山田祥平のRe:config.sys

適材適所のフォームファクタ

 PCの外観が決まるフォームファクタは重要だ。同様にPC以外に、日常的に携行するカバンでもフォームファクタはその使い勝手を左右する。特に、電気的なシカケがない雑貨では、フォームファクタの違いは機能の違いといってもいいくらいだ。

ショルダーバッグからバックパックへ

 昔は毎日の外出に、ショルダーバッグを愛用していた。だが、それではレンズ交換式の重量級カメラが必要な場合などに、別のカバンを用意する必要があり、複数の荷物を携行しなければならなくなる。それはそれで面倒に感じて、いつのころからか、外出時のカバンはバックパックを使うようになった。いわゆるリュックサック、デイパックなどと呼ばれるものでもあるが、基本的に背中に背負えるタイプのカバン全般を指すフォームファクタだ。大きめサイズのものがリュックサックやバックパックと呼ばれ、比較的小さく、1日分の装備をまとめられるものではデイパックなどと呼ばれているらしい。

 個人的に、カバン類のブランドとしては、ずっと以前から愛用しているターガスオスプレーに絶大な信頼を寄せている。それぞれが、日本の代理店の扱い商品となっている。この2社の製品は、いろいろと使ってきているが、大きく裏切られたことはない。

 街歩きではターガス、山歩きではオスプレーという、なんとなくの使い分けをしてきたが、昨今は、オスプレー製品でも、テクニカルユース以外にタウンユースを想定したものがたくさんある。PCを山歩きに持ち出すような使い方は自分くらいしかしないと思っていたが、そうでもないのかと驚く一方、よく考えたら、こういうバックパックは山で使われるとは限らないわけだ。通学や通勤で使われ、日常的にノートPCを保護しながら背中で運ぶことができるスペースが確保されていたりするわけだ。

 背中に背負うことで、両手が自由になることや、多少かさばる荷物も収納できることで、日常的にバックパックを使うようになって久しい。だが、どんなものでも背負えればそれでいいというわけじゃない。バックパックに求める条件はいくつかあって、それができるだけ理想に近いかたちで実装されていることを条件に選ぶようにしている。

バックパック、かくあるべし

 個人的にバックパックに求める条件は次の3点だ。

  1. PCを安全に収納できる保護スペースがあること
  2. A4の書類を折らずに収納できること。できれば角2封筒が入るのが望ましい
  3. 床や机上などの平面に自立すること
  4. 背中に密着して蒸れないように 背中部分にメッシュなどの加工がされていること

 日常的にショップを覗いたり、Webの広告で偶然見たり、ニュース等の情報で発売を知るなどで新製品を発見したら、これらの条件に合致するかどうかを確認し、これはと思った製品は、ショップの店頭などで実際に手に取って見るようにしている。

 上記の条件のうち、1と2については、対応製品が増えてきていて、かなり頻繁に見かけるようになった。だが、3がなかなか難しい。この仕組みを満たすために、リュックの内部構造に工夫が必要で、そのために重量が嵩んだりするからだ。でも、ぼくらのような仕事で、あちこちに取材にでかけ、傍らにリュックを自立させて、膝の上ではノートPCを広げて作業し、自立させたリュックの中からカメラを取りだして、必要に応じて撮影するといった使い方をするには、やはり自立できるリュックは便利なのだ。

 また、背中のメッシュについては、モコモコしたクッション素材で多少の通気性を確保したものはよくあるのだが、背面全体にピンと貼られたメッシュ地で、リュック本体と背中が隔離された状態で空気の通り道を確保できるものはあまりない。

お気に入りブランドの新製品発見

 オスプレーはアウトドアバックパックを50年作ってきた老舗メーカーだが、「アオエデ」という新シリーズが発売されている。ギリシャ神話の女神の名前から来たシリーズ名で、オスプレーならではの機能性や素材強度、耐久性はそのままに、クリーンでミニマルに仕上げてあり、通勤、通学などの日常使いはもちろん、出張などにも対応できる汎用性を持つシリーズだそうだ。

 そして、「アオエデ エアスピードバックパック」という製品が、この秋の新製品として発売されたことを知った。聞き慣れないシリーズ名で、検索してもなかなか情報が集まらない。

 サイズ的には48×30×20cmのリサイクル素材のバリスティックナイロン製バックパックで、容量は20L、重量は1.02kgとされている。ノートPCを持ち運び、モバイルバッテリとACアダプタ、名刺入れに折りたたみ傘程度のミニマムな荷物を携行するサイズとしてはちょうどいい。

 そして、Webの情報を見る限り、この製品が1から4の条件をすべて満たすのだ。商品名の一部として使われているエアスピードという機構は、背中とバックパックの間に空間を作り、背負い心地の快適さを導き出す。

 また、キックスタンドになるフレームがリュックの底部分に実装され、それを使ってリュック自体が自立する。ちょうどSurfaceのようなタブレットが、キックスタンドで自立するのと同じ理屈だ。オスプレーのキックスタンド内蔵リュックは、過去に2製品を持っていて現役で使っているが相当に便利なことを知っている。リュックは人間が立ったままの姿勢でファスナーを開いてメイン荷室から荷物を取り出すのがけっこうたいへんだが、床や机の上にリュックが自立するなら、荷物の出し入れも容易だ。

 どうしても実物を見て検討したかったし、2色あるうちのカラバリも気になったので、代理店に問い合わせて、都内での在庫があるショップを教えてもらったのだが、どこを訪ねてもどうにも実物を見つけることができず、代理店のオンラインストアで購入した。15時までの購入で当日発送、5,000円以上は送料無料となっていて、翌日には手元に届いた。まるでAmazonだ。しかも自己都合での返品も、送料を負担すれば可能となっているのがありがたい。

 届いたバックパックを見ると、PC用のスペースは底突きしないような袋状の加工が為されていて、ストンとPCを入れ込んでも床に当たったりしないようになっていた。だが、ストンと落とせるほどのスカスカではなく、それはちょっと窮屈で、A4のクリアファイルとあわせてのスペースとしてはちょっと使いづらく感じるかもしれない。それでもまあ納得できる。

 荷室は最外側部がメイン荷室で、その上部に小物入れ、次のファスナーがガジェット類のためのオーガナイズスペース、そして、背中側の最内側部がPC用のスペースになっている。説明通り、キックスタンドが内蔵されちゃんと自立するが、油断するとすぼんでしまうので、底部に100均で調達したアウトドア用の軽いクッションを折りたたんで入れてすぼみにくいようにした。このクッションは、大きなカメラなどをカバンに放り込んでも、緩衝材になるし、リュック自体を床に乱暴に置いても内部に衝撃を伝えないという副作用もあり重宝している。

 おおむね予想通りのフォームファクタであることを確認できたので、返品せずに使い続けることにした。

パーフェクトはいつも先送り、それが楽しい

 想定外だったのは左右両サイドに装備されたポケットだ。左が小物収納用のファスナーつきスペース、右がペットボトル用のファスナーなしスペースだ。個人的には、右肩にリュックの片肩ベルトを預け、リュック右サイドのポケットから顔を出すペットボトルをつかんで取り出し、飲料を飲んで元に戻すというのがクセになっているので、左右サイドのポケットの仕様が逆だったらよかったのにと思う。

 あとはチェストストラップがあったらもっとよかった。胸の部分で肩ベルトを固定できる補助のストラップで、肩からリュックがずれるのを抑止し、重い荷物が入っている場合にラクができる。

 もっとも、こういうことを言い始めると、タウンユースのバックパックがどんどんテクニカルユースになっていき、外見も大仰になっていくから通勤、通学用にはこの程度でよいという判断をした。それで負担を感じるなら、最初からキャスター付きのスーツケースを使えばいい。といいつつ、本当に欲を言えば、キャスタつきのスーツケースハンドルに固定できるベルトがついていればよかったのにとは思う。

 Web情報だけの衝動買いに近い買い物だったが、概ね満足な製品が入手できたと思う。バックパックのフォームファクタは、この先もずっと使い続けるだろうし、消耗品的な面もあるので、次はもっと欲も出てくるに違いない。もうこれは小学生時代のランドセルの呪縛かもしれない。持ち歩きの荷物は軽くなる一方で、カバンの役割も少しずつ変わってきているとは思うが、それでもこの分野には注目を続けたいと思っている。それに、ノートPCに加えてモバイルモニターを持ち歩きたい衝動にもかられるし……。