福田昭のセミコン業界最前線

IntelやTSMC、AMDが次世代FETやDRAMの信頼性研究を公開。IRPS 2026の注目発表

「IRPS 2026(2026年開催のIRPSを意味する)」の参加登録料金。早期割引の期限(2月20日)は過ぎているので、今から申し込むと下に位置する「Standard」となる。参加種別は左が技術講演会とイヤーインレビュー(YIR)のセット、中央がチュートリアルとYIRのセット、右が技術講演会、チュートリアル、YIRのセット。なおバーチャル参加の登録は開催後でも可能だ(料金はリアル参加と同じ)。IRPSの公式Webサイトから抜粋したもの

 本コラムの前回でお伝えしたように、半導体デバイスの信頼性技術に関する世界最大の国際会議「国際信頼性物理シンポジウム(IRPS:IEEE International Reliability Physics Symposium)」(通称は「アイアールピーエス」)が2026年3月22日~同年3月26日に米国アリゾナ州ツーソンで開催される。

 前回では、IRPSの開催概要と基本スケジュール、基調講演、それから技術講演セッションのテーマとスケジュールの一覧を報告した。技術講演セッションからは「フラッシュメモリ」と「磁気抵抗メモリ(MRAM)」の信頼性に関する注目発表をご紹介した。

IRPS 2026の全体スケジュール。3月22日と23日はプレイベント(技術講座と最近の話題)、3月24日~26日がメインイベント(基調講演と技術講演会)となる。IRPSの公式Webサイトから筆者がまとめたもの

 今回は、技術講演会(テクニカルカンファレンス)とならんでIRPSの柱となりつつある、技術講座の概要を前半でご紹介したい。24件と数多くの講演を予定する。後半では、前回に紹介しきれなかった注目発表を「パッケージング」、「DRAMとSRAM」、「ナノシートFET(GAA FET)」分野からご報告する。

技術講座の講演件数推移(2015年~2026年、開催年ベース)。毎年、20件前後の講座が用意されてきたことが分かる。IRPSのプログラムから筆者が抜粋したもの

GaNデバイス、SiCデバイス、金属配線などの技術講座

 3月22日は5つの時間枠に3件ずつの講演を並行予定する(3件を同時で実施)。タイムスロットには90分枠と60分枠があり、前者は75分の講演と15分の質疑応答、後者は45分の講演と15分の質疑応答となる。

 最初のタイムスロットは午前8時30分から始まる。90分枠のスロットである。「Reliability and Test of System-in-Package Semiconductors in the AI Era(AI時代における、システムインパッケージ(SiP)の信頼性とテスト)」、「A Review of Reliability in GaN Power HEMTs(GaNパワーHEMT(高電子移動度トランジスタ)の信頼性)」、「Resistive Random Access Memory for High Density Storage and Computing Applications(高密度ストレージ向け、およびコンピューティング向けの抵抗変化メモリ(ReRAM))」の3件の講演を予定する。

 次のタイムスロットは休憩を挟んで午前10時30分から始まる。60分枠のスロットである。タイトル未定の講演(講演者の所属はTSMC)、「Radiation effects in GaN(放射線がGaNデバイスに与える影響)」、「Journey with AI for Accelerating Reliability Estimation from Transistors to GDS(AIを使ってトランジスタからGDSまでの信頼性推定の確度を高める)」の3件の講演を予定する。

 昼食休憩を挟んで、午後1時からは90分枠の講演が3件、用意される。タイトルは「Reliability Engineering for Hyperscale Datacenters: Methods, Metrics, and Models(ハイパースケールデータセンターの信頼性工学:手法、評価、モデル)」、「Introduction to SiC power MOSFET technology and reliability(SiCパワーMOS FETの技術/信頼性入門)」、「Fundamentals of Interconnect Reliability: Physics, Failure Mechanisms, and Qualification(配線の信頼性基礎:物理、故障メカニズム、認定評価)」である。

技術講座の講演一覧その1。3月22日の午前8時30分、午前10時30分、午後1時に始まる講座をプログラムからまとめたもの

光集積回路の放射線影響と、温度勾配によるマイグレーションなどの講座

 その後は60分のタイムスロットを2つ、予定する。開始時刻は午後3時と午後4時30分である。午後3時からは「What Can In-System Test and SLM Data Bring to the Reliability Community?(インシステムテストと シリコンライフサイクルマネジメント(SLM)データは、信頼性コミュニティに何をもたらす可能性があるのか)」、「Radiation Effects in Photonic Integrated Circuits(放射線が光集積回路に与える影響)」、「Understanding Thermomigration: Experimental Insights and Reliability Considerations(熱マイグレーション(温度勾配による原子の移動)を理解する:実験結果と信頼性への影響)」の3つの講演を予定する。

 休憩を挟んで午後4時30分から、3つの講座が同時に始まる。タイトルは「Resiliency in Zetta-Scale AI Factories(複雑化するデータセンターを障害から復元させるための課題と対策)」、「X-ray Microbeam Techniques for Probing Stress Induced Phenomena in Interconnects(配線の応力による物理現象を探るX線マイクロビームのプロービング技術)」、「Heterogeneous Integration Reliability Challenges and Roadmap(ヘテロジニアス集積化の信頼性における課題と展望)」である。

技術講座の講演一覧その2。3月22日の続き。午後3時開始の講演と午後4時30分開始の講座をプログラムからまとめたもの

3D NANDフラッシュ、酸化物半導体、2次元FETなどの講座

 翌3月23日は、3つの時間枠で合計9件の講演を実施する(3件が同時進行×3スロット)。始めは午前8時30分にスタートする、90分のスロットだ。講演タイトルは「3D-NAND Scaling and Reliability Challenges(3D NANDフラッシュメモリのスケーリングと信頼性の課題)」、「Application of SRAM HTOL in Process Qualification and Improvement(SRAMの高温動作寿命(HTOL)をプロセス認定評価とプロセスの改善に適用する)」、「Defect-Mediated Charge Trapping and Electrical Reliability in BEOL Amorphous Oxide Semiconductor Transistors with High-k Gate Dielectrics(配線工程で作り込む高誘電体ゲート絶縁膜アモルファス酸化物半導体トランジスタの欠陥を介した電荷捕獲と電気的な信頼性)」である。

 休憩を挟んで午前10時30分からも、3件の講演が同時に始まる。時間枠は60分。講演タイトルは「Application of Physics of Failure and Degradation in Extended Mission Profile Assessments(拡張ミッションプロファイル評価における劣化メカニズムと不良発生メカニズムの適用)」、「SRAM Qualifications for Automotive Applications(SRAMの車載向け認定評価)」、「Bias Temperature Instability in BEOL-Compatible Oxide Semiconductor Transistors for Ultra-High-Density Monolithic 3D ICs(超高密度モノリシック3次元集積回路に向けた配線工程互換の酸化物半導体トランジスタにおけるバイアス温度不安定性(BTI))」である。

技術講座の講演一覧その3。3月23日午前の講座タイトル。プログラムからまとめたもの

 ここから昼食休憩を挟み、最後の90分枠のタイムスロットとなる。午後1時から、3件の講座が同時にスタートする。タイトルは「BTI Reliability in CMOS Technologies: Degradation Physics, Process interactions, and Modeling Challenges(CMOS技術におけるBTI信頼性:劣化メカニズム、プロセスの相互作用、モデリングの課題)」、「Design and Reliability of Ferroelectric Capacitor Memories(強誘電体キャパシタを利用したメモリにおける設計と信頼性)」、「Challenges in gate stack integration, defectivity, and reliability of 2D material FETs(2次元材料FETにおけるゲートスタックと欠陥、信頼性の課題)」である。

技術講座の講演一覧その4。3月23日午後の講座タイトル。プログラムからまとめたもの

最近の話題はメモリIPの信頼性、TDDBの課題、人工ニューラルネットの放射線影響

 その後は最近の話題をまとめた講演「YIR(Year In Review)」が午後3時に始まる。3件の講演が順番に進む。最初の講演タイトルは「Reliability Challenges in Memory IP: Trends Across Multiple Technologies(メモリIPの信頼性問題:複数の技術に関連したトレンド)」、次のタイトルは「Complex Challenges of Backend-of-Line (BEOL) and Middle-of-Line (MOL) Time-Dependent Dielectric Breakdown in Advanced Nodes(技術ノードの進化とBEOL TDDBおよびMOL TDDBの複雑化する課題)」、最後の講演は「Terrestrial and Space Radiation Effects in Artificial Neural Networks(地上放射線と宇宙放射線が人工ニューラルネットワークに与える影響)」である。

最近の話題の講演一覧。プログラムからまとめたもの

パッシベーションクラックの兆候をウェハレベルで把握

 ここからは注目の講演をご報告したい。始めは「パッケージング」分野である。

 Intelは、シリコン貫通電極(TSV:Through Silicon Via)を備えたEMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)技術(EMIB-T)を導入した先進パッケージングの品質と信頼性を報告する(講演番号4A.2)。AMDは、電源供給網のエレクトロマイグレーション寿命をモンテカルロベースのモデルで予測する手法を開発した(同7C.1)。BGAパッケージの冗長電極によって寿命がどの程度まで延びるかの予測精度を高めた。

 TSMCは、CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)パッケージにおけるエレクトロマイグレーション現象とメカニズムを解説する(講演番号7C.2)。Samsung Austin Semiconductorは、ウェハレベルでパッシベーションクラックのリスク(兆候)を把握する手法を開発した(同11A.3)。ウェハ全体に対する温度サイクルの印加とウェハ全体の走査型電子顕微鏡(SEM)観察を組み合わせた。

パッケージングの信頼性に関する主な講演。公式Webサイトのプログラムからまとめた

SRAMのデータ保持電圧が経時的に劣化

 次はDRAMとSRAMの注目講演である。Micron Technologyは、DRAMのセルアレイとラッチが地上放射線によって論理反転する現象を測定とTCADシミュレーションから調査した結果を報告する(講演番号3A.4)。Samsung Electronicsは、最先端DRAMにおける潜在的なシリサイド拡散を電気的に検出する方法を開発した(同11C.4)。検出には、ゲート誘起ドレインリークの非対称性を利用する。

 Infineon Technologiesほかの共同研究グループは、SRAMのデータ保持電圧が経時的に劣化する現象をバイアス温度不安定性の視点から、実験およびシミュレーションによって分析した(講演番号9C.1)。SRAMマクロの歩留まり推定精度が向上する。

DRAMとSRAMの信頼性に関する主な講演。公式Webサイトのプログラムからまとめた

ナノシートFETの信頼性を議論

 最後はナノシートFET(GAA(Gate All Around) FET)の注目講演である。Intelは、18A世代のリボンFET技術におけるトランジスタの信頼性を報告する(講演番号5B.1)。TSMCは、2nm世代のナノシートFETによるCMOS技術の信頼性を分析した結果を発表する(同5B.2)。IBMとApplied Materialsの共同研究チームは、GAAナノシートトランジスタのゲートスタックTDDB(Time-Dependent Dielectric Breakdown)に与えるチャンネル材料とインナースペーサの影響を述べる(同5B.3)。

ナノシートFET(GAA FET)の信頼性に関する主な講演。公式Webサイトのプログラムからまとめた

 執筆時間の制限で紹介できなかったポスター発表を始め、このほかにも興味深い発表が少なくない。筆者は久しぶりの現地参加(リアル参加)となる。現地取材からのレポートに期待されたい。