山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

Google製タブレット「Pixel Tablet」の実力を試す。ライバルはずばりiPad

「Pixel Tablet」。今回購入したカラーはPorcelain。実売価格は7万9,800円から

 「Pixel Tablet」は、GoogleがPixelブランドで販売するAndroidタブレットだ。同梱の充電スピーカーホルダーと合体させることで、スマートディスプレイのように使えるなど、幅広い用途での活用を目指した1台だ。

 10型クラスのタブレットは現在、AppleのiPadシリーズの寡占状態となっている。Androidも選択肢そのものは存在しているが、特定の製品が大きなヒットを飛ばすことはなく、低価格路線のAmazonのFireタブレットが、一定のシェアを確保しているにすぎない状況だ。

 そんな中、性能的にはミドルクラスとハイエンドの中間に位置する本製品は、GoogleのPixelシリーズというブランド力もあり、大きく伸びる可能性を秘めた製品と言える。今回は、筆者が購入した128GBモデルを用い、電子書籍ユースを中心とした使い勝手をチェックする。

ライバルはずばりiPad

 まずは画面サイズがほぼ同等のApple「iPad」およびAmazon「Fire Max 11」との比較から。

製品名Pixel TabletiPad(第10世代)Fire Max 11(第13世代)
メーカーGoogleAppleAmazon
発売日2023年6月2022年10月2023年6月
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部)258×169×8.1mm248.6×179.5×7mm259.1×163.7×7.50mm
重量493g477g490g
OSAndroidiOSFire OS
CPUGoogle Tensor G2
Titan M2セキュリティ コプロセッサ
A14 Bionicチップ
6コアCPU、4コアのグラフィックス、16コアNeural Engine
8コアプロセッサ
Cortex-A78×2(最大2.2GHz)、Cortex A55×6(最大2GHz)
メモリ8GB4GB4GB
画面サイズ/解像度10.95型/2,560×1,600ドット(276ppi)10.9型/2,360×1,640ドット(264ppi)2,000×1,200ドット(213ppi)
通信方式Wi-Fi 6Wi-Fi 6Wi-Fi 6
生体認証指紋認証指紋認証指紋認証
バッテリ持続時間(メーカー公称値)最大12時間の動画ストリーミング最大10時間最大14時間、容量7,500mAh
コネクタUSB Type-CUSB Type-CUSB Type-C
スピーカー4基(本体)2基(上下)2基
メモリカード--○(最大1TB)
ワイヤレス充電---
価格(本稿執筆時点)79,800円(128GB)
92,800円(256GB)
68,800円(64GB)
92,800円(256GB)
34,980円(64GB)
39,980円(128GB)
備考充電スピーカーホルダーが付属--

※いずれもWi-Fiモデル

 本製品のライバルとなるのは、価格や画面サイズといった要素から考えると、ずばりAppleのiPadだろう。特にディスプレイまわりは、画面サイズがiPadの10.9型に対して本製品は10.95型、解像度がiPadの264ppiに対して本製品は276ppiと、非常に近い。電源ボタンと一体化した指紋認証センサーを搭載するのもそっくりだ。

 そんな本製品は、Google純正のデバイスということで、同社のスマートフォン「Pixel」シリーズと同じく、チップにGoogle Tensor G2を搭載するのが特徴だ。バリバリのハイエンドというわけではないが、8GBのメモリとともに、ローエンドのAndroidタブレットとは一線を画する設計だ。ベンチマークについては後述する。

ボディは横向きを前提としたデザインで、上部に前面カメラを搭載する
ベゼル幅は上下左右ともに均等なので縦向きの利用も支障はない。ボタン配置的にはカメラが左側に来る向きがベターだ
左が本製品、右が第10世代iPad。スペックだけ見ると似ているが見た目はかなり異なる
ベゼル幅は概ね同等といったところ
左が本製品、右がFire Max 11。こちらもライバルと言っていい製品だ
ベゼル幅はFire Max 11(右)のほうがややスリム

 一方で、iPadをはじめ他の10型クラスのタブレットとの最大の違いとして、充電スピーカーホルダーを同梱していることが挙げられる。本製品をマグネットで吸着させることで、本体の充電が行なえると同時に、スピーカーとしても利用できる。

 装着した状態では同社のスマートディスプレイ「Google Nest Hub」とそっくりで、実際にそうした使い方にも対応できるのだが、あまりそれらに興味がないユーザーにとっても、マグネットで吸着させるだけで充電できるこの設計は重宝する。吸着した瞬間にスピーカーの出力先が自動的に切り替わるギミックも面白い。

充電スピーカーホルダー。マグネットで吸着させることで充電が行なえる。スピーカーも内蔵している
ポゴピンの位置を合わせるようにして吸着させる。位置合わせの自由度が高すぎるのがやや難
合体させた状態。外見は同社のスマートディスプレイ「Google Nest Hub」とそっくりだ
付属品一覧。充電スピーカーホルダー(左下)、ACアダプタが同梱される。充電スピーカーホルダーで充電できることからケーブルは付属しない

Google Playブックスが導入済み。気になるベンチマークの値は?

 ハードウェアについてもう少し詳しく見ていこう。本製品の背面はナノセラミックコーティングが施されており、見た目は滑り止め加工を施した樹脂といった質感だ。これらに加えて丸みを帯びたデザインは、Amazonの「Fire HD 10 Plus」と酷似している。高級感はないが決してチープではなく、全体的に落ち着いた印象だ。手の脂が目立たないのもよい。

 一般的なタブレットと異なるのは、背面に充電スピーカーホルダーと接続するための端子(ポゴピン)があること、さらに目立たないながらも底面にゴム脚が付属することが挙げられる。手に持った時にそれほど気になることはなく、逆にこのゴム脚があることで、デスクや足の上に置いて使いやすいメリットがある。

 特徴的なのは電源ボタンだ。この電源ボタンは指紋認証センサーと一体化した、iPadでいうところのトップボタンと同じ機能を持っているが、突起がないどころかわずかに周囲よりも凹んでいて、本体の側面を指先で擦っても、その所在がほとんど分からない。

 一方でその隣にある音量調整ボタンはしっかり出っ張っているので、その落差が激しい。本製品は、一般的なAndroidデバイスと同様、電源ボタンと音量調整ボタン小の同時押しでスクリーンショットが取れるが、その時も電源ボタンの所在が指先だけでは分からずに迷うほどだ。使い慣れるまではやや苦労する。

背面は樹脂。高級感こそないもののチープさはなく落ち着いた印象。下段にはポゴピンが配置されている
電源ボタンはやや凹んでいる。リアカメラの突起がほとんどないのは好印象だ
上面。電源ボタンと音量調整ボタンのほか、マイク2基が配置されている
底面。左右にゴム脚が配置されているのは珍しい
左側面。USB Type-Cポートを搭載するが、充電スピーカーホルダーで充電できることもあって出番はほぼない。その両横にはスピーカーもある
右側面。スピーカーのほかマイクが配置される。マイクが多いのはスマートディスプレイとしての利用を想定したものだろう
重量は実測487g。決して軽量ではないが、10~11型タブレットとしては及第点だ

 セットアップの手順は、Androidタブレットのリファレンス機ということもあり、特に奇をてらったフローはない。ホーム画面以下および設定画面も、Android 13そのままで、特にPixelユーザーにとっては馴染みのあるUIだ。

 ただしホーム画面に配置されている時計のように、かなりクセがあるデザインも少なくないので、気になるならウィジェットを変更しておくとよいだろう。ちなみに壁紙の色などは、ボディカラーごとに異なる設定が、初期値として選択されている。

 なお本製品は、スマートディスプレイとして利用する際にはハブモードなる専用モードに切り替えるが、ハブモードのセットアップは通常のセットアップとはプロセスが分かれているので、それらを省略しても充電台およびスピーカーとしては使える。人によってはそうした用途に興味のない人もいるはずなので、セットアップの過程が分割されているのは評価できる。

ホーム画面。サイズの大きなウィジェットが配置されている。インストールしたアプリはこの画面の右側にある2画面以降に追加される
通知画面。レイアウトが異なるだけでPixelスマートフォンと酷似している
設定画面。左列の上から2つ目にある「ハブモード」は、本製品をスマートディスプレイとして使うための項目がまとめられている
指紋認証に対応。この画面からさらに指紋を追加できる

 プリインストールアプリは、Googleのアプリ以外にはほとんどないシンプルな顔ぶれだが、面白いのはGoogle Playブックスがプリインストールされていることだ。

 Google Playストアで配布されているアプリは、2022年に行なわれた規約変更により、アプリ内でのコンテンツ購入が不可能になったが、純正のGoogle Playブックスだけは例外で、アプリ内で電子書籍を購入できる。ストアとしてはあまり目立たない存在だが、本製品の購入をきっかけに電子書籍ストアを探すのであれば、有力な候補の1つになるだろう。

Google Playブックスがプリインストールされている。最近のAndroidデバイスの中でもかなりレアだ
Google Playブックスのホーム画面。アプリ内でコンテンツの購入が行なえる

 ベンチマークは、Googleの「Octane 2.0」で測定する限り、iPadより1~2割低いスコアとなっている。体感的にはサクサクと動作しており、ほぼイーブンという印象だ。

 一方で前回紹介したAmazonのFire Max 11との比較では、本製品はおよそ2倍のスコアを叩き出している。OSの違いは差し引く必要はあるが、ひとつの目安にはなるだろう。

Google Octane 2.0による比較。左から本製品が「43,570」、iPadが「57,408」、Fire Max 11が「22,060」

高解像度で実用性は高い。読書スタンドとしての活用も

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の最新号を使用し、電子書籍アプリはKindleを使用している。

 解像度は276ppiということで、表示のクオリティは十分。画面サイズも、コミックなどの見開き表示をするのに全く申し分ない。ただし前述のようにアスペクト比の関係で、iPadに比べるとページは一回り小さく表示されるので、なるべく大きく表示したい場合は要注意だ。

 ちなみに本製品に近い存在としては、AmazonのFire Max 11もあるが、こちらはアスペクト比が本製品以上に細長いことから、ページはさらに小さく表示される。11型という画面サイズに気を取られると勘違いしかねないので注意したい。

 ともあれ本製品は、画面サイズは大きく、かつ解像度も高いことから、コミックの見開き表示はもちろん、雑誌の閲覧にも向いた製品と言える。アスペクト比の関係で生じる余白も、前述のFire Max 11などに比べると目立たないので、それらが気になる人にはもってこいだろう。

 なお本製品はAndroidということで、音量調整ボタンを使ったページめくりにも対応するが、本製品は前述のように音量調整ボタンの隣に指紋認証を兼ねた電源ボタンがあり、音量調整ボタンに指を乗せていると不用意に反応することもしばしばある。実際に試した限りでは、本製品での利用はあまり現実的ではないようだ。

コミックの見開き表示にも余裕があるサイズ。左右の余白もそれほど気にならない
上が本製品、下がiPad。画面サイズは同等だが、アスペクト比の関係で本製品のほうがページが一回り小さく表示される
上が本製品、下がFire Max 11。こちらは逆に本製品のほうがページが一回り大きく表示されるという逆転現象が起こる
画質の比較。左から本製品(276ppi)、第10世代iPad(264ppi)、Fire Max 11(213ppi)。十分なクオリティだ。Fire Max 11の画質がやや低いことも分かる
雑誌コンテンツの比較。左が本製品、右がiPad。本製品のほうがページが小さく余白が大きい
左が本製品、右がFire Max 11。コミックのときと同様に本製品のほうがページが一回り大きく表示される
雑誌を見開き表示した状態での画質の比較。左から本製品(276ppi)、第10世代iPad(264ppi)、Fire Max 11(213ppi)。本製品はこれらの中でも細い線がしっかり描写されている
音量調整ボタン(左)でページめくりを行なおうとすると、右側にある指紋認証センサーに触れて反応してしまうこともしばしば

 ところで本製品は、画面の分割表示にも対応している。任意のアプリを表示した状態で、画面の下から上へとスワイプすると、分割のためのメニューが表示されるので、そこから対になるアプリを選択することで、左右に2つのアプリを並べて表示できる。

 これを用いれば、電子書籍の横にノートアプリを並べてメモを取ったり、ブラウザで情報を参照しながら読書することができる。このほか電子書籍アプリを横に2つ並べるというトリッキーなワザも可能だ。筆者にはこうしたレビューにおける画質比較くらいしか用途が思い浮かばないのだが、何か有益な使い道もあるかもしれない。

分割表示したいアプリを開いた状態で、画面下から上へとスワイプ。「分割」というアイコンをタップする
もう1つの画面に表示するアプリを選択する。表示されている履歴から選ぶ以外にランチャーから新たに起動することもできる
電子書籍アプリを横に2つ並べることもできる。左がGoogle Playブックス、右がKindle

 最後に、本製品に同梱される充電スピーカーホルダーは、電子書籍ユースで何らかの活用方法はあるだろうか。結論から言うと、デスクの前で座って読書する場合の読書スタンドとして使えるくらいで、それ以外には特にこれといった使い道はない。

 敢えて一工夫するならば、本連載で以前紹介したページめくりデバイスを組み合わせることをおすすめする。これを使えば、本製品をスタンドにセットしたまま、画面に触れずにページをめくれるので、リラックスした姿勢で読書を楽しめる。以下の動画で紹介している「GOALMU TREE」だけでなく複数の種類があるので、詳しくは過去記事を参照されたい。

以前の記事で紹介した片手用デバイス「GOALMU TREE」を使い、ページめくりを行なっている様子。ページを戻る場合はポインタの位置を動かさなくてはいけないが、リラックスしての読書には最適だ

電子書籍ユースを含めて全体的に実用性は高め

 今回は電子書籍ユースに絞って紹介したが、本製品はスマートディスプレイ用途でも実用性は十分で、なかなか魅力的な1台だ。タブレット単体では外観も含めてやや地味だが、それも狙った上でのことだろう。

 実売価格は、今回比較したiPadとほぼ同等で、ストレージ256GBのモデルは奇しくも9万2,800円で横並びだ。ただし本製品は前述のように充電スピーカーホルダーが標準で付属しており、お得感はある。

 最後に、本製品の隠れた特徴として挙げておきたいのが、ベゼルの色がほぼホワイトのモデル(Porcelain)がラインナップされていることだ。今回筆者が購入したモデルがまさにそれなのだが、最近のタブレットはベゼルがブラックのモデルばかりで、iPadも第8世代を最後に、ベゼルがホワイトのモデルはなくなってしまっている。

 こうしたことから、もしホワイトという色にこだわってタブレットを選ぶのであれば、本製品はまたとない選択肢となる可能性がある。本製品はスマートディスプレイとして常時見えた状態になっているわけで、ほかのタブレットに比べてより目に付きやすいという事情もある。これから購入する人は、そうした点も念頭に置いておくとよいかもしれない。

ちなみに背面はホワイトではなくややベージュ寄りの色だ(右はiPad)