山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

リーズナブルな価格設定ながら「薄型大画面」の大本命? 「Apple iPad Air(第3世代)」

iPad Air(第3世代)。「10.5インチiPad Air」という表記も見られるが、公式な呼び名はこちらが正しいようだ

 Appleの「iPad Air(第3世代)」は、10.5型のiOSタブレットだ。かつてのiPad Airシリーズの名を冠しつつ、9.7型よりもひとまわり大きい10.5型のスクリーンを備え、Apple Pencilへの対応も果たしたミドルクラスの製品である。

 iPad mini(第5世代)と同時に発表された本製品は、製品名からもわかるように、しばらく途絶えていたiPad Airシリーズの後継という位置づけの製品だ。本製品の登場によって、エントリーモデルのiPadと、ハイエンドのiPad Proの間にもう1つ、ミドルクラスに当たるラインナップが加わったことになる。

 同時発表されたiPad mini(第5世代)にばかり注目が集まるが、本製品はリーズナブルな価格設定ながら、薄型、かつ大画面ということで、電子書籍ユースには魅力的なモデルである。今回は、筆者が購入したWi-Fiモデルを用い、ほかの9~11型クラスのiPadの各モデルと比較しつつ、電子書籍ユースでの使い勝手を紹介する。

縦向きに表示した状態。初代iPad以来の伝統となる、ホームボタンのあるデザイン
横向きに表示した状態。外観はかつての10.5インチiPad Proとそっくりだ
上面にカメラ、側面に音量ボタン、背面にカメラという配置は10.5インチiPad Proと同じだが、カメラは突起のないタイプに変更されている
イヤフォンジャックも変わらず搭載されている。10.5インチiPad Proと異なり、スピーカーは4基から2基へと減っている
コネクタはLightning。iPad Proと異なりUSB PD準拠の高速充電には対応しない
背面。ゴールドの色合いは、かつての10.5インチiPad Proとは異なる、やや赤みがかったタイプ

かつての10.5インチiPad Proとそっくりな外観

 まずはほかの9~11型クラスのiPadとの比較から。

iPad Air(第3世代)10.5インチiPad Pro11インチiPad ProiPad(第6世代)
発売2019年3月2017年6月2018年11月2018年3月
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部)250.6×174.1×6.1mm250.6×174.1×6.1mm247.6×178.5×5.9mm240×169.5×7.5mm
重量約456g約469g約468g約469g
CPU64bitアーキテクチャ搭載A12 Bionicチップ
Neural Engine
組み込み型M12コプロセッサ
64bitアーキテクチャ搭載A10X Fusionチップ、組み込み型M10コプロセッサ64bitアーキテクチャ搭載A12X Bionicチップ
Neural Engine
組み込み型M12コプロセッサ
64bitアーキテクチャ搭載A10 Fusionチップ、組み込み型M10コプロセッサ
メモリ3GB4GB4GB/6GB(1TBモデルのみ)2GB
画面サイズ/解像度10.5型/2,224×1,668ドット(264ppi)10.5型/2,224×1,668ドット(264ppi)11型/2,388×1,668ドット(264ppi)9.7型/2,048×1,536ドット(264ppi)
通信方式IEEE 802.11a/b/g/n/acIEEE 802.11a/b/g/n/acIEEE 802.11a/b/g/n/acIEEE 802.11a/b/g/n/ac
バッテリー持続時間(メーカー公称値)最大10時間最大10時間最大10時間最大10時間
スピーカー2基4基4基2基
Smart Connector-
Apple Pencil対応○(第1世代)○(第1世代)○(第2世代)○(第1世代)
価格(発売時)54,800円(64GB)
71,800円(256GB)
69,800円(64GB)
80,800円(256GB)
102,800円(512GB)
89,800円(64GB)
106,800円(256GB)
128,800円(512GB)
172,800円(1TB)
37,800円(32GB)
48,800円(128GB)

 この表からもわかるように、本製品は先日まで販売されていた10.5インチiPad Proと、ボディサイズや画面サイズ、解像度が同一だ。Smart Connectorの搭載や、第1世代のApple Pencilに対応する点も同様だ。ちなみにSmart Keyboardは、10.5インチiPad Pro用のものがそのまま対応する。

 10.5インチiPad Proは2年前のモデルということもあり、CPUはA10XからA12へと進化しているが、一方でメモリは4GBから3GBへと減っている。つまりプラスもマイナスもあるのだが、価格は69,800円から54,800円へと大幅に引き下げられており(64GBモデル)、お買い得感は逆に増した印象だ。

 強みとして挙げられるのは重量で、iPad(第5世代、第6世代)10.5インチiPad Proがいずれも約469gだったところ、本製品は約456gと、わずか14gとはいえそれを下回っている。かつての9.7インチiPad Pro(437g)には及ばないが、現行の10型前後のモデルの中で軽さを優先するならば最良の選択肢となる。電子書籍ユースであればなおさらだ。

 なお厚みについては、本製品は薄型モデルの代名詞とも言える「Air」という名前を冠してはいるものの、エントリーモデルのiPadより薄いだけで、同時発売のiPad mini(第5世代)と変わらず(6.1mm)、11インチiPad Pro(5.9mm)よりも厚みがある。ただこれはあくまで比較上というだけで、タブレット全般で見ると薄い部類に入るのは間違いない。

Smart Connectorを搭載。別売のSmart Keyboardを接続できる
Apple Pencilにも対応する。iPad Pro用の第2世代ではなく、従来の第1世代モデルなので、本体に磁力で吸着させての充電には対応しない
同時発売のiPad mini(第5世代)との比較。サイズは異なるがデザイン自体はそっくりだ
厚みの比較。いずれも左側が本製品、右側が上はiPad mini(第5世代)、下は11インチiPad Pro。11インチiPad Proのみ5.9mmで、ほかは6.1mmとやや厚いが、体感での差はほぼない
ベゼルの比較。左が本製品、右がiPad mini(第5世代)。ホームボタンが配置される余白部分は、実は本製品のほうがコンパクトだ

同等サイズのiPadの中でもコスパは傑出

 本製品は初代iPadから続く、物理的なホームボタンを搭載している。認証方式は、iPad Proに採用されているFace IDではなく、Touch IDによる指紋認証だ。

 Face IDは認証方式としてはスマートな反面、カメラ部をうっかり手で覆っていた場合など、失敗の確率はそれなりに高い。Touch IDはボタンが必要なぶんベゼル部に幅が必要だが、確実性は高い。特に本製品を電子書籍ユースで使う場合、画面を横向きにすることが多いので、持った手でそのままロックを解除できるのは利点だ。

 また、横向きにした時に画面左右に一定の余白があるのは、持ちやすさという意味ではむしろプラスである。もちろんそのぶんボディの横幅が広くなるので、そちらを重視するか否かで変わってくるのだが、こと電子書籍ユースにおいては、このことが有利に働いている印象はある。

11インチiPad Pro(右)との比較。Touch IDを搭載することから、ボディサイズはむしろ本製品のほうが大きい
Touch IDによる指紋認証に対応。こちらのほうが馴染みやすいという人もいるだろう
電子書籍ユースで横向きに持つ場合、iPad Proのような極薄ベゼルの製品よりも本製品のほうが握りやすい印象だ

 細かいポイントとして、かつての10.5インチiPad Pro、および現行の11インチiPad Proと違い、カメラが突出しないことが挙げられる。そのぶんカメラのスペック自体は控えめだが、そもそもiPadではカメラは使わない人は多いはずで(筆者もその一人である)、カメラの段差によって生じるガタつきや、デスク面に置いた時のキズを気にせず扱えるのはプラスだ。

 これ以外で気になるポイントは、スピーカーが4基ではなく2基であることだ。エントリーモデルの第6世代iPadも本製品と同じく2基なのだが、前述の10.5インチiPad Proや、iPad Airシリーズでは先代に当たる「iPad Air 2」は4基だっただけに、若干気になるポイントではある。

 とはいえ、Bluetoothなどで外部スピーカーやヘッドフォンに接続する人にとっては気にならないだろうし、また本製品は代わりにイヤフォンジャックを備えるという利点もある。内蔵スピーカーを使うか否か、イヤフォンジャックが必要かどうかで、評価が分かれるポイントだ。

11インチiPad Pro(上)や、かつての10.5インチiPad Proとは異なり、カメラは突出しないタイプに変更されている
11インチiPad Pro(上)と上面を比較したところ。スピーカーは4基ではなく2基のため、この面にはスピーカーはない。一方でイヤフォンジャックを備えるのは1つの特徴だ

 ベンチマークについては、「Sling Shot Extreme」によるスコアは、11インチiPad Proの「7291」に対し、本製品は「4877」。これだけ見るとかなりの差があるが、エントリーモデルの第6世代iPadは「2856」ということで、価格を考えるとむしろ善戦している。コストパフォーマンスに傑出したモデルなのは間違いないだろう。

Sling Shot Extremeでのベンチマーク値の比較。左から11インチiPad Pro、本製品、第6世代iPad。価格を考えるとスコアは相対的に高め

縦向きでは11インチiPad Proより表示が大きいケースも

 続いて電子書籍ユースにおける使い勝手を見ていこう。表示サンプルは、コミックはうめ著「大東京トイボックス 1巻」、雑誌については「DOS/V POWER REPORT」の最新号を使用している。

 264ppiという本製品の解像度は、9~11型のiPadの各モデルとまったく同じだ。それゆえ画質については横並びで、実際に電子書籍のコンテンツを表示しても特に不満はない。コミックの見開き表示や、雑誌など大判のコンテンツの表示にも向いており、注釈などの細かい文字も問題なく表示できる。

縦向きは雑誌類の表示に最適。実物に比べるとひとまわり小さいが、快適に読書できる
横向き(見開き表示)はコミックの見開き表示に適する。iPad miniサイズだと小さく感じる場合でも、本製品のサイズならば十分だろう

 画面サイズは10.5型ということで、11インチiPad Proよりひとまわり小さいが、ここで注意したいのが、表示サイズは本製品のほうがほんのわずかに上回るケースがあることだ。

 なぜなら、11インチiPad Proはアスペクト比4:3よりもわずかに細長いため、画面を縦向きにして一般的な電子書籍のページを表示すると、上下に余白ができてしまう。本製品はほぼ画面ぴったりに表示されるので、並べるとわずかに本製品のほうが大きく表示される場合があるのだ。

 もっともこれは、画面が「縦向き」の場合に限られるようだ。11インチiPad Proが発売された直後はまだアプリの最適化が進んでおらず、横向き表示でも同様の現象が見られたのだが、その後電子書籍アプリの表示の最適化が進んだようで、今回国内の主要な電子書籍ストア8社のアプリでチェックしたかぎりでは、横向きではこうした症状は見られなかった。

同じコンテンツを、本製品(左)と11インチiPad Pro(右)とで表示したところ。画面サイズは右のほうが大きいはずだが、ページサイズでいうとほぼイーブンだ
ただし画面を横向きにしての表示は、こうした画面サイズとの逆転現象は見られず、11インチiPad Pro(上)のほうが本製品(下)よりわずかに大きい
雑誌コンテンツの注釈など細かい文字についても可読性は十分。ホームボタンのサイズと比べてみてほしい
単行本と並べたところ。コミックの単ページ表示は、本製品の画面サイズだとやや大きすぎる印象だ

 以上のように、電子書籍ユースで極めて使い勝手がよいのだが、数日間使ってみて個人的に最大のメリットだと痛感したのが、画面のサイズでも解像度でも本体の軽さでもなく、先ほども述べた「背面のカメラが突出していない」という事実だ。

 かつて筆者は9.7インチiPad Pro、および10.5インチiPad Proを電子書籍端末として使い始めたものの、しばらくしてそれ以前に使っていたiPad mini 4に舞い戻った経緯がある。というのも、夜中にベッドサイドで読書していて、そのまま無造作に置いて就寝した場合、カメラの突起でテーブルに傷をつけかねず、非常に危険だったからだ。

 カメラの突起がなくフラットな本製品はこうした恐れがないため、眠気混じりで扱ってもうっかりキズをつけることがない。電子書籍ユースに限らず、こうしたタブレットやスマホはちょっとしたことで利用頻度はがらりと変わったりするわけだが、その典型とも言えるケースだ。

カメラは突起のないフラットな仕様で、デスク上に置いた時にカメラおよびデスク側が傷つく心配がない。ちなみに上のiPad mini(第5世代)でも同じことが言える

電子書籍ユースはもちろん汎用性の高さでも文句のない1台

 本製品の登場と時を同じくして、昨年秋の新iPad Pro登場後も引き続き販売されていた10.5インチiPad Proは、同社のラインナップから姿を消した。これにより、現在販売されているiPad Proは、ホームボタンがなく上下左右のベゼル幅が均一なモデルのみとなった。

 また今回のラインナップ再編ですべてのiPadがApple Pencilに対応したわけだが、iPad Proは第2世代のApple Pencil、それ以外のiPadは第1世代のApple Pencilという線引きがなされた。つまりベゼルまわりのデザインも、ホームボタンの有無も、またApple Pencilの世代も、「Pro」と「それ以外」で、はっきりわかれる形となったわけだ。

 本製品はその「それ以外」の中で最上位に当たるわけだが、電子書籍ユースで言うと、本製品と同時発売のiPad mini(第5世代)が直接のライバルとなる。片手持ちと可搬性にこだわるならiPad mini(第5世代)、画面の広さにこだわるならば本製品を選ぶのが適切だろう。画面サイズ以外のスペックはほぼ共通なので、そうした意味でも選びやすい。

本製品(上)とiPad mini(第5世代)(下)とでコミックの見開き表示を比較した様子。前者が10.5インチ、後者が7.9インチということでかなりのサイズ差があるが、それ以外のスペックや特徴は酷似している

 とはいえ、電子書籍以外も視野に入れて考えるならば、画面サイズの小ささゆえ用途が限られるiPad mini(第5世代)よりも、十分な画面サイズを備え、かつSmart Keyboardなどの拡張性にも富んだ本製品のほうが、さまざまな用途でフィットする可能性は高い。現実的に製品を選ぶ場合、電子書籍だけが目的というケースは考えにくいだけに、こうした視点は自ずから必要となる。

 価格についても、同じ「Wi-Fiモデルの64GB」で比較した場合、iPad mini(第5世代)の45,800円に対し、本製品は54,800円(いずれも税別)と、甲乙つけがたい。また「汎用性が高く高性能なタブレットがほしいが、さすがに11インチiPad Pro(89,800円)となると予算的に厳しい」と考えるユーザーからも、人気を集めそうだ。