山田祥平のRe:config.sys

AI時代のスマートウォッチ、その丸と四角

 腕につけているだけでバイタルサインを監視し、体の活動情報を収集するスマートウォッチ。すでに時計という機能に加えて、監視するという機能を備えるようになっている。そのスマートウォッチも世代が進み、人間側の積極的な働きかけに応じるようになってきた。

バッテリあってのスマートデバイス

 Amazfitのスマートウォッチは、とにかくバッテリ持続時間の長さがうれしい。個人的に、同社の「T-Rex 3」をこの1年間使ってきたが、余裕で1週間以上のバッテリ駆動ができる。

 本当は「Balance」の軽さが気に入っていたのだが、ぼくの使い方ではわずかなところで1週間に届かなかった。日曜日の夜にフル充電すると金曜日にはバッテリが空になる。だから週末充電でことが足りるT-Rex 3を日常的に身につけてきた。

 スマートウォッチのバッテリが1週間超駆動するのと、それ未満であるのとでは使い勝手に大きな違いがでてくる。しかもぼく自身、時計は常に時刻を表示するべきだと思っているので「表示を常にオン」を有効にして使っている。時計を外してテーブルの上に置いていても時刻を表示し続けるのだ。今もこれからもそれが当たり前だと思う。ただし、ポケットの中の時計にはそれを求めはしないし、ポケットの中では消灯するのがインテリジェンスというものだ。

 でも、表示を常にオンにすることがバッテリ駆動時間に与える影響は大きい。だから、通常の「標準的な使用」でのバッテリ駆動時間スペックは「話半分」と考えればつじつまが合う。Balanceが1週間バッテリ駆動できなかったのはそのせいだ。

 丸一日使ったら必ず充電というパターンの次は、1週間使ったら必ず充電というパターンになる。3日おきに充電というのは暮らしの時間区切りとしては守りづらい。たとえばスマホは丸一日、ウォッチは丸1週間というなら受け入れられる。

 もちろん本当はもっと長いにこしたことはない。でも、1週間充電しないでも実用になるスマホの登場まではまだ時間がかかりそうだ。それに毎日充電をガマンすることでウォッチもスマホも今の重量で済んでいる。

 これが夕方にはバッテリがなくなるとか、週末に充電しても木曜日くらいには不安な残量になるというのでは使い勝手が悪い。時計の場合は就寝時にも装着したままでいたいので、寝ている時間に充電というわけにもいかず、いろいろと悩みどころが多い。

 だから確実に1週間を働き続けてくれるスマートウォッチはうれしいし、文字通り手放せない。そしてT-Rex 3はその期待に応えてくれてきた。アウトドア志向のどちらかといえばゴツいフォルムだが、背に腹は代えられない。

 そんなAmazfitが同社製品群の一部をアップデートし、2つの新製品を発売した。

 まず1つが「Balance 2」。軽快なBalanceの後継製品だ。丸いディスプレイを持つオーソドックスな腕時計型スマートウォッチだ。

 そしてもう1つが「Active 2 Square」。こちらは1.75型13:15の正方形に近いディスプレイを持つスマートウォッチだ。

 価格はそれぞれ4万3,890円と2万3,900円で、その価格差は2倍近いが、そのわりにスペックに大きな違いがない。主なところでは、搭載バッテリ量やダイビング、ゴルフ対応やMIL規格対応などの点でBalance 2は勝っている。

 個人的にはバッテリが1週間以上もつという点で間違いなくBalance 2推しなのだが、スクエアディスプレイを持つActive 2 Squareは、情報の表示という点では圧倒的に有利だ。どう考えたって丸型ディスプレイは情報表示の点で不利だ。

スマートウォッチにもAIが装備

 この2つの製品は、「Zepp Flow」に対応する。GPT-4oを統合したAI音声アシスタントだ。自然言語でAIと対話し、スマートウォッチの各機能を使うことができる。多機能なウォッチの各種機能を呼び出したり、170種類前後のスポーツから、これから始めるスポーツの測定を開始させたりすることができる。

 ボタンの長押しや時計のメニュー内での選択などでZepp Flowが起動し、ユーザーからの音声での問いかけを待つ。ここで頼みたいことを自然言語でしゃべればいい。ただ、少し間を置くように心がけないと、頭の発生をこぼす傾向にあるので注意が必要だ。

 ちなみに、このAIはクラウドサービスだ。従って、スマートウォッチはBluetoothを介して母艦であるスマホと通信し、そのスマホのインターネット接続を借りる。ウォッチにはWi-Fiも装備されているので自力でインターネットに接続してAIサービスが使えそうなものだが、それには対応できない。必ず、スマホ上のZepp Flowアプリとの連携が必要になるようだ。

 いずれにしても、このAIでできることはどんどん増えていくだろう。たとえば、今は電車の時刻を聞いても教えてくれないが、それができないままである理由が見当たらない。そして、ある程度の長い回答には、時計の小さなディスプレイであっても文字で表示されているのがありがたいし、そのディスプレイは矩形であるほうが情報量も多く役に立つのだ。

 ささいなことに思えるかもしれないが、時計は丸いという概念はもう捨てた方がいい。

丸から四角へ

 今後、スマートウォッチのAI装備もどんどん進んでいくだろう。そのときごとに、デバイスには最適だと思われるカタチがある。今まではかつての腕時計と同じようなフォルム、形状が、違和感なくずっと腕につけていられることをかなえていたのだろう。でも、次に選ぶスマートウォッチは、そのフォルムをちょっと考えた方がいいかもしれない。

 今回のBalance 2はクラシックな丸型ディスプレイを選んだが、次はどうなるか分からない。近い将来、丸いディスプレイではAIとの対話に不都合が生じるくらいになっているのは間違いない。そういう意味では今回のBalance 2で石橋を叩いて渡り、Active 2 Squareは今後の方向性を模索するというのがAmazfitの考えなのかもしれない。

 Active 2 Squareをもっと大きな画面にしなかったことも同社の感じている怖さを物語っている。本機は四角い画面をもつスマートウォッチとしては小型な部類に入る。たとえば、Apple Watch SE(第2世代)と同等のサイズ感だ。

 そしてもう1つ。Zeppに限らず、スマートウォッチのコンパニオンアプリは、収集したデータをスマホの中だけに閉じ込めずに、Webでも確認したり、データを取り出してエンドユーザー自身が分析できるようにしてほしい。足跡をWebの大きな画面で表示できれば、ゴルフの反省会、スノボ、スキーやハイキング、ウォーキングも楽しいに違いない。明日にでもできそうなそんなことにも対応を急いでほしいものだ。