笠原一輝のユビキタス情報局
テレワークのために画面比32:9の49型5Kディスプレイを導入してみた
2020年4月8日 11:00
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大は世界的に発生しており、我が国も大きな影響を受けている。それに合わせてテレワークやリモートワークとよばれる在宅勤務に切り替わっている読者もいることだろう。
フリーランスの個人事業主ではあるが筆者もその1人で、今年(2020年)の頭までは海外でIT企業を取材して記事を書くという仕事の仕方だったが、今は自宅にこもってリモートでの取材活動がメインになっている。
このため、これまで以上に自宅のITインフラが重要になってきており、それに伴って自宅の環境を整備・検討したりしている。そのなかでいち早く導入を決めたのが、大型のディスプレイだ。
今回はアスペクト比が32:9のデル製49型ウルトラワイドディスプレイ「U4919DW」を導入してみた。解像度は5,120×1,440ドットであり、湾曲型となる。
先が見えない状況でテレワークが長く続くかもしれない。それならと自宅のITインフラを強化
COVID-19により世界は大混乱の極みにある。多くの読者もその影響を受けていると思われるが、筆者もその1人。予定していた海外取材がすべて吹っ飛んでおり、現在では電話会議などでの取材というかたちに大きく切り替わっている。
これまでは出先(たとえば出張先のホテルとか)で仕事をすることがほとんどだったため、自宅のIT環境はそれこそ必要最小限にしていたのだが、ここ数カ月、場合によっては年単位で自宅での仕事が増えることになりそうだ。
そこで、自宅の仕事環境を整備することにした。これまでの筆者の仕事環境はおもにノートPCであり、より速く使いやすい製品を1年に一度程度購入して乗り換えるというものだった。
ファイルサーバーに利用しているPCは別にして、すでに自宅からデスクトップPCを一掃しており、メインで利用しているノートPC、メインが壊れたときのバックアップとして稼働しているバックアップ1、バックアップ2という3台のノートPCを必要に応じてメンテナンスしながら運用している。
自宅に帰ってきたときには、ノートPCを外付けディスプレイに接続して作業している。そのほうが表示できる情報量を増やせるからだ。
筆者の仕事は記者として取材し、事実確認をしながら記事を書くというものだ。このため、取材相手から頂戴した資料をよく読み込んだり、関連のWebサイトなどで公開されている資料を確認しながら記事を書き進める必要がある。
そうなると、記事を書くときにメインのディスプレイに表示させている原稿だけでなく、PDFでの資料だったり、Webサイトなどをできるだけ多く表示する必要がある。
そうした作業は、現在テレワークをしている会社員の方も同様だろう。家では会社支給のノートPCなどで作業をされていると思われるが、会社でデスクトップPCを使っている人にとっては、ノートPCは画面が小さかったり、解像度が高くなかったりするため、表示できる情報はかぎられてしまう。そうした不満を感じているなら、外付けディスプレイを導入したい。格段に能率が上がるはずだ。
市販のPC用ディスプレイのなかでも超大型の49型液晶をチョイス
と言っても、筆者はすでに32型4K(3,840×2,160ドット)のディスプレイをノートPCにつなげて利用していた。それなりに満足していたのだが、もう少し大きいディスプレイが欲しいと感じていたところだったので、自宅での仕事が増えた今回の騒動を決断の機会だと思い、置き換えることにした。
そもそも32型4Kもそれなりに高解像度なのだが、これをさらに大型のものに置き換えとなると選択肢はほぼ1つしかない。それは最近のディスプレイのトレンドの1つである32:9のアスペクト比を持つ、ウルトラワイド液晶と呼ばれる横長の湾曲ディスプレイだ。
一般的な外付けディスプレイは大多数のノートPCと同じように、16:9のアスペクト比のパネルを採用している。アスペクト比とは、ディスプレイの縦と横の長さの比率のことで、16:9であれば横が16の割合に対して、縦が9の割合になっているという意味だ(たとえば、横が160cmであれば縦は90cm)。
それに対して32:9のアスペクト比のディスプレイの場合は、横が32と長くなっているのに対して縦は9のままになるので、横長のディスプレイとなる。16:9のディスプレイを2枚くっつけたディスプレイと考えればわかりやすいだろう。
32:9のディスプレイは多数製品化されており、現在は選択肢も豊富になりつつある。34型、38型、43型、49型と複数のサイズがあるが、そのなかでも今回は最大の49型を選択することにした。
理由は今後数年間使うことを考えると、一番良いものを買っておくのが、安物買いの銭失いにならないという筆者の信念(?)であり、何より34型や38型では32型からちょっと広くなるだけなので、それならもっとも大きいものを使いたいと考えたからだ。
候補はデルの「U4919DW」のほかにも、LGの「49WL95C-W」があり、どちらも17万円程度という価格だった。
スペックもほぼ同等で、解像度は5,120×1,440ドット、映像入力はUSB Type-Cx1、DisplayPort×1、HDMI×2となっており、明確な差異は認められなかった。しかし購入時に49WL95C-Wが在庫切れで入荷時期もわからなかったことが決め手となり、オンラインで注文できるU4919DWを注文した。
なお、49型ウルトラワイドディスプレイには、パネルにVA液晶を採用したものと、IPS液晶を採用した製品の2種類があるが、筆者はIPS液晶のカッチリとした表示が好きなので、後者のパネルを採用した製品を選んでいる。
140×54×32cmという巨大なパッケージで到着。外箱全体の重量はじつに26.43kg!
注文から3日程度となる2月末にU4919DWが届いた。デルの場合は海外の工場で生産するものは通常納期2週間、日本に在庫がある製品は割とすぐ届く仕組みになっているので、おそらく在庫が日本にあったのだろう。
度肝を抜かれたのは、その外箱のサイズだ。計測してみると、140×54×32cm(幅×奥行き×高さ)という巨大さで、パッケージ全体の重量は公式スペックによると26.43kgとのこと。正直1人で持ち上げて移動するのは無理で、玄関から部屋まで入れるのはあきらめて玄関で解体したほどだ。
ディスプレイとスタンドを合わせた重量は17.2kg。ディスプレイの本体部分だけでも11.4kgと相当重いので、腰などに不安があるなら複数人で行なうべきだろう。筆者は1人で組み立てたが作業スペースさえ確保できれば、とくに難しくはなかった。
ただし、設置場所に関しては相当綿密に検討をする必要がある。と言うのも、U4919DWの横幅は約1.2mもあり、そのぶんのスペースがないと置くが厳しい。筆者の仕事部屋の机の幅は約1.1mだったので、見事にはみ出してしまった。
これはもうはみ出すことは仕方がないと考えることにして、部屋のレイアウトを若干変えて対処した。具体的には机の横に設置されていたラックの位置を変えて、1.2mのディスプレイがはみ出しても大丈夫なようにした。
また、机には上方の空間がうまく利用できるようにラックが追加されていたのだが、このラックも幅が1mで1.2mのU4919DWがはみ出してしまう。このため、こちらも取り外してディスプレイを直接机の上に置くことにした。ラックの耐荷重も確か10kg以下だったはずなので、この17kgのU4919DWを置くのは安全上好ましくないとも考えたからだ。
最大の問題は5,120×1,440ドットというネイティブ解像度でドットバイドット表示ができるかどうか
もう1つの課題はどのようにノートPCをD4919DWに接続するかだ。D4919DWにはUSB Type-C、DisplayPort、HDMI(2.0)×2という4つの入力端子が用意されており、それぞれ切り替えて利用できる。
ただし、ここで考えておかないといけないことは、D4919DWが5,120×1,440ドットという、4K(3,840×2,160ドット)を横幅で超える解像度になっていることだ。液晶パネルをネイティブ解像度以外で表示すると、ややぼやけた表示になってしまうので、PCの解像度とディスプレイパネルの解像度が一致している(ドットバイドット表示と呼ぶ)ことが何よりも重要だ。
D4919DWは、2つの映像入力を右と左に2,060×1,440ドットで分割表示するというPBP(ピクチャーバイピクチャー)機能を搭載しているのだが、そうするとPCが2台必要になってコピー&ペースト時にネットワークを介してやらないといけなくなって面倒だったり安定性に不安があったりする。そうしたことを考えると、1つのPCでフル解像度で表示できるほうが筆者としては好みだ。
ところが、この5,120×1,440ドットという4Kを超える解像度を表示できるかはPC側の仕様に依存する。4Kでもリフレッシュレートを60Hzに設定するには、PCのスペックがある程度の条件を満たす必要がある。具体的にはDisplayPortであればバージョン1.2以上、HDMIであれば2.0以上の出力ポートを利用する必要があり、かつGPU側がそれをサポートしていなければならない。
ディスクリートGPUであれば、近年発売されたものは大抵HDMI 2.0以上に対応しているし、デスクトップPCのビデオカードであればDisplayPort出力が用意されているのがほとんどなので、あまり気にしないで良い。問題は、ノートPCで一般的に利用されているiGPU(統合型GPU)で、iGPUと組み合わせて利用する場合だ。
とくにIntelの第6世代(Skylake)/第7世代(Kaby Lake)/第8世代(Kaby Lake-R/Whiskey Lake)に内蔵されているGen9のiGPU(HD Graphics/UHD Graphics 620のブランド名が採用されている)は、HDMI 2.0に対応していないため、4K/60Hzで出力できないのだ(外付けでHDMIに対応するトランスミッターを搭載すれば対応可能)。
D4919DWでも同じように、GPUとディスプレイ出力の種類によって5,120×1,440ドットというネイティブ解像度で表示できるかどうかが決まってくる。デルが公開している情報によれば、5,120×1,440ドット/60Hzに設定するには下表のような条件を満たす必要がある。
メーカー | GPU名 |
---|---|
NVIDIA | GeForce GTX 1080 |
Geforce GTX1070 | |
GeForce GTX 1050 | |
Quadro P6000 | |
Quadro M6000 | |
Quadro M1200M | |
Quadro M2200 | |
GeForce 940MX | |
GeForce 930MX | |
AMD | Radeon RX 580 |
Radeon RX 570 | |
Radeon Pro WX9100 | |
FirePro W9100 | |
FirePro W7170M | |
FirePro W4100 | |
Radeon R7 | |
Radeon R9 | |
Intel | HD Graphics630 |
UHD Graphics620 | |
UHD Graphics615 | |
HD Graphics530 | |
HD Graphics520 |
ディスプレイの解像度 | HDMI 1.4 | HDMI 2.0 | DisplayPort 1.2 | DisplayPort 1.4 | USB Type-C (DisplayPort Alt Mode 1.2以降) | Thunderbolt 3 |
---|---|---|---|---|---|---|
5,120×1,440ドット/60 Hz | ー | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
5,120×1,440ドット/30 Hz | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
3840 x 1080ドット/60 Hz以下 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
これを見るかぎりは、GPUがNVIDIAであればPascal(GeForce GTX 10シリーズ)以降、AMDであればIslandsシリーズ(Rx 300シリーズ)以降、IntelであればGen9(Skylake、Kaby Lakeなどに搭載されているiGPU)以降であれば対応できる。
映像出力がHDMI 1.4までしか対応していない場合には、5,120×1,440ドット/60Hzの表示はできず、DisplayPortやUSB Type-C/Thunderboltであれば問題ないとわかる。
5,120×1,440ドットのドットバイドット表示ができるかはPC側の仕様に依存。Intel Gen 9はドライババージョンに注意
そこで、手持ちのPCでそれぞれどれが対応できるか調べてみた。テストに使ったPCは以下のとおりだ。
デル XPS 13(モデル9300) | Surface Pro X | レノボ ThinkPad X1 Yoga Gen4 | 富士通 LIFEBOOK UH95 | Surface Go | レノボ ThinkPad X1 Yoga Gen3 | HUAWEI Matebook | VAIO VAIO Z | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
CPU | 第10世代Core(Ice Lake) | Microsoft SQ1 | 第8世代Core(Whiskey Lake) | 第8世代Core(Whiskey Lake) | Pentium Gold(Kaby Lake-Y) | 第8世代Core(Kaby Lake-R) | 第6世代Core(Skylake) | 第5世代Core(Broadwell) |
GPU | Intel Iris Plus(Gen11) | Qualcomm Adreno 655 | Intel UHD Graphics 620(Gen9) | Intel UHD Graphics 620(Gen9) | Intel UHD Graphics 615(Gen9) | Intel UHD Graphics 620(Gen9) | Intel UHD Graphics 520(Gen9) | Intel Iris Graphics 6200(Gen8) |
出力ポート | USB Type-C(DisplayPort Alt Mode) | USB Type-C(DisplayPort Alt Mode) | USB Type-C(Thunderbolt) | USB Type-C(DisplayPort Alt Mode) | USB Type-C(Thunderbolt) | USB Type-C(DisplayPort Alt Mode) | HDMI(バージョン非公開) | |
ー | ー | HDMI(バージョン非公開) | HDMI(バージョン非公表) | ー | HDMI(バージョン非公開) | ー | ー | |
発売年 | 2020年 | 2019年 | 2019年 | 2019年 | 2018年 | 2018年 | 2016年 | 2015年 |
5120x1440ドット/60Hz表示 | ○(USB Type-C) | ×(USB Type-C) | △(USB Type-C)/×(HDMI) ※レノボが配布している最新版ドライバでは表示できず、Intelが公開しているバージョン7379以下にしたところ動作した | ○(USB Type-C/HDMIともに) | ○(USB Type-C) | △(USB Type-C)/×(HDMI) | ×(USB Type-C) | ×(HDMI) |
Microsoftの「Surface Pro X」がダメなのは、ArmアーキテクチャのMicrosoft SQ1に内蔵されている内蔵GPU(QualcommのAdreno685)が理由だと考えられる。USB Type-C経由で出力はできているので、DisplayPort Alt Modeで動作していると思われ、GPU側の制限である可能性が高い。
ハードウェア側の制限というのもあり得るが、SQ1の元になったQualcomm Snapdragon 8cxのスペックでは、2つの4Kディスプレイまで対応となっているので、ハードウェアのスペック的には5,120×1,440ドットは問題ないように見える。
したがって将来のドライババージョンアップなどでサポートされる可能性はあるが、現時点では3,840×1,080ドットという1つ下の解像度にしか設定できないので、ややぼやけた表示になってしまうのは残念だ。
それ以外にやや不思議な挙動をしたのがレノボの「ThinkPad X1 Yoga Gen3(2018年モデル)」と「ThinkPad X1 Yoga Gen4(2019年モデル)」、富士通の「LIFEBOOK UH95」の3つの第8世代Core(Whiskey Lakeベース)だ。
これらの製品は、IntelのGraphicsドライバがバージョン7372以前のときには、USB Type-Cでも、HDMI 2.0対応と見られるLIFEBOOK UH95のHDMI出力でもきちんと5,120×1,440ドット/60Hzの表示ができていた(LIFEBOOK UH95の公式ドライバの最新版はバージョン7261で、そのバージョンでは問題なく表示される)。
しかし、7372より上のバージョンでは、いずれも3,840×1,080ドット/60Hzが最大解像度の表示になってしまい、きちんとドットバイドットで表示できなかった。
じつはこれは、第7世代Coreと同じKaby Lake-YベースのPentium Goldを採用しているSurface Goにも言え、ドライバをバージョン7372より上にすると、5,120×1,440ドット/60Hz表示ができなくなってしまった。したがって、これはGen9世代のIntel GPU共通の問題だと言えるだろう。
現時点での回避策はバージョン7372より上にしないことで、Surface GoとLIFEBOOK UH95であれば公式の最新ドライバはそれより下のバージョンなので問題なく、レノボのThinkPad X1 Yoga Gen 4に関しては最新版のドライバがそれ以上なので、Intelが公開している古いドライバにすることで利用可能になる(OEMメーカーのマシンにIntelのジェネリックドライバをインストールするには一工夫が必要)。
なお、Ice Lakeに内蔵されているGen11のGPUではこの問題はないようで、Ice Lakeを搭載したデル XPS 13(モデル9300)は最新版のバージョン7870のドライバでも5,120×1,440ドット/60Hz表示が可能だった。Ice Lakeでは普通に動くことを考えると、単なるドライバのバグだと思われるので、Intelの対応に期待したいところだ。
そして、もう1つの要件としてはDisplayPort Alt Modeに対応したUSB Type-C、ないしはDisplayPort1.2/HDMI 2.0以降の映像出力ポートが必要になる。これらのスペックはここ数年で発売されたPCで採用されているものであり、4~5年前のPCだとHDMI 1.4しかないというものが多数になるので注意したい。
なお、ややこしいことに、PCメーカーの公式スペックにはHDMIのバージョンは書かれていないことが多い。ユーザーとしてはHDMIが1.4か、2.0なのかは大きな違いがあるので、できれば書いておいてほしいところだろう。もっとも第10世代Core(Ice Lake)以降は、iGPUが標準で対応しているので、今後購入するものはHDMI 2.0になると考えられるし、そもそもUSB Type-Cが標準になるだろうから、気にしなくて良くなるはずだ。
課題はPer-monitor DPIに対応していないアプリと、16:9コンテンツを全画面表示にしたときの余り
現在はデルのXPS 13(モデル9300)をメインノートPCとして使っており、U4919DWとはUSB Type-Cで接続しているが、筆者はその間にThunderbolt 3のドッキングステーションをはさんでいる。
U4919DWには、USB 3.0のHub機能もあるが、理論上の帯域は5Gbpsまでとなる。そのため、USB Type-Cポートと合わせてUSB LANアダプタを接続した場合には、理論値の3分の1以下の速度(33MB/s)でしか通信できないことがわかった。
USB 3.0のUSB Type-Cのケーブル1本に、5GbpsのデータとDisplayPortの信号が同時に流れることで帯域が足りなくなっているからだと判断し、間にThunderbolt 3(帯域幅は40Gbps)のドッキングステーションをはさむことにしたのだ。
これにより、LANの速度も110MB/sと、1Gbpsの理論値に近い性能を出せるようになっている。スピーカーやほかのUSBデバイスなどもこちらに集約できるので便利だ。
ただ、困っていることが2つある。
1つはAdobeのCreative Cloudのアプリのなかには、DPIの異なるマルチディスプレイ環境において、自動的にDPIを設定する仕組みが実装されていないアプリがあることだ。
最新版のWindows 10では「Per-monitor DPI」(ディスプレイ毎のDPI設定)機能が標準で有効になっており、マルチディスプレイでそれぞれスケーリングを変更できる。
スケーリングとは、ディスプレイをズームして表示する機能で、たとえば13型クラスのディスプレイで4K(3,820×2,160ドット)の解像度を表示する場合などでは、250%や300%にズームしないとフォントが小さくて見えにくかったり、操作しにくかったりする。スケーリングの設定でこれを回避でき、Windows 10ではこれをディスプレイごとに設定できるようになっている。
ノートPCのように250~300%などの高倍率で利用するディスプレイと、100%のスケーリングで表示している外付けディスプレイを構成したときでも、アプリがPer-monitor DPIを検知する機能を搭載していれば、使い勝手で大きく違ってくる。
たとえば、アプリを100%表示のU4919DWから、250%表示のノートPCの4Kディスプレイに移動すると、本来は250%で表示されるはずのところが100%で表示されるので、文字などが小さくなって見にくくなってしまう。
ただ、Per-monitor DPIを検知する機能をアプリが持っていれば、倍率が小さなパネルから大きなパネルへ、その逆のときにも新しい倍率でアプリの表示を自動で更新してくれる。そうでない場合には一度アプリを再起動したりする必要がある。
Microsoft OfficeやEdge(Chromium版)などのMicrosoftのアプリのほとんどは、このPer-monitor DPIに標準で対応しており、ウィンドウをディスプレイ間で移動するだけで自動的にスケーリングが調整される。
また、サードパーティのアプリでもテキストエディタの「秀丸」などは標準でこれに対しており、メニューから「その他→動作環境→環境→高度な環境」(上級者向けの設定を選んでおく必要がある)で表示される「ウィンドウの拡大縮小」を「全てのモニターでドットバイドット」を選んでおくと、ディスプレイ側のDPIに応じてアプリが設定してくれる。
Creative Cloudのアプリでは、Photoshopなどの比較的新しいアプリはDPIの自動調整に対応している(ただウィンドウのサイズはうまく調整されない)のだが、Lightroom CCやLightroom Classic CCなどの場合は、アプリを起動し直さないとDPIが調整されず、メニューの表示が極端に小さくなってしてしまう。ぜひともAdobeにはPer-monitor DPIへの対応を積極的に進めてほしい。
もう1つの問題は、全画面にしたときに横が極端に余ってしまうことだ。たとえば、Amazonプライムのビデオを再生する場合、ほとんどのコンテンツは16:9のアスペクト比になっているので、32:9のアスペクト比であるU4919DWの場合には横の半分が余ってしまうことになる。
これは、Webブラウザを利用して電子書籍を読むときも同じで、データを文字で持っているタイプではなくビットマップデータとして格納しているタイプでは、やはり左右が余ることになる。とは言え、コンテンツ側の制約でもあるので致し方ないだろう。
なお、3Dゲームに関しては最初から32:9の表示モードに対応している場合も少なくない。F1 2019で試したところ、きっちり32:9のアスペクト比で表示され、かなり迫力のあるゲームプレイが可能だった。このあたりはゲーム次第だが、最近のタイトルは32:9に対応しているものが増えているようだ。
ディスプレイ2枚を並べることとの違いは中央に仕切りがなくなること
以上のように、5,120×1,440ドットというネイティブ解像度で使うにはさまざまな条件があって、それをクリアする必要があることを説明してきた。では使い勝手はどうなのかと言えば、とても快適だ。
フルHD(1,920×1,080ドット)の27型のディスプレイを2枚並べても同じ効果は得られるのでは? という考え方を否定する気はない。すでにディスプレイを1台持っているなら、もう1台追加するだけで済むので、低コストなアップグレードになる。
だが、やはりパネル1枚であればウィンドウを中央に置いても切れないので非常に便利だ。筆者としては、ウィンドウがフレームと重ならないというのは絶大な違いであり、予算が許すなら2枚よりも大きいものを1枚にすることを強くすすめたい。
実際、従来の32型4Kと表示できるデータをどれだけ違うか調べてみた。比較に利用したのはExcelで、いずれもスケーリングの違いにより表示数に違いが出るので、Windows奨励のスケーリング(デル U4919DWは100%、LG 49WL95C-Wは150%)で比較してみた。
U4919DWは縦が48セル、横が68セルだったのに対して、49WL95C-Wは縦が50セル、横が34セルだった。やはり横のデータ量が大きく拡張されているのがわかる(もちろん32型4Kでもスケーリングを100%にすれば表示できる領域は増えるが視認性は下がる)。
また、5,120×1,440ドットは横に広いため、ウィンドウを複数並べることができる。これまでならWebブラウザやアプリを2つくらいまでしか並べられなかったが、これが4つ、5つと並べることができる。ウィンドウを切り替えなくても複数の情報をまとめて表示できるので、作業効率の向上に大きく寄与する。
これまで、湾曲型ディスプレイの評価はしたことはあるが、実際に自宅環境でメインで使うのははじめてだった。そしてまったく違和感がない。画面の端を見るのも楽であり、むしろ歪曲しているほうが自然に見えると言っていいだろう。
今現在の状況だと、とくに役立っているのは電話会議などのときだ。筆者の場合、PC上のOneNoteなどで録音やメモを取りながら、電話会議やストリーミングを見たりしている。そういうときにはU4919DW側にZoomやTeamsなどを表示し、ノートPC側にOneNoteを表示させてメモを取っている。ZoomやTeamsの隣に、PDFで資料を表示させたり資料を見ながら相手に質問したりなども可能で、ノートPCだけで取材するよりもはるかに効率が良い。
正直に言えば、やはり実際に取材対象に会って話しを聞くのが一番だが、現状ではそれは難しく、いま効率よく取材することを考えると、しばらくはU4919DWが活躍してくれそうだ。
筆者のような使い方でなくても、取引先や社内の人と電話会議をするときも同じことは言えるわけで、ノートPCの画面だけだと効率が悪いなと感じているのであれば、別途ディスプレイを導入する価値はあるだろう。もちろんここまで大きなものではなくても、27型などの一般的なサイズを購入するだけでもずいぶんと快適になるはずだ。
デルのWebサイトによれば、4月上旬時点のU4919DWの税別価格は154,980円となっている。筆者としてはU4919DWによって効率よく取材ができるようになり、生産性に大きく寄与している。今後数年使えることを考えれば、充分妥当性のある投資だったと言える。