense対応デュアル・モーション・トラッキング・カメラ、ジャイロセンサー、加速度センサー、電子コンパス、近接センサーを搭載。「Oculus Rift」や「HTC Vive」、「PlayStation VR」などのアウトサイドイン方式と異なり、インサイドアウト方式のMirage Soloは外部センセーを設置する必要はない。電源を入れて、かぶるだけで、どこででもすぐVR体験できるのが最大のメリットだ。なお通信機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 5.0(BLE対応)を採用している。
インターフェイスは、USB Type-C、ヘッドフォンジャック、microSDカードスロット(最大256GB)。ボタン類は、電源ボタン、ボリュームボタン、クイックリリースボタン、ストラップ調整ダイヤルなどが用意されている。瞳孔間距離を調整する機能はない。
バッテリは4,000mAhのリチウムイオンポリマーバッテリが内蔵されており、充電時間は約3時間、連続動作時間は約3時間。バッテリが心許ないときは、モバイルバッテリなどで充電しながら使ってもいい。
本体サイズは約204.01×269.5×179.86mm、重量は約645g。本体カラーはムーンライトホワイトのみ。白い樹脂部分はアルコールでの清掃が可能。しかしカメラカバー、前面カメラ、近接センサー、レンズエリアなどはアルコールを含んだウェットティッシュなどの使用は禁止されているので注意。
Googleアカウント必須、セットアップはスマートフォンとほぼ同じ
OSにAndroidベースの「Daydream 2.0」を採用しているMirage Soloのセットアップは、Androidスマートフォンやタブレットとほぼ同じだ。流れは下記のとおり。
- 言語の選択
- Wi-Fiへの接続
- Googleアカウントでログイン
- Googleサービスに同意
- 健康と安全に同意
- 「Daydreamの最新情報の入手」を選択
- チュートリアルの開始
なお今回の借用機では、セットアップ時にヘッドセットとコントローラのアップデート(更新サイズ278.9MB)が実行された。借用機が到着したタイミングを考えると、5月11日に販売される製品版でも初回起動時にファームウェアアップデートが実行される可能性が高い。スマートフォンのテザリングではなく、ある程度高速なWi-Fi通信を利用できる環境で初回セットアップを実施したほうがいい。
借用機にファームウェアアップデートを実施したらスクリーンショットを撮影できなくなった。SNSやブログなどにスクリーンショットを投稿する方のために、撮影するための設定方法をご紹介しておこう。
- 「設定→Daydream→VR settings」で「ビルドバージョン」を7回タップする
- そうすると「設定→Daydream→VR settings」に「デベロッパー向けの設定」が現われる
- 「デベロッパー向けの設定」で「Enable VR screen recording via chords」を有効にする
上記の設定を済ませれば、大ボリューム+Daydreamボタンで動画、小ボリューム+Daydreamで静止画を記録できる。記録した動画、静止画は本体ストレージに記録されており、通知エリアの「Daydream screenshot」をタップすると確認、microSDカードへのコピー、移動、Googleフォトへのアップロードが可能だ。
6DoFのVR体験は臨場感抜群、Playストアの仕様には不満
肝心のVR体験はかなり高いレベルだ。まず装着感がいい。額に当たるフロントヘッドサポートでヘッドセットを支えているので、頭頂部にストラップがなくても前にずれてしまうことはない。約645gと決して軽くはないが、うまく重量を分散しているなという印象を受けた。頭頂部にストラップがないことで、髪型が乱れにくいという点も見逃せないポイントだ。
IPS液晶ディスプレイは2,560×1,440ドットと、Oculus RiftやHTC Viveの2,160×1,200ドットより高精細なだけに解像感は申し分ない。有機ELディスプレイに比べるともちろん輝度は落ちるが、実用十分な明るさだ。
フレームレートは最大75Hzとのことだが、遅延はほとんど気にならなかった。筆者が試用したかぎりでは、1時間程度であればVR酔いはまったく感じない。WorldSenseのポジショントラッキング性能は、アウトサイドイン方式のVRデバイスと遜色ないレベルに達していると感じた。
6DoFならではの自由度の高さは3DoFとは別物。約1.5mと移動できる距離は制限されているが、それでもVR空間のなかでしゃがんだり、登場キャラクターに近づいたりと自然な動きが再現される。スタンドアロンVRデバイスにとって、6DoF対応は大きなアドバンテージであることは間違いない。
Mirage Soloを試用したさいの最大の不満点はPlayストア。Mirage SoloのPlayストアには「メディア&エンタメ」、「アクション&冒険」、「学ぶ&調べる」、「新作&アップデート」、「その他のアプリ」、「その他のゲーム」とカテゴリ分けされてコンテンツが並んでいるが、ぱっと見ではゲームの内容はわからない。
また検索機能が搭載されていない点も不便だ。Mirage Soloの(というよりDaydreamの)PlayストアでVRコンテンツを探すのはあまりにも効率が悪いので、PCブラウザのGoogle Playで検索、リモートインストールすることを強くオススメする。
筆者は今回結構な数のVRコンテンツを試してみたが、アドベンチャーゲーム「Blade Runner: Revelations」、アクションゲーム「Rez Infinite」、アドベンチャーゲーム「Eclipse:光のエッジ」あたりを強く推したい。「Blade Runner: Revelations」は記事執筆時点では字幕が表示されない箇所もあるが日本語化されており、なによりも6DoFに対応している。980円の有料コンテンツだが、Mirage Soloを入手した方にはぜひプレイしていただきたい。
Mirage Soloでブラウザを利用する方法
Mirage Soloの「ライブラリ」にはWebブラウザは登録されていないが、「Chrome」はプリインストールされているので、下記のような手順を踏めば起動、利用が可能だ。
ただし下記の設定を行なうと、PCやスマートフォンのブラウザとまったく同じように使えてしまう。つまりパスワードを同期していれば、SNSや通販サイトなど各種Webサービスにログイン可能だ。Mirage Soloではパスワードなどは同期しない、もしくはMirage Solo自体に必ずロックをかけて利用してほしい。
- 「設定→Daydream→VR settings」と進み「ヘルプ」をクリック
- Googleアカウントにログインする(初回のみ)
- パスフレーズを入力する(初回のみ)※パスワードは同期しないこと
Mirage Soloにスマートフォン用アプリをインストールする
通常Mirage SoloではDaydream向けのPlayストアが開かれるが、下記の手順を踏めばスマートフォン用Playストアを開くことも可能だ。スマートフォン用PlayストアからはDaydream非対応のAndroidアプリをインストール、起動できる。筆者が試したかぎりでは「クロッシーロード」、「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ(デレステ)」などをプレイできた。ただしデレステはシングルタップ以外の操作はもちろん行なえない。
- 「設定→アプリと通知」から「Google Playストア」を選択
- 「ストア→アプリの詳細」を選択
- 「アイテムは見つかりませんでした」というメッセージが表示された状態でスマートフォン用Playストアが開かれるので、左上の「←」をクリック
- スマートフォン用Playストアのトップ画面が表示される
なおDaydream非対応アプリはライブラリに登録されないので、再度開くには下記のような手順が必要となる。複数の指でのタップや、ピンチイン、ピンチアウト操作はできないが、ある程度便利に活用可能だろう。
- 「設定→アプリと通知」から目的のアプリを選択
- 「ストア→アプリの詳細」を選択
- 目的のアプリがスマートフォン用Playストアで表示されるので「開く」を選択
せっかくAndroidスマートフォン用アプリの動作を確認できたので、ベンチマークも実施してみた。今回実施したのは「Geekbench 4」で、Single-Core Scoreが1,373、Multi-Core Scoreが4,264という結果だった。無理矢理Mirage Soloで動かしているのでパフォーマンスが正しく計測できていない可能性があるので、あくまで参考値として受け取ってほしい。ちなみに「AnTuTu Benchmark」の計測も実施してみたが、こちらは途中でフリーズしてしまった。
手軽にVRコンテンツを撮影できるMirage Camera
「Lenovo Mirage Camera with Daydream」はVRコンテンツ撮影用のデジタルカメラ。「Lenovo Mirage」、「with Daydream」と冠されているが、べつに専用アクセサリではない。iOS用の撮影・管理アプリも用意されており、iPhoneとスクリーンレス型VRビューワという組み合わせで、VR写真や動画を鑑賞可能だ。
Mirage Cameraはプロセッサに「Qualcomm APQ8053」(8コア、最大2.2GHz)を採用。メモリは2GB(LPDDR3)、ストレージは16GB(eMMC)を搭載しており、最大128GBまで装着可能なmicroSDカードスロットが用意されている。
OSはスペック表に記載されていないが、内蔵ストレージのファイル、フォルダ構造を見るかぎり、Androidのカスタム版が搭載されているようだ。通信機能はIEEE 802.11 a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.2(BLE対応)をサポートする。
本体サイズは約105×55×22mm、重量は約139g。バッテリは取り外し可能な2,200mAhリチウムイオンポリマーバッテリで、充電時間は約2.5時間、連続動作時間は約2時間となっている。
1,300万画素、F値2.1、固定フォーカスのカメラがデュアルで搭載されており、左右180度、上下180度で3D写真、動画を撮影できる。静止画は3,016×3,016ドット、2,320×2,320ドット、動画は3,840×2,160ドット/30fps、2,560×1,440ドット/30fps、1,920×1,080ドット/30fpsで記録可能だ。
光学式手ぶれ補正機構は搭載されていないが、ジャイロセンサー、加速度センサー、YouTube電子式6軸手ぶれ補正(EISプロセッシング)が搭載されており、ブレの少ないVR映像を撮影できると謳われている。
半天球となるものの、立体的なVR写真や動画を撮れるのは楽しい体験だ。解像度は正直物足りないが、Mirage Soloで見ればまるでその場にいるかのような臨場感を味わえる。立体VRコンテンツの撮影を3万円台の本製品で可能にした意義は大きい。
Mirage Cameraは単体、または専用アプリ「VR180」をインストールしたスマートフォンとセットで撮影する。電源をオンにしてMirage Cameraが撮影可能になるのに約15秒かかる。それでも可能なかぎりすばやく、そして気軽に撮影できるのは単体での撮影だ。
スマートフォンで専用アプリ「VR180」を立ち上げて、Mirage Cameraに接続すれば、プレビューしながら撮影できるというメリットがある。ただ半天球のカメラはそれほど構図をシビアに決める必要はないので、わざわざプレビューする必要はないと考える。
撮影時に注意していただきたいのがMirage Cameraの持ち方。普通のデジタルカメラの感覚で左右からホールドすると、指が盛大に写り込んでしまう。背面からホールドすれば写り込みは避けられるが、いっそのこと自撮り棒などを使ったほうが、気を遣わずに撮影可能だ。
なおMirage Cameraには撮影した写真、動画をアップロードする方法として、Mirage Cameraからスマートフォンに取り込んでからGoogleフォトに同期、またはYouTubeにアップロードする「Cloud Path」と、Mirage Cameraに装着していたmicroSDカードをMirage Soloに装着してGoogleフォトに同期する「Local Path」の2種類の方法がある。どちらにしてもユーザーの操作なり作業なりが必要だ。
Mirage CameraにはWi-Fi機能が搭載されており、また動画はともかく静止画のファイルサイズは約4MBとたかがしれている。撮影した写真を全自動でGoogleフォトにアップロードしていく機能がほしいところだ。
6DoF対応、かつリッチなVRコンテンツの充実に期待!
Mirage Soloは、5月2日に販売が開始されたスタンドアロン型VRデバイス「Oculus Go」(32GB版が23,800円、64GB版が29,800円)の2倍以上の価格設定だ(一体型VR HMD「Oculus Go」が23,800円で販売開始参照)。
Oculus Goは3DoF対応、Mirage Soloは6DoF対応ということで差別化は図られているが、だからこそ6DoF対応VRコンテンツの拡充は急務だ。対応コンテンツ数は1,000タイトル以上を謳うOculus Goにやや後れをとっている感がある。プラットフォーマーのGoogle、メーカーのレノボが連携して、6DoF対応コンテンツを増やすため積極的に働きかけてほしい。