やじうまミニレビュー

1万5千円で持ち運びしやすく解像度も十分なモバイルディスプレイ

~JAPANNEXT「JN-MD-IPS1010HDR」を試す

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
10.1型パネルを搭載するモバイルディスプレイ「JN-MD-IPS1010HDR」があれば、モバイルノートパソコンもデュアルディスプレイに

 ノートパソコンはデスクトップパソコンと比べるとサイズが小さく、利用場所や置き場所を選ばないというメリットがある。しかし搭載する液晶パネルのサイズが小さいため、20型以上のディスプレイと組み合わせて利用することが多いデスクトップパソコンと比べると閲覧性はいまいちで、アプリを複数並べて使うことは難しい。

 とくにコンパクトで軽量なモバイルノートパソコンでは、12型や13.3型パネルを採用するモデルが主流だ。こうした小さい液晶パネルでは、個人差はあるにせよ1つのアプリをフルスクリーンで利用するのが精一杯だろう。

 しかし今回紹介するJAPANNEXTの「JN-MD-IPS1010HDR」のような“モバイル液晶ディスプレイ”を導入すれば、モバイルノートパソコンの機動性はそのままに、そうしたパネルサイズの小ささに起因する作業性の低さを補ってくれるのだ。

入力端子はUSB Type-CとMini HDMIの2系統

 JN-MD-IPS1010HDRは、10.1型の液晶パネルを搭載するコンパクトな液晶ディスプレイだ。直販サイトやAmazon.co.jpで購入でき、価格は25,970円。9月30日まではキャンペーン価格として15,970円で販売されていて、筆者もこの時期に購入したのだが、10月初旬現在もなぜか15,970円で販売されている。

 フレームの幅は狭く、サイズ感は10.1型液晶を搭載するタブレットに近い。ただ重さが約260gとかなり軽いので、手のひらに載せると中身の入っていないタブレットのような印象も受ける。サポートする解像度は1,920×1,200ドットと、このサイズの液晶ディスプレイとしてはかなり精細感がある。

実際に計測してみると259gで、おおむねスペックの数値どおりと言ってよい

 搭載するインターフェイスは、USB Type-Cが2ポートと、Mini HDMIが1ポートという構成。そのうち1つのType-CコネクタとMini HDMIがディスプレイ入力端子で、もう1つのType-CコネクタはMini HDMIを利用したときに、JN-MD-IPS1010HDRに対して電源供給を行なうための電源ポートとして利用する。

 ちょっとややこしい構成だが、裏面にはそれぞれのインターフェイスの機能が記載されているので、間違うことはないだろう。DisplayPort Alt Mode対応のType-Cを装備するパソコンなら、Type-C同士を付属のケーブル1本で接続するだけでよい。HDMIを搭載するパソコンと接続する場合は、付属のHDMI-Mini HDMIケーブルと、電源供給用のType-A-Type-Cケーブルの2本を接続しよう。

インターフェイスはType-Cが2基、Mini HDMIが1基の構成
裏面にインターフェイスの機能が印刷されている

 給電用のType-Cコネクタは、給電能力が低くDisplayPort Alt Mode対応のType-Cだけの接続では液晶ディスプレイが利用できない、という場合に供給電力を補強する役割で利用することも可能だ。かなり柔軟性の高い構成で、モバイルバッテリと組み合わせればゲーム機のディスプレイとしても十分利用できる。

電源供給用のケーブルやディスプレイケーブルはひととおり同梱される

 液晶パネルには、視野角が広く色みの変化が少ないIPSパネルを採用。光沢パネルで、しかも解像度がフルHDをサポートすることで精細感も高く、デジカメ画像や動画は非常に美しく表示できた。設置場所によっては蛍光灯などの映り込みが発生する可能性はあるが、角度を調整すれば映り込みを最小限に抑えられる。

フルHDのIPSパネルを採用しており色みは美しい。視野角も広い

Windows 10に接続するだけで認識して使えるようになる

 裏面や表面に磁石でピタッと貼りつく、携帯用のカバーが同梱されている。このカバーはスタンドとしても利用できる。ストッパーとして機能するへこみに下部を当てることで、2段階に角度を調整できる。ちなみにJN-MD-IPS1010HDR自体が軽いので、このへこみに当てない状態でも簡単には揺らいだりはしない。そのため角度はある程度自由に調整できる。

専用カバーで本体を包むようにして収納する
本体の下部を、専用カバーの溝に合わせて置くと、2段階に角度を調整できる

 こうしたモバイルディスプレイではめずらしく、色温度やコントラスト、輝度、利用しているアプリに合わせた表示モードの切り換え、ブルーライトカットフィルタのオン/オフなど、OSDからかなり細かい設定が可能だ。内容的には据え置き型の液晶ディスプレイに近い。これらのOSDは、右側面のボタンとシーソーレバーで設定を行なう。

右側面のボタンは、OSDを呼び出して調整するためのボタン

 サイズは小さいが、液晶ディスプレイとしての機能は据え置き型と何も変わらない。Windows 10のノートパソコンに接続すれば自動で接続し、マルチディスプレイ環境を作ってくれる。「複製」設定ならノートパソコンのデスクトップと同じ内容を表示し、「拡張」設定ならJN-MD-IPS1010HDRの画面を追加のデスクトップとして利用できるようになる。

 パネルサイズが10.1型なので、12~14型のビジネスモバイルノートパソコンの横に並べると、ちょうどよいサイズのサブディスプレイとして利用できる。メインの液晶ディスプレイに書類作成用のアプリを表示し、JN-MD-IPS1010HDR側にはExcelの参考資料を表示しておけば、目線をちょっと横にずらすだけで資料を確認できる。

縦置きでWebブラウザやワードの文書を長く表示するのも便利だ

 モバイルディスプレイは、使い終わった後に片付けるのが楽なのもよい。ノートパソコンからケーブルを外し、付属のケースに入れてノートパソコンと一緒にまとめておけばよい。テレワークで作業していたスペースを開放できるようになるわけで、据え置き型の液晶ディスプレイだとこうした柔軟性のある運用はできない。

使い終わったら、カバーをつけて本棚にでも挿し込んでおくのもよい

古いモバイル液晶ディスプレイからは大きな進化

 ところで筆者は、個人向けの14~15型の液晶ディスプレイが購入しやすくなってきた20年くらい前から、マルチディスプレイ環境を取り入れている。

 IT系の各種展示会やホテルに泊まりがけで地方に出張するときは、モバイルノートパソコンに今回のようなモバイル液晶ディスプレイを組み合わせて作業してきた。さすがに24型液晶を“モバイル”する山田祥平氏ほど気合いは入っていないが……。

 現在は、撮影立ち会い時に使うセンチュリーの10.1型液晶「LCD-10169VH」と、展示会やホテルに持ち込むASUSの15.6型液晶「MB16AC」を使い分けている。こうしたモバイル液晶と今回のJN-MD-IPS1010HDRで、どういった部分に違いがあるのか。また使い方が変わったり、リプレースできる部分があるかどうかなどについても検証してみよう。

 LCD-10169VHは、2015年に購入した古い液晶ディスプレイで、解像度は1,366×768ドットだ。当時の10.1型パネルでは平均的な解像度ではあったが、さすがに今使うにはちょっともの足りない。とくにフルHDに対応するJN-MD-IPS1010HDRと比較すると、解像感や映像の美しさは明らかに劣る。

左がLCD-10169VH、右がJN-MD-IPS1010HDRだ。画面サイズは同じだが縁のサイズが全然違う

 また、重さやサイズ感も違う。LCD-10169VHの上にJN-MD-IPS1010HDRを乗せてみると、LCD-10169VHのほうがひとまわり大きい。これは、液晶のベゼルの幅が全然違うからだ。重さもLCD-10169VHは約560g(チルトスタンド含む)なのに対し、JN-MD-IPS1010HDRは約260gと300gも違う。

 厚さもLCD-10169VHが34mmなのに対し、JN-MD-IPS1010HDRは8.5mmしかない。JN-MD-IPS1010HDRなら、普段持ち歩いているバッグにすっと違和感なく収納できるのに対し、LCD-10169VHを入れるのはちょっと躊躇する。

左がLCD-10169VH、右がJN-MD-IPS1010HDR。液晶ディスプレイの進化を感じる部分

 LCD-10169VHの映像入力端子は、HDMIとミニD-Sub15ピン、VIDEOの3系統だ。JN-MD-IPS1010HDRはType-CとMini HDMIの2系統だが、現状のパソコンやモバイル対応のゲーム機で考えるなら、JN-MD-IPS1010HDRのほうが使い勝手に優れる。またLCD-10169VHはDisplayPort Alt Modeには対応しないので、電源ケーブルの接続は必須だ。

LCD-10169VHでは必ず電源ケーブルを接続しなければならない

 映像の精細感、解像度、サイズ感、機能性などすべての面で、LCD-10169VHよりJN-MD-IPS1010HDRのほうが優れている。こうした古い世代のモバイルディスプレイを使っているなら、リプレースの価値は十分にある。

大型モデルとの比較では使い分けが重要

 MB16ACは2017年に購入した15.6型のモバイル液晶ディスプレイで、やはりDisplayPort Alt Modeに対応した映像入力端子を備える。当時はType-Cを搭載するモバイルノートパソコンがじょじょに増えており、デル・テクノロジーズの「XPS 13」やレノボの「ThinkPad A485」と組み合わせて、展示会場やホテルで執筆するときに使っていた。

 画面サイズは、MB16ACのほうがJN-MD-IPS1010HDRよりもかなり大きい。15.6型というと、一般的なホームユース向けA4型ノートパソコンに近く、12~14型が主流のモバイルノートパソコンと比べてもパネルサイズはかなり大きい。アプリをウィンドウ状態で利用するにもムリがないサイズ感だ。

左がMB16AC、右がJN-MD-IPS1010HDR。サイズ感の違いは歴然
厚みはMB16ACが8mmで、JN-MD-IPS1010HDRが8.5mmなので、ほとんど変わらない

 また解像度は同じフルHDだが、パネルサイズの違いによりスケーリングの設定も変わる。個人的にMB16ACは125%のスケーリングが最適だが、JN-MD-IPS1010HDRでは150%のスケーリングで利用するのが適切だろう。表示できる情報量はMB16ACのほうが上であり、作業性だけを考えるならMB16ACのほうが優れている。

 ただしパネルサイズが大きいMB16ACはサイズも大きい。破損の危険性を考えれば、スタンドを兼ねる付属のケースと一緒にインナーケースに入れて携帯することになるだろう。JN-MD-IPS1010HDRのように、普段使っている小型のバッグに放り込んで持ち歩く、というわけにはいかない。

JN-MD-IPS1010HDRは普段使っている小さなカバンにも余裕で入る

 重さもMB16ACが780gであるのに対し、JN-MD-IPS1010HDRは約260gと圧倒的に軽い。モビリティという点で言えば、JN-MD-IPS1010HDRに軍配が上がる。

 このMB16ACとJN-MD-IPS1010HDRの比較では、どちらにも一長一短がある。リプレースではなく、利用するシーンに合わせて使い分けたほうがよさそうだ。ただ個人的には、取材時の荷物はなるべく軽くしたい。どちらか1つに絞るとすれば、多少作業性は落ちてもJN-MD-IPS1010HDRを選ぶほうが総合的には満足できそうだ。

完成度の高いモバイルディスプレイ

 軽くてコンパクトなので持ち運びがしやすい上、表示性能も高い。まさしくモバイルノートパソコンと組み合わせて使うために生まれてきたようなモバイル液晶ディスプレイだ。数少ない不満点としては、インターフェイスが左側面にしかないことくらいか。

 このインターフェイス配置の場合、ケーブルやコネクタがジャマになるのでノートパソコンの右には置きにくいからだ。以前レビューしたレノボの「ThinkVision M14」のように、両方にType-Cを搭載し、どちらを使ってもよいという構成だともっと便利になると思う。