山田祥平のRe:config.sys

2度目の還暦を健康に迎えるであろう時代のスマートウォッチ活用

 リアルな時代の時計と異なり、スマートウォッチはTPOに応じて異なるものをつけかえて使うのが難しい。特定のスマホと連動して活動状況を記録する宿命を持つからだ。必然的にオールマイティを求めるようになる。だからこそ、多彩なウォッチフェイスなどでデバイスの醸し出すムードを変化させて対応させる。本当にそれでいいのかなと思いながら、オーソドックスなルックスのものに落ち着いたりもする。

バッテリを気にせず丸一週間使えるスマートウォッチAmazfit Balance

 常日頃から書いたり言ったりしていることだが、24時間365日、ずっと腕に装着しているスマートウォッチも、時計を名乗るのだから、そこに視線を向けたときには時刻が分かるようになっていてほしい。それは当たり前の願望だと思う。

 だから、AMOLEDを採用した省電力スクリーンで、常時点灯をかなえるスマートウォッチは心強い。最大輝度の常時点灯状態でも1週間超のバッテリ駆動時間をかなえる製品も出てきたのはうれしい。以前紹介した「Amazfit T-Rex 2」なども、そんな製品の1つだった。

 一方、この2023年秋に発売された「Amazfit Balance」は、Amazfitの新製品でファッションカテゴリに分類されている。先のAmazfit T-Rex 2はアウトドア活動を指向したスポーツカテゴリだったので、外観などの点でも趣が異なる。いい意味で無個性で、スポーツカテゴリの製品のようなゴツゴツ感もなく、どんなシチュエーションにも溶け込みそうだ。

 この1カ月ほど、実際に試させてもらっているが、日常的な使い方で日曜日の夜に満充電にして、次の日曜日の夜の時点でも10%程度の残り容量がある。だから、普通の使い方なら日曜日の夜、寝る前の2時間ほどを充電時間にあて、満充電になったところで腕に装着し、前夜と同様に睡眠記録を取りながら新しい週をスタートするといった使い方ができる。当然、1週間未満の出張などなら充電器を携行する必要はない。

 ただし、これは本当に積極的なことは何もしない場合のバッテリ運用状況であって、内蔵GPSを使ったトレーニング計測などを繰り返せば、バッテリの消費量は増える。場合によっては1週間もたないこともある。逆に、メッセージングアプリなどの通知表示などは、多少頻繁であってもバッテリ駆動時間にはそれほど影響を与えない印象だ。

 ちなみに今週は11月23日が勤労感謝の日で休日だったので、早朝の電車で近郊の里山にでかけて、富士山と紅葉を楽しむためにちょっと歩いてきたが、そのときにエクササイズをハイキングモードにして運動測定してみた。GPSも有効にし、山頂で持参したおにぎりを口にする軽食休憩を含め、2時間ちょっとで山頂と登山口を往復した。

 記録によれば平均勾配は13%で、標高差約283mを往復したことになっている。地図での山頂標高データは634mで、計測データ的には640mだが、まずまず満足できる精度だと思う。ちなみに登山口の計測データは374mだった。

 同じルートを往復する場合は出発時に測定をスタートし、到着時に測定を終了し、再開時にまたオンにする方がいいのだが、経験的に、復路出発時に測定を再スタートするのを必ず忘れるので、測定を継続したまま休憩をとる。これは、スキーなどでゲレンデを丸1日移動しつつ、レストハウスなどで休憩をとるようなときも同様だ。とにかく移動の軌跡をあとで地図で確認したいのだ。

 そして、そのために、積極的な運動特化のモード以外に、朝起きて、電車やクルマ、飛行機などで移動し、GPS測位が不可能な場所にもそれなりの時間滞在するような行動に対応できるライフログモード、あるいは旅行モードが欲しい。これも常日頃言っていることだが、なかなかそんなモードをつけてくれるベンダーが見当たらない。

 ちなみに、今回のハイキングでは、前の日曜日の夜に充電したAmazfit Balanceをそのまま装着していった。というか、寝るときもつけっぱなしで睡眠を記録、起きてそのままでかけた。満充電ではなかったが50%は切っていたはずだ。

 この原稿を書いている金曜日の午前中現在、バッテリ残り容量は33%ある。このまま日曜日の夜まで使えるかどうかは微妙だが、ヘビーに使って残り容量が不安になったら週の途中でも充電すればいいし、何もなければそのまま使い続け、残り容量にかかわらず、日曜日の夜は必ず満充電状態に復帰させるというルールを守るようにすれば、日常のスマートウォッチのバッテリ運用にまつわるストレスはゼロになる。まして、1日のハードなアクティビティでバッテリ残り容量が途中でゼロになるといったことは起こりそうにない。

課題満載で道半ばでも将来が楽しみなGoogleヘルスコネクト

 そのネーミングからも想像できるように、Amazfit Balanceは、バランスを重視したイメージの製品で、同社スマートウォッチの中ではファッションカテゴリに分類されている。

 といっても、今のスマートウォッチのフォームファクタは、機能の違いというよりも、どちらかといえば外観の違いを指すことが多い。要求される機能等は、スポーツでもファッションでもほとんど変わらない。防水レベルだって同じだ。これはこれで踊り場状態にあるデバイスのコモディティ化にもつながる問題ではあるかもしれない。スマートウォッチどころか、廉価なスマートバンドでも、その機能に不満を感じることはほとんどないというのはナイショだ。

 さて、Amazfit Balanceの重量はバンドを含んで45g、ボディの素材はアルミニウム合金で、1.5型480×480ドットの丸型スクリーンは323ppiの解像度を持つ。このスクリーンサイズはこれまで使ってきたスマートウォッチの中でも最大級で、当然、視認性も高い。そして、AMOLEDは常時表示との親和性も確保する。

 Amazfitのスマートウォッチは、デフォルトで提供される多くのウォッチフェイスの中に、シンプルなものがそれなりにあるのを好ましく思っている。ぼくが愛用しているのは「Time: Center」と名付けられたもので、背景を好きなものに設定できるシンプルなデジタル文字盤だ。

 その名の通り、時刻を日付と曜日と並べて文字盤のセンターに配置する。それだけだ。左寄せ、右寄せ、下寄せができるレイアウトも用意され、文字色も自由指定でき、何よりも、背景を自分で設定できるので、無地の黒を確保できる。時刻の他にバッテリ容量、心拍数、気圧、高度、歩数などの中から1つだけを常時表示できる。個人的にもっとも気になるのはバッテリ残り容量なので、それを常時表示するように設定している。

 昨今の、スマートウォッチはGoogleヘルスコネクトとの連携ができるようになっている。Android専用ではあるが、フィットネスアプリや健康アプリの接続とデータを一元管理でき、スマホで稼働する各種のフィットネスアプリや健康アプリのデータを統合し、Google Fitのダッシュボードに表示することができる。

 Amazfitのスマートウォッチは、基本的にAmazfit独自のZeppアプリを使って時計との組み合わせやデータのやりとりを処理するが、Googleヘルスコネクトが介在することで、その情報をGoogle Fit上でも確認することができる。

 この連携はまだまだ未完成で、Amazfit Balanceとの間でも、GPSを明示的にオンにしてのトレーニングにおいて、Zeppアプリでしか確認できない地図による位置情報が、ウォーキングなどをスマート認識した場合にはGoogle Fitから確認できるといった不可解なことも起こるようだ。

 このウォッチ、体組成も測定できる。スポーツジムでタニタの体組成計での測定結果と比べても結果に大きな違いはない。腕につけた状態で、盤面脇の2つのボタンを指でおさえた状態でじっと待つこと約5秒間。それだけで測定できる。体脂肪や骨格筋、BMIなどを手軽に確認できるのだが、筋肉量やタンパク質量も分かる。

 体組成測定時、体重を自己申告で入力する必要があるのだが、こうしたデータをGoogleヘルスコネクト経由で、別の機器の情報から得ることができれば、健康管理はもっともっと便利で役に立つものになるだろうし、スマートウォッチが測定する各種のデータとの連携も、さらに効果的なものになるはずだ。このあたり、まだまだ道半ばと言わざるを得ないのが残念だ。

 齢を重ねると、知っておきたい身体のデータが多くなる。その種類ごとに異なる計測器を使うのはいとわないが、最終的に、それらのデータを集めて、総合的な身体の状況把握ができなければ意味がない。データ相互の相関関係だってあるはずだ。
 ベンダーがまちまちな複数のデバイスの併行運用、また、そのデータのまとめなど、Googleヘルスコネクトが目指している頂ははるか上方だが、道半ば。でも、なんとしてでも実現してほしい。こうした標準化はOSベンダーが参入し、きちんと標準化を進めないとややこしくなる。

 そしてGoogle Fitは、今はスマホアプリからしか参照できないそのデータをWebで確認できるようにし、PCの大画面でのチェックを容易にしてほしい。これは悲願だ。

 各ベンダーが独自アプリをスマホに限定するのは、センシティブなデータをWebからアクセスさせたくないというのが本音だろう。でも、専用アカウントの作成によって、各社のアプリはエンドユーザーの個人データを預かっているのだから、何とかする方法はあるはずだ。あるいはGoogleヘルスコネクトに丸投げするだけでもユーザーの利便性は高まるかもしれない。

 このあたりは、業界全体で、もっときちんと考えていってほしいと思う。毎朝血圧と体温を測って記録、睡眠状態を記録し、心拍も継続的に記録しているのに、それらのデータがバラバラなのはどうかと思う。

 それにしても、今回のハイキングで最大心拍数173を記録したのはちょっとびっくりだ。歩いているときには、息が切れるわけでもなくそんなでもなかった運動量の印象だったのだが、終わって記録を確認して驚いた。この歳になって、筋肉量を増加させようなどというのは難しそうだが、少なくとも今の筋肉量を維持し、ストレッチなどでケアしながら、昨日見た美しい富士山を、この先も見られるようにしつつ、がんばって2回目の還暦を迎えたい……。