山田祥平のRe:config.sys
ちょっと先のイヤフォンを目指す
2025年8月9日 06:00

AIとのコミュニケーションは、これからのパーソナルコンピューティングに大きな変化を与える。その歴史の中で、文字による対話から、グラフィカルなユーザーインターフェイスに変わり、今は、音声が注目されるようになっている。次世代の主力HIDはマイクとスピーカーであるという予測もある。
サウンドの透明感が高まったBoseの新型イヤフォン
BOSEのイヤフォン製品「Bose QuietComfort Ultra Earbuds」が第2世代になって新製品として登場した。初代の同イヤフォンは2023年10月の発売だったので、2年を待たずしてのアップデートとなる。Ultraのつかない「Bose QuietComfort Earbuds」を起点にすれば5年が経過している。価格は3万9,600円と据え置かれている。
第2世代というので期待をしてしばらく試用させてもらっている。ボーズ史上最強のノイズキャンセリングが謳われ、ActiveSenseが訴求されている。確かにノイズキャンセリングの威力が高まっているように感じた。
以前、同社のヘッドフォンで指摘したことを覚えているが、初代までは無音の圧力のようなものが残っていたが、新しい世代ではそれが大きく軽減され、透明感の高いノイズキャンセリングが完成している。この効果は、航空機や地下鉄車内といったうるさいところではもちろんだが、比較的喧噪が少ない場所、たとえば、図書館の中などで使うと、その優しいノイズキャンセリングに救われる印象を持った。
ActiveSenseは、適応型アウェアモードの一種だとされている。「大きな環境音が発生したタイミングでノイズキャンセレーションのレベルを調整・適用し、車の騒音、コーヒーミルやコーヒーブレンダーなどのモーター音を軽減しながら、周囲の音を取り込んで音楽を再生」するという。今回、ActiveSenseが新しくなったことでアウェアモードの機能性が向上したらしい。
このイヤフォンはパッシブとアクティブの2つのノイズキャンセリングを兼ね備えている。1つは耳栓状のボディを耳穴に入れることで、物理的に耳に入るサウンドを遮断するパッシブノイズキャンセリング。もう1つは、左右イヤフォンの外側、内側に装備されたマイクで環境ノイズを検知、それらを比較することで逆位相の信号を生成してノイズを打ち消すアクティブノイズキャンセリングだ。
ノイズキャンセリングの強引さがやわらいだ印象を受けるのは、その制御のアルゴリズムが変わったことによるものかもしれない。
“これから”を見据えたアウェアモード
Bose QuietComfort Ultra Earbudsのアウェアモードは、これからのパーソナルコンピューティングを見据えようとしているような気がしている。勝手な推論かもしれないが、音楽を楽しむというイヤフォンのベーシックな使い方に加えて、再生される音楽の有無を問わず、丸一日装着しているような使い方を想定している。周囲の音がそのまま聞こえるオープンイヤータイプのデバイスがやっていることを、カナルタイプの耳栓型イヤフォンでやろうとしているのだ。
いくつかのモードがあり、通常は、クワイエットモードを使って環境ノイズをシャットアウトして音楽を楽しんできたわけだが、アウェアモードに切り替えると、周囲の音を聴きながらオーディオを楽しめる。そして、近くで急に大きな音が発生した場合に、ActiveSenseが自動的にノイズキャンセリングをオンにしてノイズによる衝撃をやわらげる。ノイズキャンセレーションレベルの変化に気付くことなく、より快適にリスニングを楽しめるようになっているのがBoseの最新のノイズキャンセリング技術だ。
音を聴いてみて変わったと思ったのは、サウンドを覆うベールが、より透明度の高いものになり、聴いているサウンドがクリアになった。このあたりの音場作りは、明らかに初代とは異なる方向性を感じる。
なぜ、Boseがこうした方向に舵をとったのかは分からない。でも、近い将来のイヤフォンの役割にちょっとした変化の兆しを見出しているように感じるのだ。
コロナが変えたコミュニケーション、次の相手はAI
新型コロナウィルスが人類を襲い、我々の暮らしや仕事に大きな影響を与えるようになったのが2020年頃だ。以降の5年間で大きく変わったのがコミュニケーションのスタイルだ。あれからすでに5年が経過してしまい、少し、状況はコロナ以前に戻りつつもあるが、オンラインコミュニケーションが新しい当たり前として受け入れられるようになり、人々は、イヤフォンをつけて長い時間を過ごすことの許容度が高まった。
そのムードに拍車をかけようとしているのがAIの台頭だ。今後、スマートフォンにおけるAI利用がもっと活発になると、この傾向は如実になるだろう。しかも相手は人間ではない。AIなのだ。
たとえばGoogle Geminiを使うには、多くの場合、電源ボタンの長押しでAIとのセッションがスタートさせる。従来はGoogleのような検索エンジンに頼ってきたようなことが、GeminiのようなAIとのチャットを使った方が求めている回答が得られることが多くなってきている。
ただ、Geminiの回答は文字で尋ねたことについては文字だけで返ってくるが、音声で尋ねたことは、その回答が文字表示されるとともに、音声でも読み上げられる。スマホのボリュームが最小限になっていればいいが、そうでなければ、声高らかに質問に対する答えが電車内などに響くことになるだろう。
だが、イヤフォンをつけていればそんなことにはならない。また、対話を続けることができるGemini Liveは、音声入力が既定値で、Androidスマホなら電源ボタンの長押しで起動し、ユーザー音声の入力を待機する。そして、その回答は音声で得られるので、たとえば、ポケットの中のスマホの電源ボタンを長押しして、イヤフォンのマイクでききたいことを尋ねれば、その回答が音声で得られるわけだ。
最初の回答では満足できない場合も、追加の質問は、トリガーとなるウェイクワードを使わずに対話を続けることができ、まるで、人間同士の普通の会話のようにコミュニケーションを進めることができる。
音楽を楽しむためのオーディオデバイスだったイヤフォンが、マイクを実装してコミュニケーションに使われるようになり、ノイズを除去する役割を担いつつ、環境音を「再生」することでオンラインとオフラインのハイブリッド空間を脳内に作りあげた。そんな時代に求められるデバイスとはという問いに対する1つの解が、今回のBose QuietComfort Ultra Earbuds(第2世代)が目指しているポジションなんじゃないだろうか。












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