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期待の中価格帯Androidタブレット、Galaxy Tab S9 FEとPixel Tabletを比べてみる
2023年11月7日 06:40
これまで日本市場でのAndroidタブレットは、低価格なエントリーモデルと、高価なハイエンドモデルに大きく二分されていたが、最近になり、コストパフォーマンスに優れるミドルレンジモデルも増えてきた印象だ。
特に10月に発売されたSamsungの「Galaxy Tab S9 FE」や6月に登場したGoogleの「Pixel Tablet」はその筆頭と言えるだろう。前者はWi-Fiモデルが直販で6万8,799円、Pixel Tabletは7万9,800円となっており、かなり手を出しやすい。
今までゲームやクリエイティブな作業といった比較的高負荷なアプリを動かすには10万円超えのハイエンドモデルに頼る必要があったものの、こうしたミドルレンジクラスのAndroidタブレットの登場により、状況は変わりつつある。
今回はサムスン電子ジャパンよりWi-Fiモデルの「Galaxy Tab S9 FE」を借用できたので、筆者手持ちのPixel Tabletと比較してみることにした。
両者ともに価格が近いこともあり、ミドルレンジのAndroidタブレットを求めている人にとっては、どちらを選ぶべきか気になるところだろう。
Galaxy Tab S9 FEとPixel Tabletのスペック
Galaxy Tab S9 FEとPixel Tabletの主な仕様の違いは下表にまとめた通りだ。
Samsung Galaxy Tab S9 FE (Wi-Fiモデル) | Google Pixel Tablet | |
---|---|---|
SoC | Exynos 1380 CPU:Arm Cortex-A78 2.4GHz×4 Arm Cortex-A55 2.0GHz×4 GPU:Arm Mali-G68 MP5 | Tensor G2 CPU:Arm Cortex-X1 2.85GHz×2 Arm Cortex-A78 2.35GHz×2 Arm Cortex-A55 1.8GHz×4 GPU:Arm Mali-G710 MP7 |
メモリ | 6GB | 8GB |
内蔵ストレージ | 128GB | 128GBまたは256GB |
外部ストレージ | microSDカード(最大1TB) | - |
OS | Android 13 | Android 13 |
ディスプレイ | 10.9型液晶、2,304×1,440ドット、アスペクト比16:10 | 10.95型液晶、2,560×1,600ドット、アスペクト比16:10 |
リアカメラ | 800万画素 | 800万画素 |
フロントカメラ | 1,200万画素 | 800万画素 |
無線LAN | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax) | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax) |
Bluetooth | Bluetooth 5.3 | Bluetooth 5.2 |
センサー | 加速度、ジャイロ、地磁気、ホール、照度 | 周囲光、加速度、ジャイロ、磁力、ホール |
防水・防塵 | IP68準拠 | - |
生体認証性能 | 電源ボタン一体型指紋認証センサー | 電源ボタン一体型指紋認証センサー |
外部ポート | USB 2.0 Type-C | USB 3.0 Type-C |
バッテリ容量 | 最大18時間のビデオ再生(8,000mAh) | 最大12時間の動画ストリーミング(27Wh) |
付属品 | Sペン(4,096段階の筆圧検知、50度の傾き検知に対応) | 充電スピーカー ホルダー |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 254.3×165.8×6.5mm | 258×169×8.1mm |
重量 | 約523g | 493g |
カラー | グレー、ミント、ラベンダー | Porcelain、Hazel |
価格 | 6万8,799円 | 7万9,800円 |
なお、Galaxy Tab S9 FEをメインにして比較していくので、Pixel Tabletについて詳細に知りたい方は以下の関連記事を参照されたい。
まずは、外観やサイズから比較していこう。
Galaxy Tab S9 FEは、四隅は比較的なだらかなカーブとなっているが、側面は垂直に切り落とされ、背面はフラットで、まさに板状のデザインとなっている。そのためか、手に持ったときにはややゴツゴツとした印象だ。
ボディ素材には再生アルミニウムと再生プラスチックを採用。手に触れる部分の大部分はアルミニウムで、ガンメタリック調の仕上げということもあって質感はかなり優れる印象だ。サイズは254.3×165.8×6.5mm、重量は約523g。試用機の実測の重量は520.5gだった。
対するPixel Tablet。こちらもボディ素材にリサイクルアルミニウムを採用するが、表面にナノセラミックコーティングを施すことで金属的な質感があまり感じられないこともあり、Galaxy Tab S9 FEのほうが高級感がある。ただ、側面から背面にかけてがなだらかな曲線となっていることもあって、Pixel Tabletのほうが手にした時の馴染みはいい。
サイズは258×169×8.1mm、重量は493g。フットプリント、厚さともにGalaxy Tab S9 FEのほうが小さいが、重量はPixel Tabletのほうが軽い。フットプリントはともかく厚さは並べるとかなり違うが、実際に手に持ってみると、Pixel Tabletのほうが側面のカーブで手に馴染みやすいせいか、その差はほとんど感じなかった。
ディスプレイは解像度はPixel Tablet、リフレッシュレートはGalaxy Tab S9 FEが上
Galaxy Tab S9 FEのディスプレイは、2,304×1,440ドット表示対応の10.9型液晶を採用。アスペクト比は16:10。パネルの種類は非公開だが、IPSクラスの広視野角を確保。リフレッシュレートは最大90Hzに対応しており、Web閲覧時のスクロールや動画などもなめらかに表示できる。ただ、120Hzなど、より高リフレッシュレートで表示できるディスプレイと比べると、そこまでなめらかという印象はない。
対するPixel Tabletのディスプレイは、2,560×1,600ドット表示対応の10.95型液晶。アスペクト比は16:10。こちらもパネルの種類は非公開だが、視野角はIPSクラス。ただしリフレッシュレートは最大60Hzにとどまっている。
発色性能についても、どちらも非公開。ただ、写真や動画を表示してみると、Galaxy Tab S9 FEのディスプレイのほうが発色が鮮やかで、コントラスト比も優れる印象。
写真では分かりづらいかもしれないが、Pixel Tabletも発色はなかなか鮮やかだが、Galaxy Tab S9 FEと並べるとPixel Tabletのほうが全体的に色合いがわずかに薄く感じる。ディスプレイの表示解像度はPixel Tabletのほうが上だが、発色性能やコントラスト比はGalaxy Tab S9 FEが優れると言ってよさそうだ。
ペン対応はGalaxy Tab S9 FEが圧倒
Galaxy Tab S9 FE、Pixel Tabletとも、ディスプレイはタッチ操作だけでなくペン入力にも対応している。ただ、その対応は大きく異なっている。
Galaxy Tab S9 FEには、標準で4,096段階の筆圧検知、最大50度の傾き検知に対応する「Sペン」が付属する。また、オプションとなるが、傾き検知が最大60度まで拡大した上位モデル「S Pen Creator Edition」にも対応する。
今回は、付属のSペンを試してみたが、ペンを比較的早く動かしてもペン先への追従性に優れており、非常に軽快かつなめらかな入力が可能だった。SペンはワコムのEMR技術を採用し、年々進化を続けているが、その実績と知見の積み重ねがGalaxy Tab S9 FEにもしっかり受け継がれている形だ。これならプロのイラストレーターも納得だろう。
それに対しPixel Tabletはペン対応を実現しているものの、ペンは付属せず、オプションとしてもペンは用意されない。対応するペンの規格は「USI(Universal Stylus Initiative) 2.0」で、USI 2.0対応の汎用スタイラスペンを用意すれば利用可能となる。今回は、4,096段階の筆圧検知、最大45度の傾き検知に対応する「Fire Max 11・Fire HD 10 第13世代用 スタイラスペン (Made for Amazon 認定取得)」を用意して試してみた。
利用自体はまったく問題なく、十分なめらかな書き心地で、筆圧検知も問題なかったが、ペンの動きに対してわずかに遅れて書かれていく印象。書類に指示を入れたりサインしたりといった用途ならまったく不満はないものの、ペンの動きへの追従性はSペンに劣ると感じる。
双方ともペン自体のスペックはそこまで大きな違いはない、ただ、Galaxy Tab S9 FEはペンの動きへの追従性に優れ、Sペンも標準添付となっていることから、ペン対応はGalaxy Tab S9 FEのほうが圧倒していると言える。
写真の仕上がりは甲乙付けがたいが、編集機能はPixel Tabletが有利
Galaxy Tab S9 FEのカメラは、リアカメラが800万画素、インカメラが1,200万画素で、いずれも単眼仕様となっている。対するPixel Tabletのカメラは、リアカメラ、インカメラともに800万画素の単眼仕様となる。また、いずれもインカメラはベゼル部分に搭載しており、ディスプレイにパンチホールや切り欠きは存在しない。
インカメラはGalaxy Tab S9 FEのほうが高画素の撮像素子を採用している分だけ優位と言えるが、いずれにしてもスマートフォンのカメラと比較するとやや弱い印象。それでも、タブレットのカメラとしてはどちらもほぼ標準的な仕様と言える。
タブレットにスマートフォン同様のカメラ機能を求める人は少ないと思うが、念のため主に利用すると思われるリアカメラの画質を比較してみたい。
レンズの画角は、Pixel Tabletは84度となっているが、Galaxy Tab S9 FEは非公開。実際に撮影した写真を見てみると、Pixel Tabletのほうがわずかに画角が広いようだ。
デジタルズームはGalaxy Tab S9 FEが最大4倍、Pixel Tabletが最大5倍となっている。撮像素子が約800万画素ということもあって、最大望遠ではどちらもかなりイメージがぼやけている。
写真の画質は、Galaxy Tab S9 FEのほうがやや色やコントラストを強調した写真となっている。色を盛った写真、とまでは言わないが、比較するとやや華やかな印象。ただ、花の写真のようにのっぺりとした色合いになってしまっている場合も見られる。
夜景写真は、Pixel Tabletのほうがより明るく撮影できる印象。ただ、必要以上に明るく撮影される場面もあり、夜景写真としてはGalaxy Tab S9 FEのほうが自然な印象だ。
このように、写真の仕上がりは多少異なってはいるが、双方ともタブレットのカメラとしてはなかなか高品質に撮影できている印象で、甲乙付けがたい。とは言え、どちらがいいかは好みによって変わるだろう。以下、同じ場面で撮影した双方の写真を並べるので、実際に比べてみてもらいたい。
ところで、Pixel Tabletでは、写真に写り込んだ人物や障害物を消去する「消しゴムマジック」やピンボケを修正する「ボケ補正」といった、Pixel 7シリーズとほぼ同等の各種AI編集機能が利用できるという大きな特徴がある。これらはGalaxy Tab S9 FEでは利用できないことを考えると、写真の編集機能についてはPixel Tabletが有利と言える。
サウンドは充電スピーカーホルダー付属のPixel Tabletが有利
Galaxy Tab S9 FEには、Dolby Atmos対応で、AKGブランドのデュアルステレオスピーカーが内蔵される。左右側面に搭載されており、横画面での利用時にステレオサウンドを楽しめる。
Dolby Atmos対応ということもあって、映像コンテンツなどは奥行きや広がりのあるサウンドで楽しめる。また、再生されるサウンド自体も、タブレットとしてはなかなか高音質という印象。サイズ的な余裕もあるため、スマートフォンのスピーカーに比べて大きなボリュームでも音が割れたりせずにクリアなサウンドが再生される。ただ、低音はやや弱い印象で、迫力という点ではやや物足りなく感じる。
対するPixel Tabletは、左右側面に2つずつ、4つのスピーカーを内蔵。ただしDolby Atmosには非対応で、その点はGalaxy Tab S9 FEに劣る部分だ。
再生されるサウンドは、Galaxy Tab S9 FEに負けずとも劣らない、という印象。こちらもボリュームを上げても割れたりせずクリアなサウンドが再生できるが、低音はやや弱い印象だ。
本体内蔵スピーカーの音質的には双方ともそれほど大きく変わらないが、Dolby Atmos対応という点でGalaxy Tab S9 FEのほうが有利かもしれない。
ただしPixel Tabletには、スピーカー内蔵の「充電スピーカーホルダー」が付属しており、そちらに装着すると、かなり迫力のある低音が再生されるようになる。音質的には、充電スピーカーホルダーに装着したPixel Tabletのほうが上と感じる。ただし、充電スピーカーホルダーはモノラル再生となるため、拡がりのあるサウンドは楽しめない。このあたりは痛し痒しといったところだ。
それでも、部屋でBGMを流すと言った用途にはPixel Tabletと充電スピーカーホルダーの組み合わせのほうが有利と言えそうだ。
同時に、Pixel Tabletを充電スピーカーホルダーに装着すると、スマートディスプレイ相当として動作するハブモードが利用可能となる。通常はタブレットとして利用しつつ、使わない時にはスマートディスプレイ相当として利用できるという部分は、Pixel Tabletの優位点と言っていいだろう。
パフォーマンスはPixel Tabletが上だが、大きな差ではない
では、ベンチマークテストを通してパフォーマンスを比較していこう。
まず「Geekbench 6」のCPU Benchmarkの結果だが、シングルコア、マルチコアともにPixel Tabletのほうが上回った。
搭載SoCは、Galaxy Tab S9 FEのExinos 1380に対し、Pixel TabletがGoogle独自SoCのTensor G2を採用。CPUコアの仕様や動作クロックはTensor G2のほうが上のため、結果は順当と言っていいだろう。
続いてGeekbench 6のGPUテストの結果だ。Galaxy Tab S9 FEが3,024、Pixel Tabletが4,191と、こちらもPixel Tabletが上回っている。ただ、これも搭載SoCの仕様から順当な結果と言える。
次は、「PCMark for Android」のWork 3.0 performanceの結果だ。こちらは実アプリ利用時のパフォーマンスが計測できる。
結果は以下の通りで、Galaxy Tab S9 FEのスコアが11,412だったのに対し、Pixel Tabletは10,024と、Geekbench 6とは異なりGalaxy Tab S9 FEのほうが上回った。Geekbench 6の結果は順当にPixel Tabletが上回っていたことを考えると、この結果には少々驚いた。
ただ、実際にいくつかアプリを利用してみても、双方で動作の重さなどに違いはほとんど感じられなかった。CPUやGPUの性能はPixel Tabletのほうが上回っているため、特に処理の重いアプリを利用する場合には多少の差が出るかもしれないが、通常利用時で性能差を感じることはほぼないはずだ。
次は、「3DMark」の「Wild Life」の結果だ。こちらは3Dゲームのパフォーマンスが計測できる。
結果はGalaxy Tab S9 FEが2,974だったのに対し、Pixel Tabletは6,572と、2倍以上のスコア差となった。Geekbench 6のCPUやGPUの結果はここまで大きな差ではなく、PCMarkは逆にGalaxy Tab S9 FEのほうがスコアが上回っていたほどなので、こちらの結果にも少々びっくりした。
最後に、実際のゲームのプレイ感を紹介しておく。今回は人気RPG「原神」をプレイして、そのプレイ感を確認してみた。
まずGalaxy Tab S9 FEだが、画質設定のデフォルトは画質が「低」、フレームレートが「30」fpsに設定された。この設定では特に問題なくプレイ可能だった。ただし画質を高めたり、フレームレートを高めると、かくつきやラグを感じる場面が増え、快適にはプレイしづらくなる印象だ。
また、Pixel Tabletについても、画質設定のデフォルトは画質が「低」、フレームレートが「30」fpsに設定される。もちろんこの設定では十分快適にプレイできる。また画質を「中」にしてもまずまず快適にプレイできた。とは言え、Galaxy Tab S9 FEに比べると多少はマシといったレベルで、画質やフレームレートを大きく高めると快適さが失われるのはGalaxy Tab S9 FE同様だった。
原神は、フラグシップSoCを搭載するスマートフォンでようやく快適なプレイが望める、比較的動作の重いゲームなので、Galaxy Tab S9 FEやPixel Tabletにはそもそも荷が重いと言える。それでも、画質設置を低くすればプレイできないことはなく、カジュアルに楽しめればいいというのであれば、大きな問題はなさそうだ。もちろん、多くのゲームは原神よりも動作が軽く、そういったゲームならより快適にプレイできるはずだ。
性能を取るか、ペンを取るかで選択肢は変わる
今回、Galaxy Tab S9 FEを、直接の競合と言えるPixel Tabletと比較してみた。性能面ではややPixel Tabletのほうが優位ではあるが、Galaxy Tab S9 FEにもPixel Tabletにはない魅力がある。
その1つがIP68準拠の防水防塵対応を実現している点だ。現在発売されているタブレットの中でも防水防塵性能を備える製品は非常に少なく、Galaxy Tab S9 FEはとても貴重な存在と言える。
また、ペン入力に対応するだけでなく標準でSペンが付属するという点も大きな利点。Pixel Tabletもペンには対応するが、別途用意する必要があるうえに、書き心地もGalaxy Tab S9 FEのSペンの方に軍配が上がるため、ペンを利用したい人ならGalaxy Tab S9 FEのほうが有力だろう。
このほか、ディスプレイの発色性能もPixel Tabletよりも優れていると感じる部分。動画コンテンツや写真を楽しむ場合には、Galaxy Tab S9 FEのほうがやや有利だろう。
ペン付きで防水防塵対応のGalaxy Tab S9 FEか、
性能寄りのPixel Tabletか、自分の使用目的によってどちらを選ぶかを決めたい。