山田祥平のRe:config.sys

在宅勤務時代のディスプレイ選び

 モバイルノートPCに外付けディスプレイを接続して使うだけで作業効率は大幅に向上する。今後の高齢化社会、さらに来年(2020年)は世界的なスポーツイベントの関係もあって、テレワークや在宅勤務の形態が重要視され、その効率的な環境構築にもっとも費用対効果が高いのが外付けディスプレイだと言える。

解像度と画面サイズ

 ノートPCへの外付けディスプレイ追加による作業の効率化は、圧倒的な効果があることをつねに主張してきた。作業領域の確保は解像度ばかりが注目されがちだが、実際には画面サイズが重要だ。

 Windowsはディスプレイが96dpiで表示していることを前提にして画面設計されている。フルHD(1,920×1,080ドット)表示したときの画面サイズで言えば、23型がほぼ100%でこの96dpiになる。そのことを考慮し、自宅の仕事部屋でも出張先のホテルでもずっと24型に近いサイズのディスプレイを愛用してきた。大きすぎず小さすぎず、そして100%表示が快適な使いやすさがいい。

 本当は24型でも16:10や3:2のアスペクト比がお気に入りだ。実際、仕事部屋ではずっと16:10のディスプレイを好んで使ってきた。解像度にすると1,920×1,200ドットで縦方向がちょっと長い。縦にしてても横にしても使いやすい。

 メインで使っているディスプレイはすでに10年選手で、それでもまだとくに不満はないのだが買い替えも視野に入れながら物色していても、昨今の各社主力製品に16:10のものをなかなか見かけないのはちょっと残念だ。

 フルHDは1,920×1,080ドットでアスペクト比は16:9。つまり、地デジ画像と同じスペックだ。TVや映画のコンテンツは、スマートフォンのような小さな画面でも、50型超の大きな画面でも結果として相似的に同じ情報量が得られるが、PC作業での表示はそうはいかない。実際問題として、表示されているテキストが読めるかどうかといった実用的な視認性が求められるからだ。ボタンをクリックするといったインタラクティブな操作もオブジェクトが小さすぎては支障が出る。

 もちろんWindowsにはカスタムスケーリングの機能が用意され、それを使えば1%単位で表示スケールを指定できる。だが、Microsoftはそれを推奨しないし、場合によってはもとに戻せないという。だから通常の拡大縮小を指定するのだが、その値は100%からはじまり、125%、150%、175%……と、25%単位でしか指定できない。

 そして4Kの時代がやってこようとしている。4K解像度はフルHDで4画面分の解像度、通常は3,840×2,160ドットだ。この解像度を96dpiで表示しようとすると、46型ディスプレイが必要になる。ただ、各社のラインナップを調べてみても、46型というディスプレイが見当たらない。

 もっともPC作業でのディスプレイと瞳の距離を考えると、46型というのはなんと言っても23型4枚分だ。視線の移動距離を考えても、いささか大きすぎるかもしれない。

付加価値をチェック

 ディスプレイを選ぶさいの基準として、

  • 画面サイズ
  • 解像度

という2点は基本中の基本ではある。

 これに加えて、ディスプレイの付加価値として抑えておきたいのが、フレームレートと色域だ。前者はどれだけ高速に画面を書き換えるかを示すものでゲームなどで有効だし、後者は色についての表現力に影響する。また、HDR対応は、映画やゲームなどのコンテンツで黒つぶれや白飛びをすることないダイナミックレンジの高い映像を表現する技術だ。

 もっともWordやExcelで作業したり、ブラウザでWebサイトを閲覧したりといった作業では、それほど大きな恩恵を得ることはできないかもしれない。そういう意味では4K解像度だって、あったらあったで満足感は高いが一般的な作業にはオーバースペックだと言える。

 それよりも、

  • スピーカーが内蔵されているかどうか
  • 電源が内蔵されているかどうか(ACアダプタを使わない)
  • 狭額縁かどうか
  • USB Type-CとUSB PD(Power Delivery)に対応しているか

といった細かい要素のほうが在宅勤務などでの仕事用途での使い勝手では重要になってくるかもしれない。とくに、この先のノートPC買い替えなどのことを考えると、USB Type-CとPD対応については必須と言ってもいい。

デルの27型 Type-C ディスプレイを試す

 そんななかで、デルから「Dell プロフェッショナルシリーズ P2720DC 27インチワイド USB-Cモニタ-」が発売された。

 個人的にはずっと24型前後にこだわってきたが、27型の使い勝手を体験してみたいと思ってレビュー用に貸し出してもらって使ってみた。

 当たり前だが感覚的には24型よりひとまわり大きいというイメージだ。24が27になっただけでずいぶん大きくなったように感じる。解像度は4Kではなく2,560×1,440ドットで、Windowsのデフォルト解像度に対して88%の表示となる。つまり文字が小さい。この解像度なら本当は30型程度が必要だ。

 そこで表示スケールを変更してみる。すでに書いたように表示スケールは25%単位なので、とりあえず125%で試したが、今度は表示が大きすぎる。本当は113%でちょうどいいのだ。なんだか損をしているような気分になって100%表示に戻した。

 ツールバーボタンやメニュー、ダイアログボックスなどの各種オブジェクトは少し小さくなってしまうが、アプリの表示するコンテンツの表示を拡大調整することで、作業そのものにはほぼ支障がない。

 電源ユニットを内蔵しているのでケーブル1本で電力を供給でき、さらにType-C入力によるDisplayPort Alternate Modeに対応、PDによって最大65Wの電力を供給できる。つまり、そこそこのパワーのモバイルノートPCをType-Cケーブル1本で接続するだけで、充電と映像出力ができる。

 そのため、ディスプレイ本体から生えるケーブルは2本だけだ。片方をACコンセントに、もう片方をPCにつなげば贅沢な作業環境ができ上がる。

 通常、常設場所でのディスプレイ本体のACケーブルはつなぎっぱなしにするので、ノートPCへの接続のみで完結だ。このインスタントさは在宅勤務のためにノートPCを携行して会社と自宅を往復するような場合にうれしい。

 もちろん、通常のUSB 端子も4つ装備し、Hubとして機能する。各種デバイスをつなぎ、ノート側は液晶を閉じて使ってもいい。電源オフ時にもPDによる電源供給を継続する機能もある。各種対応ケーブルが同梱されているのもうれしい。ただしスピーカーは内蔵していないので、音声出力はほかに頼る必要がある。

27型×1と24型×2、どっちを選ぶ?

 使ってみての結論から言えば、1台のみを使うなら27型というのは十二分に実用的だった。現時点では4Kである必要性も感じない。だが、2台超のディスプレイを接続するような場合は24型でそろえたほうが使い勝手がいい。

 このディスプレイはDisplayportのデイジーチェーンに対応しているので、もう1台Displayport対応のディスプレイがあれば、ケーブル1本でディスプレイ間を接続するだけで3台目のディスプレイが追加できるのだが、27型2台というのはさすがに場所をとりすぎるように感じる。もちろんスペースが許せばそれもありだ。

 だったら、27型と24型の2台はどうかというと、それぞれでdpi値が異なるので、双方の表示サイズをそろえるのが難しい。25%刻みというのはやっぱり不便だ。それに色味の違いも気にしはじめるとどうにも落ち着かない。

 また、画面が広いのはいいが、作業ごとのウィンドウサイズ調整がめんどうだ。27型で作業しやすいように複数のウィンドウ位置やサイズを調整するよりは、コンパクトな24型複数台で個々にフルスクリーン表示させたほうが手っ取り早い。

 デルは画面上の領域をゾーンとして細かくレイアウト指定できるユーティリティとして、Dell Display Managerを提供しているが、非定型の作業にはちょっと大仰だ。ただ、これは好みに依存するだろう。

 コストの点も考慮しなくてはならない。ざっくり言って24型ディスプレイは3万円前後、この27型製品が4万円強、30型を超えて4K対応ということになると10万円近くになってしまう。

 24型2枚で6万円以内と27型1枚で4万円強というのは選択肢として微妙なところだが、ディスプレイ2台はスペース的に無理だがちょっとでも広い画面が欲しいということも少なくない。そうした環境では27型はスペース的にもコスト的にもちょうどいい。贅沢を言えばキリがないのだ。

 デルのディスプレイは狭額縁のUシリーズと、通常フレームのPシリーズがあるが、今回試した製品は通常フレームの製品だ。ただ、1台だけの利用なら、並べたディスプレイ間の境目は気にならないので通常フレームの製品を選んでも後悔はないと思う(デルの各ディスプレイの比較)。現実的な解決策を提供するリーズナブルな製品だと言えるだろう。4Kをあきらめるだけでずいぶん価格も抑えることができる。現時点だけを考えればこれで困ることはまずなさそうだ。在宅勤務に備えてディスプレイを1枚と考えるならベストな買い物になりそうだ。

 ただ、個人的には、3,840×2,400ドットの16:10で31型程度のディスプレイの登場を待ちたい。リーズナブルな価格で手に入るようになるには、もうちょっと時間がかかりそうだ。XPS 13 2-in-1など、ノートPC画面のアスペクト比が16:9からの脱皮トレンドにあるので、据置ディスプレイにもその方向性を期待したい。

 ちなみに、出来心で試して見たが、この27型ディスプレイを手もとのスーツケースに入れてみたところ、ちゃんと収納できたことを報告しておきたい。モバイルディスプレイにするつもりは今のところないけれど……。