山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
リーズナブルな価格設定ながら「薄型大画面」の大本命? 「Apple iPad Air(第3世代)」
2019年4月5日 11:00
Appleの「iPad Air(第3世代)」は、10.5型のiOSタブレットだ。かつてのiPad Airシリーズの名を冠しつつ、9.7型よりもひとまわり大きい10.5型のスクリーンを備え、Apple Pencilへの対応も果たしたミドルクラスの製品である。
iPad mini(第5世代)と同時に発表された本製品は、製品名からもわかるように、しばらく途絶えていたiPad Airシリーズの後継という位置づけの製品だ。本製品の登場によって、エントリーモデルのiPadと、ハイエンドのiPad Proの間にもう1つ、ミドルクラスに当たるラインナップが加わったことになる。
同時発表されたiPad mini(第5世代)にばかり注目が集まるが、本製品はリーズナブルな価格設定ながら、薄型、かつ大画面ということで、電子書籍ユースには魅力的なモデルである。今回は、筆者が購入したWi-Fiモデルを用い、ほかの9~11型クラスのiPadの各モデルと比較しつつ、電子書籍ユースでの使い勝手を紹介する。
【お詫びと訂正】初出時に、誤ってUSB PD非対応としていました。お詫びして訂正させていただきます。
かつての10.5インチiPad Proとそっくりな外観
まずはほかの9~11型クラスのiPadとの比較から。
iPad Air(第3世代) | 10.5インチiPad Pro | 11インチiPad Pro | iPad(第6世代) | |
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発売 | 2019年3月 | 2017年6月 | 2018年11月 | 2018年3月 |
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部) | 250.6×174.1×6.1mm | 250.6×174.1×6.1mm | 247.6×178.5×5.9mm | 240×169.5×7.5mm |
重量 | 約456g | 約469g | 約468g | 約469g |
CPU | 64bitアーキテクチャ搭載A12 Bionicチップ Neural Engine 組み込み型M12コプロセッサ | 64bitアーキテクチャ搭載A10X Fusionチップ、組み込み型M10コプロセッサ | 64bitアーキテクチャ搭載A12X Bionicチップ Neural Engine 組み込み型M12コプロセッサ | 64bitアーキテクチャ搭載A10 Fusionチップ、組み込み型M10コプロセッサ |
メモリ | 3GB | 4GB | 4GB/6GB(1TBモデルのみ) | 2GB |
画面サイズ/解像度 | 10.5型/2,224×1,668ドット(264ppi) | 10.5型/2,224×1,668ドット(264ppi) | 11型/2,388×1,668ドット(264ppi) | 9.7型/2,048×1,536ドット(264ppi) |
通信方式 | IEEE 802.11a/b/g/n/ac | IEEE 802.11a/b/g/n/ac | IEEE 802.11a/b/g/n/ac | IEEE 802.11a/b/g/n/ac |
バッテリー持続時間(メーカー公称値) | 最大10時間 | 最大10時間 | 最大10時間 | 最大10時間 |
スピーカー | 2基 | 4基 | 4基 | 2基 |
Smart Connector | ○ | ○ | ○ | - |
Apple Pencil対応 | ○(第1世代) | ○(第1世代) | ○(第2世代) | ○(第1世代) |
価格(発売時) | 54,800円(64GB) 71,800円(256GB) | 69,800円(64GB) 80,800円(256GB) 102,800円(512GB) | 89,800円(64GB) 106,800円(256GB) 128,800円(512GB) 172,800円(1TB) | 37,800円(32GB) 48,800円(128GB) |
この表からもわかるように、本製品は先日まで販売されていた10.5インチiPad Proと、ボディサイズや画面サイズ、解像度が同一だ。Smart Connectorの搭載や、第1世代のApple Pencilに対応する点も同様だ。ちなみにSmart Keyboardは、10.5インチiPad Pro用のものがそのまま対応する。
10.5インチiPad Proは2年前のモデルということもあり、CPUはA10XからA12へと進化しているが、一方でメモリは4GBから3GBへと減っている。つまりプラスもマイナスもあるのだが、価格は69,800円から54,800円へと大幅に引き下げられており(64GBモデル)、お買い得感は逆に増した印象だ。
強みとして挙げられるのは重量で、iPad(第5世代、第6世代)10.5インチiPad Proがいずれも約469gだったところ、本製品は約456gと、わずか14gとはいえそれを下回っている。かつての9.7インチiPad Pro(437g)には及ばないが、現行の10型前後のモデルの中で軽さを優先するならば最良の選択肢となる。電子書籍ユースであればなおさらだ。
なお厚みについては、本製品は薄型モデルの代名詞とも言える「Air」という名前を冠してはいるものの、エントリーモデルのiPadより薄いだけで、同時発売のiPad mini(第5世代)と変わらず(6.1mm)、11インチiPad Pro(5.9mm)よりも厚みがある。ただこれはあくまで比較上というだけで、タブレット全般で見ると薄い部類に入るのは間違いない。
同等サイズのiPadの中でもコスパは傑出
本製品は初代iPadから続く、物理的なホームボタンを搭載している。認証方式は、iPad Proに採用されているFace IDではなく、Touch IDによる指紋認証だ。
Face IDは認証方式としてはスマートな反面、カメラ部をうっかり手で覆っていた場合など、失敗の確率はそれなりに高い。Touch IDはボタンが必要なぶんベゼル部に幅が必要だが、確実性は高い。特に本製品を電子書籍ユースで使う場合、画面を横向きにすることが多いので、持った手でそのままロックを解除できるのは利点だ。
また、横向きにした時に画面左右に一定の余白があるのは、持ちやすさという意味ではむしろプラスである。もちろんそのぶんボディの横幅が広くなるので、そちらを重視するか否かで変わってくるのだが、こと電子書籍ユースにおいては、このことが有利に働いている印象はある。
細かいポイントとして、かつての10.5インチiPad Pro、および現行の11インチiPad Proと違い、カメラが突出しないことが挙げられる。そのぶんカメラのスペック自体は控えめだが、そもそもiPadではカメラは使わない人は多いはずで(筆者もその一人である)、カメラの段差によって生じるガタつきや、デスク面に置いた時のキズを気にせず扱えるのはプラスだ。
これ以外で気になるポイントは、スピーカーが4基ではなく2基であることだ。エントリーモデルの第6世代iPadも本製品と同じく2基なのだが、前述の10.5インチiPad Proや、iPad Airシリーズでは先代に当たる「iPad Air 2」は4基だっただけに、若干気になるポイントではある。
とはいえ、Bluetoothなどで外部スピーカーやヘッドフォンに接続する人にとっては気にならないだろうし、また本製品は代わりにイヤフォンジャックを備えるという利点もある。内蔵スピーカーを使うか否か、イヤフォンジャックが必要かどうかで、評価が分かれるポイントだ。
ベンチマークについては、「Sling Shot Extreme」によるスコアは、11インチiPad Proの「7291」に対し、本製品は「4877」。これだけ見るとかなりの差があるが、エントリーモデルの第6世代iPadは「2856」ということで、価格を考えるとむしろ善戦している。コストパフォーマンスに傑出したモデルなのは間違いないだろう。
縦向きでは11インチiPad Proより表示が大きいケースも
続いて電子書籍ユースにおける使い勝手を見ていこう。表示サンプルは、コミックはうめ著「大東京トイボックス 1巻」、雑誌については「DOS/V POWER REPORT」の最新号を使用している。
264ppiという本製品の解像度は、9~11型のiPadの各モデルとまったく同じだ。それゆえ画質については横並びで、実際に電子書籍のコンテンツを表示しても特に不満はない。コミックの見開き表示や、雑誌など大判のコンテンツの表示にも向いており、注釈などの細かい文字も問題なく表示できる。
画面サイズは10.5型ということで、11インチiPad Proよりひとまわり小さいが、ここで注意したいのが、表示サイズは本製品のほうがほんのわずかに上回るケースがあることだ。
なぜなら、11インチiPad Proはアスペクト比4:3よりもわずかに細長いため、画面を縦向きにして一般的な電子書籍のページを表示すると、上下に余白ができてしまう。本製品はほぼ画面ぴったりに表示されるので、並べるとわずかに本製品のほうが大きく表示される場合があるのだ。
もっともこれは、画面が「縦向き」の場合に限られるようだ。11インチiPad Proが発売された直後はまだアプリの最適化が進んでおらず、横向き表示でも同様の現象が見られたのだが、その後電子書籍アプリの表示の最適化が進んだようで、今回国内の主要な電子書籍ストア8社のアプリでチェックしたかぎりでは、横向きではこうした症状は見られなかった。
以上のように、電子書籍ユースで極めて使い勝手がよいのだが、数日間使ってみて個人的に最大のメリットだと痛感したのが、画面のサイズでも解像度でも本体の軽さでもなく、先ほども述べた「背面のカメラが突出していない」という事実だ。
かつて筆者は9.7インチiPad Pro、および10.5インチiPad Proを電子書籍端末として使い始めたものの、しばらくしてそれ以前に使っていたiPad mini 4に舞い戻った経緯がある。というのも、夜中にベッドサイドで読書していて、そのまま無造作に置いて就寝した場合、カメラの突起でテーブルに傷をつけかねず、非常に危険だったからだ。
カメラの突起がなくフラットな本製品はこうした恐れがないため、眠気混じりで扱ってもうっかりキズをつけることがない。電子書籍ユースに限らず、こうしたタブレットやスマホはちょっとしたことで利用頻度はがらりと変わったりするわけだが、その典型とも言えるケースだ。
電子書籍ユースはもちろん汎用性の高さでも文句のない1台
本製品の登場と時を同じくして、昨年秋の新iPad Pro登場後も引き続き販売されていた10.5インチiPad Proは、同社のラインナップから姿を消した。これにより、現在販売されているiPad Proは、ホームボタンがなく上下左右のベゼル幅が均一なモデルのみとなった。
また今回のラインナップ再編ですべてのiPadがApple Pencilに対応したわけだが、iPad Proは第2世代のApple Pencil、それ以外のiPadは第1世代のApple Pencilという線引きがなされた。つまりベゼルまわりのデザインも、ホームボタンの有無も、またApple Pencilの世代も、「Pro」と「それ以外」で、はっきりわかれる形となったわけだ。
本製品はその「それ以外」の中で最上位に当たるわけだが、電子書籍ユースで言うと、本製品と同時発売のiPad mini(第5世代)が直接のライバルとなる。片手持ちと可搬性にこだわるならiPad mini(第5世代)、画面の広さにこだわるならば本製品を選ぶのが適切だろう。画面サイズ以外のスペックはほぼ共通なので、そうした意味でも選びやすい。
とはいえ、電子書籍以外も視野に入れて考えるならば、画面サイズの小ささゆえ用途が限られるiPad mini(第5世代)よりも、十分な画面サイズを備え、かつSmart Keyboardなどの拡張性にも富んだ本製品のほうが、さまざまな用途でフィットする可能性は高い。現実的に製品を選ぶ場合、電子書籍だけが目的というケースは考えにくいだけに、こうした視点は自ずから必要となる。
価格についても、同じ「Wi-Fiモデルの64GB」で比較した場合、iPad mini(第5世代)の45,800円に対し、本製品は54,800円(いずれも税別)と、甲乙つけがたい。また「汎用性が高く高性能なタブレットがほしいが、さすがに11インチiPad Pro(89,800円)となると予算的に厳しい」と考えるユーザーからも、人気を集めそうだ。