Hothotレビュー
久々のGoogle純正タブレット「Pixel Tablet」の出来栄えは?
2023年6月20日 16:01
Googleは、Pixelブランドとして初となるタブレット端末「Pixel Tablet」を発売した。直販価格は7万9,800円から。今回、いち早く評価機を試用する機会を得たので、ハード面を中心に紹介する。なお、試用機は発売前の評価機のためベンチマークテストは行なえず、製品版とは仕様の異なる部分が存在する可能性がある点はご了承願いたい。
久々登場のGoogle製タブレット端末
これまでGoogleは、2012年発売の7型タブレット「Nexus 7」によって小型タブレットブームを作り出し、その後も10型タブレット「Nexus 10」や9型タブレット「Nexus 9」などを発売していた。ただ、2014年のNexus 9を最後に新機種は投入されず、Google製タブレットは市場から姿を消していた。
そしてNexus 9の登場から約9年、ついにGoogleから新たなタブレットが投入された。それが今回登場した「Pixel Tablet」だ。
タブレット市場は、長らくAppleのiPadが大きなシェアを獲得している。Androidタブレットは、コロナ禍の巣ごもり需要などもあって以前に比べてシェアを伸ばしてはいるが、依然として苦戦を強いられている。そういった中、Googleが投入するPixel Tabletには、がぜん注目が集まっている。
タブレット本体自体は、外観も含めて一般的なタブレットと大きく変わるものではない。10.95型ディスプレイを採用する本体は、サイズが258×169×8.1mm、重量が493gと、10型クラスのタブレットとして標準的な仕様だ。なお、試用機の実測の重量は490gだった。
最新のPixelスマートフォンは、背面にガラスを採用し、特徴的なPixelカメラバーを実装するなど、比較的高級感のあるデザインとなっている。
それに対しPixel Tabletは、背面にナノセラミックコーティングを施したリサイクルアルミニウムを採用する、比較的シンプルなデザインとなっている。マット調のしっとりとした背面の質感は、カメラバーを採用しないPixel 5aまでのPixel aシリーズを彷彿とさせる。カラーは、試用機のHazelと、明るいPorcelainの2色が用意される。
充電スピーカーホルダーに装着しスマートディスプレイとして利用可能
Pixel Tabletの最大の特徴となるのが、製品に付属するスピーカー内蔵のドッキングスタンド「充電スピーカーホルダー」にタブレット本体を取り付けることで、「Google Nest Hub」のような据え置き型スマートディスプレイとして活用できるという点だ。
充電スピーカーホルダーは、前傾した楕円柱の上部を斜めに切り取ったようなデザイン。PixelシリーズのケースやNestシリーズなどでおなじみのファブリック調のボディは、なかなかシックな印象だ。
タブレットを装着した状態の見た目は、Nest Hubそのものだが、サイズの近いNest Hub Maxと比べるとベゼル幅が狭く、より洗練されているように感じる。そして、画面表示がHubモードに切り替わり、Nest Hubに近い使い方が可能となる。
タブレット背面と充電スピーカーホルダーの装着面には4ピンのアクセサリコネクタを用意。双方を接続して、タブレットの内蔵バッテリを充電したり、充電スピーカーホルダーへのデータ転送やオーディオ出力などしたりできる。
タブレット本体と充電スピーカーホルダーは、マグネットで固定するようになっている。このマグネットは比較的強力で、タブレット本体を充電スピーカーホルダーにアバウトに近づけるだけで定位置へと導かれ装着できる。装着すればしっかりと固定され、多少の力ではびくともしない。タブレット部分を持って持ち上げると、充電スピーカーホルダーごと持ち上がるほどだ。タブレット本体を外す時には、両手でタブレットを持ち、下部からひねるように取り外せばいい。
Hubモードの機能は、設定メニューの「ハブモード」メニューで設定可能。たとえば、スクリーンセーバー機能としては、アートギャラリーやGoogleフォトに保存している写真のスライドショー表示、天気や時計表示などを設定できる。また、画面に表示されるHomeボタンをタップするとHomeパネルが表示され、家庭内のスマート家電などのコントロールが可能となる。
通常のタブレットとして利用したい場合には、画面下からスワイプアップするか、電源ボタンを押せばいい。あらかじめ指紋を登録しておけば、電源ボタンに触れるだけで通常のタブレット画面に切り替わる。インストールしたアプリも通常通り利用可能だ。
充電スピーカーホルダーの内蔵スピーカーは、タブレット本体のスピーカーと比べて低音成分が豊かとなり、ボリュームを上げても音が割れることがなく、迫力のあるサウンドを再生できる。タブレット本体にも4つのスピーカーを内蔵しており、それなりの再生品質を備えているものの、充電スピーカーホルダー装着時と比べるとかなり軽い音という印象だ。なお、充電スピーカーホルダーの内蔵スピーカーはモノラルのため、音の拡がりがほとんど感じなくなる点は少々残念だ。
ちなみに、Hubモードで利用時のプライバシー保護の観点から、カメラやマイクの動作をオフにする機能を用意している。画面上から下にスワイプして表示されるクイック設定パネル内に、カメラをオフにするボタンとマイクをオフにするボタンを用意。Nest Hubのように物理的なスイッチを備えているわけではないため利便性という点ではやや劣るものの、気になる人は活用するといいだろう。
また、Pixel TabletはAndroidタブレット初となるChromecast対応で、充電スピーカーホルダー装着時に限られるものの、スマートフォンなどから音楽や動画などをPixel Tabletにキャストして再生できる。
Nest HubはChromecast機能を搭載しているため、そちらに準拠しての対応と言っていいかもしれないが、画面サイズが大きくサウンドの迫力があり、動画などはスマートフォンより快適に視聴できるため、こちらもなかなか便利に利用できそうと感じた。
専用ケースはスタンド付きで充電スピーカーホルダーにも装着可能
Pixel Tabletには、周辺機器として専用ケースが用意される。この専用ケースは背面にスタンドを備えており、本体を自立させて利用できるようになる。デザイン的にも本体と合っているので、装着しても違和感がない。
加えてケースごと充電スピーカーホルダーに装着して利用することも考慮されている。スタンドはちょうど充電スピーカーホルダーの装着部に合わせた形となっており、スタンドを畳んでそのまま装着できるようになっている。もちろんアクセサリコネクタも用意しており、装着時には充電や充電スピーカーホルダーへの音声出力なども可能だ。
ただし、ケース自体の重量が結構あり、Pixel Tabletと合わせた重量は実測で732gに達する。つまりケースの重量は実測で242gということになる。携帯性はやや失われる印象だが、背面スタンドの存在で利用時の利便性が高まり、本体に傷がつきにくくなる点は魅力的。あとは1万2,800円という価格をどう考えるかだが、Pixel Tabletをより便利に、安全に活用したいと考えているなら購入する価値はありそうだ。
WQXGA表示対応の10.95型液晶ディスプレイを搭載
ディスプレイは、2,560×1,600ドット、アスペクト比16:10の10.95型液晶を採用。パネルの種類は非公開だが、IPSクラスの十分に広い視野角を備えており、どの方向からも画面を視認できる。リフレッシュレートは60Hzで、高リフレッシュレート表示には対応しない。
輝度は500cd/平方mとなかなかの明るさで、室内や屋外でもはっきり画面を視認できる。有機ELパネルのような鮮烈な鮮やかさはないものの、十分に鮮やかでメリハリのある映像を表示できる。
なお表面は光沢処理となっており、天井の照明など外光は写り込みやすいが、ノートPCなどとは使い方が異なることもあって、そこまで気にはならないだろう。
ディスプレイのベゼル幅は、特別狭いわけではないものの、タブレットとしては標準的。先にも紹介しているが、Nest Hubのような広いベゼルではないため、比較的洗練された印象だ。
スペックはPixel 7シリーズ相当
基本スペックは、Pixel 7シリーズに近いものとなっている。主な仕様は表にまとめたとおりで、SoCにはTensor G2を採用し、メモリは8GB、内蔵ストレージは128GBまたは256GBのUFS3.1。通信機能は、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)準拠の無線LANとBluetooth 5.2、超広帯域無線(UWB)を標準搭載しており、モバイル通信には非対応。
カメラは、前面、背面ともに1眼仕様で、いずれもF値2.0、画角84度のパンフォーカスレンズと1/4型800万画素センサーとの組み合わせとなる。夜景モードやトップショット、ポートレートモード、ポートレートライト、消しゴムマジックといったPixel 7シリーズに搭載される撮影機能や編集機能も備えている。
スピーカーは、左右側面に2つずつ、計4個搭載。またHub機能を有効活用できるよう、3基のマイクを搭載しており、広範囲の声を効率良く捉えられる。ノイズキャンセリング機能も搭載している。
センサー類は、環境光センサー、加速度センサー、ジャイロセンサー、磁力計、気圧計などを搭載。生体認証機能は指紋認証センサーのみを搭載しており、電源ボタン一体型となっている。
ポートはUSB 3.0 Type-Cのみを用意し、オーディオジャックや外部メモリスロットなどは非搭載。物理ボタンは、電源ボタンとボリュームボタンを用意。27Whのバッテリを内蔵しており、駆動時間はストリーミング動画連続再生で最長約12時間。
【表】Pixel Tabletの主な仕様 | |
---|---|
SoC | Google Tensor G2 |
メモリ | 8GB LPDDR5 |
内蔵ストレージ | 128GB/256GB UFS3.1 |
セキュリティチップ | Titan M2 |
OS | Android 13 |
ディスプレイ | 10.95型液晶、2,560×1,600ドット、アスペクト比16:10、輝度500nits |
背面カメラ | F値2.0、画角84度、800万画素センサー(1/4型、ピクセルピッチ1.12μm)、固定フォーカス |
前面カメラ | F値2.0、画角84度、800万画素センサー(1/4型、ピクセルピッチ1.12μm)、固定フォーカス |
無線LAN | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax) |
Bluetooth | Bluetooth 5.2 |
センサー | 環境光センサー、加速度センサー、ジャイロセンサー、磁力計、気圧計 |
防水・防塵 | 非対応 |
生体認証性能 | 電源ボタン一体型指紋認証センサー |
外部ポート | USB 3.0 Type-C |
バッテリ容量 | 27Wh |
付属品 | 充電スピーカーホルダー、電源アダプタ |
サイズ | 258×169×8.1mm |
重量 | 493g |
カラー | Porcelain、Hazel |
対応アプリの利便性は優れるが、非対応アプリの多くは横画面で全画面利用できない
Googleは、Pixel Tabletの発売に合わせて、Android OSや一部アプリをタブレットに最適化。最適化されているアプリでは、特に横画面での利用時の利便性が高められている。Google製アプリでは、Chromeやカレンダー、Gmail、Home、Meet、マップなど、よく利用するアプリのほとんどを最適化している。
たとえば、WebブラウザのChromeは、標準でPC版Chrome同等の利便性を実現。上部にタブを表示して簡単にタブを切り替えられるようになっていたり、標準でPC版サイトを表示する設定となっている。このほかのアプリも、横画面に最適化したUIが採用された。
サードパーティ製アプリでも、MicrosoftのWord、Excel、PowerPoint、OneNoteやTikTok、Netflix、Disney+などが発売時点で最適化を完了。WordやExcelなどは、PC版同等とまではいかないものの、利便性が高められている。
また、画面を2分割してアプリを横に並べて同時利用したり、Googleフォトから別アプリに写真をドラッグ&ドロップで転送するといったことも可能となっている。画面分割は分割パターンを3パターン用意している。これら機能は特に目新しいものではないかもしれないが、実際に使ってみると非常に便利と実感できる。
ただし、タブレットに最適化されているアプリはまだまだ少数だ。特にサードパーティ製アプリの対応度は低く、そういったアプリを横画面で利用した場合には、多くが画面中央部に縦長で表示されるのみとなる。TwitterやFacebookなど、比較的利用頻度の高いアプリもまだ最適化できていない。
Androidタブレットがなかなか市場を拡大できない理由の1つが、アプリのタブレット対応が進んでおらず、せっかくの大画面も有効活用できないという点だ。
GoogleがPixel Tabletを発売することで今後は状況が変わる可能性もあるが、最適化アプリの拡充如何でGoogle TabletをはじめとするAndroidタブレットの市場動向が大きく左右されるはずで、Googleによるサードパーティへの強い働きかけを含めた対応を期待したい。
Androidタブレットの将来を占う製品として注目
Pixel Tabletは、Googleが投入する久々のタブレット端末だが、タブレットに最適化されたOSまわりやアプリの利便性は、以前の製品と比べて大きく高まっていることが実感できた。
また、タブレットはスマートフォンほど継続的に利用されない傾向があるが、充電スピーカーホルダーを利用して据え置き型スマートディスプレイとしても活用できる点は、より活用の幅を広げるという意味でもよく考えられていると感じる。
充電スピーカーホルダーが付属していることや、Pixel 7相当の比較的高スペックということもあって、タブレットとしては比較的高価が、ハードウェアとしては価格に見合う魅力を十分に備えているのは間違いない。
ただ、最適化アプリの数はまだまだ少なく、アプリが拡充しない限り使う場面が限られてしまい、またすぐに使われなくなってしまう可能性も考えられる。製品を投入するということは、Googleとしてもこれからのタブレットの可能性について前向きに考えているはずで、その意味でもGoogleが先頭に立ってAndroidタブレットを盛り上げていってもらいたい。
それにより、対応アプリが拡充していけば、Pixel Tabletの魅力も高まっていくだろう。そういう意味で、今後のAndroidタブレット市場の将来を占う製品として、注目したい。